旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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じっくり考えた挙句がこれ。

最後の棺桶はギターと迷った。



さあ、アメリカ艦とフランス艦はどうするか。


111話 い・ま・に!

地中海。

 

ユーラシア大陸とアフリカ大陸に挟まれた海。

 

古くより多くの文明を繁栄させてきた、人類史的にも特別な意味を持つ海だ。

 

そんな海は今……、

 

『良いですか〜?!地中海はですねぇ、深海棲艦がたーくさんいるんですよー!!ポーラは皆んなと沿岸の警備をしていたんですけど、最近の深海棲艦は追い返すのでやっとやっとなんですから!!それなのに、地中海のど真ん中なんて……!』

 

深海棲艦が我が物顔で闊歩する、死の海と化している、らしい。

 

例の「皺寄せ」、なんだろうか。

 

大暴れする黒井鎮守府の代わりに、他所の海域が犠牲になった、のかなぁ。

 

犠牲になったのだ、日本の犠牲にな……。

 

などと言い張ったら、各方面からめっちゃ怒られることは間違いなし。かと言って、あまり黒井鎮守府の戦力を分散させ過ぎるのも良くないしなー。既に、結構遠い所まで出撃してるし。まあ、地中海にはまだ一度も来てなかったけど。

 

兎に角、戦力の総数を増やして、いろんな海域に派遣するしか無いな、うん。戦力の質は十分だし、後は総数を増やさなきゃ。

 

幸い、アメリカの大統領にメールしたところ、艦娘を二人送るって言ってくれたし。その上、艦娘をなるべく轟沈させないように指示する、とのこと。なんでも、副大統領のクーデターの際に協力した借りを返したいそうだ。助かる。

 

さて、地中海への出撃の件は保留。艦娘が足りないんで。

 

まだそこまで手が伸びないんだよね。大西洋ですら手付かずだから。

 

 

 

あ、いかんいかん、考え込んでる暇はない。今は深海棲艦が船外にいらっしゃるとのことだ。

 

さてさて。

 

『ポーラ、船内にいてくれるかい?ちょっと深海棲艦倒してくるから』

 

『無理無理!無理ですって!大人しく逃げて下さ〜い!ポーラが、ポーラが囮になりま』

 

『じゃ、行ってきます』

 

『せめて最後まで聞いて下さい〜!』

 

さ、かわいいかわいいポーラちゃんは、俺の船にしまっちゃおうねー。

 

……と、言う訳で、うちの深海棲艦を連れて、船外の深海棲艦をやっちゃいます。

 

もとい、殺っちゃいます。

 

決して、仕事が増えたことに関するイライラをちょうどそこにいた深海棲艦にぶつけたいとか、何で俺が海の平和を守らなきゃならないのとか、うちの鎮守府に来る反戦デモの人達の相手辛いとか、そういう邪な考えはない。ないのだ。

 

「さあ、行くぞ!!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

 

おー、数も質もそれなりだな、確かに。

 

船外、海面上に立つ俺と、うちの深海棲艦。時刻は深夜だが、旅人号のライトを点灯させ、視界を確保している。

 

「並ノ艦娘ニハ、荷ガ重イ大群ネ」

 

「んー、なら、「使う」、か?」

 

「……ヤメテオイタラ?アレ、辛インデショ?」

 

「いやあ、今回のは後遺症はあんまりないし、良いじゃん?……じゃなきゃこの、行き場のない怒りが」

 

流石に激おこ。

 

「マア、好キニシタライイワ。……デモ、前ミタイニ、ヤリスギデ倒レナイデヨネ?」

 

「はいはい、大丈夫大丈夫!」

 

さあて、戦いだ。

 

……そして今回は、変異させてもらおう。

 

あー、つまり、前回、三日月は百体以上の深海棲艦を仕留めたが、俺は十体そこらだった。この体たらくっぷりを鑑みると、ここらで久しぶりに、本格的な戦い方を思い出そうと、そう言う魂胆になったのだ。

 

で、変異とは。

 

