冴えないヒロインと捻くれ者   作:リヨ

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やはり幼なじみは大変だ。

「で、いつまでそうやってるんだ?安芸」

「......」

安芸が澤村を追いかけていった次の日、俺達は安芸に呼び出された。

しかしいってみたら、ずっと安芸はふとんでうずくまっている。

「はぁ....どうせ昨日のことだろ?何があった」

「.....実は」

 

ようは澤村の絵も認めて欲しかったってことか?

「とりあえず、倫理君は仲直りしたいのよね?」

「まぁ、はい」

「なら、幼なじみを攻略してみなさい」

「どこのギャルゲーだよ」

「確か前にあなた達の思い出のゲームはリトラプだったわよね?ならそのストーリー通り王子様になりなさい」

「俺が.....?」

「そうよ。お姫様を助けに行きなさい」

 

 

 

「なかなか似合ってるわよ」

「どこからこんな服を....」

「俺ならこんなの着て外歩くなんて無理だな」

「今から俺はその行動をするんだけど!?」

仲直りするための作戦。そのために安芸は王子の服を着ている。

「ま、とりあえず行ってこい。お姫様が待ってるぞ」

「.....あぁ!」

「.....仲直りできるかな?」

「さぁ、どうだろうな」

「できるといいね」

「あぁ」

 

 

「結局できなかったのか」

「あぁ。でもこれでいいんだ。俺たちは」

「お前らが納得してるならそれでいいけどよ」

 

翌日の昼放課

「比企谷くん」

「ん?どうした?」

「霞ヶ丘先輩が呼んでるよ」

「わかった」

 

「それで?何のようですか?」

「比企谷くんと加藤さんだけを呼んだのよ?まだわからない?」

「さっぱり」

「はぁ。そういうところが自覚がないって言うのよ。あなた達は主人公とメインヒロインよ?」

「そうですね」

「なのに苗字呼びは他人行儀だと思うの」

「つまり、名前呼びにしろと」

「そういうことね」

「無理です」

「嫌とかではなく?」

「はい。恥ずかしくてできません」

「はぁ....加藤さんは?」

「私はまぁ....」

「.....わかったわ。今日のサークル活動は私が仕切るわ」

どうなっちゃうのこれ?

 

「俺と英梨々がいつから名前呼びか?」

「さぁ?いつの間にかよ」

「最初から名前だったかもな?」

「そんなこといちいち覚えてないわよ」

「さっき比企谷くんと加藤さんには話したのだけど、2人は名前呼びにした方がいいと思うの」

「まぁ確かにその方がいいかも」

「でも恥ずかしくてできないらしいわ」

「恥ずかしいって....中学生じゃないんだから」

「うるせぇ。俺は女子と関わりなかったからそういうことは無理なんだよ」

「じゃあまずは比企谷くんに女子に対する免疫をつけてもらいましょう」

 

 

そう言った霞ヶ丘先輩に俺達は公園に連れていかれた。

「で?どうするんですか?」

「この先きっとこういうシーンも出てくるだろうから、今のうちにやっておくわ。そこのベンチに座って、比企谷くんと加藤さん」

「座りましたよ?」

「距離をもっと縮めて」

「はぁ....」

「もっと」

「....」

「密着して」

「.....」

ピト

加藤と肩が触れ合うぐらい近くなった。

「比企谷くん、大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫だじょ」

「ぷぷっ....」

澤村後で覚えとけ。

「じゃあ次は比企谷くんが加藤さんの肩を抱いて自分の方に引き寄せて」

「は!?無理ですよ!」

「いいからやる」

ふぇぇぇ。怖いよ...

「じゃ、じゃあやるぞ?加藤」

「う、うん」

俺は加藤を抱き寄せる。

恥ずかしいよぉ!女の子の柔らかさがダイレクトに!いや、もうほんと勘弁して!

「次は二人で見つめあって」

「ぐっ....」

「さぁ」

俺と加藤は見つめ合う。

「うぅ....流石に私も恥ずかしいよぉ」

「そ、そんなの俺もだ」

加藤の吐息が当たる。まじでこれはやばい。ギャルゲーの世界をリアルで再現するとこんなふうなの?やばいな。

「じゃあ見つめ合いながら台詞でも言ってみましょう。ちなみに目をそらしたら罰ゲームね。比企谷くん、「恵、こうやって近くで見ると案外可愛いんだな」はい言って」

「......」

「ほら、そんな顔赤くして黙ってても進まないわ」

「あぁもうっ!......め、恵、こうやって近くで見ると案外可愛いんだな」

「ぐぅ.....」

「加藤のやつ、あれはガチで照れてるな」

「えぇ。あんなに感情出した顔初めて見たかも」

「次、加藤さん、「もう、何言ってるの!八幡くんのバカぁ」よ。萌え萌えな感じでお願い」

「うぅ....も、もう!なに、いってるのー?八幡くんの、ば、ばかー」

「照れすぎだし棒読みだけどこれはこれでありかもね」

「今の加藤、ヒロインっぽいぞ!」

「でも、今一瞬加藤さんが目をそらしたわね。罰ゲームね。お互いの顔がもっと近づきまーす。そして比企谷くんは加藤さんの胸に触れまーす」

「それセクハラですよっ!?」

「なんか今日の比企谷、倫也みたいになってるわね」

「仕方ない。相手が霞ヶ丘先輩だからな」

「じゃあ加藤さんが比企谷くんの胸に寄り添って。それなら問題ないわ」

「いや、そうかもしれませんけど....」

「罰ゲームと言っても、これだってゲームのためよ?比企谷くんの女子への免疫を高めることにもなるし」

「.....」

すると加藤は俺の胸に体を預けてきた。

「か、加藤?」

「わ、私も恥ずかしいけどゲームのためっていってるし....」

「うぅ.....」

ま、まじでもうやばい。流石に限界。

「.....ま、今日はこのくらいにしておきましょうか」

「ぷはー!疲れた!」

「はい、じゃあお互い名前で呼びあってみて」

「.....め、恵」

「....は、八幡くん」

「....」

「でも、さっきよりは恥ずかしい気持ちとかないかも」

「効果はあったみたいね」

「俺は恥ずかしいですけどね、まだ」

「ヘタレね」

「お前一回しばく」

「まぁ加藤さんだけでも進展しただけまだいいわ。加藤さんだけでもこれからは名前呼びにしなさい」

「わ、わかりました」

 

 

「マジで疲れた....」

「あはは....あの時の八幡くん、すごい心臓ドキドキしてたよ?」

「そりゃ女子とあんな密着してたらそうなるだろ。加藤だって客観的に見ても可愛いの部類にはいるし」

「.....主観的には?」

「は?.....ま、まぁ可愛いと思う、ぞ?」

「そ、そっか.....」

「.....」

「....あ、私家こっちだから。またね、八幡くん」

「おう、またな加藤」

「.....いつかは名前で呼んでね」

「.....あぁ」

今日は精神的に疲れた。家帰って小町に癒されよう。

 

続く

 


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