僕はかわいそうなくらいに知能が低いので、優しい感じの目で見て下さいね。
あととねちくも次の機会に出します。それは確定として、あとは誰を出すか……。
「っ、おい、先行するな!連携して……!いや、良いか。嵐なら大丈夫だな」
改造改修の結果か、艤装の脚底部から高熱を発し、蒸気の足跡を残して駆ける嵐。
腰の探照灯は夜の闇に溶けることなく、炎のように赤く輝いている。
「……まあ、態々連携する必要もないしな。馬鹿げた話だが、黒井鎮守府の艦娘の個々の実力は異常なものだ」
戦艦なら、鉄壁の防御と理外の膂力。
重巡軽巡なら、心技体の総合力。
僕達のような駆逐艦なら、卓越した技量と桁外れの速力。
……故に、駆逐艦の多くは、艤装を大きく改造改修し、不足しがちな火力を高めている。
特にその中でも、陽炎型は異質……。
「おぉりゃあ!!!」
……素手なんだ。
確かに僕達は、度重なる改造改修で、身体能力も高まっている。しかしそれでも、正面切って肉弾戦をするには心許ない。
だが、僕達は、駆逐艦は馬鹿ではない。
陽炎型も然り。
実のところ、駆逐艦の最も大きな強みは、技量でも速力でもなく……。
『シィ……、ネェ……!!』
「超変身!!」
『…………?!!』
「個人個人の特異性」なんだ。
「こっちだ、深海棲艦!!」
『?!!』
嵐の探照灯の光は、炎の赤から流水の青。一瞬で泊地棲鬼を飛び越えた。
……例えば島風。集中と同時に全ての出力を速力に回し、視認されない速さで駆ける。
……例えば曙。ジャバヴォックと称される右腕の手甲に機能を集約。圧縮空気、電磁誘導などによる異常な威力の砲撃及び鋭利な爪。
……例えば電。少林寺拳法とそれに合わせた艤装の柔軟化。伸縮自在の龍を模した手甲。旗のような槍。
駆逐艦は一芸に秀でるんだ。
そして嵐は……、
「まだまだァ!行くぜ!超変身!!!」
超変身……。
艤装出力の即時変換による戦闘スタイルの急速変化。
今、嵐の探照灯の色は大地を司る紫。この場合、艤装のエネルギーは装甲とパワーに振り分けられる。
「折れ、ろぉ!!!」
『ギィ…………?!!』
この時の嵐の腕力は、戦艦に匹敵するだろう。
その力を以って、泊地棲鬼の砲を一本、無理矢理に引き千切る。
「はっ、丁度いいな、これ。「貰う」ぜ……!」
そして、嵐の手にある砲は姿を変え、紫の両刃剣に作り変えられる。
これが嵐のもう一つの特異性。導き出した答え。
……モーフィングパワー。
詰まる所、武器の現地調達だ。触れた物質を再構成して自分の艤装に変換する。強力な能力だ。
「オラ、返すぜっ!!!」
『ーーーーーッ?!!!!』
泊地棲鬼の腹部を貫く紫の剣。
引き抜くと同時に蹴り付けて跳躍。そして、
「超変身!」
今度は疾風の緑だ。今の嵐には世界が止まって見える。
「……そこだ!!」
ミリ単位の精度で放たれた砲撃は、泊地棲鬼の弱点を正確に貫いた。
腹の傷口、瞳、口内、関節、装甲の接合部……。
緑の時は砲撃の威力も向上しているらしく、泊地棲鬼の肉体はほぼ破壊された。
「トドメだ……。超変身!」
再度赤へ。
両手を広げて腰を落とす。
……ああ、また「アレ」か。
艤装の出力を脚部に集中。海の上に炎が走る。
そして飛翔。
一回転。
「うぉりゃあああああ!!!!!」
……蹴撃。
破壊の一撃。
所謂、必殺技だな。
「なんだよ、こんなもんか?これなら、「金色」も「黒色」も使わないで済むな」
奥の手、使うまでもなかったみたいだ。
でもな、緩すぎる。
「油断するなよ、ここは戦場だぞ?」
「あー、分かってる分かってる。……初月こそ油断を……」
「ふん、僕は油断なんて……」
後ろか。
「していないさ」
甘いんだよ、深海棲艦。盾で防ぐ。
全く、今度は僕の番、か。
まあ、いいさ。
見せてやる、僕の力を……!
×××××××××××××××
ああ、やっぱ気付いてたか。
後ろに深海棲艦がいる、油断するなって言ってやろうかと思ったんだけどな。
余計なお世話だな、そりゃ。
しかしよ、構えたのは盾だぜ、盾。
ウチの駆逐艦は皆んな何かしら凄い技を持ってるもんだけど、初月は……、秋月型は変なんだよ。
だってよ、深海棲艦とインファイトするんだぜ?
