二話分くらい長いし、明日の更新はなしで良いですか?
書き溜めがもうない、時間もない、けれどまあ、よくここまで頑張ったな俺。
『私達、結婚しました!』
ふーん、あいつと、あいつ、あいつも結婚したのか。
馬鹿だなー、結婚イコール人生の墓場だぞ?結婚なんて、夜は楽しいかもしれないが、昼は退屈だ。
独り身が一番良いね、楽だ。家庭だの何だの、そういうのがあると旅人なんざやってられんからな。
……っと、ドアノック。
機械油と鉄の匂い、明石の匂いだ。
「入って、どうぞ」
「失礼します!……提督❤︎突然ですが、この指輪を、私に渡してくれませんか?」
「え?ああ、構わないけど……?」
「では、この書類も、私に渡して下さい!愛の言葉を添えて……❤︎」
ふむ、ケッコンカッコカリ、と。
……ふむ。
「すまんな明石俺は用事が」
「そういうの良いんで」
痛い痛い痛い痛い!肩!!掴まんといて!!
「さあ、早く、渡して下さい❤︎」
畜生、嫌な予感はしてた!
何を隠そう、黒井鎮守府の艦娘は最近、どんどん練度がカンストしていっている!!
目の前の明石も例外ではない!!
「さあ、早く、早く渡して下さい❤︎一番に、この明石に、一番最初に❤︎」
この、一番に、と言うのが大変よろしくないポイント!
ちょっとでも順位を付けたり、特定の艦娘を特別扱いしたら、他の艦娘の不満が爆発!鎮守府も爆発!!
冗談抜きでこの鎮守府が更地に、いや、クレーターになるのは皆んな知ってるよね!
……今までずっと、艦娘に優劣を付けずにやってきた。言うなれば、全員を特別扱い。嫉妬深い子とも上手くやってきたし、最近は皆んな、ある程度はまともになってきたのに。監視の時間も、カメラと盗聴器の数も、ストーキングする艦娘の数も減ってきたと言うのに!
「こんなことしたら皆んなに怒られちゃうだろ!!」
もう許せるぞオイ!!!
「だから、そう言うの良いですから。早く、早く、早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く」
急かさんといて!!
……さー、どうすっかな、考えろ俺。
なあに、弁護士やってた頃はよくやったわ。頭の出来は悪かねえんだよ。
うーん、そう、そうだな。
発想を逆転させてみよう。
「平等じゃなくなるから、ケッコンカッコカリしない」のではなく、「全員とケッコンカッコカリして平等にする」……、これだ!!
ならば、指輪を渡すタイミングはどうだ?分身くらいなら可能だが、流石に、ここの艦娘全員に、同時に指輪を渡せるほどの数は無理だ。
……そう、そうだな、なら、いっそ、同時じゃなくても良いんじゃないか?
つまり、結果的に、艦娘全員が同タイミングで指輪を手に入れられれば良いんだ。直接手渡しする必要はない。いっそ、寝ている艦娘の枕元にでも置いておけば良いんだ。
「明石、それ、作った指輪は一つだけじゃないよな?」
「はい、お優しい提督の事ですから。工廠に全員分用意してあります。……ですが、一番は」
「よし、工廠だな!じゃあの!!」
そしてすかさず飛んでくる釘。
「逃がしませんよ」
「ギークガン……!!」
明石特製の釘打ち銃、モードの変更で兵装としての使用も可能……!!
「すみません、提督。……ですが、貴方は簡単には死なないでしょう?本当に、本当に本当に本当に心苦しいのですが、逃げるようでしたら、手荒なやり方を……」
デッカースパナ、か。超硬合金のスパナだが……、明石のパワーによって振るわれるそれは、武器と言って良いほどに強力だ。
「行きます……、はあっ!!!」
明石のパワーと装甲は、度重なる改造と改修で、並の戦艦以上!!だが!!
「スピードはまだまだだな!!!」
「くっ!やはり、掠りもしない……!!」
異常に肥大化した炉心や装甲を抱える明石は、如何に新型スクリューなどで機動力を補ったとしても、まだまだ遅い!!!
「悪いが、少し眠っていてくれ!眠りの手!!」
フィート、あなたは催眠をかけることができる、なんてな!!
「くっ、あ、あ……!!、え、えいっ!!!」
ん?何だ?何を握り潰した……?
「ふ、ふふふ、これは、電波妨害装置ですよ……。他の艦娘に、折角の、提督の告白シーンを邪魔されたくありませんでしたから……」
成る程な、そりゃそうだ。ケッコンカッコカリなんて知れば、艦娘達が大挙して押し寄せてくるのは容易く想像できる。
「で、ですが!この、電波妨害装置を破壊すれば!今まで妨害されていた映像と音声が一気に放送されます……!」
「えっ、何でそんなことしたの?!」
やめてよ!!
「ほ、他の艦娘に、じ、自慢したかったんですよーだ……。あ、も、もう、駄目、眠、い………………」
じゃ、じゃあ………………?
