おまけに「職業、艦娘。」をつけておきました。
誰も分からないであろうネタを書くのは楽しいです。
《ボルトォ、ここの酒ウメーな!》
「………………」
こんばんわ。すっかり夜ですね。私が管理しているここ、居酒屋鳳翔にも、沢山のお客さんがいらっしゃってます。
名前に反してお店ではなく酒保のようなものですから、いつもは艦娘しか来ないんですけど……。
でも、たまに、提督のお知り合いの方が訪れたりもします。
私としては、料理を食べて、お酒を飲んで楽しんでもらえるのは嬉しいことです。
鎮守府の保安と言う意味では、外部の方を入れるべきではありませんけどね。
ですが、提督が許可を出しましたから。提督が白と言えば鴉も白色です。
ですから、
《何だ?何見てやがる?このテロメア様に文句でもあんのか?》
「………………」
背中から機械の蛇が生えた、グラサンコートの怪しい男も、
「「「「ヒャッハー!!!」」」」
ヘルメットの男に率いられたモヒカン集団も、
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎…………』
全身刺青の中東系の男も、皆んな、お客さんなんです。はい。
……時々、「あれ?この人、ここにいて良いんでしょうか?」みたいな人が来ますけど、提督はお叱りになりませんから。
多分、良いってことなのかと。
ああ、それにしても……。
《ぐおっ、何だこれ?このテロメア様が酔っ払う?……おいボルト、この酒、「遺物」かなんかか?》
「……知らん」
「「「「ヒャッハー!!!」」」」
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎」
「やあ。女将さん、ごはんは炊いてあるかな?ごはんを食べないと、お腹がすくじゃないか」
『へぇ、仕事抜きでもお付き合いしたくなるような美人ばっかりだな、艦娘ってのは。……おいニック、帰るなよ?!たまには付き合えよ!』
『チッ……』
「ギョーザ、大葉入りのギョーザをくれ。……ニカイドウの程じゃねーけど、ここのもウメェ。酒は特にいける」
………………繁盛してますね(思考停止)。
……あの人なんて暴れられたら止める自信がありませんし、あっちの人は人間じゃない。この前提督に爆弾で吹き飛ばされた人まで……。
正直、ここに来ているお客さんの戦力で並みの鎮守府とやり合えるんじゃないでしょうか……。類は友を呼ぶ、とでも言いますかね、提督のお知り合いはびっくりするくらいに強くて、それで提督と同じ様なキチガ、いえ、その、変わった方ばかりでして……。
どうしましょう……、皆さん頭がおかし、いえ、気難しい方が多いですから。頑張って少しずつ外国語も覚えたんですが……。
例えば、カウンターのこの人。
《ん、おい女!酒が切れたぞ!一番高いの持ってこい!》
「……酒だ。安物でいい」
「は、はい」
緑色のコート。同じ色の帽子。丸いサングラスに長い金髪の大男。提督並みの偉丈夫です。格好は怪しげですけど、ハンサムな方ですね。
でも、
《ウメー、ウメーな。……ん?ってこれ安モンじゃねーか?!!》
背中から、機械の蛇が生えてます……。それが、全く何語か分からない言葉で話していて、その上お酒も飲んでいます。何ですかこれ。
ま、まあ、それはまだ良いんです。喋る機械くらいならうちでも作れますから。問題は……、
「そ、その、おつまみはいかがですか?」
「いや、いい」
「で、ですけど……」
本体のこの男の人、何故がネジを食べてるんですよ……。
この人は、たまにお酒を飲みにふらりと現れる方なんですけれど……。いつも、強めの洋酒と持ち込んだネジや鉄屑をぼりぼり食べているんです。
流石に、お腹を壊してしまうのではないかと思いまして、いつも「おつまみはいかがですか?」と申し出ているんですが……。
「……他人とは、食生活が合わない」
「は、はあ……」
と、お断りされてしまうんです。
どうしてでしょうか?私の料理を食わず嫌いしていると言う訳ではないみたいですが……。
いえ、提督も鉄屑を食べることが出来ますよ?本人が言うには、「フィート:あなたは何でも食べられる」、だそうです。ですが、鉄屑は美味しいものではない、胃が悲鳴を上げるとおっしゃっていましたし……。
「……あむ」
あ?!こっちを見ていた赤城さんがボーキサイトを食べた?!
