旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

123 / 593
駆逐艦雪風

オブジェクトクラス:Keter

駆逐艦雪風は、見た目は十歳くらいの少女です。

現在、艦娘として黒井鎮守府で管理、運用されています。

黒井鎮守府でもトップクラスの攻撃力と回避力がありますが、極めて不確定要素が多い為、最大戦力の一つとして数えられません。

その特異性を陸の上で使用することは絶対に禁止されています。


123話 黒井鎮守府のちいさな魔女(デートその三)

駆逐艦雪風は幸運だ。

 

この世界で一番、幸運の女神ってやつに愛されてる。

 

「常識ですか?しれぇ?」

 

ただ、神様は、

 

「はい!分かってます!人に暴力を振るっちゃ、いけません!」

 

いつだって残酷だ。

 

 

 

「事故だ!!トラックが歩道に!!」

 

「ひ、人が跳ねられたぞ!!」

 

「きゃああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

「し、しれぇ!大変です!反戦団体の人達が!!」

 

「ああ、ありゃ、こっちに向かって来てた反戦団体の連中に綺麗に突っ込んでったな……」

 

「救助をお手伝いした方が……」

 

「あー、いや、その、そう言うのは、プロの仕事だから!近寄らない方が良いと思うぞ!!」

 

「は、はい……」

 

……どうやら、雪風の幸運の女神様は、相当甘いらしい。

 

雪風「だけ」に……。

 

 

 

こう言ったことは良く起こるんだ。

 

恐らく、雪風が、「潜在的に会いたくない」と感じた人間に、災厄レベルの不幸が齎される……。

 

幸運と言う名の、歩く終末。

 

黒井鎮守府の守り神。

 

運勢によって全てを書き換える、現実改変者。

 

それが雪風だ。

 

練度が低い、最初の頃はまだまともだった。

 

例えば、雀荘に連れて言ってみると天和で上がれるとか、カジノでジャックポットとか、宝くじに当たるとか、そんなものだった。

 

だが、雪風の幸運は、練度が上がるにつれて上昇していき、今では運勢が低下する呪いの装備を付けることを義務付けないと、まともに生活させられないレベルにまで達したんだ。

 

今、こうしている時にも、常人なら一歩外に出ただけで事故死するくらいまで運勢を持っていかれる呪いの指輪を付けさせているが、それでもこれだ。

 

多分、この指輪を外せば、大本営に隕石が落ちるんじゃね?いや、マジで。

 

雪風が指輪を外せる唯一の条件は、戦闘時。

 

俺は、指輪を外した雪風の、幸運の女神の暴虐を見たから、そう言える。

 

あれは駄目だ、絶対に駄目だ。

 

幸運の女神は、雪風を、俺を、黒井鎮守府を幸せにしてくれるが、その他の全てを破壊し尽くす。

 

陸で外させる訳にはいかない。

 

「ま、まあ、雪風は良い子だもんな!ちゃーんと常識を知ってるもんな!!」

 

「はい!雪風、良い子にしてます!」

 

うん、良い子だな!「雪風は」!!

 

ヤバイのは能力だけだよ!!

 

雪風自身はとっても良い子だ。少々子供っぽいけど、性根が真っ直ぐで優しい、お手本のような善人だ。

 

何だろうか、兵庫で高校教師をやっていた時を思い出すなぁ。

 

いたんだよ、勤め先の高校にも。

 

思ったことを実現させる、現実改変者が。女子高生だった。

 

……まあ、雪風は、あの子みたいに不思議を探している訳でも、世界を大いに盛り上げようとしている訳でもない。その分、まだマシだ。

 

能動的に動く現実改変者ほど恐ろしいものはないからな。

 

……だが、このまま能力が高まり続ければいずれ、大変なことになるかもしれない。

 

今はまだ、雪風が不快と思った人間が事故に遭う、好いている人物に幸運が齎させる、くらいの小規模な現実改変だ。

 

指輪を外しても、世界規模の現実改変は不可能。

 

……とは言え、その能力が、過去や未来までに及べば?全世界を包み込めば?……確実に、厄介なことになる。

 

財団の独房に繋がれている、あのちいさな魔女のようにならない為にも、色々と考えなきゃな。

 

「雪風、新しいアクセサリーをあげよう。女の子は沢山お洒落した方が良いからさ……」

 

 

 

×××××××××××××××

 

「女の子は沢山お洒落した方が良いからさ……」

 

「はい!」

 

わーい!司令からプレゼント、もらっちゃいました!嬉しいです!

 

「っと、女の子に渡すネックレスがボーン製なんて、良くないな」

 

ボーン……、あ、確かに、骨で出来てますね。

 

「造り替えようか。ゴールデンとか、シルバーとかかな?いや、あからさま過ぎて嫌味だな、ルビナスあたりにしておこう」

 

ルビナス……、前に見せてもらった宝石ですか?!

 

「だ、駄目ですよ!そんな高価なもの!」

 

「あ、大丈夫大丈夫、俺の懐は痛まないから。こうして、素材槌で……、えい」

 

わあ!一瞬で骨のネックレスが赤い宝石のネックレスに!

