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長かった夜が終わり、モリアとスリラーバークが見せた悪夢も終わりを告げる。一晩中戦い続けた麦わらの一味は、広場に集まって瓦礫に腰を下ろし、休息をとっていた。
「……なあ、こいつらの新しい戦闘法、身体に負担かけすぎじゃねぇか?」
そんな中、ウソップがクッション状態のシャスティフォルの上で眠るルフィとロビンの膝の上で眠るエレインを見て呟いた。
「………ええ、そうね。」
その言葉に、エレインの頭を撫でていたロビンも同意する。他の皆も同じ気持ちなのか、勝利の後だというのに少し沈んだ顔になる。
「もし。」
その重苦しい空気を断ち切るように、ある人物が声をかけてきた。戦いの前にルフィ達と出会った大怪我した年寄りだ。彼と、ローリング海賊団をはじめとしたモリアの被害者達は改めて麦わらの一味に礼を言った。最早麦わらの一味の傘下に下ると言い出しそうな程ゾロ達に惚れ込んだ彼らに、お礼の品を巻き上げようとする気満々のナミ以外はむず痒く感じる。
『そうか……』
皆が勝利に湧く中、その場にふさわしくない声音が聞こえてきた。
「! 誰だあれは!?」
その方向を向くと、モリアと同等の体格の男が瓦礫の上に腰かけ、電伝虫で誰かと話していた。真っ黒な服と手袋に包まれた、高い壁のような上半身、そして何の感情も読み取れない無機質な目。その姿を見た誰かがこう言った。
「あ……あれはまさか……! 七武海バーソロミュー・くま!」
その言葉にその場の誰もが息を呑む。今やっとの思いで倒したモリアと、軽く見積もっても同等の男が目の前にいる。そして、そんな男がこのタイミングで現れたということは……
『モリアが倒された…、この情報は世界に流すべきではない。その場の者達を消せ。』
「……了解。」
「「「っ!!」」」
つまりはそういうことだ。政府は一度、七武海の一角をルフィによって落とされている。これ以上引っ掻き回されてはたまらないという政府による、七武海の人海戦術だ。正々堂々ではないかもしれないが、この海でそんな甘い考えは意味をなさない。
「…………」
「っ!」
ドズゥンと、くまはゾロ達の前に降り立った。くまをギロリと睨みつけたゾロが、二本の刀に手をかける。
「二刀流居合”羅生門”っ!!」
強靭な脚力で前進しながらの居合斬りだ。しかし、それで斬れたのは直線状にあった大岩のみ。肝心のくまは瞬間移動して斬撃をかわし、ゾロの背後に回り込んだ。そしてその肉球付きの大きな掌を振りかぶる。
ボコッ!!
「おわっ!?」
ゾロを押しつぶさんとするその掌底を何とか転がりながら回避した。モリア戦直後で体力がないゾロはいつもより動きにキレがない。そしてくまが掌底を叩きこんだ地面には掌の肉球と同じ跡ができていた。
バーソロミュー・くまはニキュニキュの実の肉球人間。和やかなネーミングと見た目とは裏腹に、その能力はどんなものでも弾き飛ばせるという凶悪なもの。空気を弾けば空気砲を放つことができ、自分を弾けば瞬間移動も可能。どんなに強力な攻撃も、触れることさえできれば弾いて防御できる。
とても今の状態で戦うべき相手ではない。その後もゾロが必死に応戦するも、まったく敵わなかった。もちろん戦ったのはゾロだけではなく、ウソップやサンジ、そしてローリング海賊団なども立ち向かったが結果は同じだ。くまは能力の理不尽さもさることながら、肉体の耐久力も異常だった。サンジの渾身の蹴りにも動じず、逆にサンジの足がダメージを受ける始末だ。
やがてくまは休戦を申し出た。くまも名のある海賊、弱い者いじめは性に合わないのか、条件付きならこの場を見逃してやると告げた。しかし、その条件というのが「麦わらのルフィの首を差し出す」というものだった。
「「「断るっ!!」」」
それを聞いた時、その場の全員がそう言った。くまは「残念だ」と呟き、掌からポンッと肉球型の空気弾を弾き出す。
「”熊の衝撃(ウルススショック)”。」
ドズンッ!!