「「「「提督、指輪を」」」」
「………………あー、まず、ね。そこは、ドアじゃないかな……?」
ええ、ええ、執務室の壁、吹っ飛びましたよ、ええ。
……まず、俺のやることは、工廠から指輪を取ってくる。
そして、最難関、艦娘を全員眠らせる!!眠りの手なら、半日くらいは眠らせられる筈だ。だから、半日。半日で、この鎮守府の艦娘を全員眠らせる。
その後は簡単、眠った艦娘の懐に、指輪を突っ込んでおく。書類は谷間に挟んどきゃ……、あっ、駆逐艦(と龍驤など)……、ま、まあ、うん、臨機応変に。
……最早、ケッコンカッコカリは、艦娘全員に知れ渡っただろう。
正面衝突は避けられん。
正直、艦娘とは、まともにやり合ったら勝てないんだ、俺は。だが、眠らせるくらいなら十分可能。各個撃破ならやりようがある!!
「提督のハートを掴むのは、私デース!!!!」
「チィ!!!」
クソ、金剛型!!四人で来やがった!!この強さに、抜群のチームワーク、キツイな……!!
だが!!
「では、司令。大人しく、捕まっていただきます!!」
「ごめんなさい、司令!でも……!!」
霧島も、比叡も、かなりの威力のパンチだ。
でもな、教えてやる。
「力には技!!」
「「なっ?!!」」
簡単だ、逸らして、眠りの手で触れる。
「くっ、やっぱり、一筋縄では行きマセンネ!!!」
「なら、これでっ!!!」
金剛、榛名。素晴らしい技量だ。
だが、相性で勝れば怖くない!
「技には魔法!!」
「「ああっ!!」」
魔法「ビット」で気絶させる!
「くっ、む、無念、デース…………」
完 全 撃 破 !
いやあ、助かったぜ、アルガス騎士団の団長さんよ。他人の教えは聞くもんだな。
さあ、次だ、囲まれないように絶えず移動せにゃならん。
「やあ、提督。……僕が何を言いたいか、分かるよね?」
「指輪、ちょーだい!私達と、幸せになるっぽい!」
「そんな、結婚だなんて、うふ、うふふふふ……❤︎」
「ですよねー」
感知能力に優れる白露型だ、見つかるのは当然だよねー。
「さあ、行くよ、提督!!」
「悪いけど、死なない程度に痛めつけるっぽい!ごめんね!!」
「手足の一本二本なら、直ぐに治っちゃうもんね、司令官は……。その、ごめんなさい!!」
くっ、分かっていらっしゃる!!大正解ですよ!!骨なんざ一本二本なら直ぐに治せる!!大して痛くもない!!
「だがよ、そりゃ駄目だ!」
即座に唱えた魔法は、テレポートアザー。眼前の相手をテレポートさせる魔法。
「えっ?!あっ、し、時雨?!」
「なっ?!ゆ、夕立!」
目の前の夕立を時雨の前に!後ろから迫る春雨は!
「キャーッチ!アンドリリース!!」
「え?ふ、ふにゃあ?!!」
そしてこう!
《見捨てられし上位者よ!星の娘よ!エーブリエタースよ!!》
「エーブリエタースの先触れ」!!触手の召喚!!
「「「ひゃああああ?!!」」」
プロデューサーさん、触手プレイですよ!触手プレイ!!
「それじゃ、お休みー」
「はぁ……、やっぱり、提督には敵わない、か………………」
「むー、殺すのは得意だけど、捕まえるのは苦手っぽいー………………」
「ううー、やだー!司令官は私と結婚するのー!あ、あう………………」
あー、危ねぇ。殺す気で来られたらヤバかったかもな。白露型は殺すことに特化してるし、な。
おら次ィ!!
「……来たか」
「ふ、ふん!北上さんと結婚だなんて、認めないわ!だ、だから、ちゃんと夫婦生活が出来るか、私がテストするの!!ほ、ほら、早く指輪を渡したらどうなの?!」
「えー?私、提督と結婚したいんだけどなー?大井っちも、木曾も一緒にどーお?」
工廠前、雷巡の三人か!
「……あの、さ、後でちゃんと渡すからさ、ここはどうか退いてくれないかな?」
「……すまんが、こればっかりは、な。……俺も、女だ。お前の一番になりたい……!!」
「……は?何言ってるの?良いから指輪を渡しなさい?」
「あははははー、ごめーん、皆んなやる気みたいだしさー。ま、提督の一番ってのもキョーミあるからさー、ね?」
説得は失敗、と。
それじゃ、やっぱり?
「「「提督、覚悟!!!」」」
うへえ、泣きそう!
「バトルウイング!!!」
ありゃ駄目だ、並の攻撃力じゃねえ。当たっちゃならん、絶対回避。
まるで生き物のように動くマント!物理法則もあったもんじゃねえな!!