「……美味しくないです」
「赤城さん?!」
でしょうね……。
「特別美味しい金属なのでしょうか?でしたら少し、分けて頂いても……」
《鉱物を食ったぞ?……お前と同類でもないのに、馬鹿なのかこいつ》
「……違う、普通の金属だ」
「そうですか……。やはり、世界一の冒険屋ともなると、味覚も違うものなんですね!」
「冒険屋とは、殺し以外の様々なことを請け負う便利屋のようなものと聞きました。味覚は関係がないかと」
普段はとても物静かな方で、あまりお話はしませんけど……。
でも、食いしん坊同士、気が合うのでしょうか。赤城さんや加賀さんと一緒にいるところも、たまに見かけるんですよね。
「「「「ヒャッハー!!!!」」」」
「ジャギ様ァ!!」
「ジャギ様こそ北斗神拳の伝承者ですぜ!!!」
「ジャギ様のお陰で、俺達は職にありつけたんです……!!俺、ジャギ様に拾われてなきゃあ今頃……!」
「オウ、やめろ。湿っぽい話は無しだ、酒が不味くなる」
「ジャ、ジャギ様……!!」
あそこにいらっしゃるヘルメットの男性は、黒井鎮守府に石油を卸す、株式会社世紀末の社長さんです。
「やっぱり、ジャギ様は俺達のボスに相応しいぜ」
「ゴロツキだった俺達を拾ってくれた恩、一生かけて返しますぜ!」
因みに、部下のモヒカンの方々は、ああ見えてお喋りが好きで、よく色々なお話をしてくれるんですよ。
色々なお客さんとお話できるのは幸せなことです。見た目で怖がらずに、一歩歩み寄ってみることも大事なんですよ?
「俺ァ、今でも覚えてますぜ!聖帝軍にしょっ引かれそうになった時、助けてくださって、そのままウチで働けってなもんで!」
「たまたま人手が足りなかっただけだ!」
……そうすると、見た目よりずっと良い人だと分かりますから。人も食べ物も、食わず嫌いは良くありません。
「皆さーん、ご注文の世紀末骨付き肉ですよー」
「「「「ヒャッハー!!!」」」」
世紀末骨付き肉は皆さんの好物です。塩胡椒で味付けした骨付き肉の盛り合わせなんですが、何故か大好評でして。あと、他にも、保存食のガチガチのパンのようなものを「ヒャッハー!食料だぁー!!」と喜んで食べます。
……その、味覚は、あんまり良くないみたいです。で、でも、何を出しても美味しいと言ってもらえますから!
「全く、あんた達は味音痴だねぇ」
「食えりゃ良いんすよ、食えるだけで幸せですぜ!」
「だけども、俺達みたいな馬鹿でも女将さんの料理が美味いことは分かってますぜ!」
そして、モヒカンの方々に自然と溶け込んでいる隼鷹さん。
全く何の違和感もないです。
「……で、ジャギ。あんた結婚は?」
「そーですぜジャギ様ぁ!アンナさんをいつまで待たせるんですかい?!!」
「とっとと告っちまって下さいよ!!」
「そ、そ、その話はやめろ!!ま、まだ決心が……」
「あたしだって提督と結婚したんだよ?!さっさとくっ付いちまいな!!!」
「う、うるせえ!!!」
……式には呼ぶと言ってから一年以上経ちましたねぇ……。
『アベルー、迎えに来たぞー。……この扉、SCPだよなぁ。収容した方が……、いや、やめておこう。ほっといた方が絶対に面白い!!!科学者としての私の勘がそう言ってる!!!』
扉……。現在、黒井鎮守府の科学力及び魔法や呪術などの凡ゆる力で「到達可能な」かつ、「提督が足を踏み入れた」世界に複数存在する転移装置、と聞いています。
意味はよく分かりませんが、提督の知る世界からお客さんが来る、と言う認識で良いらしいそうです。
技術の大元は夕張ちゃんが、「提督を逃さないために」造ったものです。提督を信用していないみたいで少し良くないんですけど……、仕方ないですよね。提督の家はここですから。迷子にならないようにしないと……。
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎』
『ハッハー、何言ってるのかまるで分かんなーい。……って、ピザの追加注文か。……え?これ、経費で落ちるよね?』
《ん、やあ、ブライト博士。アベルも》
『やあ、時雨ちゃん!サムライソードにセーラー服の戦艦とは、全く以ってジャパニメーション的だね!』
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎』
《ははは、そう言われればそうだね。……それと、それは勘弁してね、アベル。やったら殺すよ》
さて、先程から時雨ちゃんが何故か会話できている……、会話というより、脳内に直接語りかける感じですかね。思念をばら撒いている感じです。その、会話(?)している相手は、先日提督と戦ったあの人です。
と、その保護者(?)の博士さん。
あ、博士さんは英語でお話をされるので、少しは会話出来ます。
でも、あの人は、全く聞いたことのない言葉を話しますから、あまりお話が出来なくて……。
