とある妖精の航海録   作:グランド・オブ・ミル

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 投稿が遅くなり、本当に申し訳ございません。リアルがすごく忙しくて………。本当に長らくお待たせしました。


スリラーバーク編6・妖精の悪夢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボボッ………

 

 シャスティフォルで斬りつけたキングの身体が切り口から発火した。これは最近ゾロに教えてもらった技だ。切っ先にすべての力を集中させた斬撃の摩擦熱で相手を燃やし斬る。俺の炎は本家のゾロのものより弱々しいが、キングは身体を燃やす炎の熱と斬撃のダメージでゆっくり地面に墜落していった。

 

ヒラリ………

 

「? あれはリボン………?」

 

 その時、キングのポケットから赤いリボンが出てきた。俺は地面に横たわるキングの傍らに降下しながらそれを空中でキャッチした。

 俺は腰にぶら下げていた袋からウソップが作った塩の玉を取り出す。後は胸部に炎を灯しながら倒れるキングの口にこれを入れれば終わりだ。

 

「や………あ……エレ………イン…………久しぶ………り………」

 

「!」

 

 だが、死んでいて、なおかつモリアに操られているはずのキングが俺に話しかけてきた。その目には先ほどまでの負の感情は一切なく、穏やかな色をしている。その声は間違いなくエレインの兄ハーレクインのものだった。

 一体なぜ、どういう原理で死んでいるハーレクインが話し出すのか。それは分からないがその声は聞いておくべきだろう。そう思って俺はキングの側に歩み寄った。

 

 

「その…リボン……、君へのプレゼント……なんだ……。長い間…待たせちゃったから………せめてお詫びにと……思って…………」

 

「……………………」

 

 いつの間にか俺の身体は涙を流していた。キングの手を取り、その言葉を聞き続ける。

 

「マリン……フォードで……人気のアクセサリー……なんだけど……オイラもバカだ…な…。こんな…ものじゃ、君に…は、何の…詫びにも…ならない…………のに……」

 

「…………そうですよ、貴方は本当に大バカです!」

 

 俺の返答を聞くと、キングはフッ、と安堵の笑みを浮かべ、やがて炎に包まれていった。もう炎でほとんど見えなくなったキングの身体からヒュッと黒い魂のようなものが抜け出て、俺の足元に宿った。俺は無事キングをモリアの呪縛から解放し、影を取り戻すことができたようだ。

 

「……エレイン、キングを解放してあげることができたよ。ありがとう。」

 

 俺はキングの最後を見守った後、闇に覆われた空を見上げてそう呟いた。そしてゴシゴシと手で涙を拭うと地面をキッと鋭く睨みつけた。

 

ボンッ!

 

 すると風の魔力によって地面に半径1m程度の穴が掘られた。俺はほぼ炭になってしまったキングの亡骸を魔力で浮かせるとその穴の中に寝かせ、その上から土を被せた。静かに眠れ。そんな思いを込めるとキングの亡骸を埋めた周囲の地面にポポポッ、と色とりどりの小さな花が咲き乱れた。これでキングも寂しくないだろう。

 

 キングの弔いを終えた俺は、キングの墓に背を向け、屋敷の方を向いた。戦いはまだ、終わってない。

 

「…………さあ、行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋敷では麦わらの一味とオーズ、そしてモリアが壮絶な戦いを繰り広げていた。ルフィの影の入ったゾンビであるオーズは巨人族以上の巨体を持つ魔人、それにさらにルフィの身軽な戦闘スタイルが加わり、モリアがカゲカゲの実の力で再現したゴムゴムの実の能力まで併せ持つ。どんな荒波も仲間と共に乗り越えてきた麦わらの一味でも苦戦は必至の相手だった。

 

「”ゴムゴムの鐘”ぇ!!」

 

ドゴォンッ!