いや、俺はそもそも、ちゃんと避けるし、どうしてもって時はタイタン……、紫の力を使うし。でも、秋月型は違う。戦艦みてえに戦うんだ。
「ゴッドライジンソード……!」
おお、いつ見てもスゲーな、盾から剣が生えてる。
「せい!はっ!とりゃあ!」
『シィ、ガッ……?!!!』
ははっ、深海棲艦を斬りつけやがった。
勿論、深海棲艦だってタダじゃやられねえ。反撃だってしてくる。初月は盾で防ぐけど、相手は鬼の改良型。パワーでは負けるだろ、フツー?でも、こいつは違う。
「効かないな!」
真っ正面から受け止めちまうんだ。それこそ、長門さんみてえに。
……何だったかっけかな?夕張さんが言っていた、ネオトピアの技術、だったか。感情をエネルギーに変換する、反則パワーだ。
そんで、初月は……、
「僕の戦う勇気は提督が支えてくれる。勇気ある限り、僕は決して倒れない……!」
原動力:勇気、ってか。
はっ、ぶっ飛んでるぜ。要は気合いでパワーを上げてるんだ。普段はクールだけど、根っこの部分は熱血なんだ、こいつ。
「大事なことも、やりたいことも、新しい世界へ飛び出すスリルだって、提督が教えてくれた!だから!」
と、まあ。
戦いの時はちょっとばかりテンションが高いんだよな、初月。でも、テンションが高いってことは、
『ーーーーー?!!』
「ハイパー!!!」
出力が上がるってことだ。稲光が刀身に宿り、
「サンダー!!!!」
踏み込んだ。泊地棲鬼は動かない。いや、動けない。さっきの斬り合いの時、初月が盾で攻撃を受けると同時に拘束光線を当てたからだ。勿論、拘束なんて数秒が限界だ。でもよ、
「クラーーーッシュ!!!!!」
必殺の一撃を放つのには十分だ。
『ーーーーー!!!!』
電熱の剣で十字に斬り捨てられた泊地棲鬼は、四つに分かれて崩れ落ちる。勝負あり、だな。
「愛する力は「絶対無敵」なんだよ。覚えておけ、深海棲艦……」
愛する力、ねぇ。
「……終わりか。巡回に戻るぞ。……何だ?言いたいことでもあるのか?」
「べっつにー?ただ愛がどうとかー?」
「う、聞こえてたのか?…….まあ、事実だからな!僕と提督が愛し合っているのは!」
は?ちょーっと気に食わねえなぁ?
「おいおい、司令は俺のヒーローだぜ?ヒーローは、同じヒーローであるこの俺と添い遂げるのが当たり前だろ?」
海だけじゃなく、世界の平和だって守るんだ。司令と一緒にな。いや、腐った政治家だの軍部だので、この世界は間違ってるからな。一度ぶっ壊して、司令を主軸に作り直した方が手っ取り早いか?
「……馬鹿だろ、お前。提督に自分の願望を押し付けるなよ。妻って言うのは旦那の言いつけを良く聞くものだろ」
「あ"?ただ言うことを聞くだけならロボットだってできるぜ?司令は色んなことをやるのが好きなんだよ。俺が手を引いてやった方が良いね」
「………………」
「………………」
『『〜♪〜〜〜♪♪♪』』
チッ、何だ、通信か。
「……はい、こちら嵐」
「……もしもし、初月だ」
『おー、こんばんわ、二人とも。そろそろ上がって良いぞ!遅くまでありがとな!』
「司令!!!」「提督!!!」
『はっはっはー↓仲良くしてた?』
うう、それは……。
『あら?ケンカしちゃった?……まあ、そんな時もあるさ。でも、俺は皆んなで仲良くやっていきたいと思ってるから。ちゃんと話し合ってね?暴力はいけない』
「……分かってるよ。初月は大切な仲間だ。暴力は振るわない。でも……」
『主義主張が違うのは当然だ。良いんだそれで。物事をどう考えるかは個人の自由さ。押し付けは良くない』
「……そう、だな。僕もちょっと、強く言ったかもしれない」
『皆んな違って皆んな良い、だよ。信条も愛の形も人それぞれ、ってね。余談だが愛=破壊と考えるナチ公に会ったことがあってな。あれはヤバかった。魂レベルの破壊は結構効くからな』
「はあ……?」
何の話だ?
『兎に角、二人とも帰っておいで?早く二人に会いたいなー』
「おう!」「ああ!」
りょーかいりょーかい!しゃーない、司令が会いたいってんだ。最優先事項確定!!
「じゃ、帰投するか!」
「ああ、提督に報告だ。……鬼の改良型を殺ったんだ、沢山褒めてくれる」
そうだな、そうだ、それでいい。
ケンカなんてしてる場合じゃねえや!
司令に呼ばれりゃ、地獄の果てにだって行くんだからな!
嵐
究極の病み。四つ(と一つ)の戦闘スタイルを切り替え、柔軟に戦う。旅人の事となると、旅人中心の思考回路と歪んだ正義感を振りかざす魔人になる。基本的にはいい子。普段は、謎のヒーロー夜戦仮面と共に街中で悪人と戦っている。
初月
絶対無敵。自分が一番まともで、キチガイ揃いの黒井鎮守府の艦娘から旅人を守っていると思い込んでいる。愛情と言う名の狂気で出力を上げ、パワーでゴリ押しする。将来は旅人と結婚し、キャリアウーマンになりたいとのことで、普段は勉学に励んでいる。
ナチ公
ロンギヌス振り回す金色の獣。クソ強い。
旅人
何となく、修羅場の匂いがしたので急いで通信。危機察知能力なら世界一かもしれない。直感A+++。