俺が大して強くないことは周知の事実だろう。だが、俺は一言も、これ以上強くなれないなどとは言っていない。

 

要するに、平たく言うと、俺は弱いから俺自身であることをやめて人外に進化しよう、と言うこと。

 

いつものように、波紋や氣功などの自然由来的な、燃費のいいのを使う訳じゃなく、莫大な魔力や貴重な薬品、禁術に呪いなどなど、そう言うので強くなろうってこと。

 

さあ、行こうか。

 

『呪われたエーテル抗体のポーション』『ジーントニック』『プラスミド』『変異誘発剤』『進化の秘術』『内なる大力』『生命湧き』『獣化の丸薬』『カレル文字「獣の抱擁」』

 

……こんなもんか。

 

…………。

 

……。

 

あ、

 

ああアアア?

 

 

 

『アアアアアアアアアア!!!!!』

 

で き あ が り 。

 

分かりやすく、今の俺の状況を表すと……、肉体は練度カンストの戦艦以上、全身の血肉の一片に至るまで超強化。その上翼が生え、雷雨が急に現れ、鋭い爪が生えた。紅く爛々と光る目玉の瞳孔は猛禽のように縦に割れ、自らの中には燃え上がるような力と、徐々に溢れ出る生命力。エレクトロボルトにサイコキネシス、インフェルノ、ウィンターブラスト、ホーネット。そして、髪が異様に伸び、まるで獣の尻尾のよう。おまけに鋭い牙もある。

 

そう、そうだな、こうなれば、勝てる。こうなれば、殺せる。

 

だが、やっぱり、人間の部分を削ぎ落としていくのは、良い気分じゃない。今の俺は、辛うじて人の形をしているだけの化物だ。

 

だが今は……、

 

『死ね、深海棲艦』

 

叩き潰させてもらう!!

 

 

 

×××××××××××××××

 

い、行っちゃいました……。

 

どうしよう、恩人さん、殺されちゃいますよ……。

 

やっぱり、無理矢理にでもついて行った方が良いですねそうですね〜。

 

よし、ポーラ、行きます!

 

えーと、部屋の鍵、かけられちゃってるけど、今は有事の時ですからね、ごめんなさい壊しちゃいます。えい。

 

……それで、どこが出口かな、地図とかないから分からないですね〜。この船、かなり広いですし〜。

 

考えても仕方ありません、歩き回って出口を探しましょ〜。

 

 

 

『すいませーん、提督ー?……ありゃ?いないのかな……?』

 

……?、声が聞こえた?こっちの方……?

 

『提督ー?……うーん、本日の業務の報告があるのにー!ん?そこにいるのは……?』

 

……モニターに、人が映ってます。何かの艦娘、のように見えますけど……、誰?

 

『あのう……、ピンクのお姉さんはどなたですか?』

 

『あー、うー、英語?じゃなくって、ヨーロッパ系の言葉ね、分からないなぁ……。あ、そうだ、夕張ちゃーん!万能翻訳モジュールってこれよね?……良し、と。もう一回良いかしら?』

 

『えーと、貴女はだあれ?』

 

『よし、良好、と。あ、申し遅れました、私は、黒井鎮守府の工作艦の明石です!以後、お見知り置きを、なんちゃって』

 

身振り手振りで話す、画面の中の艦娘、明石さんは、愛想のいい笑顔が素敵ですね〜。きっと、色んな人に好きになってもらえる人なんだな〜って思います。

 

『ポーラは、セントトリステ鎮守府の重巡、ポーラで〜す!よろしくお願いしますねぇ』

 

今日は良い日だ、他の国の艦娘に会えるなんて、中々ないもん。

 

『……へぇ、提督ってば、また艦娘を……。……へぇ。……まあ、良いでしょう、戦力の増加は喜ばしいですし』

 

……提督?