 

「え?!どうやったんですか?!」

 

「んー?素材槌だよー?このハンマーを使うと、叩いたものの材質を変化させられるんだ」

 

材質を、変化?……うーん、それって、おかしくないですか?だって、骨は、どんなに頑張っても宝石にはなりません。

 

「……えーと、しれぇ?それ、おかしいですよ?上手く言えませんが、骨は、叩いても宝石になりません!」

 

「いやいや、そんなことないよ?じゃあ、このテーブルを、このゴールデン製の素材槌で叩いてごらん?」

 

あ、また、どこかからテーブルとハンマーを……。

 

私は、ちょっとおかしいかなー?って思うんですけど、司令はおかしなことじゃないよ、って言いました。だから、おかしなことじゃないんです!

 

司令は、いっつも正しいですから!

 

「分かりました!えい!……わあ!テーブルが金色に……!」

 

や、やっぱり、司令は正しいです!そうですよね、長年この世界で生きてきた司令は、沢山の常識を知ってますからね!雪風は、まだまだ勉強不足です!

 

「でも、こんな手段で作った金は、レアメタル市場を破壊してしまうから、売りさばいちゃ駄目だぞ?」

 

「はい!」

 

そっか、金が沢山あると、金が珍しくなくなっちゃって大変ですもんね!

 

流石、司令!色々考えてるんですね!

 

「さて、このネックレスだが……」

 

「はい、分かってます!他の人に幸運を分けてあげるアクセサリーなんですね!」

 

「……ああ、そうだよ。とっても幸運な雪風だからこそ着けられるものなんだ。他の子に渡したりしちゃ、いけないよ」

 

やっぱり!前に司令がくれた指輪と一緒で、私の幸運を皆んなに分けてあげるアクセサリーなんですね!

 

私は、十分幸運ですから、この幸運を他の子に分けてあげたいんです!

 

皆んなが幸運になれば、皆んなが幸せになれますよね!それは、きっと、素敵なことです!

 

いつだったか、司令が言ってました。私が一番幸運だと、他の子が一番になれなくて可哀想だろ、って。

 

そう言われると私、くじ引きとかをすると、いつも当たりを引いちゃいますから。その分、他の誰かが外れを引いてるってことですもんね……。

 

「おっと、今すぐ着けなくても良いよ、これから出撃でしょ?深海棲艦の前では、アクセサリーを全部外して良いからね。さあ、頑張って!」

 

「ー!、はい、しれぇ!」

 

司令に、応援されちゃいました!

 

雪風は、司令に応援してもらえると、いくらでも頑張れちゃいます!!

 

それでは、雪風!

 

出撃します!

 

 

 

…………大変です!台風が巻き起こりました!!

 

でも、丁度私のいる所は、台風の目みたいですね!幸運の女神のキスを感じちゃいます!

 

まあ、最近は私が出撃するといつもこうなんですけど。

 

あっ!深海棲艦です!

 

「雪風は沈みませんっ!!」

 

やっつけます!!えーい!!

 

……あ、撃つ前に、雷が落ちて黒焦げになっちゃいましたね。

 

不思議です、私が撃とうと思った深海棲艦は、いっつも雷に打たれてやられちゃうんですよ!「運が良い」ですね!

 

きっと、幸運の女神と、司令のお陰ですね!

 

よーし、この調子で頑張ります!沢山やっつければ、司令が喜んでくれますから!

 

えーと、深海棲艦は……、多分こっちです!

 

「敵影発見です!」

 

「勘で」見つけられました!私も沢山訓練しましたからね、きっと、勘も鋭くなったんだと思います!頑張りました!

 

……深海棲艦、沢山います!

 

あっ!撃ってきました!!

 

あれ?でも……、

 

「?、雪風には、掠りもしません!!」

 

「幸運にも」、一発も直撃せずに済みました!

 

『『『『………………?!』』』』

 

「さあ、今度は雪風の番です!魚雷でまとめてやっつけちゃいます!やー!!……っきゃー!!!」

 

あ、あわわわわ!「偶然」、空から隕石が!!

 

深海棲艦達が、一瞬で潰されちゃいました!

 

た、大変です、隕石が降るなんて……。司令に報告しなきゃ!

 

……あれ?深海棲艦、もういない?

 

さっきの隕石で全滅しちゃいました……。

 

 

 

うーん、私、何もやってないような……?

 




雪風
確率に干渉するタイプの現実改変者。普段は、運勢低下の呪われたアクセサリーを着用させられているが、一度外せば、雪風の敵を滅ぼす為に、人類史に残るレベルの天変地異が起こる。

兵庫県の現実改変者
某世界を大いに盛り上げるための団の団長。能力の範囲と威力がデカすぎる。

ちいさな魔女
某財団に保護されている現実改変者。239番目の特異存在。思ったこと全てが現実になる。

旅人
あちゃー、遂に隕石降らしたかー、とか思ってる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。