その空気弾は大爆発を起こし、その場の全員を飲み込んだ。
▼
魔力の使い過ぎで気を失った俺が次に目を覚ました時、すべてが終わっていた。皆から話を聞くと、あの後バーソロミュー・くまというもう一人の七武海が現れて襲ってきたらしいが、空気爆弾で辺り一帯を吹き飛ばして俺達の生死確認もせずに去っていったらしい。
とはいえ、やたら元気なルフィと一人だけ重傷なゾロを見れば、ゾロが身を挺して俺達を守ってくれたのだと分かる。実際原作でもそうだった。
ゾロは麦わらの一味を守るために自分の首を差し出そうとまでしてくれた。そのゾロの覚悟を見てくまが出した条件はルフィがモリアとの戦いで受けたダメージを肩代わりすること。自身も瀕死であるにもかかわらずそれを受けた結果、ゾロはモリア戦から一日たった今でも目覚めない重体になってしまった。
とても心配だがそのおかげで俺は今生きているのだ。ここは素直に感謝しておくことにする。
そして、今俺はスリラーバークの中庭にいるローリング海賊団のために軽食を運んでいる。彼らは何年ぶりかの太陽が嬉しいあまり中庭に寝転んで日光浴しているのだ。ジャムやパンを包んだ風呂敷を第二形態のシャスティフォルに持たせてふよふよと進む。
「ん? あれは…」
瓦礫まみれの中庭に着こうかという時、俺は近くにゾンビの身体が山積みにされているのを発見した。屋敷で俺達を襲ってきた将軍(ジェネラル)ゾンビ達だ。強靭だった彼らの身体は落石事故にでもあったかのようにぐちゃぐちゃに潰れていた。もしかしたら大暴れするオーズとゾロ達の戦いに巻き込まれていたのかもしれない。
「………スレイダー」
その中には俺を苦しめた”暁闇の咆哮(ドーン・ロアー)”の姿もあった。敵だったとはいえ、大好きな七つの大罪のキャラがこうも無残な姿になっているのを見るのは胸が痛む。
コロンッ
「ん?」
一ファンとして彼らだけでも埋葬してあげようと、スレイダーの身体を魔力で浮かせると彼のポケットから球状のものが三つほど落ちた。拾ってみるとそれはピンポン玉程度の大きさの深緑色の球だった。表面には数字の4のような、巾着袋のような不思議な文字が刻まれている。
「! もしかして………!」
この球に心当たりがあった俺はその球の一つを地面に勢いよく叩きつけてみた。すると丁度人一人を包み込む程度の緑色の膜が展開され、それに包み込まれた俺はみるみるうちに傷が回復していき、身体中に巻いてあった包帯やガーゼがはらりと落ちた。モリア戦のダメージだけでなく、これまでの冒険で蓄積されてきたダメージも綺麗さっぱりなくなり、身体が驚くほど軽くなる。
「間違いない………! これはっ!」
自分の予想に確信が持てた俺は、一目散にゾロの下へ飛んでいった。ゾロはスリラーバークの一室でチョッパーが付きっきりで看病している。部屋に入ると一旦サニー号に戻っていたルフィやフランキー、サンジ達も戻ってきており、テーブルに料理を並べていた。これから宴でも始めるのだろう。いつもなら手伝う所だが、俺はローリング海賊団に持ってきた軽食を押し付けると眠るゾロの下へ直行した。
「チョッパーさん! 少し失礼しますよっ!」
「エレインっ! お前なんで怪我治ってんだ!?」
「後で説明しますからっ!」
俺の身体が新品になっていることに飛びのいて驚くチョッパーを押しのけて、俺はゾロ目掛けて球を投げた。
「”超回復術”っ!」
ギュウンッ!!
