生まれ変わったら忍者の末裔になっていた件について 作:砂糖露草
只今鬱蒼とした森のなかで、絶賛迷子中…遭難一歩手前です誰か助けて。
何故、こうなったのか。
ことの始まりは少女に強引に連れ去られたとこらから始まる…。
◆
「今日は一人増えたからいつもとは違う遊びをしてみようと思うの。」
幼い女の子に引きずられ、原っぱまでついて最初に聞いた第一声がそれだ。
正直、頭が追い付いていない。いやまさか自分と同い年位の少女に少年二人が引きずられていくとは誰が予想できようか。ぅゎょぅι゛ょっょぃ
そんな中、引きずられていたもう一人の少年が、既に体勢を立て直していた。
「しずは。ついさっき初めて会ったばかりなのに、自己紹介もなしにいきなりは失礼だぞ」
「あ、そうだねせんずい。私は『しずは』。でこっちの女の子みたいな子は『せんずい』。一応男の子だよ。」
「一応じゃない、れっきとした男だ。」
「私に一度も勝てたことないけどねー」
「うぐ…」
少年-せんずいは図星をつかれたように固まり、少女-しずはは勝ち誇った笑みでせんずいをおちょくる。
この一瞬でこの二人の関係性がよくわかった。とりあえずせんずいに憐憫の眼差しで送ることにしよう。
「…なんだその目は、言っておくがボクが弱いんじゃない。こいつが化け物なんだ」
「いくら悔しいからってその言い方はないと思うよ?」
私がそう窘めると、しずはは続いて「そうだー、失礼よー。」と抗議を始める。
…まぁ、子供二人を引きずっていけるほどの怪力の持ち主だ。それを踏まえて考えてみれば実力のほうも表現したくなるかもしれない。だからと言ってこんなかわいい子を捕まえて化け物はないだろう、というのが今の考えだ。
それにしても、『しずは』に『せんずい』…、聞いた覚えはあるのに、その既視感の正体がいまだにつかめない。もう五年以上も前のことだからしょうがないことなのかもしれないけど。
「で、君の名前は?」
「-え?」
「だから、君の名前はなんていうの?」
掛けられた声に意識を現実に戻される。
流石にこの場でだんまりはよろしくない。考え事はいつでもできるからと、意識を切り替えて口を開いた。
「ぼくは、僕の名前は『てんま』」
「そう、じゃぁてんま。これからよろしくね!」
「ぼくからも、よろしく頼む。てんま」
しずはは満面の笑みで、せんずいは表情は変わらないものの少し弾んだ声で私に話しかける。
未だ、既視感が何なのか判断つかないが二人ともいい子なのは火を見るより明らかだ。逆に考え事をしながら話半分に聞く私のほうが失礼だろう。
それに、私としても彼女たちとは仲良くしたいと、心の底から思えた。
だから
「うん。よろしくね、しずは、せんずい!」
素直にそう返す。
こうして、暗鶚としてこの世界に生まれてから早五年にして初めての友達が、一気に二人もできたのであった。
…そう、ここまではよかったのだ。問題は此処から-
「じゃぁみんな、今日は何して遊ぶ―?」
と、しずはが本題を思い出してそうこぼすとせんずいが
「いつもと違う遊びをするんじゃないのか?」
とここに来るときにしずはが言っていた提案を復唱する。すぐに
「それはわかってるよー。」
と少しだけ頬をふくらまして言い返した。
ここまできて、一つ疑問が湧いてくる。それはさしてきになったわけではないけどふと、口を
突いて出てくるのだった。
「そういえば、他の子はいないの?多い方が楽しいと思うし」
別に悪ぎはなかったのだ。ただの確認程しか意味を持ち合わせてはいない一言だった。
だけど、受け取り方は人によって変わるもので…
「ほかに友達は…いない」
「う…グスッ」
「あ、その…ごめんなさい。」
俯きながら辛そうに語るせんずいに、その現実に耐えられなくなったのかぐずり始めるしずは。
