生まれ変わったら忍者の末裔になっていた件について 作:砂糖露草
最新話投稿です。
今回の話がかなり難産だったのと、仕事で慌ただしかったので執筆する余裕がなかったのですが、これからは少しづつですが進めていきたいと思います。
…一先ず隔週投稿をもくhyo…目安に。
少しまだじぶんで見ても見苦しいところも残ってますがどうやって直せばいいのか分からない実力不足を痛恨。
これから先にちょくちょく手を入れていくかもしれません(物語に影響しない範囲で)
こんな拙作ですが楽しんでただけえれば幸いです。
地面を思いっきり蹴り飛ばし天狗面の懐まで一気に詰め寄らんとする。
今度は勢いを殺さず、今まで学んできたものを生かすように突きを放つ。
先程の不躾な一撃よりも、はるかにきれいな軌道を描いて敵に向かっていく。
それでも、すんでのところで空を切った。否、余裕を持たれながらスウェーで躱されてしまった。
されどまだ二発目。そこから相手の動きを制限していこうと次々と拳を、蹴りを混ぜて天狗面に見舞う。
しかし-。
パァンッと小気味のいい音が鳴った。
遅れて蹴りを入れた右足に鈍い痛みが襲い掛かる。
なんてことはない。
天狗面がまるで子供の相手でもするかのように、私の蹴りと軽々と受け止めたのだ。
しかも、片手で掴むように。
いくら体格的に威力がのりにくくとも、速さには一定以上の自負があった。
なのに-
力任せに拘束を振りほどき、急いで距離をとる。
対する天狗面は、こちらを追うそぶりを見せない。もともと、私を敵と、勝負の相手を見なしていないかのようだ。
『もう、やめなさい。こんなことをやっても徒労に終わるだけだ。少年』
「―ッ」
あちらから手を出すことはなく、諭すように天狗面が告げる。
そう、当たり前ではあるけど子供を相手にするそれと同じ響きが含まれている。
それがどうしても許せなくて、口惜しくて―。
見返してやりたくて。
「―絶対に、その鼻あかしてやるよ。鼻高天狗…!」
敵愾心を丸出しに、秘めた闘志をむき出しにしてそれでも冷静さを保てるように呼吸を整える。
両腕を突き出して、円を描くように大きく回す。
イメージするのは、小瓶の中で爆竹を破裂させ続けるイメージ。
以前試したときは不発に終わってその効果を確かめることはできなかったけど、いまこの拳を届かせる方法はこれしかない。
-別に、今は負けてもよかった。ここが正念場というわけでもないし、これから先には必ず多くの苦難が待ち受けいるはず。だからこんなところでむきになる必要はない。
―男の意地がそうさせるのか?答えは否。たしかに私は男だ、そういった感傷も持ち合わせている。でも、今笑死を突き動かしているものはそんな熱いものじゃない。じゃぁ、どうして-
『何がお前をそこまで突き動かす?なぜそこまで生き急ぐ。―一体何をそんなに焦っているというんだ。』
天狗面の問いには答えない。代わりに私はひとつの技の名を紡ぐ。
身の丈に余りすぎる禁断の技。名を-
「静 動 轟 一…!」
『…な!?』
今まで感じたことのない高ぶりを感じる。
-まだ気に関する修業は修めていない、自らの師から何も聞かされてない状態だ。けれども昔の知識と一足先に第一段階の修行に入った二人の修行風景を盗み見て独学で自主トレに取り組んできた。
とはいえ結果は芳しいものではなく、何か見えない力が沸き上がる、といった衝動は終ぞなかった。―
それがどうだ。
猛々しい何かが体全体を駆けずり回り、全身に力を与えていくのが確かな
これなら-
「…行クぞ。」
今度こそ拳を届かせるため敵の眼前へと踊りだす。
前も早く、爆発的な加速度で距離を詰め、そのどてっぱらに左腕を突き出す。
それを目の前の天狗は焦りの見える声をあげながらも、すんでのところで腕を差し出し防御した。
また、届かなかった。がしかし躱すでもつかむでもなくただ防御してきたところから見るに、余裕がなくなってきたということだろう。
少なくとも、先程の無様な結果より希望が持てた。
天狗はふと口を開く。
『なんだ、それは。』
「アンタが無意味だト、百害あっテ一利なしといっタ秘密の特訓の成果ダ。」
『違う!わかっているのか、それは』
「リスクは百も承知。少なくともアンタにはとやかク言われル筋合いはなイ!」
『…これ以上はいっても聞かないか。なら致し方ない。』
そういうと、天狗は戦闘態勢に入る。暗鶚の構えとは少し異なった、どこか空手を思わせる構えだ。
これからは油断も隙もない、本気の臨戦態勢ということだろう。
俄然、燃えてくるというものだ。
ようやく、私のことを相対するべき相手と認知したということだから。
しかし、その熱もすぐに醒めることになる。
今まで防戦一方だった相手から仕掛けてきたからだ。
否、それ自体は喜ばしいことだ。別に被虐趣味だというわけではないが、組手や実戦で加減をされるというのは男の矜持としてつらいものがある。だからこそ嬉しかった。
ただ、その一撃は予想以上に早く、目で追うのがやっとでましてや動いて回避することはできない。
きっと、命の危機に瀕した際の走馬燈とか、ゴールドエクスペリエンスを食らったときの感覚に近いかもしれない。
とにもかくにも目ではおえているのに体がうまく動かない。
それはまるで吸い込まれるように私の右頬へと突き刺さる。
轟っと唸りながら、私はなすすべもなく吹き飛ばされる。
そしてついに私は意識をなげうってしまうのだった。
日頃の研鑽のたまものか、それからほどなくしてふと目を覚ます。
といっても、先ほどのダメージが残っていて仰向け状態から指一本動かすことさえ億劫だった。
『静動轟一』の影響か、単純に先ほどの顔への一撃が脳を揺らしたのか。
今の私は心身ともに満身創痍と言っても過言ではないだろう。
いくら努力しても突き破れない壁というものを、いままさしく突きつけられた気分だ
『目が、覚めましたか?』
それは一体どの意味でいったのだろうか?