「………ん? もう朝か?」
「「「え…………? えええぇぇぇぇっ!!?」」」
膜が展開されてさっきの俺と同じようにゾロの傷を治し、ゾロが意識を取り戻すと皆が目玉を飛び出させて驚いた。俺の予想通り、この球は”超回復術”が込められた”呪言の玉”だったようだ。
呪言の玉は七つの大罪原作において大魔術師マーリンが作り上げた、魔術をストックすることができるアイテムだ。どんなに高難度の魔術であってもそれがストックされた呪言の玉さえあれば、例え魔術師でなくても任意のタイミングで使用できる。
そして超回復術は範囲内の生物を全快させることができる魔術である。その回復力は絶大で、腕が取れていようが胸を貫かれていようが腐食に侵されていようが生きてさえいれば完治させてくれる。
だが、スレイダーが持っていた呪言の玉の超回復術は、俺が知っているものよりその範囲が狭い。作中では巨人族さえ包み込む範囲で膜を展開し、範囲内であれば何人でも治療してくれた。しかし、俺が使ったものは範囲的にも魔力量的にも一人を治すのが限界のようだった。
もしかしたらスレイダーが生前持っていたであろうこの玉が、長い年月の経過で劣化していたのかもしれない。ケータイだって何もしなくてもバッテリーを消費する。スレイダーが生きていた時代が年単位で昔だったらそういった可能性は充分考えられる。
それはともかく、重体だったゾロを完治させた玉について皆に問い詰められたので俺が知っている知識を話した。すると皆は凄いものがあったものだと感心した様子で俺が持つ呪言の玉を見つめた。特にチョッパーは、どんな病気も治せる医者を目指していることもあり、本気で魔術を学ぶことを考えている様子だった。
ちなみに、呪言の玉が一つ余ったのでローリング海賊団に譲ろうとしたのだが断られた。船長のローラ曰く、「私達を解放してくれた恩人からこれ以上もらうわけにはいかないわ。あんた達がいざって時に使って。」だそうだ。なんて良い海賊達だ。お言葉に甘えて俺は余った呪言の玉を懐にしまい込んだ。
「あっ、そういえばエレイン。そのリボンどうしたの?」
ゾロも無事治り、ほっとして宴の準備を手伝い始めた俺の頭を指差してナミがそう尋ねた。俺はキングからの贈り物のリボンを某常闇の人食い妖怪のように側頭部に結んでいた。俺は頭のリボンを撫で、はにかみながら答えた。
「ああこれですか? これは兄さんからもらったリボンです。せっかくなので付けてみました。」
「………そう。とてもよく似合っているわ。」
そう言ってロビンが俺の頭を撫でてくれた。キングの形見のリボンを褒められるといつも以上に嬉しくなる。思わず笑みをこぼすことはもちろん、身体が小躍りしそうなくらいだ。きっと『エレイン』も喜んでいるのだろう。
「………よし! これで最後、配膳完了です!」
「たんまり作ったぞ!! 好きなだけ食え!!」
「うお~!! 待ってましたぁ!!」
「宴だぁ!!」
テーブルにずらりと並べられたサンジの豪華フルコース。皆はそれに我先にと食らいついた。そしてルフィが高々と樽ジョッキを掲げたのを合図に、毎度恒例、戦後の宴が始まった。
▼
ーールフィ達がモリアを倒して三日後、決戦地ブリタニアーー
封印から解放された十戒の面々は、ブリタニアの中心部で待機していた。ブリタニアは人が全く住んでいない分生息している動物が多いため、食べるものには困らない。
今は夜であり、辺りはどっぷりと暗くなっている。魔神族にとっては最高の時間帯に、十戒は焚火を囲っていた。普段の彼らならまずそんなことはしないが、如何せん暇すぎるのだ。海軍に付けられた妙な首輪のせいで魔力を使えず、待機を命じられた以上行くところも他にない。なぜゼルドリスが海軍に従ったか、それを問い詰めても本人は「近い内にわかる」の一点張りだ。
