生まれ変わったら忍者の末裔になっていた件について 作:砂糖露草
相変わらず亀更新&亀展開ですが
楽しんでいただけたら幸いです
未だ無垢なる心身で
本日も快晴、絶好の散歩日和。
晩夏を過ぎた余韻が程よく気温を高くして、過ごしやすい一日にしてくれるだろう。
とはいえ、これからそう日が立たないうちに冷え込んでくると考えれば、そろそろ少しずつ越冬の準備をしなければならない。
すべてが全て、自給自足で成り立っているわけじゃないが、どちらにせよ山奥のせいで一度吹雪いてしまえばしばらく里の外との接点が途絶える。
念のためにどの家でも雪解けまでの備えをもつことが、このさとの常識であった。
各言う私ー天馬も居候になっているせんずい宅の準備の手伝いをしているわけで。
「せんずいー、これだけあれば薪は足りるか?」
「ああ、だけど念のためもう少し用意しておこうか」
「はいよ!」
元気よく返事をして、刈り取った大きめな材木を切り株のうえに置く。
そこに手にもった鉈を思い切り降り下ろした。
狂いなく材木に命中して小気味のいい音と共にまっぷたつとなった。
うん、気分爽快。
しかし隣ではせんずいが一言もの申したいといった顔で見ている。
「その危なっかしい割り方、やめないか?ほら、こうした方が楽だし。」
そういいつつせんずいは木が鉈にくっつくよう割れ目をいれ、それを切り株の上に降り下ろす。
パカッと軽い音ともにきれいに割れた。
確かにそっちの方が楽だし安全ではあるけど-
「こっちの方がかっこいいし、回りに気をつければ危なくないよ?」
「そんな理由で思い切り振り被ってたのか…」
「できればこう頭上にトスしてからさ、ズババァって切ってみたいよね。」
「おい、会話してくれ。…全く将来鉈使いにでもなるつもりか?君は。」
眉を軽く吊り上げ不機嫌になったせんずいを尻目に少し思索にふけってみる。
鉈使い…うむ、語呂はそこまで悪くないのだけどどうもあまり強そうなイメージがわかない。せめてもう少しレパートリーを増やさないとどうもインパクトが足りないように思えた。
短刀とかナイフとかそれくらいの括りに。
しかし、武器…武器ねぇ。
「鉈使いになるかどうかはともかく、武術としての武器を使うこと自体考えたことなかったなぁ。」
「ん、そうなのか。今の感じだとてっきり憧れでもあるのかと思った。」
「いや、あるにはあるけどさ。危ないジャン色々と」
「君の忌避感はどこか可笑しい。」
今度は呆れてきっぱりと言われてしまった。
当人としてはそこまで言われる筋合いはないと反論しかけたところで、一つ思い至ったことがある。
そういえば、この里の常識は一般の常識と著しいズレがあったな。と
結局
「あ、アハハ。そうかもねぇ」
と苦笑いを溢すのみにとどまり、お茶を濁した。
この里に生まれてから数えて13年が経とうとしていた。
◆
蒔割りが終わりその後のせんずいの父に課せられた修行をこなすと、そのころには夕陽が沈みかけていた。
いつも通りの時間、いつも通り夕餉をいただきその後は自由行動となる。
そろそろ自己管理も問題ないだろう。とお言葉をいただき、夜間の外出も大っぴらにできるようになったのついこの間の出来事だ。…もちろん節度ある行動を遵守しなければならないが。
こそこそとではなく面と向かってせんずいと親父さんに出かけてくるとのたまいい外へと出る。
親父さんはもちろんのこと、せんずいもこのころには詮索することがなくなった。馬の耳に念仏だと理解したのか、いつか話してくれるものだと信じてくれているのかはわからないが。
で、あるが。
せんずい宅から外に出るや否やビビッと第六感に感あり。
姿こそ見せないが明らかに誰かがこちらの様子をうかがっている。
どこにいるかを気取らせないのは流石だが、存在を知られて時点で奴の敗北は決まったも同然。
今更実力行使をすることはないだろうし、このまま気づかないふりをしながら歩き出す。
目的地へと向かう道、とは全く別方向へあっちへ行ったりこっちへいったり。
寄り道なんて目じゃないほどあちこちを見て回っていく。
それこそ思うがまま自由奔放に動くだけ、こんなこと、だれかと動くときにやっていたら息を切らしたお供から確実に大顰蹙を買うだろう。
要はそれが狙いなわけで、ほら割と近くから乱れた息を整える呼吸音が…。
「まだまだ甘いなぁ、考信正道。」
「「ゲェ、天馬(さん)!?」」
「天馬さんだ、でこすけやろう」
「だれかでこ…ぎゃぁぁぁあ!?」
「こうしーん!」
発信源を辿れば一心同体とでもいうかのように、正道考信ペアがいた。この分なら暗鶚の比翼連理と言われる日が近いかもしれない。むしろ私が言いふらす。
というか
生意気な後輩にお決まりの
