とある妖精の航海録   作:グランド・オブ・ミル

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空島編5・妖精の空島旅行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穏やかな海、空は大きな雲がたくさんあるものの快晴と言っても差し支えない晴れ、風も良好、絶好の航海日和だ。これで上空にカモメが2、3羽飛んでいればなおいい。

青い広大な海を3隻の海賊船が進む。マシラ、ショウジョウの猿山連合軍の船と我らがゴーイング・メリー号だ。メリー号はクリケット達によって対突き上げる海流(ノックアップストリーム)用の"フライングモデル"へと改良されている。両サイドには上手いバランスで白い翼が取りつけられ、メリー号の船首の羊にはトサカがつけられて___よく見なくたってモデルは鶏だ。これから空へ飛び立とうというのに飛べない鳥類をオマージュするとは………クリケットは俺達に空から落ちてこいとでも言いたいのだろうか。

 

「ジョ~~~…」

 

「あなたも不安ですか?」

 

「ジョ!ジョ!」

 

そうそう、言い忘れたが今俺の頭には現在進行形でサウスバードが止まっている。何か言いたげな鳴き声を出したので、なんとなく予想してみると当たりらしい。サウスバードは俺の頭の上でバサバサと翼を動かして頷いた。こうやって俺とやりとりしながらも頭はしっかりと俺達が進むべき南を向いてくれている。

ルフィを待っている間、俺が乱暴な捕まえ方をしたせいで拗ねてしまった彼をあやしている間になつかれたのだ。動物には愛情だよと昔おばあちゃんが教えてくれたがまったくもってその通りだ。バーソロミュー・くま風に言えば「的を射ている」と言ったところか。

 

ルフィといえば彼はまたやらかしてくれた。クリケットのためにべラミー討伐へと向かったルフィ。俺は昼間何があったのかナミに聞いてみてポンッと手をついた。

べラミー。そういえばそんな奴がいた。ルフィとゴムゴムと類似能力の"バネバネの実"の能力者で、ハイエナと呼ばれる"チンピラ"という言葉がこの上なく似合う、ドフラミンゴに憧れを持つ男だ。空島編では冒頭からルフィに突っかかるいわば中ボス的な奴だ。

このべラミーを倒すべく町へと向かったルフィだが、帰りが遅い。ルフィのことだからやられるわけはないのだが、とにかく遅かった。出発の時間を45分もオーバーしやがったのだ、奴は。

ようやく黄金を取り戻して帰って来た奴の手には大きな二本角と黄土色の尻を持つ黒い昆虫___ヘラクレスが握られていた。しかも目が白いアルビノ個体である。時間がないと言っているのに余計なことをしていた奴をパチンと平手打ちした俺は悪くないと思う。奴に打撃は通じないし、エレインボディの非力なビンタじゃなんの意味もないだろうしな。

 

「南西より"夜"が!!"積帝雲"です!!」

 

ショウジョウの船の船員の一人が双眼鏡を覗いて叫んだ。南西を見ると遠くの空がどっぷりと暗くなっている。

マシラの話では積帝雲が現れるまで後5分程度はあるはず。どうやら予想よりも早く現れたようだ。現代の天気予報ですら外れることのある天候の予想、まだ人工衛星もないであろうワンピースの世界の予報にはやはり限度がある。

 

マシラ達の指示の元、俺達は急いで準備をした。爆発でやられないよう帆はしっかりと畳み、サウスバードも飛ばされないように船にしっかり繋いでおく。

その時、突然ガクンッと船が揺れた。気がつくと周りの海が大渦となっていた。突き上げる海流(ノックアップストリーム)はまず、巨大な大渦から始まるらしい。

一匹の海王類が運悪く渦に巻き込まれてしまった。俺達とは比べ物にならない程大きく、屈強な海王類が為すすべもなく渦に飲み込まれる。

 

「……すごい。」

 

改めて自然の力を再確認した。これ程の自然災害を目にすればそれくらいしか出てこない。

やがてメリー号は渦の中心へ到達した。飲み込まれると身構えたところ、大渦はさっきまでの猛威が嘘のように消えた。しかし、次の瞬間___

 

ドッパァァン!と、まるで世界を揺るがすような轟音を立てて海が吹き飛んだ。吹き飛んだ海は天を貫くように高い水柱を生み出す。

 

「すっげ~~!!船が垂直に走ってるぞ~~!!」

 

「わぁ~~!俺空飛んでる!!」

 

「エレイン!急いで帆を張って!!このままだと弾き飛ばされちゃう!!」

 

「はい!!」

 

マストにしがみついて指示を出すナミの声で俺は急いで帆を張った。全員が突き上げる海流(ノックアップストリーム)で吹き飛ばされないよう船にしがみつくか船室に入るかしている今、メリー号を安全に操作できるのは空を飛べる俺しかいない。

ナミの言うとおり帆を張るとメリー号は上昇気流を受けてさらに加速した。突き上げる海流(ノックアップストリーム)の凄まじい海流を受けるため、マストはみしみしと音を立てている。だが、ナミ航海士によればこれでいいらしい。さらにこの状態から、船室のチョッパーが舵を取り舵__つまり左に切るとメリー号は海流に絶妙に乗り、さらにスピードをあげ、海流から浮きなんと空を飛んだ。マストと両サイドの翼が上手く風を受けているようだ。メリー号はバランスを崩すことなく飛行し続ける。

 

さすがはナミだ。海と風が相手なら彼女に敵う者はいないだろう。

 

