とある妖精の航海録   作:グランド・オブ・ミル

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デービーバックファイト編1・妖精の航海

 

 

 

 

 

 

 

 

風船タコのおかげで何とか俺達は死なずに青海へ戻ってくることができた。無事青海へ帰還し、空を見上げてもスカイピアはまったく見えず、すごい所へ行っていたのだと改めて実感した。

空島で手に入れた物は青海でも使えるのか試してみたところ、"雲貝(ミルキーダイアル)"のみ使用できなかった。雲を出そうとしてもスカスカと空音を鳴らすだけだ。雲が形になるには空島の環境が必要らしい。

 

「さぁ!皆お待ちかね!お宝の山分けよ!」

 

「いよっ!待ってました!!」

 

テーブルに黄金を積み、それを囲んで皆が騒ぐ。サンジなんかは珍しく眼鏡なんかかけて買うものをぶつぶつと呟きながら算盤をはじいている。ロビンは黄金で騒ぐ俺達を少し離れた所から見守っている。テーブルに山のように積み上げられた黄金を見ると、今は幼女だが一男として胸が高鳴ってくる。

 

「まず私のへそくりが8割で~♪」

 

「「「いやいやいや……」」」

 

ナミがキラキラした笑顔で黄金の山をジャラッと自分のほうへ移動させたのでロビンを除く全員で異議を唱える。もちろんこれはナミの冗談であることは分かっているが、ここでちょっとした悪戯を思いつく。

 

「……ではナミさんは私にずっと裸でいろとおっしゃるのですね……。ぐすっ……いえ、いいんです。所詮私は雑巾がけしか能のない雑用係の穀潰し…衣服までお世話になるわけにはいきませんから……。」

 

「「「じと~~……」」」

 

「あ、あはは。やーね!冗談に決まってるじゃない!!泣かないでエレイン!あれ冗談だから!!」

 

俺は嘘泣きで涙目になりながら俯くと全員から冷やかな視線がナミへ送られた。全員から白い目で見られたナミは冷や汗をかきながら慌てて俺を抱きしめて慰めた。ふふふ、悪戯は無事成功したようだ。

 

その後色々話し合った結果、まずはメリー号を修理することに決まった。東の海(イーストブルー)からのルフィ達の無茶苦茶な航海にも耐え、俺達を乗せてくれているメリー号。そのメリー号は所々に激戦の跡が残されていてボロボロだ。ここらで本格的に造船ドックに入れて本職の船大工に修繕してもらったほうがいい。その修繕にいくらかかるか分からないので黄金の山分けは保留だ。

 

「あとできれば"船大工"さんを仲間にするべきではないでしょうか?」

 

「そうだな!メリー号は俺達の"家"で"命"だ!この船を守ってくれる船大工は必要だ!」

 

そしてメリー号を修繕すると共に、可能ならば船大工を仲間に入れる方針に決まった。話し合いも終わり、俺達は船大工を求めて航海を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああ!!大波だぁぁぁ!!」

 

「何かいますよ!?波の中に!!」

 

「"シーモンキー"だ!!」

 

「やべぇ!風がねぇ!!帆をたたんで漕げ!!」

 

航海を再開した俺達だが、さすがは偉大なる航路(グランドライン)。次々に試練が襲いかかった。今俺達は大波を起こしながら追いかけてくる猿のような海獣から逃げている。

 

「む!?前方に船発見!!」

 

シーモンキーから逃げている最中、見張り台のウソップが双眼鏡を覗きながらそう叫んだ。

 

「敵ですか?」

 

「いや、分からねぇ!」

 

「?分からない?」

 

俺はウソップの返答に首を傾げた。船が見えるのなら何かしら情報は得られるだろう。ドクロを掲げていれば海賊船であり、カモメを掲げていれば海軍船、会社のエンブレムを掲げていれば商船である。分からないというのは何だろうか。

 

「あの船何も掲げてねぇんだ!帆も旗も!!」

 

「何だそりゃ!?何も掲げてねぇ!?何のために海にいるんだ!?」

 

俺達が話していると前方からやってきた何も掲げていない船はメリー号の横を通りすぎた。このままではシーモンキーの大波の餌食になってしまう。

 

「船の皆さーーん!!大波に飲まれてしまいますよーー!!舵を切ってくださーーい!!」

 

俺は口に両手をあてて船に向かって叫んだ。船に乗っていた人達、恐らく海賊達は俺の声に気づいてふらりと立ち上がったが、その海賊達はとにかくまとまりがなかった。大波が目の前だというのに「敵船だ!」だの「大砲を用意しろ!」だの、はたまた「舵を切れ!」と誰かが言えば「てめぇが命令すんな!」と怒号が響く。そんなこんなしている内にその船はドッパァァンと大波に飲まれ、シーモンキーが嬉しそうに笑う結果となった。