如何やらついてはいけない部分を的確に踏み抜いてしまったようだ。
慌てて謝るがどうも気拙い。初めてできた友達との一番最初時間を、こんなイヤーな雰囲気で終わるのも嫌なので、必死に話題をそらせる何かを探す。
その結果。
「と、ところでさ。今まではどんな遊びをしてきたの?僕ずっと一人だったからさ、よくわからないんだよね」
と、二の句を告げる。若干嘘も混じっているけど、まぁ問題ないだろう。
実際気を逸らすことに成功して、彼女たちは今までしたころのある遊びを誇らしげに出し合っていく。
かけっこにしりとり、あっち向いてほいなど、メジャーな二人でもできる遊びがあげられていく中で、組手を遊びの一貫として見ていることには待ったをかけたい。お前らどれだけ武術に浸かっているんだと。
ふと、穿彗がこんなことを言い出した。
「あ、そういえば、一度だけ鬼ごっこやったことあったな」
「そうだねー、二人だけだと結局かけっこしてるのと変わらなかったからつまんなかったけど。」
しずはが昔を思い出して苦笑いをしている。
ふむ、それならと口を開いた。
「じゃぁ、今日はその鬼ごっこをしてみようよ。三人いればきっと楽しいよ!」
その一言を聞いて、しずはと泉水は顔を見合わせる。すこしして二人とも賛同して鬼ごっこが始まることとなったのだが…。
「じゃんけんで負けたてんまがおにねー。十秒数えてから追ってくるよーに。」
それだけを伝えてしずはがその場を後に
「負ける気はないけど、がんばれてんま。」
せんずいは最後に激励の言葉をのこしてその場から去っていった。
私も素直に10まで数えて、さて狩りに出ようと思ったところで気付く。重要なことに。
「そういえば、範囲ってどこからどこまでだっけ?」
◆
そこから周りの人に尋ねに訊ね、既に二人とも森の中に入ってしまったことを聴くと何かあったら拙いとすぐさま探しに言ったはいいが御覧の通り逆に迷子になり、帰れないままついさっき日が暮れてしまって大ピンチ。
長くはなったがつまりはそういうことである。
ついでにご飯も昨日から食べてないことに気付きひもじい思いもすることになるダブルパンチであった。泣きたい。
あの二人を見つけ出せないのも拙いが、何より自分の身が一番最初に危ないと判断してもと来た道を帰ろうとしても、似たような光景ばかりが目に入って一向に進んだ気がしない。実際に同じ場所をぐるぐる回っているのだろう。そうわかっていても抜け出せない事実に、焦り不安を募らせる一方だった。
「うう、しずはー、せんずいー。どこにいるんだよー?隠れてないで出て来てよー」
近くに居ないことが分かっていても、つい口から出てしまうほど追いつめられていた。
別に森という生態をなめていたわけではいけれど、不用意に足を踏み入れたことを後悔しても後の祭り。
そんな時だ。
遠い木々の隙間から仄かに明かりが漏れていることに気付いたのは。
その灯りをみて、二人を見つけることはできなくても、一先ず助けを呼べると考えた私は急いでその光源へと近づいていく。
しかして、近くに寄ってみると、それは想像していたものは全く異なっていた。
「―ぁ。」
小さく声を漏らした後、思わず息を呑む。
未だ、遠い場所にある光源。熱をかんじさせない無数の光がちりばめられた、まるで宝石箱のような光景。
そう、遠い過去もおぼろげな記憶にも映える、都会と言ってもいい大きな町の姿を、今生初めて目にすることになったのだ。
そしてその町に重ねて視たのは、愛おしく懐かしい前世の故郷。
-私は別に、前世の生活に不満を持っていたわけではなかった。子供の頃人並みには青春してきたと自負しているし、たしかにようやっと就けた職ではつらい思いも多々あったけどそれも踏まえての人生だと思っていたからだ。
