機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ外伝 『青き星の願い』   作:ふぇるむ

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第一話 《目覚め》

 「あーっ、クッソ! 俺はMS乗り志望だってのに、何で団長は許可してくれないんだよ!? 」

 

 だだっ広い荒野の中、大声をあげるその少年は、対MW地雷を運びつつ、隣の青年に愚痴をこぼす。

 

 「知らねーよ。だいたい、まだ入って一年しか経ってないお前に、高価で数も少ないMSを預けることなんて、危なっかしくて出来るわけないだろ」

 

 大きな作業用のスコップを二本持っている青年は、面倒臭さそうに少年に応じる。

 

 「だってよバルト。うちの格納庫には、一機だけ誰も使ってないMSが有るんだぜ? しかもめちゃくちゃかっこいい奴が」

 

 少年はある程度の所で立ち止まり、一旦対MW地雷をそっと地面に置いてから、青年から作業用スコップを受け取る。

 

 バルトと呼ばれた青年は、やれやれといった風な顔で、少年と一緒に地面を掘り始めた。

 

 「あのなぁ、前にも整備班からも説明されてたじゃないか。あのMSは誰も使ってないんじゃなくて、誰も使うことができないんだ。コクピット内のスイッチや操縦桿をいくら触ろうが、何にも反応がないし、そもそもアレは元々地下に埋まってたんだ。壊れてる可能性があって、それがどこだか分からず修理出来ず終いなら、元MSと言えども、ただのガラクタに近いんだよ。諦めろ、シルヴィ」

 

 シルヴィと呼ばれた少年とバルトは、一定の深さまで掘り進めると、穴をそれ以上掘るのを止め、置いてあった対MW地雷をその穴の中にそっと入れた。

 

 「でもよ、俺が乗ったら動き出すかもしれないぜ? そしたらあの機体は俺しか動かせないことになって、自動的に俺はMS乗りになれるだろ。試して見る価値はある気がするんだけどなぁ」

 

 先ほど穴の中に入れた対MW地雷を隠す為、上からそっと土を被せる。

 

 「バカ言え。アレにお前が乗った所で、突然アレが動き出すことなんて、万分の一の確率も有りはしないさ。」

 

 「は? やってみなきゃ分からないだろ」

 

 二人は地雷に土を被せ終わると、足早にそこを去る。

 

 「はいはい、分かった分かった。そんな事より、今日の晩御飯のことでも考えてた方がずっと有益だと思うぜ。俺は」

 

 「...むむむ」

 

 バルトは手元の資料に目を落とす。

 

 「よし、今のが最後の地雷だな。さあ、早い所本部に帰ろう。 晩御飯が俺たちを待ってる」

 

 「俺はあのMSをの事を諦めてないからな」

 

 シルヴィがそう言うと、バルトはため息をついた。

 

 「お前、あのMSの事しか考えてないんだな」

 

 すると、シルヴィは不満そうな顔をして

 

 「そこに妹を追加しといてくれ」

 

と答え、前方に霞んで見える本部のある街の方へ、足を進めた。

 

***

 

 「...これはどういうことだ?バルト」

 

 「俺にわかるはずないだろ。お前と一緒に外に出てたんだから。」

 

 シルヴィとバルトが、対MW地雷を指定の場所へ設置して、帰ってきたと同時に鳴り響き始めた、緊急事態用のサイレン。

 

 仲間達は焦った顔で、各々の配置場所へと急いでいて、既に何機かのMWは出撃準備を終えたようで、出撃しているMWも見受けられる。

 

 シルヴィは小走りしている仲間の一人の肩を叩き、呼び止める。

 

 「おい、一体何があったんだ!?」

 

 すると、仲間は一瞬でも時間が惜しい、という風で口早にシルヴィ達に言った。

 

 「見て分からねぇのかよ!? 敵襲に決まってるだろ! ギャラルホルンの奴ら、俺たちの事を本気で潰しにかかって来やがったんだ!」

 

 仲間はそう吐き捨て、もう構っていられないというように格納庫へと向かって行った。

 

 「マジかよ。ギャラルホルンはどうやって本部の位置を特定したんだ...?

