とある妖精の航海録   作:グランド・オブ・ミル

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転生編2・妖精の出会い

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が転生して初めての朝を迎えた。あの後俺は結局今後どうするべきか思い浮かばず、そのままシャスティフォルに顔を埋めてふて寝した。考えることを放棄したのだ。まあ、色々なことが起こりすぎて軽くパニックを起こしていたし、割りと正しい行為だったのかもしれない。

 

「さてさてさーて、まずここは一体どこなんだ?」

 

朝起きて湖で水浴びを済ませた俺は腕を組んで呟く。エレインに憑依したからにはここは七つの大罪の世界と考えるのが一番自然だ。なぜかエレインの俺がキングの神器を持っているが、別の世界線だと考えればまあ、分からなくはない。だが、俺が知る限り七つの大罪に今いるような島は出てこなかった。

 

考えられるのはここが七つの大罪の世界ではないという可能性だ。そもそも今もなお俺の隣でふよふよと浮く緑のクッションは原作では妖精界の神樹から創られたありがたいものだ。あの大樹が神樹だとするならここは妖精界のはず。なのにこの島には妖精一匹見当たらない。おかしい。

 

グー……

 

あーでもないこーでもないと俺が一人で自問自答していると湖に俺のお腹の音が鳴り響いた。そういえば転生してから何も食べてない。

 

「………魚でも食べますか。」

 

とりあえず海に出てシャスティフォルで適当にブスブスやれば魚の一匹や二匹くらいすぐ捕まえられるだろう。そう思って俺は振り返り、砂浜へ向かおうとした。

 

「………………」

 

そこにはいつの間にか人がいた。頭は緑髪で顔はいかにもな悪人顔な男、はっきり言って怖い。左耳には3つのピアス、白いTシャツに腹巻きをしていて、左腕には黒い布を巻いている。そして何より腰に3本刀を差していた。

 

「「……………」」

 

お互いに気まずい空気が流れる。そんな中、男は「あ~その…えっとだな…」と頭をかきながら会話をしようとしている。しかし、俺はそんなことなど気にしていられなかった。相手は武器を持っている。それも刀。さらに体の鍛え具合からして相当な実力の持ち主だ。そんなことは素人の俺でも分かる。つまり、目の前の男は俺のことなどアリを踏み潰すように殺すことができるのだ。普通に考えて初対面でいきなり殺されるなんてことがあるはずないのだが、ここがどんな世界が分からない以上絶対大丈夫なんて保証はないし、転生やら憑依やら神器やらで精神があまり正常ではなかった俺はそんなことは考えられなかった。

 

俺がとった行動は………

 

「うおっ!?」

 

クッション状態だったシャスティフォルを素早く槍に変え、男目掛けて飛ばした。男はそれをギリギリのところでかわす。まだシャスティフォルの扱いには慣れていないが、現状身を守る手段はこれしかない。

 

「あ、あなたは何者ですか!?わ、わわ私を一体どうする気ですっ!?」

 

俺は自分でも呆れる程の震え声で男に叫んだ。叫びながらも攻撃する手は休めない。無我夢中で槍を振り回し、男を攻撃した。

 

「どわっ!ちがっ!話を聞けっ!!」

 

ズドッ!ズドッ!とあちこちから飛んで来る槍を男はすべてかわしていた。

 

「わ、私は食べてもおいしくないです!!」

 

俺はついに自分でもわけがわからないことを口走りながら、槍を無造作に、乱暴に振り回し始めた。"飛び回る蜂(バンブルビー)"というキングの技だ。

 

ガキィン!

 

ついに避けきれなくなったのか、男は腰から2本刀を抜き、その刀を交差させてシャスティフォルを受け止めた。

 

「ぐっ……!なんて力だ!落ち着け!俺はお前をどうこうするつもりはねぇ!!」

 

「う、嘘です!絶対何かするつもりです!だってあなたはそんなに怖い………怖い………」

 

男がシャスティフォルを受け止め、少し考える時間ができた。俺は男の顔をよく見てみた。すると男は俺が前世でよく見た人物に限りなく、ていうかそっくりなことに気がついた。

 

俺はシャスティフォルを自分の手元に戻し、それでもいつでも動かせるように構えながらゆっくりと男に近づいた。そして恐る恐る男に名を聞いてみた。

 

「ロロノア・ゾロだ。」

 

返ってきた答えに俺は絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「かんぱ~い!!」」」

 