いままで、全く異なる生活をしてきたおかげもあって、余計なことを考える余裕もなかったけど、こうして唐突に考えさせるきっかけを持たれると、否応なく思い出してしまう。
湧き出た郷愁と一抹の寂しさに思わず思わず足が前に出る。
そして-
「あぶない!」
「…へ?」
突如後ろから聞こえてきたかと思うと、進行方向とは逆に腕を強く引っ張られる。
それに気づいた私が素っ頓狂な声をあげながら振り返ると、そこには近くの木にロープをかけて、空いた手で私の腕を引っ張るせんずいの姿があった。
「あれ?どうしたのせんずい?」
「どうしたもこうしたも、君がどうしたんだ!その先に地面はない!」
「え?…うわぁぁぁ!?」
「しずは!こっちに来てくれ。引き上げるのを手伝え!」
「わかった!待っててふたりとも!」
せんずいにいわれ、ようやく今の状況を理解した私は情けない悲鳴をあげた。
無理もない。
彼の言う通り、私は今せんずいに腕を引っ張られるようににして宙に浮いていたのだ。
如何やら、遠く町を展望できるあの場所は少し行くと崖になっていて、遠くの街に気を取られていた私は足元の注意をおろそかにして踏み外してしまったようだった。
その後、すぐさま駆けつけたしずはと共にせんずいが引き上げてくれ、事なきをえる。
静葉はまだ割と余裕そうだったがせんずいは、少しだけ息をきらして一つ息を溢した。
「もう、なんでこんなことになってるのー、びっくりしちゃったじゃない!」
「まったくだ…。今回ばかりは肝を冷やした。」
おのおの私の心配をしてくれながら、今回の行動に苦言を呈す。
対する私は、正直に話すわけにもいかなくて苦笑いを溢しお茶を濁すことにした。
「あ、アハハゴメンゴメン。でもさ、見てみなよ。すっごいきれいじゃない?」
そういって、指で町の方向を指さして二人の視線を誘導する。
すると度合いは違うが二人ともその町の光源に見入った。
「わー、キレーイ!お星さまが大地に落ちてきたみたい!」
「…本当だな。此れなら、君が見蕩れて足を踏み外すのもわかる。」
二人ともこの光景がお気に召したようだ。まぁ子供というのは珍しいものと光るモノに目がないっていよく言うし…最後の蜂がったかもしれないが。
「そうそう、思わず我を忘れちゃってさー。…いつか、行ってみたいな。」
私も彼女たちに便乗して感想を述べた後、最後に小声でそう付け足した。
すると、しずはは一歩前にでる振り返り、微笑う
「行こうよ、いつか、大きくなったら、みんなで。」
如何やら私の言葉を最後まで聞いていたようだ。そんな未来の話を無邪気な笑顔でする彼女の姿は、遠くの街灯に照らされながら輝いて見えたのだった。
「―さぁ、二人ともかえろう。さすがに遅くなり過ぎた」
「そうだねー。あー、楽しかった!」
「ぼくはちょっと楽しむ余裕がなかったけどね…あ、そうだ。」
一つ思いついておもむろに、せんずいとしずはの手を掴む。
そして、おもむろにこう宣言した。
「しずはとせんずい捕まえた-♪」
「「は(え)?」」
「ほら鬼ごっこはまだ終わってなかったじゃん。だからこうしてみんな捕まえて僕の勝ち!」
自分で言っといてなんだが、勝手極まりない理論である。
そもそも、鬼ごっこは鬼の手が触れた瞬間入れ替わるルールだから、あの時も継続中だと考えるならば助けてもらったときに入れ替わったと考えられるし、そもそも完全に終わったという雰囲気の中でやるのはマナー違反でもあるだろう。
それでもあえてやったのは、最後は綺麗に閉めようとしたからで、丸一日振り回された二人に仕返しをしようと思ったわけではない。断じて。
その後。案の定その判決に納得のいかない二人から抗議されながらも家路へとつき、やっぱり帰ったらすぐに父親たちにこっぴどく叱られたのは言われるまでもない蛇足である。