生まれ変わったら忍者の末裔になっていた件について 作:砂糖露草
「此処に居たのか、てんま。」
燦々と輝く太陽、それでも昼寝するにはちょうどいい気候のなかに、せんずいが現れた。
「-ん、せんずいどうした?」
「てんま、最近なんか変だぞ?」
「…へん?何が」
「何がって、ぼーっとすることが多くなっているじゃないか。きみらしくもない。」
「らしくない…かぁ。」
長年の付き合いになる幼馴染みの言葉を肯定とも否定ともとれない曖昧な返事でかえす。
確かに、彼の言う通り生来の自分としてはかなり珍しい行為に走っているだろう。それも、致し方ないのだけど。
「いやさ、せんずい。最近どうも頑張りすぎたかな、て思うようになったんだ。よく言うだろ?短期は損気、焦りは禁物だってな。」
「…何かあったのか?」
「ンー、あったと言えばあったな。おっともうこんな時間か。」
あまりにもポカポカした気候にいつの間にかうたた寝していたようで、いつの間にかに所定の時間に差し掛かっている。
このままだと遅刻確定だな、と思いつつしかしのんびりと体を起こし伸びをした。
え、急がなくていいのか、だって?いいのいいの正直あんまり乗り気じゃないし。少し遅れたくらいで世界が滅びるわけじゃないしね。
「そうやって、ふらっと一人でどこかへいってしまうことも増えたよな。」
その様子を見て、疑問をぶつけるようにせんずいが言葉を放つ。
その言葉の端々から、最近の付き合いの悪さからくる不満も漏れ出ているのが分かった。
そのことについては、少しだけ罪悪感を感じてアハハと苦笑いをこぼす。
「一寸野暮用が出来てね。ほんとゴメン、後で何か埋め合わせするからさ。」
「最近は秘密主義が過ぎるんじゃないか、天馬。」
「ふふん。それがいい男になる条件というものなのさ。詮索はしないでくれよ?少しばかり恥ずかしいことも含まれるからね。」
「…はぁ、わかった。どうせはぐらかし続けるだろうからな。でも、ほかのみんな、特にしずはは黙っちゃいないと思うぞ。」
「-せんずいの方で止めてくれない?」
「断る。」
「デスヨネー」
にべもない一言にまたもや苦笑いを一つ。
せんずいに言われなくても予想はついていたけど、少々気が重い。
とはいえ、そろそろ刻限がヤバイ。
すこしだけ世界が滅びるわけじゃないがあまりにおそいと雷が落ちることになるだろうし、本格的に急がないといけない。
「わるいせんずい。そろそろ行かないと」
「そうか。…嗚呼、そういえば父上が『明日道場に来い』といっていた。たしかに伝えたぞ」
「ん?ああ分かった。じゃまた後で」
それきり軽く駆け足でその場を後にする。向かう場所は、ボロボロの家屋-天狗の住処だ。
◆
『遅い。どこで道草を食っていたのですか。』
まず目的の場所-ボロボロの家屋の居間について出迎えたのは明らかに機嫌の悪い一言だった。
お面で素顔が見えないが青筋も立っているに違いない。その原因を作った張本人が言えた義理ではないが。
私を待っていた天狗面はいつもどおりの忍者服。相変わらず自らの容姿を隠すことに余念がない。
個人的にも素顔がどうなっているのか気になるところだ。
とはいえ、馬鹿正直に言っても袖にされるだけだろう。適当に先程の返事を返すことにした。
「一寸日の当たるところで瞑想を…」
『もう少し隠そうとする姿勢を見せたほうがいい。そんな嘘がまかり通ると思っているのですか』
「いやーソンナコトナイデスヨ?本当は友達と話し込んじゃって」
『…分かった。それでは今日の日課をこなしてもらうことにしよう』
果たして奴は納得したのかしてないのかあいまいな返しをして奥へと引っ込んでいく。
そして、持ってこられたのは大量の本、本、本。中には巻物も混ざっているようだ。
本のタイトルは『サルでもわかる算術指南 大学館』『問題集「現国」中級編 大学館』その他さまざま。
要はお勉強のための教材である。
そう、日課とは『お勉強』その一言に過ぎた。
心の鍛錬と銘打って始まった『お勉強会』、日課と称されるほど続けてきた作業である。
修行ではない、あくまで作業だ。
前世の記憶持ち(義務教育終了済み)にとっては昔学んだものを思い出す作業に等しく、これといった真新しい発見もない。
何度かのお勉強会の末物覚えがいいと思われたのか駆け足進行で進んでいったが、それでも正直退屈なことこの上ない。
『一緒に強くなろう』という天狗の手を取ったのは自分自身だけど、少々性急すぎたのかもしれない。そんなことを思いつつ、いつもより多めに盛られた教材をせっせと消化していった。
ふと、天狗が口を開いた。
『そういえば、そろそろ一カ月がたちますね。」
「いったいどうしたのさいきなり。」
『約束の期日が近い、ということですよ。忘れたのですか?」
呆れたように頭を振る天狗を尻目にいったい何のことかと首をひねる。
何を基準に一カ月といったのか、それはすぐに思い至った。
「あ、あんたと遭遇してからもうそんな経つのか。…待てよ、てことは」
『ええ、そろそろ傷も完全に癒えたころ。そろそろ武術の修行に入ってもいいころ合いでしょう』
「本当!?」
『はい、とはいえまずはあなたの師から自主練の許可をとってからになりますが。」
「よっし今からとってくる!」
ようやく謹慎期間から解放される。それだけで気がはやりそばから立ち上がり一目散に出口を目指した。
きっと親父さん-せんずいの父親からの呼び出しもこのことに関するものだったのだろう。だから許可もすぐに取れるだろう。
だが、そこに水を差したのは駈け出す私の裾を離さない天狗のお面だった。
『待ちなさい。まずは、今だした課題を終わらせてからです。」
「…そんなの後でよくない?」
『駄目です。」
-結局、課題がすべて終わるころには夕陽が沈み翌日に持ち込んだのはどうでもいい蛇足である。
それから無事謹慎期間を解かれ、今度はMrカラテもどきとともに武術の鍛錬に励む時間が出来たのだが、その修行は多分に漏れず厳しいものとなったのは言うまでもない。
◆◆◆
『皆の者、集まったな。』
『うむ、して今度は何用だ』
『集まってもらったのはほかでもない。赫鵜の息子の件についてじゃ。』
『はて?なにか懸念事項でもあったかかいのう?』
『あやつには光が宿っておる。この里では決してはぐくまれないような光が、な。』
『危ういのぉ』
『何か対策をたてるべきじゃな』
『具体的には-?』
薄暗い集会所の中、老獪な声が夜遅くまで途切れることはなく、
そしてこの時、一体どんな話がされたのか、それを知るものは少ない。
突然の次章予告ゥ!
暗鶚の里に生まれ、13歳になった主人公てんまの元に新たな変化の兆しが訪れる!
「君は武器使いにでもなるつもりかい?」
「なんで俺だけぎゃぁぁあぁ!?」
「こうしーん!?」
「てんま覚悟ぉ!今度こそ洗いざらいはいてもらうんだからぁ!」
『失敗してもいい。無事に、帰ってきなさい。』
-小さな里から、人間関係に恵まれた少年はもう一度大人になるために勇気をもって一歩踏み出す。その先に待つものは、果たして-
「…いやいやいや、無理ムリむり。できっこないってばぁ!」
果たして、彼に待つのは絶望か、希望か
『やぁそこの君、助太刀は必要かい?』
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え?修行シーン?時間跳びすぎ?
…いつか閑話とかでやるかもしれない…メイビー