 

 巨体由来のパワーにルフィのスピード、さらにゴムゴムの技まで使いこなすオーズに麦わらの一味は近づくことさえできない。

 

「四本樹(クロトワマーノ)………!」

 

 そんなジリ貧を脱却したのはロビンだった。離れた場所に自身の手足を咲かせることのできるハナハナの実の能力によって、コックピットのように改造したオーズの腹部に乗り込むモリアの身体に何本もの腕を束ねた大きな腕を四本咲かせ、モリアの巨体を締め上げた。

 

「”クラッチ”!!」

 

 そしてそのままモリアの首をボキンッ!とへし折った。モリアの悲鳴が響き、勝負はついたかに思われた。

 

「キシシシ、残念だったな。」

 

「なっ…………!」

 

 だが、モリアは自分の影を囮に使うことでロビンの攻撃を回避し、逆にロビンの背後に回り込んでいた。モリアも王下七武海の一員、そう簡単に勝たせてくれる相手ではない。モリアはニタニタと笑いながらロビンの足元からベリベリと影をはがした。そしてそれを切り取ろうと大きなハサミを構える。

 

「キシシシ!」

 

「ロビンちゃ………!!」

 

ザンッ!!

 

「ぐっ……!?」

 

 だが、モリアがロビンの影を切り取る寸前、突如一本の槍が飛来してモリアの脇腹を斬り裂いた。思わぬ痛みにモリアはロビンの影から手を放し、斬り裂かれた脇腹を押さえる。その槍はギュルルルと高速で回転すると飛んできた方角へと戻っていく。

 

「あれは、霊槍……!」

 

「ってことは………!」

 

 ウソップは希望に満ちた顔を霊槍が飛来した方へ向ける。

 

「皆さん、遅くなりました。」

 

 そこには傷だらけになりながらも戦いを切り抜けてきたエレインが、仲間達を安心させる笑顔と共に浮遊していた。

 

「うおぉぉぉお! エレインが来てくれたぞ~!」

 

「へっ、遅えよ。」

 

「よっしゃあ! ここから一気に勝つぞ!」

 

 エレインという大きな戦力の加入に、苦戦続きで硬くなっていた麦わらの一味の表情が少し和らぐ。

 

「てめぇ………! 闇の聖女(ダーク・セイント)…………!!」

 

 再びオーズの腹部に戻ったモリアは自分を斬ったエレインを睨みつけた。やがてオーズに指示を出すとオーズは主人の命に従って隕石のような拳をエレインに振るう。

 

「キシシシッ! 吹っ飛べ!!」

 

「………”守護獣(ガーディアン)”。」

 

 迫り来る拳にエレインは落ち着いて霊槍を構えた。第二形態へ変化させたシャスティフォルがオーズの拳をバズンッ! と受け止める。多少後退したものの、シャスティフォルはオーズの攻撃を完璧に防御して見せた。

 

「おおっ! あの剛腕を受け止めたっ!」

 

 エレインの活躍に仲間達が沸く。エレインはシャスティフォルを今度は槍形態に戻し、ギュルルルッと円を描くように回転させた。シャスティフォルは回転しながら突き出したオーズの右腕を斬り裂きつつ登っていく。

 

ズババババッ!!

 

「うおっ!」

 

「何だオーズ情けねぇ! そんなチンケな槍、さっさとはたき落としちまえ!」

 

 ゾンビとなったオーズは痛みを感じないため、自分の身体が傷つけられることに危機感を感じない。やがてシャスティフォルはオーズの右腕を登りきると右肩の辺りで回転を止め、ピタッと空中で停止する。見るとエレインは人差し指と中指を立てた右手を挙げ、魔力を集中していた。目を閉じると先ほど戦ったキングの儚い最期と、その妹”エレイン”の悲しみが、深く胸を締め上げる。

 

「…………っ!!」

 

ズバンッ!!

 

「どわっ! 腕斬られた~っ!!」

 

「何ッ! そんなバカな!!」

 

 目をカッと開けたエレインは額に青筋を浮かべ、殺意を込めた鋭い眼で右手を振り下ろした。すると大振りに振られたシャスティフォルがオーズの右腕を肩から斬り落とした。斬られた腕がズゥンッと地面に落ち、痛みがないオーズも主人と共に動揺する。如何に魔人と恐れられたオーズであっても500年前の死体をモリアの能力で無理やり動かしているだけ。本物ならともかく、怒りに燃える妖精王の本気の魔力に耐えられるはずがなかった。

 

「すげぇ! オーズの腕斬り落としたっ!」

 

「あんなにあっさり…………! エレインすごく強くなってる!」

 

「ああ、さすがだ。」

 

「皆、今のうちに体勢を立て直しましょう!」

 