 

「?何だったんでしょうか、あの船。」

 

「どうせ敵だろ。ほっとけよ。それより、猿共はあの船を沈めて満足したようだな。波が大分落ち着いた。」

 

ゾロの言う通り、シーモンキーはあの船と共にキャッキャッと笑いながら海底に姿を消し、先程までの大波が嘘のように海は静けさを取り戻した。ナミが言うにはもう次の島の気候領域に入ったらしい。

 

「ロビンさん、何か見えますか?」

 

「あら、エレイン。」

 

俺はふわふわと空を飛び、見張り台でウソップと交代して紅茶を飲みながら見張りをするロビンへ近づく。俺が話しかけるとロビンは前方を指さした。

 

「島がずっと見えてるわ。」

 

「へ?あ、本当ですね。けっこう霧が深い島…。ナミさーん!次の島に霧がかかってます!」

 

「霧か…、危ないわね。チョッパー、前方確認よろしくね!」

 

「おう!分かったぞ!」

 

「おっ!もう次の島に着くのか!造船所あるかな!!」

 

「……って見えてたのなら言ってくださいよロビンさん。」

 

「ふふっ、ごめんなさいね。」

 

ロビンが指さした方向には少々霧がかかった島があった。俺達はバタバタと上陸準備を整える。まあ、準備と言ってもイカリを準備するだけだが。

やがてメリー号が進むとパァァと霧が晴れ、島の姿が見えてきた。

 

「な、何もねぇーー!!」

 

「何じゃここは!すげー!!見渡す限り草原じゃねぇか!!」

 

「あーあー、何つう色気のねぇ場所だよ…。」

 

「人は住んでいるのかしら。」

 

「う~ん、少なくとも造船所は期待できないですね。」

 

その島には何もなかった。ルフィが言うように、見渡す限りの草原だ。地平線の彼方まで、所々高い木がポツポツ生えているだけのだだっ広い草原。

 

「うひょー!!草原だ!!」

 

「すげー広いぞ!!」

 

「いやっほーー!!」

 

「こらぁ!!またあんた達は!!」

 

ルフィとウソップとチョッパーは広い草原が嬉しかったのか、ゴロゴロと寝転がりながら遠くへ行ってしまった。

 

「まったくあいつらは得体の知れない土地にずかずかと……!」

 

「これだけ開けてりゃあ危険も何もねぇだろ。」

 

「あ、ゾロさん!イカリなら私がおろします!」

 

俺はゾロからイカリを受けとり、浅瀬のほうへドボンとおろした。もちろん俺にイカリを持つ力はないので魔力を使ってだ。

 

「ナミさん、この島の記録(ログ)はどれくらいで貯まるのでしょうか?」

 

「そうね……、多分数日もあれば貯まると思うけど…。」

 

「まぁとにかく、俺達も船を降りようぜ。ここにいても始まらねぇ。」

 

「あ、では皆さんで行ってきてください。船番は私がやります。」

 

「あら、じゃあ私も船番として残るわ。」

 

「そう?じゃあお願いね。すぐ戻ってくるから。」

 

そう言ってナミとサンジとゾロはルフィ達が転がっていったほうへ歩き始めた。俺は何故か嬉しそうに微笑むロビンと二人で船番だ。

 

「お茶でも入れますか?」

 

「あらいいわね。じゃあ二人でお茶会をしましょうか。また歴史、教えてあげるわ。」

 

「ちょっと待っててください。すぐに……!?」

 

俺がお茶を入れにキッチンへ向かおうとした時、突然船がグラリと揺れた。何事かと顔をあげるとメリー号の3倍はあるであろう巨大な、キツネ型の船首を持った海賊船がいつの間にかあった。深い霧で接近に気づかなかったらしい。島を散策に行ったナミ達も船の異変に気づいて戻ってきた。その海賊船はキツネの両手をかたどったイカリを島に刺し、メリー号の行く手を完全に封鎖した。

 

「エレイン、大丈夫?」

 

「はい、私は空を飛んでましたから。ロビンさんも怪我はありませんか?」

 

「えぇ、平気よ。」

 

「お前ら何者だ!やるんなら出てこい!!」

 

ゾロが腰の刀に手をかけてそう叫ぶと船室からぞろぞろと奇抜なマスクを着けた海賊達が現れた。海賊達の一人がキツネの船首に立ち、俺達にこう宣言した。

 

「我々は"フォクシー海賊団"!早まるな、我らの望みは"決闘"だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 


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