偉人の生まれ変わり   作:ぱーん

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一章《偉人の生まれ変わり》

昔から力が強く、背が高かった。

女子のように扱ってもらえず、髪を切った。

言葉遣いも男らしくなった。

 

四人姉妹の末っ子。空気の読めない父。被害妄想が激しく気に入らないことがあれば喚き散らす母。

表面上だけ綺麗な薄っぺらい家族の中。僕は独りだ。

 

僕は要瑞穂(かなめみづほ)、神奈川の小さな町に住んでいる。

瑞穂というのは神話の中の国名から父がつけたものだ。

僕が住んでいる町は菜の花が有名で、駅のホームもそれにちなんだ歌が採用されている。それ以外は特にこれといったものは無い。

僕は中学生で、(あずま)中に通っている。現在二年生。

比較的穏やかな生活が出来ていると思う。穏やかじゃない出来事といえばうちの学校で授業中に蜂が入りすぎていることぐらいだ。

ただ、別の地域・・・・・特に東京はそうもいかない。私が中学一年生の時に第三次世界大戦が起きた。しかもそれは各国が偉人の生まれ変わりを使った戦いなのでその被害は甚大なのである。

因みに【偉人の生まれ変わり】とはその名の通り、世界中の偉人の生まれ変わりである人達のことだ。偉人の生まれ変わりはほかの人間と比べて特殊な力が使えるらしい。水の上を歩いたり、どんな難病も立ちどころに治してしまったり、辺りの敵を一人で全て滅したという噂はこの平和な町にも届いている。こういう、超能力者みたいな奴等を使って他国が他国に戦争を仕掛けているらしく、被害を受けるであろう日本も防戦する為に偉人の生まれ変わりを探しているのだそうだ。

 

 

・・・・・と、現実逃避はしてみたものの教室は依然としてうるさいままだ。

どうやら転校生が来るようで浮き足立っているのである。

小さい町だからそういう事になる。いや、どこの学校でもそうか。

しかも誰かがちらっとその転校生を見かけたらしく、大変な美人であったという情報が入り、教室はライブ会場並にうるさい。ライブいったことないけど。

このままこの教室内にいても耳が悪くなりそうなので校内を散歩することにした。夏だから人が密集している教室は暑いし、現在の興奮した状態ではさらに暑苦しいので廊下の方がまだ幾分涼しいのである。

出る時に力加減に気を付けながらドアを閉めた。

さて、どうしようかな。

あぁ、そうだ。司書さんが新しい本を仕入れたと言っていたなぁ。まだホームルーム始まるまで時間はあるし、行ってみよう。

歩きながら窓の外を見る。この学校は木が多く、川も近くに流れているために色々な虫が入り込んでくる。その代わりに風景は綺麗なのでまぁ良いのだが。朝早くに来れば朝練をしている部活と自然の絶妙なマッチングというか、爽やかで綺麗な光景を拝めるのである。絵にしたらとてもいいだろう。夕方は夕焼けの中で部活をする人達をスケッチするのもいい。木の葉と帰り支度をする部活と夕焼けの鮮やかな赤とオレンジとが絡み合って格好良い。

世界の不穏な動きなど微塵も感じられない平穏で美しい日々。僕はここが好きだ。ここにいれば家のせいで冷えきった心が満たされる気がして。

 

そんな事を思いながら図書室に向かっていると前方に明らかにこの学校で見た事が無い美女がいた。

肩まである髪はふわふわしていて、目は涼しげでキリッとしている。ただ、胴長なのが惜しいと思ってしまった。いや、他人の容姿にとやかく言う趣味はなかったはずだが。

その美女はこちらを向いて僕を認識すると近付いて来た。

『貴方、二年二組の場所をご存知なくて?』

二年二組・・・・・僕のクラスだ。とすると、

『君が例の転校生なのか?』

『えぇ、そうよ』

なんだか上から目線(背的には下からだが)な態度である。

その美女は僕に案内しろと言ってきた。高慢な態度は気になるがこういうタイプは突っかかると面倒になるので何も言わない。

『貴方、随分と背が高いようだけれど、本当に女性なのかしら?』

コイツ失礼だな。

女性だ、阿呆。

ただ、この扱いには慣れきってしまっているので今更騒いだりはしないが。

『僕はれっきとした女だよ。胸もそれなりにあるしね』

『・・・・・自分の事を「僕」と呼んでいるのに?』

『別に一人称なんて人それぞれだろう・・・・・着いたよ』

未だに廊下に聞こえるほどうるさい教室の扉を開く。ちょっとだけ力が入っちゃったのか凄い音が出てしまい、教室が一瞬静まり返る。悪気はなかった。

『・・・・・今日からこのクラスで共に教わる子を連れてきた』

僕がそういうと僕の横にいた女子に皆の目が行く。

大半の男子がその姿を認識すると顔を赤らめていた。まぁこれだけの美少女となると仕方が無いのかも知れない。

美女はその反応に当然だとでも言うように、フンと鼻を鳴らした。

 

その後その美少女は皆に囲まれそうになるも、ナイスタイミングで来た先生によって防がれた。皆が先生に促されるまま席に座って美少女は壇上に立った。先生が黒板に名前を書いていく。

名前を書き終わった先生がこちらを向く。

『本日からお前たちと共に過ごす仲間だ。河辺さん、自己紹介を頼む』

先生がそういって美少女の方を向く。

美少女は私たちを見据えてから言った。

河辺絵里奈(かわべえりな)です。私、今川義元の生まれ変わりですわ。この学校には国からの依頼で私と同じ偉人の生まれ変わりを探しに来ましたの。これから偉人の生まれ変わりが見つかるまでの間、仲良くしていただけると有難いわ』

教室が一気に騒がしくなった。

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