 エレインが戦っている最中、地上ではゾロ達がそれぞれバラバラに散り、体勢を立て直していた。その間、今まで束になってかかってもビクともしなかったオーズとモリアを、たった一人で圧倒するエレインの強さに驚きを隠せない。それもその筈、実はエレインは先ほどのキング戦を経て、”エレイン”の身体と魂の繋がりがより強くなったことで、グンと戦闘力をアップさせていた。それは闘級にして5130相当。七つの大罪原作でのマーリンをも超える数値だ。他人の力と過去の伝説にいつまでも縋るモリアでは到底手に入れられない力だ。

 

「おのれっ…! ”欠片蝙蝠(ブリックバット)”!」

 

 モリアは影で作ったたくさんの小型の蝙蝠達をエレイン目掛けて飛ばした。蝙蝠達は大きく口を開けてエレインに噛みつこうと襲い掛かる。

 

「霊槍シャスティフォル第五形態”増殖(インクリース)”。」

 

 だが、それもエレインには通用しない。シャラララと空中を踊る無数のクナイ達がモリアの蝙蝠達を一匹残らず潰す。

 潰した蝙蝠の残骸がビチャビチャと地面に落ちる中、エレインはオーズの腹部のモリアを冷淡な目で見下ろす。

 

「とりあえず三回は死んでくれます? じゃなきゃ兄さんに怒られてしまいますから。」

 

 まるでもう勝ったも同然と言わんばかりのエレインの言葉に、プライドの高いモリアはギリッと歯ぎしりした。そしてエレインに潰された蝙蝠の欠片を集めると漆黒の影の塊を作った。それをオーズの斬られた腕の傷口に装着すると、影の塊はズズズと形を変え、オーズの腕を作った。

 

「キシシ…、まさかお前がここまでやるとはな……、正直想定外だったぜ。だが! 俺は倒せねぇ!」

 

「倒しますよ、必ず。」

 

「フンッ、いけオーズ! ”影の剛手(シャドーズハンド)”!!」

 

「うおぉぉぉお!!」

 

 モリアの掛け声と共に、オーズは影の右手をエレインに伸ばし、握りつぶそうとする。

 

「まずいっ! 逃げろエレイン!!」

 

「いくらエレインでもあれは防げねぇ!!」

 

 先ほど防いだ拳よりも影の手の攻撃は大規模だ。さしものエレインも防ぐことをやめ、回避行動をとる。逃げるエレインにオーズの漆黒の手が迫る。

 

ザンッ!!

 

「がっ!」

 

「ちっ! 今度は何だってんだ!?」

 

 だが、その手はエレインに届くことはなかった。突如現れた何者かがオーズの影の腕を斬り落としたからだ。その者はモリアとオーズの正面に立つと、チンッと大きな剣を背中に背負う鞘に収める。全身青色で筋骨隆々の麦わら帽子を背に持つ男だ。

 

「………あなたは一体?」

 

「俺はルフィだぜ。」

 

「は?」

 

「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」

 

 自分達の船長のあまりの変わりようにエレインを始め、仲間達は驚愕する。なんでも、ルフィはここへ来る途中にモリアに影を取られた者達に会い、打倒モリアのために協力してもらったらしい。手練れの海兵や屈強な海賊といった様々な影をその身に取り込むことで、短時間だけではあるものの、驚異的な戦闘力を手にしたようだ。

 

 ともかく、多少の変化はあれどこれで麦わらの一味が全員揃った。エレインが随分時間を稼いだおかげで、ダメージが深く一時戦線離脱していたフランキーやブルックも起きて戦線に復帰している。

 

「いくぞっ!」

 

「「「おおっ!」」」

 

 オーズ、そしてモリアを倒すための麦わらの一味最後の作戦が始まった。まずロビンがハナハナの実の能力で足場を作り、それを利用してルフィがスリラーバークで一番高い塔を登っていく。

 

「待てぇ!」

 

 オーズがそれに気を取られているスキにナミが雨を降らせてオーズをびしょ濡れにする。続いてフランキーとウソップが即席で配管工事を行い、スリラーバークの冷凍庫の冷気をオーズに放射する。するとナミの雨が冷気で凍り付き、オーズは足元を固められて動けなくなる。

 

「どわっ! 凍った!」

 

「こいつら…! 何をする気だ……?」

 

 オーズとモリアが困惑する中、麦わらの一味の作戦は終わらない。今度はサンジがスリラーバークの巨大な舵の鎖をオーズ目掛けて蹴り飛ばし、それは見事オーズの首に引っ掛かる。最後にゾロとブルックの剣士コンビがオーズの腹に攻撃し、オーズが腹を引いたところで舵の鎖を巻き上げれば作戦は完了。後は仕上げを待つのみだ。オーズの上空からは塔のてっぺんから飛び降りたルフィがオーズ目掛けて急降下している。