「余所見は!」「駄目だよー?」
「ぬううぁ!!」
蹴りが重い……!!!軽巡とはなんだっとのか!!!
下段と上段への蹴りの連打!脚と片腕が塞がれた!!
「よし、姉貴!そのまま抑えていてくれ!おおおおお!トマホーク!!ブーーーメラン!!!!」
あっ、ヤバっ!えーと、えーと!そうだ!!
「鞏家兜指愧破千歩氣功拳!!!」
拳に集中した氣を放ち、飛来する大戦斧と相殺!!!
「っ?!!ま、まだだっ!!!」
武器を失っても向かって来るか。その意気は良し!
「そんな頑張り屋さんな木曾には手榴弾あげちゃう!」
「………………え?」
ま、お得意の閃光手榴弾だけども。
「ハイパーズにも、ほい!」
「なっ?!!」
「ちょ、ちょっ、待っ…………!!!」
フラッシュ・バン・アラカザム、なんつってな!
まだまだ、搦め手には弱いねぇ。残念だが、強い奴よりも上手い奴の方が生き残れるもんさ。はい、眠りの手、と。
さて、指輪はゲットした。強い艦娘は大体ダウンさせた。後は……。
「司令官!吹雪です!指輪を下さ、あふん…………」
「結婚!Heirat、ですね!ろーちゃんとHeiratしましょ、ふにゃぁ…………」
「さあ!提督!この足柄と結婚するのよ!大丈夫、花嫁修行はバッチリなんだから!!(男に)飢えた狼なんて誰にも言わせ、はひぃ…………」
数をこなす。半日以内に。
幸い、手伝ってくれる子もいる。
「司令官、睦月型の全員が眠りました。……如月姉さんは最後まで駄々を捏ねていましたけれど……、今度、夜景が素敵なレストランでデートしてくれれば許す、だそうです」
「提督ー、羽黒さんの説得、終わりましたよー!かなり逃げ回られちゃって、大変でした……。相変わらず、姿形はもちろん、匂いも音も気配も全部、完全に周りと同化しますからね、頑張りましたよ」
「古鷹ー、提督ー、五十鈴も説得を聞いてくれたよー!明日の朝を楽しみに待ってる、だってさー!」
三日月、古鷹、加古……。要するに、一番になることを望んでいない子達だ。この子達に、俺の計画を話して、力を貸してもらっている。
「おー、ありがとー!助かるわー!今さっき、陸奥を眠らせたから、もう後ちょっとだー!」
さあ、説得して回ろう。
……「なるほどなぁ、艦娘に順位を付けたくない、かぁ。相変わらず優しいなぁ、キミィ。よし、じゃあ、たまには早く眠ったるわ!!明日の朝、楽しみにしとるでー!!」
……「はい、了解しました。提督の御判断は正しい事です。一番になれないのは、少しばかり惜しいですが……。私も、加賀さんも、皆んなが一緒に一番になれるなら、それで良いんです」
……「……一つだけ、約束して頂戴、Admiral。……これからも、このウォースパイトを、愛して欲しいの。……ふふふ、良いのよ。この艦隊、とっても気に入っているの。まるで、家族ができたみたいで……。皆んながAdmiralとmarriage、素敵なことよ」
あー、助かる。
……艦娘同士は大変仲が良い。当たり前だ、唯一持って生まれた、戦時中の記憶の中の存在なんだからな。
艦娘は、この世界の何者とも繋がりを持たずに生まれてくるが、艦娘同士は、強く繋がり合っているんだ。言うなれば、かけがえのない戦友で、共に笑い合う親友で、何よりも大切な家族なんだ。
裏切ることも、いがみ合うことも、できないんだろうよ。
それでも、提督の一番になりたいのは皆んな一緒。ならば、恨みっこなし、力づくで手に入れよう。とかいう流れだったみたいだが。
でもまあ、しっかりと理性ある存在なんだ、説得には応じてくれたよ。皆んな、口を揃えて、「皆んなで貴方の一番になりたい」だとさ。
……俺には、過ぎた女の子ばっかりだなぁ。
「……悪いね、説得に付き合わせちゃってさ」
「良いんですよ!……その代わり!仮とはいえ結婚なんですから!私のことも、加古のことも、もちろん、他の皆んなのことも……。誰よりも、一番に愛して下さいね!!」
「……ああ、愛しているよ、古鷹も、皆んなも、ね」
あの、実は俺さ、もう五、六回結婚とかしてるんだよね……。
絶対に黙っとこう……。
艦娘
横の繋がりが極めて強い。旅人に向ける愛の形もそれぞれだが、それが原因で仲間同士で争うことは基本的に無い。今回のケッコンカッコカリにおいては、珍しく暴走したが、普段は旅人に暴力を振るう艦娘は殆どいない。
アルガス騎士団団長
スダドアカワールドにおいて著名なアルガス騎士団の団長。よく捕まる。
旅人
人間性がクソ以下だが、器のデカさは相当なもの。