旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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このssもなんか伸び悩んできたし、色々と別のssを書いてみます。

取り敢えず一週間くらい休む。

その間に、思いつき集の方にいくつか適当に書いてみますわよ。

……いや、思いつき集は誰も見ないし、いっそ新連載を……。


129話 矢矧です、よろしくおねがいします(デートその九)

「ごめんなさい、待たせちゃった……?」

 

ごめん、待った?とは!「彼女の口から聞きたい言葉」第4位(旅人調べ)である!!

 

ありふれた言葉、幾人もの男女が繰り返したお約束。だが、そう言ったお約束にこそ、確かな形式美があるのではないか……、俺はそう思うんだ。

 

「いや、今来たばっかりだよ、矢矧」

 

このやり取り、大事。めっちゃ大事。たったの二行でカップルみたいじゃん。テンプレとか常識とか、そう言うの大事にしていきたい。

 

 

 

……さて、なんでこうなったのか。

 

原因は、まあ。

 

阿賀野だ。

 

最近構ってもらってないと盛大に駄々を捏ねた阿賀野が、デートしたいデートしたいと粘着してきた故。

 

阿賀野型全員と行こうか、と思いきや、今回は二人きりが良いとのことで。

 

結果、阿賀野型は、一人づつデートすることになった。

 

因みに、デートをしないと言う選択肢はない。折角の休日、美人とデートして悪いかオラ。……もう半年くらい、まともに働いた覚えがないが。何か文句ある?

 

 

 

てな訳で、デート。

 

デートなのだ。

 

「そ、その、旅人さん!……手を握っても、良いかな?」

 

「良いぞ!」

 

いやぁ、音成の艦娘は良いなぁ、常識があって。守子ちゃんの教育の賜物じゃん?

 

うちの艦娘なら、人目を憚らずに甘えてきたり、跪いたり、服を脱がせようとしてくるもん。常識って素晴らしいよね!

 

「は、はい!……えへへ、旅人さんの手、あったかい……」

 

「それほどでもない(謙虚)」

 

はー、可愛い。

 

あ、因みに、デートプランはない。矢矧の行きたいとこに行くぞ。

 

「さて、矢矧?早速だけど、どこか行きたいところは?」

 

「え?うーん、お給料もらったから、買い物もしたいし、観たい映画もあるし……、あ、お昼はハンバーガーが良いかな」

 

「OK、それじゃあ先ずは映画にしよう。買い物は後、荷物ががさばるからな。……と思ったが、映画が始まるまでまだ時間があるな、喫茶店で時間つぶしかね」

 

映画は、と、これだろうな、今話題の恋愛映画。矢矧はこう言うのが好みだ。

 

「……なんか、手慣れてるような?」

 

気のせい気のせい。

 

デートなんて114514回しかしたことないもん。

 

 

 

「……それで、阿賀野姉がまた転んで!……」

 

「へえ、そうかいそれは……」

 

紅茶を飲みながら、たわいのない会話。「コーヒーを一杯」?嫌だね、あれは死にかけたからな。

 

本当になんてことはない世間話なんだが、矢矧はそれが好きみたいだ。まあほら、女の子は概して、おしゃべりが好きなもんよ。

 

凄く可愛いおっぱい揉みたい。

 

おっぱい……、おっぱい、矢矧には、あまり……。まあ、おっぱいを揉むと言うのは精神的なアレだから。例え相手が洗濯板のような胸でも、やろうと思えば揉める。

 

おっぱいは心で揉むのだ。

 

あ、もちろん、いやらしい感じの視線は隠す。おっぱいを見るのはいい。だが、相手を不快にしちゃならぬ。

 

「それでね、提督がね……」

 

「はは、相変わらずだな……、おっと、そろそろ映画の時間だ。行こうか」

 

「あ、本当だ、それじゃあ、行きましょう!」

 

おおーっと、ここで矢矧、俺の手をナチュラルに握るゥー。

 

「あ、その、す、すいません!……えーと、その……」

 

「矢矧、もう一度手を繋いでくれるかな?」

 

「……はい!」

 

と、最適解を打つける。

 

極論を言えば、人間関係は選択によって成るものよ。矢矧のような生娘の欲しがる選択肢はよーく知ってますぞ。

 

生娘を抱いたことなんて1919810回はあるし。……まあ、艦娘には口が裂けても言えないが。良いじゃん、別に。良い女を口説いて抱いて、何が悪いのか。日本の貞操という概念が理解できん。

 

 

 

「いやぁ、中々面白いもんだな、邦画も」

 

俺が一人で邦画を観ようとすると、何故か「もう一人の観客」と乱闘する羽目になるからな。

 

「本当、感動しました!」

 

ゴミを捨てて、映画館から出る。

 

捨てたのは、Lサイズのジンジャエールの紙コップだけだ。

 

本当は、映画館の良くあるクソ甘いキャラメルポップコーンを食いたかったんだけどさ、手を汚せないからやめといた。

 

理由?

