あれで16歳ですからね、竹之内さん。番長なだけある。
クロ高はぶっ飛んでやがるぜ。
あ、なんかまたランキングに載ったみたいで。はい。ありがとうございます。
……正直、戦闘シーンはあんまり求められてないと思ってたんですが。もう何を求められてるのか私には分からない。
『緊急会議ヨ』
ワタシの名前は集積地棲鬼、◾︎◾︎歳。
現在、管理者としてこの地中海で深海棲艦の生産及び改良を仕切っている。
量産型の深海棲艦の生産、各地への移送、新型の開発……、どれを取っても貢献度で右に出る奴はいない。
戦艦棲姫でさえ一目置く存在だ。
だが、そんなワタシは今、一つの大きな悩みと戦っていた。
……黒井鎮守府!!
私達深海棲艦最大の敵。最大の障害。
曰く、大斧を振り回す雷巡が空を飛び襲いかかってきた。
曰く、四体の重巡が闇に溶けるように姿を消し、深海棲艦の急所を貫いた。
曰く、海中からフルスペックのアハトアハトがせり出て火を噴いた。
曰く、地味な雰囲気の駆逐艦がローラーのついた艤装で海上を不規則に滑り、全身の火器の弾丸をばら撒いた。
揚陸艦の朱槍は一振りで五体は殺す、刀一本で暴れまわる軽巡、鉄槌を振り回す駆逐艦……。
大凡入手可能な情報には全て目を通したが、あれは異常だ。化け物だ。
確かにこちらの戦力は莫大だが、あんなものと真正面からやり合いたくはない。そんなものは愚策も愚策。貯めた預金をソシャゲに突っ込むような馬鹿げた案だ。
故に仲間内で話し合い、会議を以って作戦を練る。無策で挑むことだけはしたくない。せめて対策だけでも教え込まねば。
『ソンナモンハドウデモイイ!!早ク殺ラセロ!!アタシヲ虚仮ニシタアイツラハ海ニ沈メナキャナラネェ!!!』
『レ級、焦ラナイデ。機会ハアル』
『会議?』
『何カアッタノカ?……ソモソモ何故レ級トネ級ガイル?』
相変わらず、纏まりがない。
汚名返上に躍起になるレ級と、付き従うネ級。
ボーッとしている飛行場姫。
まともなのは中間棲姫くらいか。
『何カ、作戦ガ必要ダ』
『全戦力デ潰ス以外ネェダロ?!』
ちっ、聞き分けのない。
前にあれだけの醜態を晒したと言うのに、また無策で突っ込む気なの?
……口には出さないが。こういう手合いは怒らせると面倒だ。
『ソレハ効果的デハナイワ。一部戦力ヲ地中海ノ外ヘ』
『データハ海ニ流シタダロ?!』
……確かに、造った深海棲艦のデータ、そして怨念や資材は海に明け渡し、また引き出すことができるようにしてある。黒井鎮守府の襲撃に気付いた時には、全てのデータ、全ての資材を海に還した。
だが、深海棲艦も艦娘と同じく、一度造って形になってしまえば、資材に戻すことはできないのだ。
今ここ、地中海には多くの深海棲艦がいる。私が造ったテスト用であり、改良型でもある様々な深海棲艦が、だ。
戦艦棲姫にせっつかれて造った鬼クラスの改良型、エリートが数百。フラグシップも幾らか。更には姫クラスも、テスト用だが数体、その他諸々千体以上……。
並の鎮守府なら正面から潰せるような深海棲艦をこんなところで使うのは惜しい。どうにかして他所に回したい。
『データガアレバ幾ラデモ造レンダロ?!今アンノハ使ッチマエヨ?!!ビビッテンノカ?!』
『……長イ目デ見タ場合、ココデ無駄ナ消耗ヲ避ケルベキダ、ト言ッテルノ。今アル戦力ハ殆ド出撃サセルガ、出来ガ良イノハ離脱サセル』
これだから脳筋は……。
数の上で優っていて、個々の性能では及ばない相手なんだぞ?なるべく戦力を分散、戦闘を長期化させるべきだろう?