内情は反ギャラルホルン組織だが、外見は普通の街にある民間防衛組織の施設にしか見えない筈だぞ?」

 

 「んなこと言ってる場合かバルト!

俺達も早く格納庫へと向かうぞ!」

 

 シルヴィはバルトの袖を無理やり引っ張り、格納庫へと急ぐ。

 

 暫くして、格納庫についたものの、MWの最後の一台が出ようとしている所であり、シルヴィ達用に残されたMWは、一機たりともなかった。

 

 「一足遅かったか...」

 

 バルトがそれを確認すると、悔しそうにシルヴィは格納庫の壁を蹴りつける。

 

 「クソッ!俺たちは仲間の助けにも行ってやれないのか!?何もせず、ここで待ってろと!?」

 

 「落ち着け、シルヴィ。これはもう本部に一度戻るしかない。生身の俺たちがMWに勝てるはずないからな。」

 

 それでもシルヴィは諦めることができないらしく、必死に辺りを見回す。

 

 格納庫にあるのは、換えの弾薬、様々な工具、MSやMWの整備用クレーン...

 

 「!!」

 

 突然、何か閃いたように、シルヴィは下げていた頭を上げる。

 

 「そうだ、バルト。俺達にも出来ることがあるじゃないか!」

 

 すると、バルトは白い目でシルヴィを見ているのが見えた。

 

 「大体予想は出来るが、一応聞いておく。どうするつもりだ?」

 

 「あのMSを俺達の力で動かせばいいんだ!そうすれば、戦いに参加できる。みんなの力になってやれるんだ!」

 

 バルトが本日何度目かわからないため息をする。

 

 「だから、あれは動かせないって言ってるだろ? 何度言えばわかるんだお前は」

 

 正直、バルトから何度も耳にタコができそうなほど聞かされているシルヴィも、今回は熱のこもった目で反論する。

 

 「乗って見なきゃわからないじゃないか! いいから、そこの整備用クレーンを使って俺をあのMSのコクピットの前まで運んでくれ!お願いだ!」

 

 あまりのシルヴィの必死さに、若干バルトは後ずさりをしたが、その熱意に感化されたのか

 

 「...分かった、一回だけだぞ」

 

と言った。

 

 それを聞いたシルヴィは、すぐに作業用クレーンのリフトの部分に乗り込み、それ合わせてバルトは、MSのコクピットの前にリフトが来るよう、慎重に操作する。

 

 バルトは若干、慣れていないリフトの操作に手間取ったものの、なんとかコクピット前につけることが出来た。

 

 「ありがとう、バルト!」

 

 シルヴィはお礼を述べ、そのMSのコクピットハッチを開ける。

 

 「なんだ、MWとたいして変わらないじゃないか。それにしても、どこを押せば起動するんだ...? MWの場合、起動ボタンはこれなんだが」

 

と言い、シルヴィは操作パネルにある、多数のスイッチの中で、一番大きいスイッチを押す。

 

 「うおっ!?」

 

 すると、MS内から発せられる大きな駆動音が一瞬だけ聞こえ、パネルの上にある画面が突然光った。

 

 「なんだ...?」

 

 不思議そうにその画面を覗き込むと、謎の文字が表示され、機体の様子を現わすかのような数値が表示される。

 

 「ははっ、なんだ、動くじゃないか」

 

 シルヴィはパイロットシートに乗り込み、ハッチを閉める。

 

 「どうやらMWと操作系統はほとんど同じみたいだ。これならいける」

 

 そして、塗装が剥げている操縦桿をを握りしめ、前に一歩歩き出すようにペダルを軽く踏んだ。

 

 これが、これまでガラクタと呼ばれていたガンダムと、ヴァルカン二年目のシルヴィ=アールクラムの初陣となるのだった。

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