「か、かんぱーい……。」

 

俺はあの後ゾロにめちゃくちゃ謝罪した。日本人の最終奥義「土下座」まで披露し、それはもう心から詫びた。

 

どうやら俺はエレインに憑依転生し、キングの力を持ったうえでワンピースの世界へ来てしまったらしい。もうわけが分からない。だからもう考えるのはやめにした。やめだやめやめ。分からないもん、だって。何で俺がこの世界に来たのかとかもう知らん。来てしまったものはしょうがないと割りきろう。じゃないとやってられない。

 

話が逸れた。ゾロに謝罪した後、俺はゾロに案内されて島の砂浜へと連れてこられた。まあ、ゾロ特有の方向オンチのせいでいつまでたっても砂浜へたどり着けず、結局俺がクッション状態のシャスティフォルにゾロを乗っけて空から向かう羽目になったのは余談なので置いておく。

 

そして案内された先にはお察しの通り麦わらの一味がいた。メンバーと船がゴーイング・メリー号であることからちょうどアラバスタ編が終わったばかりだ。

 

そしてそのまま俺と麦わらの一味の出会いを祝して宴が開かれることとなった。皆は楽しくわいわいと騒いでいるが、新参者の俺には何となく居心地が悪く、同じく新参者であろうロビンの後ろに隠れてしまう。そんな俺をロビンは「ふふ♪」なんて微笑ましいものを見るように笑っている。なんか悔しい。

 

「ところでエレイン。お前何でこんな島にいるんだ?」

 

ルフィが大きな骨付き肉をかじりながら俺に聞いてきた。

 

「……それが私にも分からないんです。気がついたらここにいて……。」

 

「つまり、記憶喪失ってこと?」

 

「……そう、なりますね。」

 

ナミの疑問に俺は首を縦に振る。記憶喪失か…。存外間違っていない。そもそもエレインに転生なんて言っているが俺は死んだ覚えはない。だから一体どういった経緯でこんなことになったのか分からないので記憶喪失でいいだろう。

 

俺が記憶喪失と知って同情してくれたのだろう。皆しんみりとして黙りこんでしまった。空気を変えるために俺はなぜ皆がこの島に来たのか聞いてみた。するとナミが溜め息をついて砂浜を指さした。そこには半分以上浜に乗り上げたメリー号の姿があった。

 

「このバカが下手くそな操縦して船をこの島に乗り上げちゃったのよ!」

 

ナミはルフィのほっぺたをつねりながら話す。ゴム人間のルフィのほっぺたはありえない程によく伸びる。

 

「どうするよルフィ。あれじゃ俺達当分この島から出られねぇぞ。」

 

ウソップがメリー号を指さしながら言った。この様子じゃ本当に困っているようだ。

 

「では、私が船、戻しましょうか?」

 

「「「え?」」」

 

俺の提案にほぼ全員が不思議そうな顔をする。俺は持っていた樽のジョッキ(ちなみに酒ではなくアップルジュース)を置き、ふよふよとメリー号の船首のほうへ移動した。

 

「霊槍シャスティフォル第二形態"守護獣(ガーディアン)"」

 

そしてクッション状態のシャスティフォルの姿を俺の五倍はある巨大な熊のぬいぐるみのような形態に変化させた。これは神樹の特性を持つシャスティフォルの形態の一つで、神樹は外敵から身を守るために自らに生える苔に形を与えて戦わせる。

 

巨大な熊となったシャスティフォルはメリー号を船首から押し、見事沖へ戻すことに成功した。

 

「「「すっげ~~~!!」」」

 

俺が目線を皆に向けるとルフィ、ウソップ、チョッパーを文字通り目を輝かせていた。そして目にも止まらぬ速さで俺に駆け寄ると熊状態のシャスティフォルに飛びついた。

 

「何だこれ!?どうなってんだ!?」

 

「モフモフだ~~!!俺これ好きだ~~!」

 

「なあなあなあ!どうなってんだこの熊!?おもしれ~~!!」

 

どうやらシャスティフォルは三人に気に入られてしまったようだ。とりあえずチョッパーの頭を熊状態のシャスティフォルの手で撫でてあげたりしているとルフィは俺にとんでもないことを提案してきた。

 

「なあ!エレイン!お前俺の仲間になれよ!!」

 

「……え!?」

 

原作を読んである程度理解していたが、あまりにもいきなりすぎる勧誘に俺は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

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