「………ねぇゼルドリス。おかしいと思わない?」
パチパチと炎が燃える様子をぼんやり眺めていたメラスキュラがそう尋ねた。ゼルドリスは足元に落ちていた木の枝を焚火に放り込みながら答える。
「ああ、この地に蓄えられていた魔力が尽きかけている。」
「確か以前復活した時も同じだったわね。」
「ああ、だが、今はその比ではない。豊潤だった頃に比べ5分の1もないだろう。」
ゼルドリスは話しながら自分の手をぐっぐっと握りしめた。
彼ら十戒は第二次聖戦と呼ばれる時代にもこうして太古からの封印から目覚めた。女神の封印は魔神族である彼らから魔力を根こそぎ奪い取り、抵抗力を奪った。
そして今、同等の封印から解き放たれた彼らは前回と同じように魔力を欠乏していた。時間が経てば大地からの循環によって回復していくが、今の世界は海にも大地にもほとんど魔力が蓄えられていなかった。これでは全開まで魔力を回復するのに相当の時間を費やしてしまう。
ゼルドリスとメラスキュラの会話を聞いていたタコ触手の赤髪の少年_グロキシニアは呟いた。
「きっともうこの世界で魔力を扱う者はほとんどいないからッスね。」
自身の身体を覆い隠すタコ足に身を預け、眠そうにあくびをしながら語る。
「魔力を扱う者がいなければ、循環が止まる。そうなればそれまで海や大地に蓄えられていた魔力は住まう生き物達に移り、彼らの子孫達に脈々と受け継がれていくッス。」
自然の理ってやつッスよ、とグロキシニアは締めくくった。時代の流れとは何とも虚しいものだ。かつてはその魔力をめぐって種族間の大戦が起き、多くの犠牲者を出したというのに。
「………ん。」
そんな会話をしていると、今まで木の幹に寄りかかって寝そべっていた銀髪の男_エスタロッサと緑色の肌の巨人_ドロールが目をパチリと開いた。誰かが近寄ってくる気配を感じたからだ。だが特に彼らは戦闘態勢に入ったりしない。その何者かが、彼らと同じ闇の魔力を持っていることから、少なくとも敵ではないと判断した。
「………待たせてすまなかったな。我が同胞達よ。」
焚火の光が現れたその人物を照らす。”正義”のマントを羽織った厳格な顔の海兵、ドーベルマンの顔を。しかし彼の様子は以前ガープらと行動を共にしていた時と違っていた。海兵とは到底思えぬ邪気を放ち、その瞳はドロリとした闇に包まれ、顔には魔神族特有の紋章が浮かんでいる。
「お前はあの時の人間……いえ、でもこの気配は。ゼルドリス、貴方もしかして_」
「ああ…」
ゼルドリスが頑なに「いずれ分かる」と言っていた意味、それがようやくメラスキュラにも分かった。目の前の男はドーベルマンであってドーベルマンではない。彼の中にある人物が憑依し、操っている。その者の名はフラウドリン。不在の”無欲”の代理として十戒の末席に数えられる男だ。
女神の封印から逃れることができた彼は400年前の聖戦の時もこうして十戒の面々を解き放ったことがある。人間は過ちを繰り返した。またもこの男の手で、しかも前回と同じような方法で魔神族の復活を許してしまったのだ。
「さてフラウドリン。俺達はお前の指示に従った。『ここは海軍に従ってくれ』というな。何故あのようなことを言った?」