相棒の苦しむ姿をみて叫ぶ正道、しかし青の相棒にも非があるので止めることはしない。叫ぶのが単にルーチンワークになってしまっただけかもしれない。
さて、ここまでくればあとはもうお決まりの展開というものがある。
そう、私のもう一人の幼馴染、
彼女は、まるでこうなることを予期していたかのような速さで姿を現し、鋭い手刀をデスクローしている腕に仕掛ようとする。
もちろん、こんなバカげたことで痛い思いをするのは御免だ。考信からすぐさま手を引き手刀を回避、ついでに後ろに跳んで距離をとった。
しずはは避けられることをあらかじめわかっていたようで、あまり動じた様子はなくそれでも気持ち口惜しそうだ。
「あーもう。なんで天馬はそうやって意地悪バッカするのかな!」
「いじわるじゃあない、弄ってるだけだ。」
「似たようなものよ!」
全く以ての正論を半ば興奮気味に叫ぶしずは。お約束というものがあるのならこの後私は彼女に手痛く〆られるところだろうが、あえて不敵に笑って見せる。
その笑みこそが、わずかな警戒を、一瞬の隙を生むのだ。
「それに、今回は別に目的があったからな。」
「…へ?」
「お前が釣れた。それだけで戦果は十分だ」
「-まさか!その行為は囮だったというの…!?」
「くくく、その通りだよしずは。お陰で労せずして君を見つけ出せた。全てがすべて、俺の思い通りなのさ!」
「くっ、卑怯もの!」
「フゥーハハハ!負け犬の遠吠えなんぞ聞こえんなぁ!」
悔しそうにほぞを噛むしずは、その前で高らかに笑い声をあげる私。
端からみればわたしが悪役のようだった、ストーカー擬きの被害を開けてるのは私なのに。
とか言いつつ実は結構楽しんでるけどね!
ついでに今更ではあるが、しずはが後をつけてきたことにももちろん気づいていた。強がりでも見栄はりでもないよ?単純な経験則だもの
「でも!まだ勝利宣言するのは早いよ、天馬!」
「…ほう?」
それでも彼女は諦めを知らない声音で宣言した。
あまりに威勢がいいのでつい余裕の笑みで応える。
いや、実際に彼女の言う通りである。
(私にとって)事態は劇的に好転したというわけではない、なぜなら彼女との勝率を統計学的に見ればはるかに下回っているから。
修行中の組手は言わずもがな、タイマンステゴロの喧嘩でもまともに勝ったためしがない。
唯一遊びのかくれんぼや鬼ごっこなんかではようやくイーブンにまで持ち込んだが、なかなかにひどい戦績である。なおせんずいともだいたいこんな感じだ。泣きそう。
ならばなぜ、此処まで余裕を持っているのか。
それは-
「しずは、お前は少し搦め手と言うものを覚えた方がいい」
「…まさか!?」
「そうれ!」
言葉を発すると共に思い切り真下の大地を踏み抜く。
その行為を警戒してしずはは体をこわばらせた。
-五秒経過、なにも起きない。
-十秒経過、森のさざめきのみが支配していた。
「-あれ?」
その声は一体だれのものだったのだろうか。私か、それともしずはか。
それはともかくとして、次に口を開いたのはしずはの方だった。
「ふ、ふふふふ…なんでかわからないけど罠は不発だったようねてんま!」
「クッ何故だ…!あれほど念入りに準備したというのに!」
作動する気配を見せない罠の数々に、思わず冷や汗がタラリと落ちる。これでは最終兵器幼馴染(少女)を止める手立てがない。
彼女はその様子を見てにやり、と笑みを溢した。
アレはそう、勝利を確信したものの笑みだ。
「今度こそ年貢の納め時ってやつだね。」
そう言いながらしずははじりじりと距離を詰めてくる。
このままでは私に遠くない未来捕まってしまうだろう。
「だが断る!」
「諦めも肝心だよ?」
「それでも俺は、退かぬ媚びぬ、顧みぬぅ!」
「そんな戯事言ってられるのも今のうちだよ!さぁ…」
しびれを切らしたしずはは、怪しげな笑みを浮かべてじりじりと詰め寄ってくる。
それに合わせて、私も調整をしながら後退をを始めた。
だがそれも、逃げ場をなくすように立ち回られて長くは続かない。
そう、此処まですべて計算通りだった。
「天馬覚悟ぉ!今度こそ洗いざらいはいてもらうんだから!」
効果音に表すなら、ガバァッといったところか。
勢いよくこちらを制圧せんと躍りかかるしずは、さながら獲物を前にした猛禽類を思わせる。
遊びの延長と言うこともあってか、組手のときよりも大袈裟で隙の多い一手。
しかしそれを紙一重で避ければ容赦ない追撃にさらされることは自明の理、なればこそ私がとる一手は-。
しずはのことをガン無視してその場から全力で逃げる、だ。
そんなことすれば目の前の彼女は黙ってないわけで。
「あ、こら私を無視するな!」
それを視認するや否や彼女も呼び止めようとしながら、なおかつスピードをあげて追いすがろうとする。