さきほどまで気を失っていた自分を気遣ってのものか、それとも果てない希望にすがる私を現実に引き戻そうとしたのか。
あるいはその両方かもしれない。
ふと、乾いた笑みがこぼれる。
ほんの少しの自嘲と、心一杯にたまった諦念がにじみ出ている気がした。
『何故、笑っているのですか。」
「何故って、今までの努力の成果がまるで意味がなさなかったみたいで、可笑しくって。」
『…そんなことは」
「いやいいって、そんな気を使わなくても。アーこれですっきりした!
しょせんわたしなんかが舞台に上がろうなんて見果てぬ夢だったんだ。でも、少し気が楽になったよ」
『その割には、ずいぶんと顔をゆがんでいますが。」
天狗面の言葉を確かめるように、手で顔を覆う。なるほど確かにひどくゆがんでいるようだ。
今ここに手鏡があればさぞ愉快な顔が見れただろう。
そんな自分の顔なぞ、見たくはないけれども。
それでも強がるように口を開く。
「そりゃ、わたしだって男の子だから。こんなふざけた奴に負けたのが相当悔しいんだよ。」
『嘘、ですね。あなたの拳はそんな軽いものじゃなかった。」
「そんなに勝利への執念を買っていただいて光栄の極み、ていえばいいのか?」
『違う」
茶化すように出た言葉を、天狗面は即座に否定する。
その声音は、まるでこちらを慈しんでいるように聞こえた。
『貴方の拳には、まるで誰かの命も背負い込もうとした、不安定な重みがあった。そのせいか貴方の攻一撃は威力があっても早さがのり切っていなかった。」
「黙れよ」
まるでこちらのことを何でも分かり切ってるかのような言いまわしがささくれだった心を逆なでする。
奴は善意で『事情を話してくれれば助けになる』と、遠回しながら言っているのが分かる。
だからこそ、今の私には耐えがたいものだった。
「誰かに相談してみろったって、話せる奴なんかこの世界にはどこにもいないんだ!…そう、だれも、いないんだよ。」
話せるものか。誰が信じるモノか。
あと10年ほどで自分が生まれてきた里から、世界をまきこんだ戦渦の真っただ中に叩き落されるかもしれないことを。その過程で大切な家族が、幼馴染たちが-
そこまで考えて勢いよく頭を振る。誰だって嫌な想像はしたくない。
それが夢破れた後の現実逃避だとしても。
『泣くほど、口惜しいのか?」
「…え?」
天狗の言葉に、もう一度顔に手をやる。
知らずにのうちに涙が出てきていたようだ。…本当に情けない。
『-強くなりたいか?』
見下ろしながら、こちらを値踏みするように言葉を放つ天狗。ここで諦めてしまうのかと半ば挑発しているかのような物言い。
奮い立たせるためにわざと選んだ言葉。それくらいは今の私にもわかる。
だからこそ、その答えは決まっている。
「…なりたい、強くなりたい」
『-そう」
自分の心情を情けなく吐露すると、天狗はお面越しにもわかるような微笑みを私に向けて-
『ならばなおのこと、当分の間は修行抜きだ。そして一か月の後もう一度ここに来なさい。」
「-へ、…あだぁ!?」
行きなり訳のわからないことを言い出したと思ったら、とたん頭にのみ奇妙な浮遊感が。
ガインと小気味のいい音を鳴らして予想だにしないダメージが脳天(主に後頭部)を襲う!すわ何事かと思えばいつの間にか天狗の姿はなくなりいつかの如く、私一人が取り残された。
ニンジャもビックリ(というかそのもの)の陰行とこだま-ジツに思わず「…アイエェェェ。」と唸りながら卒倒する。
…単に、頭の打ち所が悪かったのかもしれない、がそれはまぁ関係のない話だろう。