旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ヤツは空からやってくる。


119話 旅人ンラプソディー

さあ、朝だ。朝食を済ませ、鎮守府内の滑走路に行く。

 

え?ああ、滑走路は明石が作ったよ。

 

だからこうして、皆んなでお出迎え、と言う訳なんだけども……。

 

「はい、もしもし?」

 

『た、助けてくれ!日本の空域に入った瞬間、化け物が……!!』

 

なんか、めんどくさいことになってるっぽい。やだなー、嫌な予感するわー。

 

「落ち着いてくださいよ、パイロットさん。どんな化け物ですか?」

 

『あ、ああ、グリーンで、巨大で……、機体に絡みついていやがる!何とかやっているが、機体の制御が……』

 

あー!航空機に取り付く!緑色の!巨大な!!あー、あーあーあーあー!!めんどくさいぞ!めんどくさいぞこれは!!

 

「な、なあ、提督?あの航空機、緑色の何かが取り付いているんだが……?」

 

あー!もう!

 

「はぁ、間違いない。……あれは、衾だ」

 

「……ふ、衾?」

 

……さっきから凄い震えてるけど、大丈夫か長門?

 

「妖怪だよ。……それも、かなりタチの悪い」

 

あ、長門が立ったまま気絶した……?!

 

 

 

「妖怪って、本当にいたのね……」

 

「む、信じてなかったのか、陸奥?」

 

「正直、いつもの冗談だとばかり……。でも、こうして目の前にいる以上、存在するのよね……」

 

いるよー、めっちゃいるよー。

 

「で、あの、緑色の大きいやつ……、衾、だったかしら?人を食べたりする妖怪、なのかしら?」

 

「ああ、いつもははるか上空を飛び、時折「ごそっと」人を喰うために降りて来るんだよ。でも、最近は航空機を狙うことに味をしめたらしいが……」

 

「間違えて、艦娘二人しか乗っていない航空機を狙った、と……?」

 

「っぽいねー。……まあ、運が悪かったってことさね」

 

あー、クソ、何たってうちを狙うんだ?やめてくれよ……(絶望)。

 

「その、弱点とかは?」

 

「お歯黒の歯といっぱいの炎」

 

「……如月ちゃん、どう?」

 

陸奥は、火炎放射器を標準装備した如月に声をかけるが……、

 

「ええと、私の火炎放射器は、あれだけの質量を燃やし尽くせる程、攻撃範囲が広くないわ」

 

無理だ。本当にいっぱいの炎が必要だ。それこそ、戦闘機のミサイルくらいの。

 

艦娘にもミサイルを装備した子がいるが、攻撃範囲的には燃やしきれるか微妙だし、何より中にはまだ人がいる。

 

つまり……、

 

「あー、嫌だねぇ、結局俺が行くのか。……取り敢えず、全員、石油入りドラム缶用意!ミサイルがある子は撃てるようにしておいて!じゃ!!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

 

×××××××××××××××

 

『『あわわわわわ……!!』』

 

何よ、あれ?!妖怪、ですって?!そんな化け物との戦い方、知らないわよ!!

 

恐怖のあまり背筋が痺れる、身体中が痛む!どうすれば、どうすれば良いの?!

 

訓練もした、実戦の経験も積んだ!けど!空で妖怪と戦うなんて無理よ!!

 

『ど、どうすれば……!!』

 

もう滑走路はすぐそこなのに、このままじゃ着陸出来ない!!

 

『死ぬならせめて、アメリカの海の上が良かった……』

 

『サラ!諦めちゃ駄目よ!』

 

ここで終わるなんて、嫌!!

 

私はアイオワよ?!こんなところで終われるもんですか!!

 

……とは言っても、打つ手が……?!

 

 

 

「ダイナミックお邪魔しまーーーす!!!」

 

 

 

「「What?!!」」

 

「Hallo?」

 

窓から?!何?!誰?!!

 

『Mr.ストレンジャーとでも呼んでくれ給え』

 

ん……?あれ……?この人、どこかで……?そうだ、もらった新しい鎮守府の資料の、提督が……!

