旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ネタはあるけどオチまで書けない病。


152話 黒井鎮守府お料理コンテスト

「料理……、料理か」

 

「どうかしましたか?提督?」

 

「いやぁ、ね……。この前は皆んなでクッキー焼いたけどさ……。皆んな、料理ってできるの?」

 

純粋な疑問である。未だに殺人的な料理を量産する比叡などの魔人を見ると、ひょっとしてこの子達……、駄目なのでは?と思ってしまうのだ。

 

「私はある程度出来ますよ?得意料理はカツレツです」

 

ニコリと笑う大淀。確かに、たまに厨房に立つこともあるからな、大淀は。

 

「しかし、そんなことを聞いてくるという事はアレですか」

 

「どれだよ」

 

「私達の手料理が食べたい、と……!」

 

「……!!、成る程、よくぞ提言したな、大淀よ!」

 

なにそれたのしそう。

 

「直ちに、艦娘お料理コンテストを手配します!!審査員は提督、鳳翔さん、間宮さん、伊良湖ちゃん、速吸ちゃんです!!」

 

さあ盛り上がってまいりました!

 

『えー、鎮守府放送、鎮守府放送……。艦娘お料理コンテストを開催いたします!!!優勝者には、一日提督の専属メイドになれる権利が与えられます故、こぞって参加致しやがって下さいッ!!!!』

 

なにそれきいてない。

 

「えっ、えっ?なにそれ」

 

「まあまあ!景品がある方が燃えるじゃないですか!!」

 

「ま、まあ、そうだね。俺、何にも損しないからそれくらいなら」

 

「よっしゃ言質取りましたよ!!!これで専属メイドと言う名目で一日中べったりできる……!!!!」

 

あ、ふーん。

 

……よく分からないが協定があるらしい。『皆んなが皆んな全力で甘えたら、提督の迷惑になるから、積極的なアプローチは……、やめようね!あと抜け駆けしたらぶっ殺す』くらいの内容らしい。

 

だから、大義名分がある時は、それはそれはもうベッタベタに甘えてくる。例えば、作戦後の宴会とか、たまたま同じ時間に入浴した時とか。

 

そのため、普段は俺の一挙一動をじっと見ているくらいで、監禁しようとするなどのあからさまな行為はしてこない。助かる。

 

しかし、大会の景品と言う形なら話は別だ。協定違反という負い目なく、気兼ねなくイチャコラできるだろうから、全員全力を出すだろう。

 

……実のところ、なんだかんだと理由をつけて、特定の艦娘だけを構うこともあるにはあるのだ。結構デートとかしてる。そしてそれを見た艦娘が嫉妬して、それのフォローでまたデートと言う無限ループで過ごしているここ最近。要は一日デートしろみたいなもんだし、特に困らないかなー。

 

 

 

『開催時間は今日の正午!場所は食堂!参加賞は提督の熱いベーゼです!食材は自費でどうにかするか鳳翔さんに伺いを立てて下さい!!以上ッ!!!!』

 

はっはっはっ、何一つ了承してねえのに自動的に全てが決まったぞー。

 

そして鳴り響くスマートフォン。

 

「……はい、ラインが来ました。全員参加だそうです」

 

「でしょうねぇ、道理でねぇ」

 

知ってた。

 

「では、調理に取り掛かるので。行って来ます」

 

目がマジなのでマジヤバい。どうしようか、このやる気。

 

「あー、ほら、仕事は?」

 

「来月分まで終わってます」

 

あーもう駄目。止められない。大体、俺の筆跡をコピーして勝手に仕事するって何なの?あと君こっそりと役所に俺のサインをコピーした婚姻届出してんのバレてるからね。でも、皆んなやってるから役所側にいたずらとして処理されてる事実。

 

「よ、よし、分かった。でも気合の入れ過ぎは良くないぞー?肩の力抜こうなー!」

 

もう止まらんかぁ……。いつも言ってるけど料理は愛情なんだよね。景品目当てじゃ美味しく作れないぞ?

