生まれ変わったら忍者の末裔になっていた件について   作:砂糖露草

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裏の世界、その一歩。

『ひぃ!?は、早くし何とかしたまえ!いくら払ったと思っているんだ!』

 

 自らのうしろ、私が存在する限り一先ず命の危険がないセーフティゾーンからヤジが飛ばされる。

 …実を言うと異国の言葉で口から放たれているをそれを全くと言っていいほど理解できていないのだが、まぁ状況から見るに私を口汚く叱咤するものだろう。

 いっそすべての職務を放棄してまず先に後ろで震えている男からしばいてやろうかとも思ったが、いかんせん彼は私の警護対象である。

 そんなことすれば今回の任務はご破算だし、更には里に帰った時に何を言われるかわかったものじゃない。

 

 ため息ひとつ、そしてふと前を見る。

 するとうじゃうじゃと湧いて出てくる黒服武器持ち強面のトリプル役満ヤッサン集団が。

 鬼気迫る表情で私を…さらにいうなれば私のうしろにいる依頼主を睨み付けていた。

 

 まだ銃火器をを持ち出していないだけましだとしても、強面やくざの集団とそれに対峙する齢13、背丈も年相応な少年という構図。

 なんというか、その。場違い感が半端ない。

 絵面的にも私の精神的にも。

 

 

 いま私は、住み慣れた日ノ本を離れ、なぜかそのお隣の国で拳を振るおうとしている。

 

「-いったいどうしてこうなった!」

 

 誰も日本語が分からないのをいいことに、力の限り理不尽を嘆きつつそれでも警戒を解かないまま軽くこれまでの経緯を思い返し、色々と整理をつけることにした。

 

 

-え、なんです父上。「一度里を下りてみたくないか?」え、いいの?「一つ頼まれてくれるなら」やるやる!-

-あのー、なんで集会所まで足を運ぶ必要が…?結構大事な要件なの…。あちょ、ナニヲスルダァ!?-

-まさか空を飛んで(飛行機で)異国まで訪れるとは思わなかったよ…。てあれ父上、みんな?どこ行くの!?なになに、『これから一ヶ月、この紙に記されている人の用心棒として頑張れ』?一寸待って意味と言葉がわからな、あ、アー…-

 

 

 と、まぁこのあと激流に身を任せつつひぃこらと無事(?)依頼主の居所にたどり着き、それからまもなくして初のお仕事と相成ったわけだ。

 

 早速修羅場ってますがね!

 

 …いやまぁ、修羅場とはいったけど実はそこまで切羽詰まった状況じゃない。

 見た感じ奴さんはマフィア関連の戦闘員ではあれど、練度はばらつきがあるし一定以上ーそれこそ暗鶚の民ほどの強さを持っていることはなさそうである。

 里にいる間に多対一の戦術とやらも教わったし、油断しなければやられることはない…はずだ。

 

 懸念事項としてあげられるのは、なにかを護りながら戦うのはこれが初であること。

 そして増援の有無ー特に用心棒が後ろに控えていないか、というのも大事だ。

 

 -というかそもそも、実戦事態が今が初なのだ。

 心構えとかはしてみたけれど、いざ本番となると足がすくみそうである。

 

 嗚呼、うん。そう、本当に今さらだけどビビってますわりと。

 

 今まではあくまで組手や試合(誤字に非ず)で命の危険なんてあまり感じなかったのだ。

 いや、時折本気(遊びや組手で気分が乗ってしまったとき)のしずはやせんずいの一撃にはヒヤリとさせられていたが、言いたいのはそういうことじゃない。

 

 ここで言いたいのは明らかな害意を持った相手との対面が前世今世含めても初だということ。

 そして、今から自らも力を奮い傷つける立場にいて、それを半ば恐れていた。

 

 

 望んだわけではないが、この世界が戦いに満ちたものであるのはずいぶん昔に知っていたし、何より歓喜もした。

 あわよくば、憧れた英雄のようになりたいとも思っていた。

 

 そのための一歩を、たしかに踏み出しているのはわかる。

 ただ、踏み外したら即死に繋がるか、若しくは修羅の道に入るか。

 そんな選択肢しかないって(元)一般人の身には一寸重すぎませんかねぇ……。

 

 

 

 

 でも、もう賽は投げられたのだ。

 多少ネタに走れるくらいには、気分は落ち着いた。だからこそ、これからのことを考えるのはここまで。

 

 奴さんもそろそろしびれを切らすことだろう。

 

「-うし!作戦は『極力ケガはしないさせない方向で』だ。それじゃ、暗鶚の天馬、初陣と行こうか!」

 

 自らに渇を入れ、戦いやすい構えをとって相手を見据える。

 そして間もなく、戦いの火蓋はきって落とされた-。

 