もちろんそんな諫言に付き合うほど暇ではないから振り返りすらしないんだけど。
まぁでも、最後に捨て台詞と忠告のひとつや二つくらいはしてもいいかもしれない。
「悪いが俺を捕まるわけにはいかないんでね!ー」
「待ちなさい!いいえ、直ぐに追い付いてー」
彼女の話半ばでまるでなにかに遮られたかのようにプツリと途切れた。
やはり振り替えることはしなかったが、それでも自分の真後ろの状況は鮮明に予測できる。
なぜならそうなるように仕向けたのだから。
さて彼女のみに何が起こったのか-
「足元注意だぞ、しずはァ!…て聞こえてないか。聞かせるきもなかったけど」
そう、落とし穴である。
私の足元に設置してあった少し頑丈に作っていたそれを、先ほどの踏み抜きで絶妙な強度まで下げ彼女が思い切り踏み抜いたときに発動するよう仕向けたのだ。
たいしずは用として穴も念入りに深く掘り下げてあるため普通の人ならけがするかもしれないが、彼女なら大丈夫だろう。きっと
逆に颯爽と罠から抜け出されでもしたら困るので、この間に先を急がせてもらうことにしよう。
◆
そして、一寸した
するとそこには見慣れた全身忍者装束の天狗仮面が。
言わずもがな、このMr.空手(仮)とともに夜の秘密特訓をするために私は此処まで来ていたのだ。
先ほどのしずはの件も、ひとえにこの特訓を隠すためにまいてきたにすぎない。やりすぎ?あれぐらいは遊びの範疇です、ええ。
『貴方ですか。今回も彼らの相手をしてきたのですか?」
「まぁね。アイツらもなかなかしつこいし、それになんだかんだで楽しいから。」
『そう、まぁそれはいいのです。では、始めましょうか。」
「よぅし、今度こそ一本取ってやんよ!」
そうして始まる組手乱取り多めの秘密特訓。
いやまぁ、こちらもかったためしがないし本当に強くなっているのか疑わしいんだけどね。
しかしこのまま負けっぱなしも男が廃るとほぼ毎晩通い詰めているのだ。
まずは生きのいい一発を奴にお見舞いすることを目標に。
いつかはその化けの皮(天狗面)をはいでやると意気込むのだった。
しかして今宵の戦績は
-技のキレは歳を重ねるごとに増していると自負しているのに、その柔らかい体捌きでまともに通らない。
そして綺麗な回し受け、からのぉ細身の体のどこにあるのかと言うパワーをふんだんに使った強烈なボディー!
それを食らった私こと天馬は見事シッキン!
ショッギョムッジョ。今宵も黒星を一つ重ねていった。-
『そういえばあなたももう今年で13になるのですね」
「え?あ、まぁそうだけど」
組手の合間の休憩時間、唐突な話題に曖昧な空返事を返す。
こうして、休憩時間になんの前触れもなく話しかけられそれに応じると言うことはよくあることだ。
二人きりの状態でただ沈黙しているというのも、いささか気まずいし何より自分も奴も会話を楽しんでいる節がある。
だからいつものように楽しい(?)会話に花を咲かせようと疲れた体を鞭うちながら奴のほうに顔を向けた。
しかし、どう見ても世間話をするような雰囲気ではない、そのことを奴の纏う空気からすぐに察する。
『そうか、もうそんな時期なのか。」
「時期?いったい何のこと…」
『天馬、今日はもう帰ってゆっくり眠りなさい。」
「え、まだそんな遅い時間じゃないじゃん。もっとやろうよ!」
『いいから、今日はもう店じまいです。さっさと帰って英気を養え」
「わ、わかったよ…。そのかわり次は思う存分相手してもらうからな」
最後、組手時とさほど変わらない威圧を加えて忠告するMrカラテに条件反射で返し急いで身を起こして帰り支度を始める。
決してその気当たりにビビったからではないが、奴があそこまで言うからにはよほどなにかあるのかもしれないと思ったのだ。
そしてそこまで多くない手荷物を抱え、しぶしぶとその場を後にしようとしたとき彼女が何事かをつぶやいたような気がした。
『-ぅか-で」
「-え?」
『何でもありません。さぁ、早く帰りなさい」
-結局何を言おうとしていたのか、それはわからない。
しかし、なぜ早く帰らせようとしたのか。そのことについてはすべてが始まってから知ることになる-
「あれ、父上。こんな時間に珍しいですね」
「天馬、長達がお呼びだ。ついて来い」
「…はい?」
『来たな。赫鵜、そしてその息子天馬よ。』
『それでは、参るとしようか』
「え、え?」
まるで、ロールプレイングの主人公にでもなったかのように、私の心理状況などお構いなしにとんとん拍子に話が進む。
事態をまるで把握しないうちにあれやこれやと移動そして説明がなされ。
そして最後には見知らぬ土地にほうりだされていた。
一枚の紙を持たされて
「どういうことなの…?」