取り敢えず一週間くらい休む。
その間に、思いつき集の方にいくつか適当に書いてみますわよ。
……いや、思いつき集は誰も見ないし、いっそ新連載を……。
「ごめんなさい、待たせちゃった……?」
ごめん、待った?とは!「彼女の口から聞きたい言葉」第4位(旅人調べ)である!!
ありふれた言葉、幾人もの男女が繰り返したお約束。だが、そう言ったお約束にこそ、確かな形式美があるのではないか……、俺はそう思うんだ。
「いや、今来たばっかりだよ、矢矧」
このやり取り、大事。めっちゃ大事。たったの二行でカップルみたいじゃん。テンプレとか常識とか、そう言うの大事にしていきたい。
……さて、なんでこうなったのか。
原因は、まあ。
阿賀野だ。
最近構ってもらってないと盛大に駄々を捏ねた阿賀野が、デートしたいデートしたいと粘着してきた故。
阿賀野型全員と行こうか、と思いきや、今回は二人きりが良いとのことで。
結果、阿賀野型は、一人づつデートすることになった。
因みに、デートをしないと言う選択肢はない。折角の休日、美人とデートして悪いかオラ。……もう半年くらい、まともに働いた覚えがないが。何か文句ある?
てな訳で、デート。
デートなのだ。
「そ、その、旅人さん!……手を握っても、良いかな?」
「良いぞ!」
いやぁ、音成の艦娘は良いなぁ、常識があって。守子ちゃんの教育の賜物じゃん?
うちの艦娘なら、人目を憚らずに甘えてきたり、跪いたり、服を脱がせようとしてくるもん。常識って素晴らしいよね!
「は、はい!……えへへ、旅人さんの手、あったかい……」
「それほどでもない(謙虚)」
はー、可愛い。
あ、因みに、デートプランはない。矢矧の行きたいとこに行くぞ。
「さて、矢矧?早速だけど、どこか行きたいところは?」
「え?うーん、お給料もらったから、買い物もしたいし、観たい映画もあるし……、あ、お昼はハンバーガーが良いかな」
「OK、それじゃあ先ずは映画にしよう。買い物は後、荷物ががさばるからな。……と思ったが、映画が始まるまでまだ時間があるな、喫茶店で時間つぶしかね」
映画は、と、これだろうな、今話題の恋愛映画。矢矧はこう言うのが好みだ。
「……なんか、手慣れてるような?」
気のせい気のせい。
デートなんて114514回しかしたことないもん。
「……それで、阿賀野姉がまた転んで!……」
「へえ、そうかいそれは……」
紅茶を飲みながら、たわいのない会話。「コーヒーを一杯」?嫌だね、あれは死にかけたからな。
本当になんてことはない世間話なんだが、矢矧はそれが好きみたいだ。まあほら、女の子は概して、おしゃべりが好きなもんよ。
凄く可愛いおっぱい揉みたい。
おっぱい……、おっぱい、矢矧には、あまり……。まあ、おっぱいを揉むと言うのは精神的なアレだから。例え相手が洗濯板のような胸でも、やろうと思えば揉める。
おっぱいは心で揉むのだ。
あ、もちろん、いやらしい感じの視線は隠す。おっぱいを見るのはいい。だが、相手を不快にしちゃならぬ。
「それでね、提督がね……」
「はは、相変わらずだな……、おっと、そろそろ映画の時間だ。行こうか」
「あ、本当だ、それじゃあ、行きましょう!」
おおーっと、ここで矢矧、俺の手をナチュラルに握るゥー。
「あ、その、す、すいません!……えーと、その……」
「矢矧、もう一度手を繋いでくれるかな?」
「……はい!」
と、最適解を打つける。
極論を言えば、人間関係は選択によって成るものよ。矢矧のような生娘の欲しがる選択肢はよーく知ってますぞ。
生娘を抱いたことなんて1919810回はあるし。……まあ、艦娘には口が裂けても言えないが。良いじゃん、別に。良い女を口説いて抱いて、何が悪いのか。日本の貞操という概念が理解できん。
「いやぁ、中々面白いもんだな、邦画も」
俺が一人で邦画を観ようとすると、何故か「もう一人の観客」と乱闘する羽目になるからな。
「本当、感動しました!」
ゴミを捨てて、映画館から出る。
捨てたのは、Lサイズのジンジャエールの紙コップだけだ。
本当は、映画館の良くあるクソ甘いキャラメルポップコーンを食いたかったんだけどさ、手を汚せないからやめといた。
理由?