 

そこんところをちゃんと理解できるかが勝負だろうな。

 

さあ、あれこれ言われる前に食堂に移動しますかね……。

 

 

 

 

 

『ええと、これを読むんですね?……黒井鎮守府お料理コンテスト、開催〜!……、ふふふ、ちょっと恥ずかしいですね』

 

「はい、ありがと鳳翔」

 

と言う感じで始まった、黒井鎮守府お料理コンテスト。

 

挑戦者は全員と言うこともあり、一部チームを組んで行う。採点方式は、俺、鳳翔、間宮、伊良湖、速吸の五人が、一人10点の点数をつけ、50点満点で最も点数が高かった艦娘の優勝と言うシンプルなものだ。

 

 

 

『さて、最初の挑戦者は……、足柄さんですね』

 

「ふっふっふっ、一番槍は私よ!メニューはなんと!」

 

「カツやろなぁ」

 

「カツでしょうね」

 

「カツなんだろうなぁ」

 

 

 

「カツよ!!!!」

 

カツだった。

 

 

 

「……うん、相変わらず美味しいな」

 

俺は好きなんだが、他の四人は「カツか……」みたいな顔してる。それもそうか、足柄特製のカツは……。

 

「衣がサクサクですね!……でも、カツが大きくて……」

 

「衣多めですか……」

 

「そうよ!衣を二度付けて、二度揚げにしたの!その方がサクサクで美味しいわよ!」

 

女性には、ちょっとキツい。

 

油はしっかりと切ってあるが、それでも、衣の増加による油分と濃い目のソースはかなり「効く」。山盛りのキャベツもお腹に溜まるものだ。

 

さあ、点数は。

 

俺、鳳翔、間宮、伊良湖、速吸の順に……。

 

10、5、5、3、7……、計30点。

 

「ぐぬぬ」

 

いやぁ、俺は好きなんだがなぁ……。

 

「すみません、脂っこいものはどうしても駄目で……」

 

申し訳無さそうな伊良湖。そもそも、採点者が俺だけじゃないってことを考えるべきだったな。

 

「うう、満点は逃したわね……。で、でも、まだ希望はあるわ!それに、提督からの熱いベーゼももらえるらしいし……」

 

「後でな」

 

流石に食後すぐにキスをする程気が狂ってはいない。

 

さて、次だ。

 

 

 

『春雨ちゃん、メニューは麻婆春雨です』

 

ほう、洒落が効いてる。

 

「はーい、司令官❤︎春雨特製の、麻婆春雨でーす❤︎」

 

かわいい。既に美味しい思いをしたな俺。

 

いや、見るべきは料理だな。本人の可愛さは料理に関係しないからな。あんまり。

 

「……これは」

 

美味い。美味いけど……。

 

「?!、美味しいです……、けど……。これ、何入れました?」

 

鳳翔が尋ねる。無理もない、十分美味いのに、その上不自然に美味いからだ。

 

「……何のことでしょうか?」

 

ほー、しらばっくれる?

 

「え?え?凄く美味しいじゃないですか?何かおかしいんですか?」

 

困惑する速吸。

 

まあ、アレだよな、これ。

 

「脳内麻薬の分泌量を増やす……、五感の向上、筋力強化……、あとは◾︎◾︎◾︎◾︎と◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ってところか」

 

薬膳(?)料理だ。

 

「……あはっ❤︎正解です司令官❤︎……でも、副作用が出ないようにしっかりと調整してあるんですよ?」

 

「く、薬?!薬入ってるんですかこれ?!」

 

速吸が驚くのも無理はない。この麻婆春雨には、数多の薬品が絶妙に配合されている。某所で頂いたドーピングコンソメスープの如く。

 

「……春雨ちゃん?ここまでやったら、最早料理じゃないですよ?」

 

鳳翔が怒るのも当然か。美味しいけどこれは最早料理ではない。お料理コンテストとしては……、

 

「失格です!」

 

と言うことだな。

 

「ちぇっ、残念。でも、後で司令官にちゅーしてもらえるから、良いかな❤︎」

 

さあ、間髪入れずに次の料理だ。

 

 

 

『春風ちゃん、サンドイッチです』

 

……あれ?何でいるの?