 

 チョッパー考案のこの作戦は人体の構造を利用したものだ。人間の背骨は本来S字に曲がることで衝撃や重さを和らげる構造になっている。だが、オーズの背骨は今、麦わらの一味の作戦により真っ直ぐに伸ばされている。その状態で攻撃を受ければ衝撃の逃げ場はなくなり、オーズの背骨は砕け散るという寸法だ。

 

 上空から迫り来るルフィは空気を取り込み、風船のように膨らんだ身体をねじって、その空気を噴射して加速と回転を加えてオーズに突撃する。そしてその丸太のように太くなった腕で遂に攻撃を繰り出した。

 

「”ゴムゴムの暴風雨(ストーム)”!!」

 

ズドドドドドドドドッ!!!

 

 それはいつかの決戦で青雉に放った技だ。だが、影を取りこんだことで格段にパワーアップした今のルフィが放てばその威力はあの時の比ではない。一発一発が格段に重いパンチをオーズの頭上より何度も何度も浴びせる。もはや悲鳴をあげる間もなくオーズは背骨のみならず全身の骨をバラバラに粉砕された。

 

「ううっ……!」

 

 やがてオーズがズゥンッ、と倒れると同時に、ルフィの身体から影が抜け出ていく。パワーアップの時間切れのようだ。影が抜けたルフィはみるみる身体が小さくなり、元の姿に戻るとドサッと地面に落ちた。

 

「ぐふっ………、おのれ貴様らっ…………!!」

 

 オーズはなんとか倒したが、肝心のモリアはまだ倒れていなかった。オーズの腹部にいたモリアはオーズの肉体が盾となり、あまり攻撃を食らわなかったためだ。モリアはふらつきながらもオーズの腹部から這い出ると、自身をここまで追い込んだ麦わらの一味の面々をギロリと睨みつける。だが、麦わらの一味は微塵も怯んではいなかった。それはなぜか。

 

「っ!!」

 

「霊槍シャスティフォル第四形態__!!」

 

 その答えは麦わらの一味の背後、モリアの正面にあった。エレインが巨大な植物形態のシャスティフォルを構えていたのだ。シャスティフォルは充分な光を吸収した蕾をブワッ、と開き、発射準備はもう万端だ。

 

「”光華(サンフラワー)”!!」

 

「しまっ__!!」

 

「言ったでしょう? 倒すって。」

 

 ボウッ!!

 

 今更気づいても、もう遅かった。麦わらの一味はモリアに止めを刺すことまで計算に入れていたのだ。間もなく発射された極太の光線にモリアは為す術なく全身を呑み込まれた。光線の威力は凄まじく、モリアは一瞬で意識を刈り取られた。ブスブスと黒煙を上げるモリアの身体がやがてぐらりとよろめく。

 

「「「やったあぁぁぁあ!! 勝ったぁぁぁあ!!」」」

 

 その姿を見て、ルフィを応援するべく戦場にやってきていたモリアの被害者達が喜びの歓声を上げる。オーズは倒れ、スリラーバークの支配者モリアも戦闘不能だ。彼らはもう勝ちを確信したのだ。後は倒れたモリアを叩き起こし、力ずくで影を解放させればすべて解決する。この悪夢も終わる。ハッピーエンドだ。

 

「ぐぅぅ………! かあっ……!!」

 

___そのはずだった。

 

 エレインの攻撃で完全に落ちたはずのモリアは倒れることなく、よろめいた身体をしっかり踏ん張って立て直した。

 

「「「う、うわあぁぁ!! モリアが………!!」」」

 

「うそ………」

 

「おいおい………マジかよ。」

 

「あんだけの攻撃を受けて、まだ倒れねぇのか…。」

 

 モリアは一時期、現四皇カイドウと渡り合った程の大海賊。その執念にさすがの麦わらの一味もうんざりとした表情を隠しきれない。だが、勝負を諦めたわけではない。ルフィを始め、皆ボロボロの身体に鞭を打って戦闘態勢に入る。

 

「キシ……シシシ………! この俺が……てめぇら如きを相手に…ここまでやられるとはな………。さすがにプライドも傷ついたぜ………! ハァ………ハァ………!!」

 