 

『あ、まだ説明を受けてませんでしたか?彼は……、貴女をここに連れてきた人です、彼は、日本の、黒井鎮守府の提督その人です』

 

『ええー!!』

 

『そして、艦娘の貴女がそこにいると言うことは、提督は貴女を欲しがっています。もちろん、戦力としてですよ?変な勘違いは駄目です』

 

『で、でもですね〜?私は、セントトリステ鎮守府所属の……』

 

『そんなもの、関係ありませんね。提督は貴女を攫います。攫って黒井鎮守府所属にします。……あ、安心して下さい、黒井鎮守府は良いところですから』

 

そ、そんな!攫いますって……?!

 

『ま、待って下さ〜い!攫うなんて言われても、私にはザラ姉さまに仲間達がいるんです!』

 

『チッ、仲間まで……!ライバルが増えてしまいますね!……あ、あー、では、仲間も一緒に攫われます』

 

?、ライバル?、……それより、攫われる、なんて!セントトリステ鎮守府の人達がなんて言うか……!皆んなものすごくものすごーく怒りますよ!!

 

っと、船が揺れた!

 

……あれ?

 

私、なにか大切なことを忘れてるよーなー、そうでないよーなー?

 

………………!!

 

『こ、こんなことしてる場合じゃありません!外!恩人さんが外に出ちゃったんですよ!!!』

 

『えーと、つまり?』

 

うーんと、その、恩人さんは日本の鎮守府の提督さんだったんだよね?だから、

 

『その、提督さんが、お外に出ちゃったの!!深海棲艦でいっぱいなのに!!』

 

『成る程、戦闘ですか。……ところで、貴女の今いる海域は?』

 

『?、地中海ですよ〜?』

 

『………………分かりました、強力な深海棲艦が多数存在するんですね?』

 

え?なんで分かったんですかね〜?ん〜、手元でコンピュータを操作しているみたいですけど、それですかね?

 

『……では、貴女はそこにいて下さい。見た感じ、貴女一人が出たところで戦力になりませんから』

 

え?!だって!

 

『ああ、言いたいことは分かってますよ?……結論から言います、提督は死にません。不死身です』

 

………………は?

 

『こちらのVTRをご覧下さい』

 

そう言って、明石さんはモニターから姿を消した。

 

代わりに今、モニターに流れているのは、恩人さん……、日本の提督さんとその艦娘達の活躍だった。

 

『凄い……!!』

 

提督と、艦娘とが、お互いに背中合わせで戦っている!これが、これが日本の提督!日本の鎮守府!!

 

…………私なんて、自分の提督の顔も見たことがないのに…………。

 

『………………と、もう充分ですね?提督は、死にません』

 

『……じゃあ、それじゃ、ポーラは、ポーラは何も出来ない?足手まとい?』

 

それは、嫌だ。さっきの映像みたいに、恩人さんと一緒に戦いたい!!

 

『……ならば、一つだけ方法があります』

 

『方法?』

 

『貴女でも、まともに戦えるようになる武器ですよ……。テストは面倒くさ、いや、まだなので、安全の保証は出来ませんが……、どうしても、と言うなら……』

 

『……ポーラは、やります!!』

 

『……上出来です!さあ、武器はここです、こちらのポータルに転送しました!通信機も同封したので、武器の使い方を説明しながら戦場に出ますよ!』

 

『はい!!』

 

さあ、武器を、武器、を……?!!

 

『こ、これ……』

 

『多目的複合武装デスホーラー、そして格納された二丁拳銃ケルベロス……。今回も最高の出来ですねぇ。やはり、人よりも優れた身体能力を持つ艦娘の武器ですから、武器のスペックを極限まで上げても大丈夫、と言うところがですね』

 

い、いやいやいや!そうじゃなくってこれ!

 

『その、これ!棺桶じゃないですかーーー!!!!』

 

 




ポーラ
可哀想なことに、明石にうまい具合に兵装のテストをやらされることに。

明石
黒井鎮守府の悪の科学者その一。最近はすぐに碌でもないものを作るので、よく怒られている。懲りないししょげない、ドロンボー一味みたいなメンタル。

大統領
何故なら私は、合衆国大統領だからだ!

旅人
人間やめれば火力が出る。なお、後に後遺症でのたうちまわる羽目に。

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