旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ちょっとマジで忙しいので、更新できない日が増えるかも。

更新がない時は察して下さい。


106話 深海棲艦が攻めてきた! 前編

「ぷはー、今日もいいペンキ☆」

 

夏祭りから一週間。殆どの艦娘には、半ば強制的に休みを取ってもらった。

 

戦いがライフワークである艦娘から戦いを奪うのは悪いが、たまには、ね?

 

という訳で今日は休憩の日。

 

もとい、黒井鎮守府閉店の日である。

 

殆どの空母は四泊五日全国食べ歩きツアーに参加して、金剛型とか海外艦はヨーロッパに旅行、最上型は熊野の神戸旅行について行って、駆逐艦の多くは遊園地へ、川内型は嫌がる那珂ちゃんを引きずって山籠り……。

 

……という訳で、今の黒井鎮守府には、殆ど人がいらっしゃらない。

 

普段は沢山の艦娘で賑わっているこの食堂もガラガラですわ。

 

まばらにいる艦娘は、呑んだくれてる響、呑んだくれてる隼鷹、呑んだくれてる武蔵……。

 

なんてこった、たるんどる。

 

え?俺?俺はお座敷の席で鳳翔に膝枕されてるけど?何か問題ある?

 

「……と言うより、鳳翔も休んだら?」

 

いつも家事とか頑張ってくれてるしな。

 

「ふふふ、大丈夫ですよ、旦那様。一昨日は、間宮さんと伊良湖ちゃんと旅行に行きましたし、ちゃんとお休みは頂いてますからね」

 

「もーっと休んで良いのよ?」

 

「いえいえ、家事でも何でも、私が好きでやっていることですから。……こうして、旦那様の側にいれるだけで、私は幸せですよ❤︎」

 

女神かな?

 

「鳳翔は良い嫁さんになるなぁ」

 

「もう、何言ってるんですか?私は旦那様のお嫁さんですよ❤︎」

 

はっはっは、ケッコンカッコカリの意味を理解してない艦娘の多さよ。……カッコカリだから確定じゃないとあれ程言ったよね?

 

 

 

……ん?爆発音?明石……、じゃないな、明石は今秋葉原にいるからな。

 

「何だよ、全く」

 

あー、やだやだ。

 

窓から海を見てみると……、

 

 

 

「……深海棲艦?」

 

 

 

……何だありゃ、見たことがないタイプのやつだ。しかも、数が多い。やたらめったら多い。

 

「……戦艦、でしょうか?千体以上はいますね。……どうしますか?艦娘を呼び戻しましょうか?」

 

すぐ近くにいた大淀が言う。

 

うーん、正直、そこまでやる必要はないと思うんだよね。

 

ここに残った艦娘だけで対処は可能だと思うんだけど……。

 

「にしても、大分近づかれてしまいましたね。あの防衛システムを乗り切ると言うことは、それなりの実力があると言うことでしょうし……」

 

そうなんだよなー。量も質も揃えて、ここまで来られるとなー。対処はできるけども、手が足りない。

 

戦って勝つことは出来ても、鎮守府とか陸地とかを護りながらだと面倒だよなー。勝ったけど鎮守府周辺は更地になりました、じゃ困るし。

 

「……あ、そうでした。明石さんから、こんなものを預かっていたんでした」

 

「……何このスイッチ」

 

「いえ、その、私がいない間に鎮守府に危機が迫った時、押して欲しい、とのことです」

 

お、おう、そうか。

 

「え、じゃあ、押す?」

 

「そう……、ですね。一応、危機ですし」

 

「だなー。……えい」

 

 

 

『alert!alert!alert!』

 

うおっ、サイレンうるさっ!!

 

思わず、スイッチを落としてしまう。

 

するとスイッチから、明石の立体映像が流れ始めた……。

 

『……提督……。貴方がこれを見ていると言うことは、私は既にこの世にいないでしょう……』

 

芝居掛かったセリフを吐く明石の立体映像。嘘つけ、君、五分前までコトブキヤにいただろ。ツイッターで見たぞ。

 

『黒井鎮守府は今、空前絶後の大ピンチなんですね……。しかーし!希望はここにあります!!』

 

何なの?何でそんなテンション高いの?……よく見たら、立体映像の明石の目元にクマがある。……深夜テンションで撮ったんだな?そうなんだな?夜更かしは身体に悪いからやめなさいとあれほど言ったろ?