 

 

 

 

 まず、戦いをするに当たって何が重要か。人によって様々な見解はあるだろうが、凡そこれだけは持っておいても損はないというものがひとつある。

 有り体にいってしまえば、「情報」その一言で足りるだろう。

 諺にも『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』とある通り、戦い、それだけでなく生きていく上でもこの情報というのは重要なファクターの一つなのだ。

 

 さて、ここで話を戻そう。

 今、私は何をしているのか。

 

 

『駄目だ、すばしっこすぎて捕まらねぇ!』

『ちきしょう舐めやがって!』

 

 そんな苛立ちがこもった声を耳で受け止めながら、暴力の嵐を余裕をもって避ける。

 そして、その一撃一撃をよくみて彼我の戦力差を自分なりに分析してみる。

 

 戦いが始まってからしばらくの間これだけを続けていた。

 

 

 とはいえ奴さんもルーティンワークをこなすだけの機械(ばか)じゃない。

 中には、こっそり戦闘から抜けだし自らの任務を全うしようとするものいた。

 

 …いや、まぁこうやって独白してる時点で私には筒抜けなわけで。

 それを黙って見逃すほど私もお人よしじゃない。

 

 咄嗟に近くで攻撃してきたやくざの腕をつかみ、その突進の勢いをうまく利用して回すように体勢を崩し、投げ飛ばす。

 ただし投げるのは地面にではなく、抜け駆けしようとした輩に向かって、だ。

 

『フギャァ!?』

「ストライク!なんてね。-いや投げてみたけどまさか当たるとは-。牽制のつもりだったんだけどな」

 

 ホントに咄嗟の行動だったので、精度も手加減もあったものじゃない。

 一度心配になって様子を確認してみる、どこか痛めたのか立ち上がることはなかったものの元気にうめき声をあげているのが確認できた。

 それを見てほっと安堵の息を吐く、そして今対峙しているやくざのタフさもなかなかのものだと舌を巻いた。

 こういった仕事をしているのだから当たり前と言っちゃそれでおしまいなのだが。

 

 とはいえ、本当に援軍が来ないうちにそろそろ攻勢にでるべきだろう。

 しかし打撃技は乱戦時の事故が怖いし、となると残るのは-。

 

『さっさとくたばりやがれェェえぇぇ!』

「おっと危ない。」

 

 つい考え事をふけっていると、それを好機と見たひとりが刀剣片手にに掲げ切りかかってくる。

 と言っても今までの修行が身に染みているおかげか難なく対処はできた。

 …できたのだがその対処法までは、その時の状況に沿った動きを身体がかってに判断するので-

 

 懐に入った後、縦に振られた剣ではなく腕を軽くいなした後、その腕をつかみ相手の背中に回し-鈍い音と共に関節が外れた。

 

 関節を外されたやくざは、その痛みと動かなくなったことの恐怖に叫び声をあげる。

 当然、誰かがまた入れ直さない限り戦闘不能だし、そもそもこれでこの人は戦闘意欲をほとんど削がれただろう。

 ついでにその様を見た他のやくざも明らかなと動揺を見せた。

 ウン、一寸罪悪感が、芽生えかける光景だ。

 

「……やっぱり関節技が一番安全かなァ。なんか基準が可笑しいけど死ぬようなことはないし。」

 

 無意識とはいえわざと痛みが増すような外し方をしたのを少し後悔しつつ、そんなことをつぶやく。

 それを目撃した彼らに、また激震が走った。

 おそらくこちらが不穏なことをつぶやいたのだと勘違いしたのだろう。……十分不穏当だという意見をは隅に置いといて。

 

 しかし、それはそれで好都合だ。

 ここでさらに追い打ちをかけるように怪しげな笑みを作り指を鳴らしながら、言い放った。

 

「ま、少し痛いかもしれないけど、死ななきゃ安いよね?」

 

 

 突如響き渡る怒声と悲鳴。

 それをガキの挑発ととったものもいれば、逆に強者からの脅迫と見たものいただろう。

 けれどもその場から逃げ去るものなどなく、全員が一斉に襲い掛かってきたのは流石に修羅場をくぐってきただけはある。

 

 そんな勇気ある彼らを、ちぎっては投げ隙あらば関節を外す作業が始まり-

 

 最終的には一寸した地獄絵図が出来上がり護衛対象がちびっていたのは完全なる余談である。

 

 

 ともあれ、初の実戦はこうしてたいした山場もなく無事終わりを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 -後にこのひと騒動は、予想よりも早くそして多くの人々に知れ渡り、一部の人間に興味を持たれる結果となるのだが、当時はそんなこと、知る由もなかった。

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