 

『貴方、もしかして……、提督?!』

 

『そうだよ(肯定)』

 

提督……!!、……?、え?何でここに?そもそも、どうやって?え?

 

『そ、その、貴方、どうやってこんなところに?!と言うか、何できたの?!危ないわよ?!!』

 

『は、はは、あははははは……。わ、私は、サラは夢を見ているのかしら……』

 

『とにかくエスケープだ!!(集中線)先にパイロットは降ろしておいた、あとは君達だけだから!!さあ!!』

 

『脱出?!!どうやってするのよ?!!非常口が開かないのよ?!こんな状態じゃパラシュートだって』

 

『ナッシンレアリィマタァトゥーミー!!!』

 

『俺には何でこたぁ無い、なんて!!そんな訳』

 

あ、何よ?!捕まった?!……あら、かなり力が強いのね、私以上かも。……じゃなくて!!ちょっと待ちなさいよ?!

 

『どの道、風は吹くのさ!!』

 

『な、何を……?!、ちょ、ちょっと!!飛び降りる気?!外にはあの化け物がいるのよ?!空中で捕まっちゃうわ!!』

 

『それに、さっきも言いましたけど、非常口が開きま』

 

……っな?!!非常口を、無理矢理蹴破って……?!!!

 

ちょ、ちょっと、待ちなさい、そんな、それは……!!

 

『『あ、お、お、落ちるーーーーー!!!!!』』

 

 

 

………………!!!

 

 

 

………………?

 

あ、ら?

 

落ちて、ない?

 

飛んでる……?

 

『参考までに聞きたいんだけど……、海にいる艦娘が空を飛ぶって、どんな気持ちだい?』

 

『悪くないわね……。じゃなくて!一体どうやって?!』

 

『と、飛んでる?!サ、サラ、飛んじゃってる?!』

 

 

『まあまあ、世の中には空飛ぶ人間なんていくらでもいるじゃん!じゃあ、そろそろ下に行こう』

 

彼……、提督はそう言ってふわりと着地して、その次に、

 

「全員!!石油入りドラム缶を思いっきりぶん投げろ!!」

 

と続けた。

 

日本語の勉強はそれなりにしたつもりだけど、石油入りドラム缶を投げる?何で?

 

もしかして、あの化け物を焼き殺す気かしら?でも、着火は……?

 

「菊月ィィィ!!!今だっっっ!!!!」

 

「ターゲット、確認。排除、開始……!!」

 

『な?!艦娘に分裂ミサイル?!』

 

あり得ない、艦娘にあんな現代的な兵器なんて……!!

 

だけど、目の前で起きた爆発は、幻なんかじゃない、現実……!!

 

あれだけの石油を爆発したんだ、一瞬、太陽がもう一つ現れたかのような光とともに、化け物が絡みついた航空機を完全に破壊した。

 

爆炎に包まれた化け物は、かけらも残らずに消滅した……。

 

あ、あれ?

 

助かった……?

 

『サ、サラ!』

 

『アイオワ!』

 

『『た、助かったー!!』』

 

はぁー、正直、死を覚悟していたんだけど……、まさか、生きて日本の土を踏めるなんて!

 

ありがとう、神様!!

 

ありがとう、大統領!!

 

そして……、

 

「Are you ok ?、怪我はない?」

 

「「Thank you very much !!」」

 

ありがとう、えーと、その、提督!!……提督?

 

「その、ちょっと待って……、貴方、貴方がこの艦隊のAdmiral?」

 

「……資料で見た通りの顔、ですけど……」

 

え、冗談でしょう?それじゃあ、最近の提督は飛行機の窓を突き破って現れ、空を飛んで現れるの?……え?

 

「え?さっきそう答えたような……?まあ、良いや。俺、旅人の新台真央です!副業で黒井鎮守府の提督をやっています!よろしくどーぞ!!」

 

え、ええー?

 




アイオワ
転勤。

サラトガ
転勤。

ながもん
オカルトには滅法弱い。

旅人
空を飛ぶことは常識の範囲内だと思っている。

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