 

『こんなこともあろうかと!!!用意しておいた秘密のシステムがあるのですっ!!!『明石さーん、もう深夜ですよー?寝ましょーよー!』……夕張ちゃん、これ終わったら電気消すから、あと五分だけ待って!』

 

しかもこれ、自室かよ!同室の夕張に迷惑かけちゃ駄目だろ!!……後で説教だな。

 

『と、兎に角!!凄いシステムなんですよ!!!はい、終わりっ!!!バリアシステム起動!!!……夕張ちゃーん、ごめんねー、じゃあおやすみー』

 

その一言と共に、鎮守府をすっぽりと覆う半円状のバリアが現れた。ウッソだろお前。

 

「……マジかよ」

 

「す、凄いですね、驚きました」

 

形成されたバリアは、深海棲艦の砲撃を見事に防いでみせた。

 

「……この調子なら、鎮守府の防衛は大丈夫だな。……ほら、皆んな起きてー!敵襲だよー!」

 

「ぐー、ぐー……、えへ、司令官、くすぐったいよ……」

 

「あっはっはっはっ!!たまには洋酒も良いねぇ!!……ありゃ?もう昼かい?おっかしいな、さっきまで夜だった筈じゃ?」

 

「あ"ー、頭が痛いな……。お、芋焼酎か。……迎え酒、だな」

 

あーもう。

 

「ほら!敵襲だって!ウチに深海棲艦が攻めて来たんだよ!!起きて!!」

 

全くもう、引き摺って行くしかないか。

 

「大淀も、鳳翔も、出撃だ!付いて来てくれ!」

 

「「はい!!」」

 

 

 

 

 

『…………デ?ソノ体タラクカ?コノアタシガ、アタシトネ級ノ量産型ヲコンナニモ用意シテ、先週カラ攻メル準備ヲシテタッテノニ、ソレカ?』

 

「ははっ、いやー、なんかごめんね、レ級ちゃん。うちの子皆んな休みでさー?また来月くらいならちゃんと相手してあげるから、今日のところは帰ってもらえる?」

 

レ級か、ラミアみたいな見た目だな。……どっちが頭なの?

 

『…………帰レ、ジャネェヨ!舐メヤガッテ!!叩キ潰シテヤル!!!行クゾ、ネ級!!!』

 

『……了解』

 

ネ級は、レ級のちっこい版みたいな子。どっちもかわいいね、うん。

 

あー、あと、舐めるな、だっけ?

 

「いやぁ、あのさ、俺って旅人でさ?」

 

『ア"ァ?何ダ急ニ?』

 

「誰かに守ってもらえる訳じゃないもんで、危機察知能力がないとやっていけないのよ。……つまり、相手を舐め腐って、油断慢心しまくるようじゃ、とっくに死んでるってこと。だから俺は、相手を侮ったことなんて一度もない。唯の一度もね」

 

『何言ッテヤガル?今現ニ、アタシ達ノコトヲ舐メ腐ッテ、ソレッポッチノ戦力デ…………?!!』

 

 

 

やだなぁ。

 

 

 

「適正な戦力だよ?」

 

舐めてるんじゃない、余裕なんだよ。

 

『ーーーッ!!!』

 

すぐ近くのレ級の量産型が、文字通り弾ける。爆発的な殴打によって。

 

「ふむ、少しばかり、固いな。だがそれだけだ」

 

酔っ払う?それが何かな?艦娘を人と同じ次元で語っちゃ駄目だ。飲める量も、分解する力も、人とは段違いなんだよ。

 

「ゴクッ……、ゴクッ……、っぷはぁ!酒を飲んだ後の水は美味いもんだな、酔いもすっ飛ぶ……!」

 

2リットルのペットボトル一杯に詰まった水を飲み干した武蔵に、先程までのような酔いは見られない。犬歯を剥いて嗤うその姿は武人のそれだ。

 

「他所では深海棲艦が艦娘を襲う。黒井鎮守府では、艦娘が深海棲艦を襲う(ロシア的倒置法)。……なんてね」

 

左肩に担いだ巨大な鎖付き鉄球を思い切り投げつける響。肉の詰まった袋を地面に叩きつけたような、湿った音と共に、レ級の量産型が吹き飛ぶ。

 

「ほいほい、っと!お仕事お仕事!働いた後の酒は美味いからなー!……ま、今も飲むんだけどね!アハハハハー!!」

 

日本酒をラッパ飲みしながらも式神をばら撒く隼鷹。ふらふらと揺れる身体とは裏腹に、微塵の狂いもなく動く式神は群としてうねり、雲のように浮かぶ。

 

 

 

「と、言う訳で。今からやるのは防衛戦じゃない。……殲滅戦だ!!!全員突撃ィ!!!!」

 

ノリノリである。俺が。

 

「「「「了解!!!」」」」

 

さ、行くぞ。

 

目にものを見せてやろう。

 

 




武蔵
保護者の大和がいないのを良いことに、昼間から呑んだくれていた。


いつも通り呑んだくれてている。

隼鷹
常人なら死ぬレベルの量を飲む。毎日。

旅人
カッコつけたかった。

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