もしも、世界中の深海棲艦と黒井鎮守府の全てが真っ向勝負してみろ。勝率は五分五分だぞ。
……今回こちらに来ている黒井鎮守府の連中も、勿論全戦力ではない。良くて半分以下くらいか。それでも、脅威だ。ここにある深海棲艦を全てぶつけて、何体か殺せるかどうか……。
そんな賭けをするくらいなら、より戦略的な手法を用いるべきだろう。
こちらの位置は未だ把握されていないようだ。因みに、エーゲ海に陣取っている。
一方、黒井鎮守府の連中はシチリア島付近にいる……、筈だ。その辺りの深海棲艦の反応がごっそり消えたから、多分そうだろう。
戦略的には、全力で交戦を避け、全軍で離脱すべき場面だが……。戦艦棲姫は、海はそれを許さないだろうな。一応でも戦わなければ。
全く、だから中間管理職なんて嫌だと言ったんだ。上司も部下も同僚も皆使えない……。
何が、「鉱物資源の豊富なエーゲ海で好きなだけ研究をしていい」だ。とんだブラック企業じゃないか。
『……少ナクトモ、ココニ誘キ寄セルコトハ確定ネ。地ノ利ガアルシ』
飛行場姫が言う。まあ、間違いではない。だが、それだけでは足りない。
ワタシの目的は、「戦力の撤退」だ。勿論、私を含めて。
一応は戦艦棲姫に救援を要請した。増援を用意するらしい。ワタシ達姫クラスが逃げることは可能だろう。
つまり、「ある程度の損害を出して」、「やられたふりをして撤退」、と言う訳だ。
……そうだ。いっそ、交戦の前に戦力を逃がすか。開発したステルスマントを被せて、後で出発させよう。
そして……、
『考エルマデモネェ!ココノ戦力全部ナラヤレル!!』
この馬鹿。
……まあ、確かに、手の込んだ策は力ですり潰される。シンプルに、それは理解できるが。
『レ級、出撃ハマダダ。明朝ト同時ニ周辺国家ニ爆撃、ココニ艦娘ヲ誘キ寄セル』
『ア"ァ"?命令ナンテ……』
『協力セネバ勝チ目ガ薄クナル』
ああ、面倒だ。理性的でない奴は面倒だ。大騒ぎするレ級をネ級と共に宥め賺す。これだけでタイムロス。
『……デモ、ソウ簡単ニ来ルカシラ?罠ダッテバレバレジャ?』
ふむ、中間棲姫の言う通りだ。しかし、そんなものはどうとでもなる。
『何、奴等ハ艦娘。人々ヲ守護スル者。ナラバ、人ヲ襲エバ必ズ来ル』
適当にちょっかいを出せば来るだろう。どんなに逸脱しようとも、艦娘は艦娘。深海棲艦が人を襲うように、艦娘は人を守らねばならない。
そこを違えれば、奴等は人の世界で生きることが出来なくなるからな。人ならざる力を持って生まれた運命、か。
人という愚かしくか弱い生き物の命を守って生きるなんて私はごめんだ。
まあ、なんにせよ、「近くで襲われている国家を無視する艦娘などあり得ない」。……来て欲しくはないが、呼ぶのは簡単。儘ならないな、この世界は。
さて、仕事だ。
気持ちを切り替えねば。
まずは、警戒すべき艦娘から……。
×××××××××××××××
会議、会議ねぇ。
『ボーットスルナ、飛行場姫』
『ア、ウン』
長いんだよなぁ、集積地棲姫の話は。
『エー、次ハコイツ。睦月型ノ十番艦、三日月ルプスレクスダ。駆逐艦トハ思エナイパワート変則的ナ機動、圧倒的ナ戦闘センス。メインウェポンハメイスダカラ、制圧力ハソコマデデモナイ。鬼クラス以下ナラ近ヅイタラ三秒デ殺サレルガ』
プロジェクター(海面投射式、集積地棲姫作)に映る黒髪の女。
片腕を喪い胸を槍で貫かれても再起動しそうな見た目だ。
《私はまだ止まらない。止まれない》
無駄に音声付き。
《うるさいです……。貴女、消えて下さい》
なにこれ、こわい。
『中途半端ニ追イ詰メルト目ガ赤ク光ッテ暴走スルラシイ。殺スナラ一撃デダ』
《邪魔です》
ひっ、生首引っこ抜いてる……。スピード的に視認するのがやっとなのに、所謂変態機動まで……。どうするの、これ。正直、一対一で勝てるかどうか……。
『コッチハ、白露型二番艦、時雨ダ。隙ヲ突ク能力ガ異様ニ高イ。懐ニ入レルナ、絶対ニ』
《ハぁぁぁ……。血だ、血の香りだ。薄汚い屑鉄共、腐った臓腑を掻き出してやる》
うっ、内臓を……。
確実に殺すと言う点では有効かもしれないけど……。でも、これは……。これは戦ってなんかいない。一方的な狩りだ。
《見えるんだよ、僕には……。だから視界に入らないでおくれよ、不快だ。君は腐敗した同胞のような者どもを見せつけられる苦痛が理解できるかい?纏わりつく海綿だね、残酷じゃないか……》
第一、目が、目付きがおかしい。……敵を見ていないのだ。どこか遠くを、見えない何かを見ているみたいで気味が悪い。
『コチラモ、中途半端ニ追イ詰メルト自刃シテ自己強化スル。ナルベク一気ニ追イ込メ』
自刃して強化って何よ(哲学)。……あ、映像だ。……血を纏う斬撃?どうなってるのこれ?しかも発火してるし……。
『コレハ長門。ゴリラダ。無敵ナノデ関ワルナ』
雑ゥ?!
《はっはっは!効かん効かん!!その程度か深海棲艦!!!》
……でも、砲撃爆撃の雨霰の中を笑いながらノーガードで歩いてる。あながち無敵ゴリラで合ってるかも……。
『コレハ陸奥。ゴリラノ相方ダ。ゴリラ程デハナイガ概ネ無敵ダ。爆発物ミタイナモノダカラコイツニモ近寄ルナ』
また雑な……。段々面倒臭くなってきてない、集積地棲姫?
《はぁい、おしまいっ、と!……全然駄目ね、そんなステップじゃ私に届かないわよ?もっと綺麗に踊りなさい?》
でも、軽いステップと同時に、長門型戦艦の超パワーで蹴りつけられた深海棲艦は、爆薬が体内で弾けたみたいに吹き飛ぶ。成る程、爆発物だ。
ゴリラと爆発物は危険。ワタシ、覚えた。
三日月は悪魔で、白露型は狩人。金剛型はヤクザ、北上大井は火力オバケ、ドイツ艦は移動要塞、菊月はイレギュラー絶対殺すウーマン……。
……ん?あれ?危険じゃない艦娘は?
集積地棲姫
深海側のマッドサイエンティスト。深海棲艦の改造を始め、色々とやっている。
レ級
対黒井鎮守府用に艤装を強化しに来ていた。