 

「……そ、その、旅人さん?……映画の、ラブシーンの時に、手を握っちゃってごめんね?びっくり、させちゃったよね?」

 

これ。

 

……矢矧は、確かに気が強いところがあるけども、根っこの部分はものすごーく「女の子」だ。童貞の中高生が絵に描いたみたいな、理想的な「女の子」。

 

恐らく、映画のラブシーンの最中にこっそりと俺の手を握ったのは、映画のヒロインと自分を、相手役の俳優と俺を、重ねて見たんだろう。映画みたいな素敵な恋がしたいんだろうな、実に可愛らしい。

 

「いや、良いさ。折角のデートなんだ、仲良くしよう」

 

「はい!……えへへ、やっぱり、旅人さんって優しいな」

 

はい、天使。

 

さあ、お次は昼飯かね。丁度良い時間帯だしな。ハンバーガーっつってたし、ロッテリアで良いか。

 

 

 

「んー、おいひい!……チェーン店のハンバーガーも中々いけるねー」

 

「ねー、最近のは侮れないよねー」

 

うん、OC!

 

最近のチェーン店は本当に侮れないもんな。結構美味いわ。ただ、何でか付いてきた取り皿が「心臓直撃ディナープレート」なのは勘弁してくれ。心臓が止まると痛いんだ。持ち帰ろう。

 

矢矧は、艦娘らしく、普通の女の子よりかはたくさん食べるんだが……、まあ、常識の範囲内だ。食事量は大体、大人の男くらいかね、軽巡ならこんなもんか。周りから見れば、運動部の女の子に見えるだろう。

 

「……その、旅人さんって、戦艦とか空母みたいにたくさん食べるのに……、それで足りるの?」

 

「ん?ああ、大丈夫だよ?足りなくっても、夜にたくさん食べれば良いし」

 

心配はもっともだがね、デートだっていうのにそんな真似はしないよ。

 

食事ってのは、腹一杯食うのも良いけども、もう一つ、楽しむための食事ってもんがある。

 

……ほら、例えばさ、高級な料亭で、「メニューのこっからここまで全部持ってきて」とは言わないだろ?だって料亭の料理は多彩な味や彩りを楽しむものだから。ガツガツ食うもんじゃない。

 

デートの食事もそれと一緒。メインは、腹一杯食うことじゃなく、女の子のペースに合わせて、料理の味とか何だとかの会話を楽しみつつ味わうもんだ。

 

……まあ、確かに量は足りないがな。俺、ハンバーガーで100個とか普通に食うし!(メイン盾)でも、別に一食二食どころか、二、三ヶ月くらいなら飲まず食わずで生きることは可能だし、良いんだけども。

 

「我慢できる?もっと注文した方が……」

 

「いやいや、お店の迷惑にもなるからさ、大丈夫、大丈夫!」

 

てろやきばっが100個持って来いなどとは言わないさ、矢矧の迷惑だし。

 

さあさあ、お次はショッピングだ。

 

 

 

と、思いきや猫に遭遇。野良猫って謎の井戸端会議してるときあるよね。

 

「ふぁぁぁ!猫!か、かわいー!!」

 

『にゃー』

 

『うにゃー』

 

『みー』

 

『ねこですよろしくおねがいします……うぎゃあ』

 

さ、ミーム汚染はしまっちゃおうねぇ。

 

「よしよし、いい子いい子!……あれ?どうかした、旅人さん?何かあった?」

 

「いや?何でもないよー!」

 

ちょっと昔に古い井戸の底を覗いたらこれですわ。まあ、多少メンタルは強いんで困ってはいないけども。

 

「あ、いけないいけない!ついつい寄り道しちゃった!」

 

「まだまだ時間はあるし、ゆっくりでいいよー」

 

 

 

そしてショッピング。これまた下手に、ありふれたショッピングモールで、服やアクセサリーを見て、気を利かせてプレゼントしたりして、普通のデートを普通に楽しんだ。

 

……俺自身は、一生思い出に残るような派手なデートが好きなんだが、矢矧はそれを望んじゃいない。普通の、ありふれた幸福を望んでいるだけだ。

 

さあ、家電コーナーを通り過ぎ、出口へ。

 

「私はトースター」

 

「?、旅人さん、何か言った?」

 

「あ、ああいや、ちょっとヤバい、いや、必要なトースターを見つけてしまってね、ちょっと買ってきてもいいかな?」

 

「?、はい、トースター?分かりました、待ってます」

 

チッ、油断も隙もねぇ。

 

 

 

夕暮れ。やっとあの子と良い感じ。

 

この時ズバッと風が吹いたりとか、ブラックホールに消えるやつとかはない。

 

いたらぶん殴る。

 

「今日は、とっても楽しかったです!」

 

俺がプレゼントした小さなネックレスに手を当て、微笑みをくれる矢矧。

 

「それで、その、えっと……」

 

モジモジしておられる。

 

はい、近付いてー?

 

「……キス、しませんか?」

 

やっぱりな。

 

こういう雰囲気だもんよ。

 

そりゃキスの一つくらいしたくもなるわ。

 

あー、良いなあ、こういうの。過ぎ去った青春が……、青春が……、青、春?矢矧くらいの年頃の俺、青春とかあったっけ?……いや、やめておこう。

 

「ああ、ああ、良いともさ。矢矧のお願いなら、何だって聞くよ」

 

何でもとは言ってない。

 

さあ、二人は幸せなキスをして終了だ。

 

 

 

キスシーン?ははは、嫌だな、態々言わんよ。

 

 

 

ただ……、矢矧の唇は柔らかかった、とだけ。

 

 

 

 

 

さあ、帰って土下座の準備、だな!(飛び交う艦載機を横目で見ながら)

 




矢矧
かわいい。乙女なので恋人気分でのデートに大満足。

旅人
いつもだったらデート後にホテルでベッドインと行きたいところだったが、我慢した。

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