 だが、瀕死の状態なのはモリアとて同じ。息も絶え絶えになりながらもモリアは鋭い眼光を失わない。まだ何か秘策があるようだ。

 

「………仕方ねぇ、ホグバックが言うにはまだ研究中らしいが………こいつを使うか…………!」

 

 モリアは懐から何かを取り出した。それは何の変哲もない注射器のようだが、中にはボコボコと泡立つ紫色の不気味な液体が入っている。

 

「麦わら………これが何か分かるか………?」

 

「………何だ………あれ?」

 

「何か…すごく気持ち悪いわ。」

 

「薬…ってわけでもないな。」

 

「…………!! ま、まさかそれはっ…………!!」

 

 モリア以外の全員がその液体に嫌悪感を覚える中、一人その正体に気づいたエレインが顔を青ざめる。その反応に満足したモリアはニヤリと笑う。

 

「こいつはなぁ、俺が七武海に加入した時に………政府からいただいた魔神族………”灰色魔神(アッシュ)”の血だ!!」

 

「!! 何ですって………!!」

 

「何か知ってるのかロビン!?」

 

「………魔神族は、過去二度起こった聖戦と呼ばれる戦で生きとし生ける者すべてを苦しめた伝説の古代種族よ。その凶暴さと邪悪さから今は封印されているはず…………それをなぜ貴方が…………!?」

 

「キシシ……簡単なことだ……。400年前、第二次聖戦が終わった直後、政府は下位魔神数匹と上位魔神一匹の身柄を拘束した………。魔神族の圧倒的な力を…我が物にしようと画策してな……キシシシ…………!!」

 

「なんてことを……」

 

「それ以来、政府は魔神の身体を研究し続けた……。そして最近になって分かったことだが………魔神の血液には、摂取した生物の身体を………より強靭にする作用がある!」

 

「「「!!」」」

 

 それを聞いて、この場にいる全員がモリアがこの後何をする気なのか分かってしまい、息を吞む。

 

「現に、表には出ていないが……政府は裏で魔神の血を取り込み……より強力な”新世代”と言われる海兵を少しずつ増やしている………。だが、それも灰色魔神(こいつ)の下位種……”赤色魔神(レッド)”の血であればの話………。灰色魔神(こいつ)の血の作用にはどんな生物も耐えられない…………」

 

 ここまで喋るとモリアはニィッ、と不気味に笑った。

 

「だが、ホグバックの仮説はこうだ……! 七武海に数えられるだけの強さっ! そして”悪魔の実の能力者”である俺ならば! 反応にどうにか耐えることができると! その力の程を今見せてやるっ!!」

 

「っ!! ダメッ!!」

 

 喋り終わったモリアは注射器を自身の腕に突き刺した。七つの大罪原作から灰色魔神(アッシュ)の恐ろしさを知っているエレインが慌てて止めようとするも、モリアはその血を自らに取り込んでしまった。

 

「っ!! ぐあぁぁぁあっっ!!!」

 

 すると間もなく、モリアは身体を急激に作り変えられる痛みにのたうち回った。ボコンッボコンッ、と身体のあちこちが盛り上がったかと思えば、やがてモリアの巨体はみるみる瘦せていく。そして肥満体から全盛期の、戦闘向きのシャープな肉体を取り戻したモリアは苦しむのを止め、ボォッ……と怪しげに輝きながらゆっくり立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…………お前はこんな景色を見ていたのか…………カイドウ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!! いけっ! シャスティフォル!!」

 

「待てエレイン!!」

 

「ダメだ!!」

 

 仲間達の制止を聞かず、エレインは完全に変化しきる前に倒そうと槍形態のシャスティフォルをモリア目掛けて飛ばした。

 

カッ!!!!

 

「キャッ!!」

 

「うわっ!!」

 

「チィッ!!」

 

 シャスティフォルがモリアの顔面に命中した瞬間、モリアは激しい光に包まれた。そのあまりの光量に全員が思わず目を覆う。やがて光が収まり、一同が最初に目にしたのは、半分から先がなくなった槍形態のシャスティフォルだった。

 

「あれは…………モリアなのか?」

 

 震えた声のウソップの疑問に、誰よりもモリアに近い位置にいるルフィが答えた。

 

「いや…………もう別物だ。」

 

 彼らの前には異形の姿となったモリアが佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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