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ピザくれ』
「はーい、ただいまー!」
でも、注文の時は英語を少し話します。
《はぁ、にしても◾︎◾︎◾︎、提督が文句を言わない以上、◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎だから戦ってもいいけど……。そうじゃなかったら……、◾︎◾︎◾︎◾︎して殺してるよ?》
『は、ははは、テレパシーかい?凄いな時雨ちゃんは!にしても、日本人にしては過激なジョークだ!』
『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎……』
《……ふふ、ジョークは好きだよ。提督もジョークが好きだからね》
『そうかい!私もジョークは大好きで』
《自分でジョークを言うことは無いけどね》
『は、はは、はははは。そ、そっかー!』
おっと、いけませんね。
「時雨ちゃん?」
《……分かってるよ。ここで暴力は禁止だからね。……でも、アベル。戦いたいなら次からは僕が相手に……》
『◾︎◾︎◾︎◾︎……』
もう時雨ちゃんったら。私だって、提督を傷付けた彼を殺したいのに。
「駄目よ、時雨ちゃん。命令、覚えてるでしょ?」
でも、提督は、手出しするなと命令しました。「いかん!そいつには手を出すな!一度勝ったら殺されるまで挑まれるぞ!」と。
見ての通りあの人は不死身です。正確に言えば、死んでも、後日別の場所で生き返るらしいそうです。
実際、先日に提督が「判決!死刑!!」の一言と共に自爆特攻をした時、確かに死んだはずです。でもこうして生きていると言うことは、提督の言った通り無限に蘇るんでしょう。
そしてその性格は狂った武人。提督のような強い人間との殺し合いが趣味、だとか。
組手くらいならまだ良いんです。けど、殺意を以って提督を傷付けるのは……。
《……鳳翔さん、殺気、漏れてるよ》
「ふぇ?あっ、はい、すみません!お騒がせしました!」
いけないいけない!私としたことが……。
『そう言ったもの』に敏感な方ばかりですもの。殺気を出しちゃいけませんね……。ここの女将だと言うのに、お客さんを不安にさせてしまいました……。皆さん、一斉に手元の武器を抜いて、いつでも殺し合いができる状態に。こんな雰囲気ではお酒どころではありません。
一体、どうしましょう……。
×××××××××××××××
「っ、と。侵入完了!」
塀を垂直に駆け上がり、頂点で一回転。縁に足をかけ、塀の内側へ。そして、塀を垂直に駆け下りて、建物の影と一体化する。
以上のことを、無音で、一秒以下で、且つ気配を消して行う。簡単だ、誰にでもできる。
……にしても、下調べ通り、侵入感知装置が殆どない。精々、旧式の監視カメラと、やる気のない憲兵が数人、か。これじゃ、侵入してくれって言ってるようなものだよね。
黒井鎮守府なら、最低でも、赤外線、サーモグラフィー、超音波センサーの三種類は常にオンラインだし、機銃付き監視カメラとドローン、駆逐オートマトンがそこらを徘徊してるのに。それプラス明石と夕張の気分で防犯システムが変更、強化されるし。
まあ、確かに、日本を支配した気になっているこんな間抜けな奴らをおちょくるのは楽しいかも。
さて、間取りも、警備ルートも全て把握してるし、特別な敵もいない。
ただ見つからずに、殺さずに、人質を取ってくれば良いんだから。簡単簡単。
さ、行こう。
一歩。始動。存在感を極限まで薄める。
二歩。加速。速度を上げる。
三歩。四歩。五歩。六歩………………。
入り口、不可。見張りとカメラ。
窓、不可。鉄格子。
屋上……、可。
何の変哲も無い、ただの鍵穴。ピッキングツールを差し込んで五秒。解錠完了。
人質の位置は恐らく地下。真下へ、降りていく。
飛ぶ、跳ねる、駆ける、最速無音で、死角を利用し、下へ、下へと……。
下へ、下へ、下へ、下へ、下へ…………。
「…………筑摩、無理していないと良いんじゃが。ん?」
いた。
「なっ?!だ、誰じゃドゲフ!!」
「うるさいからちょっと寝てて」
はい、回収。
このまま、次は、上へ、上へ……。
楽な仕事だった。予定の時間の半分も経ってない。
………………ん?
血の、匂い?
「ホント、殺し屋って言うのは、この世で最も卑しい仕事ですよ……。貴女もそう思いませんか?ご同業さん……」
あー、あれね。提督がここにいたならこう言ってるね。
「楽な仕事はフラグ、騙して悪いが」ってね……。
鳳翔さん
黒井鎮守府にある居酒屋鳳翔の女将。怪しい客に対しても丁寧に対応してくれる。たまにくる客じゃない物取りとかは潰す。
時雨
日本語が通じない相手には、直接脳内に語りかけてくる。
世界一の冒険屋
ネジ食う男。
ヘルメット
たっぽい。
全身刺青人間絶対殺すマン
好物はピザ。実は英語が喋れる。
博士
碌なことしないことで有名。