 

「何やら、素敵な催し物があると聞きまして……。そ、それに、参加した者には、た、旅人様のく、口付けが……!」

 

成る程ねぇ、景品に釣られて来たのか。よくよく見たら参加者リストに音成の子もいるわ。全員いるわ。

 

「で、ではその、一生懸命に作りましたので!どうぞ召し上がって下さい!」

 

「おお、ありがと。……あ、美味い」

 

和風ツナサンド、和風玉子サンド。和風サンドイッチ尽くしだ。醤油や出汁がベースの軽めのサンドイッチ。だが、俺用に照り焼きサンドのような重めのも用意してある。

 

うむ、料理とは相手のことを考えて作るものだ。俺の好みも、鳳翔ら審査員の好みも抑えた品々は正解だな。

 

9、7、6、9、10で計41点になった。

 

好みの問題だろうが、かなりの高得点。因みにだが、鳳翔はパンよりごはん派、逆に間宮はパン派。間宮的にはパンが市販なので少しマイナスだとか。

 

どんどん行こうか。

 

 

 

『響ちゃん、和風ボルシチです』

 

こう見えて料理が得意な響の、和風ボルシチ……。酒のつまみを追求しているうちに料理にハマったとは言うが、中々の腕前だ。

 

今回は、食べさせる相手が俺だけじゃなく鳳翔達も、とのことなので、和風な白だしベースでハーブ類少な目のボルシチだ。

 

醤油を少し垂らすことによって和風パワーアップ。入れるのもサワークリームじゃなくて生クリームだ。

 

「私達の口に合うように白だしを使っていますね」

 

和食派の鳳翔もこれにはニッコリ。

 

「でも、白だしの取り方は上手く出来なかったよ」

 

とは本人談だが、悪くない出来だと思う。……俺は洋食派だから、いつものブイヨンで作る方が好きなんだけどね。

 

難しいな、俺の好みは男性的で、脂っこく味が濃いもの、逆に、鳳翔は女性的であっさりしたものが好きなんだ。

 

7、8、10、9、8の計42点。

 

間宮は添えてある揚げパンが美味しかったとのこと。

 

 

 

と、まあ、このように。

 

『大和さん、オムライス……、44点!』

 

『古鷹さん、加古さんチーム、ハンバーグ……、45点!』

 

『初霜さん、豚汁……、39点!』

 

着々とコンテストは進んでいき……。

 

 

 

『ひ、比叡さん、カ、カレー(?)です……』

 

オチの時間がやってきた訳だ。

 

「ひ、比叡、ほら、あれだ。カレーは寝かせた方が美味しくなるって言うし、地下室に封印してみるのはどうだろう?厳重に」

 

「そそそそそうですね、封印すべきですね」

 

「大丈夫!心配ご無用です!圧力鍋でつくりましたから!!……途中で蓋が溶けて無くなっちゃいましたけど」

 

圧力鍋の蓋が溶ける?何入れたの?硫酸?

 

「て、提督、もう失格で良いですよね……(震え声)」

 

鳳翔の言葉も無理はない。俺達はアレが料理には見えない。あの石油の膜みたいに虹色に光る液体をカレーとは認めたくないのだ。

 

「見た目はちょっとあれだけど、味には自信があります!」

 

「ちょっと?」

 

上位者の体液みたいな見た目だよ?

 

「兎に角、食べてみて下さい!」

 

食べるの?

 

これを?

 

「わ、私はちょっと……」

 

「痛い、臭いだけで粘膜が痛い!」

 

「食べるのは……」

 

全員が0点を出す中……、

 

「えー!美味しく作ったのに、何でなんですか?!……司令は食べてくれますよね!」

 

え?俺は食わなきゃいけない流れ?

 

「はい、司令!あーん!」

 

あ、

 

死ん

 

 

 

 

 

……そんなこんなで、バイオテロによって無事終了したお料理コンテストは、俺の犠牲によって幕を閉じた。

 

旅人は犠牲になったのだ。カレーの犠牲にな。

 




大淀
旅人に似てきた。

比叡
料理による殺人。

旅人
死亡確認。

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