俺達はもうスピードで積帝雲に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば俺達は空島へ辿り着けた。俺は原作知識があるから、よっぽどのイレギュラーがなければほぼ辿り着けることは知っていたが、やはりあれほど刺激的な旅はドキドキするものだ。

俺達が突き上げる海流(ノックアップストリーム)で辿り着いたのは積帝雲の"中層"に当たる場所だった。そこでは謎の仮面男に襲われ、"空の騎士"を名乗る老人に助けてもらったりした。

そんなこんなあり、さらに上へ行く方法を模索しているとはるか上へ伸びる雲の滝を見つけた。その滝の前には梅干しのような顔をしたおばあちゃんの天使がいて、そのおばあちゃんに「入っていいよ」と言われたので俺達は「"神の国"スカイピア」へと入国した。

 

一気に説明すると何がなんだか分からないだろうが、俺だって分からない。なにせトントン拍子で話が進んでいくのだ。いちいち整理している暇がない。

 

「ひゃっほ~~!!空島だぁ~~!!」

 

「おお!!この島地面がフカフカすんぞ~~!!」

 

ルフィ達はまるで天国のような空島にはしゃぎまくっている。よく見れば普段は保護者のような雰囲気があるサンジやナミでさえルフィ達に混じって楽しそうだ。

 

「ほら、あなたも遊んできなさい。」

 

「ジョ~~~♪」

 

俺はそんなルフィ達を眺めながらサウスバードを逃がす。サウスバードは嬉しそうに空島の彼方へと飛び立っていった。

 

「…………」

 

俺はぐっぐっと手を握ってみる。その次はメリー号の船首を撫で、軽く自分のほっぺたをつねってみた。痛い。夢じゃない。俺はちゃんとここに存在していて、目の前には本物の空島が広がっている。俺はそのことに安心感を覚えた。時々思うのだ。実はこれは俺が見ている夢で、現実の俺は昏睡状態で病院のベッドにでも横たわってるんじゃないかと。だから時々こうやって自分の存在を確かめている。

それと同時にわくわくもした。前世では紙の上、または画面の上だけの存在だったワンピースの冒険を俺は体験することができている。それはとても光栄なことで、とても素晴らしいことなのだと感じられた。

俺はメリー号の船首に体育座りで座り込んだ。普段は特等席だと豪語して座らせてくれないルフィも今は遠くで遊んでいる。今なら座り放題だ。

 

「楽しそうね。あの子達。」

 

「…そうですね。空島…本当に素敵な場所です。」

 

俺の後ろにはいつの間にかロビンが立っていた。ロビンは俺と同じようにルフィ達を眺めると、どこか遠い目をした。

 

「……航海や上陸が冒険だなんて……考えたこともなかった。」

 

「……………」

 

ルフィやゾロが聞いても、おそらく何も分からないであろうロビンの言葉。しかし、原作知識のある俺には分かってしまう。ロビンがどんなに暗い道を生きてきたのかを。

麦わらの一味は皆共通して何かしら暗い過去を背負っている。ロビンだけに限らず、俺はそれを原作知識なんてルール違反で一方的に知っている。本来なら俺はいつかルフィ達に打ち明けるべきなのだろう。「私は実は転生者で、あなた達はある人物が生み出した創作の登場人物で、私はあなた達のことを知っています」と。だが、そんな事言えるわけがない。信じてもらえるわけがないし、信じてもらえたとしても一味の雰囲気を悪くするだけだ。

 

あぁ!くそ!いっそ俺が無責任な奴だったらこんなこと気にしないで済んだのに!小心者で慎重派なせいでこういうことは無駄に考えてしまう。

 

俺はメリー号の船首からふわりと浮いてロビンの手を引いた。

 

「エレイン?」

 

今俺ができることはこれくらいだ。

 

「ほら!ロビンさんも一緒に行きましょう!」

 

「あっ!ちょっと!」

 

俺はロビンの手を引いたままメリー号から飛び出す。俺がロビンを手を引いて空を飛んでいるため、端から見れば金髪の幼女と黒髪の美女が雲の海の上を手を繋いで飛ぶ幻想的な光景になることだろう。

俺はロビンをふわりと雲の砂浜に降ろし、後ろに手を組んで精一杯微笑んでみせた。

 

「題名をつけるなら『天国に降り立つ女神』です。いかがですか?」

 

「……ふふ、素敵だわ。オークションにでも出したら大荒れになるわね。」

 

一瞬ポカンとしたロビンだが、すぐに俺の冗談を読み取って乗ってくれた。その表情はとても楽しそうだ。よし!赤面物のギャグをやったかいがあったというものだ。ギャグとして成立したかは別として。

ロビンは原作通りなら、この後のエニエスロビー編でルフィ達に助けられ、真の意味で麦わらの一味になる。当然その戦いには俺も参加する予定だ。戦力になるかどうかは別として、ロビンの事情を知ってしまっている以上知らんぷりはできない。恐怖がないわけではないが、それでもロビンのために戦おうと思えているあたり、俺も麦わらの一味に染められてしまったようだ。

 

「お~い!エレイン!ロビン!こっち来てみろよ!!」

 

「は~い!今行きますよ~!!」

 

遠くでヤシの木のような木に登ったルフィが俺達を呼んだので、振り返ってヒュンと急いで向かう。

船長のお呼びだ。雑用係として一番に向かわなくては!

そんな自分の中のどうでもいい心がけに従って俺はルフィの元へ飛んだ。

 

「………ありがとう。」

 

後ろでロビンがそう小さく呟いていたことに俺は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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