「……そ、その、旅人さん?……映画の、ラブシーンの時に、手を握っちゃってごめんね?びっくり、させちゃったよね?」
これ。
……矢矧は、確かに気が強いところがあるけども、根っこの部分はものすごーく「女の子」だ。童貞の中高生が絵に描いたみたいな、理想的な「女の子」。
恐らく、映画のラブシーンの最中にこっそりと俺の手を握ったのは、映画のヒロインと自分を、相手役の俳優と俺を、重ねて見たんだろう。映画みたいな素敵な恋がしたいんだろうな、実に可愛らしい。
「いや、良いさ。折角のデートなんだ、仲良くしよう」
「はい!……えへへ、やっぱり、旅人さんって優しいな」
はい、天使。
さあ、お次は昼飯かね。丁度良い時間帯だしな。ハンバーガーっつってたし、ロッテリアで良いか。
「んー、おいひい!……チェーン店のハンバーガーも中々いけるねー」
「ねー、最近のは侮れないよねー」
うん、OC!
最近のチェーン店は本当に侮れないもんな。結構美味いわ。ただ、何でか付いてきた取り皿が「心臓直撃ディナープレート」なのは勘弁してくれ。心臓が止まると痛いんだ。持ち帰ろう。
矢矧は、艦娘らしく、普通の女の子よりかはたくさん食べるんだが……、まあ、常識の範囲内だ。食事量は大体、大人の男くらいかね、軽巡ならこんなもんか。周りから見れば、運動部の女の子に見えるだろう。
「……その、旅人さんって、戦艦とか空母みたいにたくさん食べるのに……、それで足りるの?」
「ん?ああ、大丈夫だよ?足りなくっても、夜にたくさん食べれば良いし」
心配はもっともだがね、デートだっていうのにそんな真似はしないよ。
食事ってのは、腹一杯食うのも良いけども、もう一つ、楽しむための食事ってもんがある。
……ほら、例えばさ、高級な料亭で、「メニューのこっからここまで全部持ってきて」とは言わないだろ?だって料亭の料理は多彩な味や彩りを楽しむものだから。ガツガツ食うもんじゃない。
デートの食事もそれと一緒。メインは、腹一杯食うことじゃなく、女の子のペースに合わせて、料理の味とか何だとかの会話を楽しみつつ味わうもんだ。
……まあ、確かに量は足りないがな。俺、ハンバーガーで100個とか普通に食うし!(メイン盾)でも、別に一食二食どころか、二、三ヶ月くらいなら飲まず食わずで生きることは可能だし、良いんだけども。
「我慢できる?もっと注文した方が……」
「いやいや、お店の迷惑にもなるからさ、大丈夫、大丈夫!」
てろやきばっが100個持って来いなどとは言わないさ、矢矧の迷惑だし。
さあさあ、お次はショッピングだ。
と、思いきや猫に遭遇。野良猫って謎の井戸端会議してるときあるよね。
「ふぁぁぁ!猫!か、かわいー!!」
『にゃー』
『うにゃー』
『みー』
『ねこですよろしくおねがいします……うぎゃあ』
さ、ミーム汚染はしまっちゃおうねぇ。
「よしよし、いい子いい子!……あれ?どうかした、旅人さん?何かあった?」
「いや?何でもないよー!」
ちょっと昔に古い井戸の底を覗いたらこれですわ。まあ、多少メンタルは強いんで困ってはいないけども。
「あ、いけないいけない!ついつい寄り道しちゃった!」
「まだまだ時間はあるし、ゆっくりでいいよー」
そしてショッピング。これまた下手に、ありふれたショッピングモールで、服やアクセサリーを見て、気を利かせてプレゼントしたりして、普通のデートを普通に楽しんだ。
……俺自身は、一生思い出に残るような派手なデートが好きなんだが、矢矧はそれを望んじゃいない。普通の、ありふれた幸福を望んでいるだけだ。
さあ、家電コーナーを通り過ぎ、出口へ。
「私はトースター」
「?、旅人さん、何か言った?」
「あ、ああいや、ちょっとヤバい、いや、必要なトースターを見つけてしまってね、ちょっと買ってきてもいいかな?」
「?、はい、トースター?分かりました、待ってます」
チッ、油断も隙もねぇ。
夕暮れ。やっとあの子と良い感じ。
この時ズバッと風が吹いたりとか、ブラックホールに消えるやつとかはない。
いたらぶん殴る。
「今日は、とっても楽しかったです!」
俺がプレゼントした小さなネックレスに手を当て、微笑みをくれる矢矧。
「それで、その、えっと……」
モジモジしておられる。
はい、近付いてー?
「……キス、しませんか?」
やっぱりな。
こういう雰囲気だもんよ。
そりゃキスの一つくらいしたくもなるわ。
あー、良いなあ、こういうの。過ぎ去った青春が……、青春が……、青、春?矢矧くらいの年頃の俺、青春とかあったっけ?……いや、やめておこう。
「ああ、ああ、良いともさ。矢矧のお願いなら、何だって聞くよ」
何でもとは言ってない。
さあ、二人は幸せなキスをして終了だ。
キスシーン?ははは、嫌だな、態々言わんよ。
ただ……、矢矧の唇は柔らかかった、とだけ。
さあ、帰って土下座の準備、だな!(飛び交う艦載機を横目で見ながら)
矢矧
かわいい。乙女なので恋人気分でのデートに大満足。
旅人
いつもだったらデート後にホテルでベッドインと行きたいところだったが、我慢した。