あの時、ガランがガープと、ゼルドリスがフラウドリンと拳と剣を交えた時、フラウドリンはゼルドリスにそう進言していた。一時的に海軍の傘下に加わってくれと。その時に海軍に潜り込んでいるフラウドリンの存在に気づいたゼルドリスはその進言に従ったが、何故そんな消極的なことを言ったのか、ゼルドリスは疑問だった。いくら魔力を封じられているとはいえ、十戒全員が揃ったあの場なら、人間の雑兵集団など充分制圧できたはずだった。
「………私はここ10年程、この男の身体を借りて海軍に身を置いた。お前達を復活させるためにな。その過程で様々な情報を集めていく内に、人間は以前のように造作もない存在ではないと判断した。」
フラウドリンはゼルドリス達に今の世界情勢を語った。世は大海賊時代、ゴールド・ロジャーという一人の男がきっかけで始まったこの乱世では様々な場所で人間同士の争いが頻発し、それが人間全体の闘級を押し上げる結果となった。王下七武海、四皇、革命軍、そして海軍にも魔神族に対抗でき得る人間などごろごろいる。
「人間がそこまで……」
「……信じ難いな」
「こんな世だ。海軍において基本的に戦闘力が重視される。そこに身を置いた私の地位が中将だということが証拠になるかと思うが……ガラン。」
「ん? なんじゃ?」
フラウドリンはこの島で獲れた大きな牛の化け物の肉を食らっていたガランに声をかけた。
「あんたとやり合った男も私と同じ中将、今は老いたが”海軍の英雄”と称される程の実力者だ。あんたから見て奴の実力はどうだった?」
「カーハッハッハッ! どうもこうもないわ! 多少やるようじゃが所詮人間など脆弱なハエも同然! あの程度で英雄などと持て囃されるようでは人間の限界など高が知れておるわっ! ………と言いたいところじゃが」
それまでいつものように自信満々にご機嫌に話していたガランが急に俯いた。ガランは実際にガープと相まみえたハルバードを握りしめて噛みしめるように話す。
「あの男の力、確かに儂らに届き得るものじゃった。あの拳から伝わってくる力は計り知れん。もしあの男が全盛期であったなら、魔力を使ったとしても儂は勝てんじゃろう。」
儂も年を取ったな、と寂しそうに、そして武人としてどこか嬉しそうに語るガランを見てゼルドリス達はフラウドリンの話が真実であることを悟る。そうでもなければ自信過剰なガランが仮の話とは言え自身の敗北を、それも人間に認めるなどありえないからだ。
「……なるほど、状況は理解した。だからお前は」
「あぁ、あの場で海軍と事を構えるのは得策ではない。今は一時的にでも海軍の指示に従い、チャンスを待つべきだ。」
「………で? そのチャンスっていつ来るんだ?」
それまで会話を聞いていたエスタロッサがフラウドリンに尋ねた。フラウドリンはフッと笑って答える。
「近々海軍は”火拳のエース”という海賊の公開処刑を予定している。それも海軍の本拠地マリンフォードでな。こいつは世界最強の海賊、白ひげ海賊団の二番隊隊長。処刑が行われれば白ひげ海賊団との交戦が予想される。」
チャンスはそこに生まれる、とフラウドリンは言ってこの場を去った。中将という立場ある自分が海軍に付け入るスキを作るというのだ。それまでゼルドリス達はこの島で休息を取りながら待機、女神の封印から他の仲間が解き放たれるのを待つ。そしてすべての準備が整った時、フラウドリンが作った綻びを押し開き、この地を、この海を魔神族の領土とすべく動き始める。
人間は、政府は気づいていなかった。魔神族復活から頂上戦争まで、正義のため自分達の意思で実行したと錯覚している一連の出来事は、すべてフラウドリンという一介の魔神の手のひらの上で踊らされていただけだということに。
嵐の前の静けさというべきか、政府が長い年月をかけて作ってきた世界が壊れる混沌への序章は静かに始まっていた。