「おっ、某宝具かな?弓兵多過ぎ問題」
「呪いだな、早く倒せよ」
「騎士……、炎!やだなぁ、亡者に堕ちても技は冴えてるんだから」
「魔法なのか奇跡なのかは分からんが、索敵範囲が広い!」
「良いの?安請け負いしちゃって?闇喰らいのミディール、眠りを守る、ねぇ……」
「また沼か」
「竜狩りが何故ここに?!」
「人間性を見せよ、か」
「解呪の碑はこれか」
「くっ、ドラゴンブレス!効くなぁ!!」
「やっぱりパッチじゃねーか!!」
「あいつがミディールか。ドラゴン退治は久しぶりだな。うおおおお!死ねよやー!!!」
「ちょっと待って、眠りを守るって約束は?知らない?進む?鬼かよ……」
「ほーらほらどうすんだ!何か呼び出してきたぞ!!」
「……やはりこの世界は……」
「ジジイてめえ!!!!某デビルハンターみたいな動きしやがって!!!!」
×××××××××××××××
「五日経ったわよ」
「霞さん、司令官が出て行ったのは五日前の午後ですから。まだぴったり五日間ではありません」
「ぐぬぬ……」
約束……。約束なのに。五日で帰るって……。
「もーーーーーやだ!!!!」
あ、曙が……。
「我慢できない!!提督を探しに……、チィッ!!!」
「駄目です……。命令は良い子にしていろ、ですから」
「……三日月ィ……!!!」
あら、相変わらず凄い技のキレね。
三日月のメイスは牽制でも強力、曙の手甲の爪は堅く鋭い。
「邪魔を、するなっ!!!」
「司令官の命令を聞いて下さい、曙さん」
「何が命令よ……!!」
「司令官の命令こそ、私達の全てでしょう。他に何か?」
「ふざけないで!!あんたは提督が心配じゃないの?!!」
「心配?司令官は必ず帰ってきます。何を心配する必要があるんですか?」
「……っ、この、メンタルお化け!!!」
……って、ちょっと!
「味方同士でやり合わないでよ!!」
私闘は禁止よ!
「私にそのつもりはありません」
「……私にだってないわよ」
「じゃあ、艤装下ろしなさい」
「「………………」」
「睨み合わないの!!」
はぁ……。
駄目ね。鎮守府中が荒れた雰囲気。
予想は出来てたけど、ここまでおかしくなるなんて。
「……ごめん、ちょっと気が立ってた」
「いえ、大丈夫です」
曙はもうギリギリね。物凄くイライラしてる。
逆に三日月は完全に司令官を信じてる。例え、ずっと帰って来なくても、一生待ち続ける感じかしら。
性格も考え方も真逆だから……。
「三日月、後何時間?」
「後、三時間で司令官は帰ってきます」
三時間、ね。
よし。
「執務室行くわよ。司令官が帰ってくるまでカウントダウンするわ」
×××××××××××××××
『司令官帰宅まで、後三時間!』
「三、時間……?」
「本当……?」
「もふ」
あいつが外出した。
僕の友達の旅人が。
旅人の周りにはメスが沢山いて、それに囲まれて過ごしている。
でも今は、あいつがいないから、メス達の機嫌は最悪。多くは倒れてしまった。
……僕は、手が足りないから、倒れたメス達の面倒を見ろって言われた。
猫の手ならぬ、首輪付きけものの手も借りたい状況らしい。
幸い、今は冬で、裏山の管理もあまりすることがない。ちょっとくらいなら、手伝っても良いんだよね。
「……首輪付き、提督は、帰って来るの?」
「もふ」
飛龍だったっけ?胸が大きいやつだ。
「私達、提督に命令してもらわないと、何にも出来ないの……」
「もふ」
こっちは蒼龍。胸が大きい。
「提督、提督、提督、提督……」
……僕に言われてもね。
兎に角、さっきの放送でメス達が起き始めた。
面倒をみなきゃ。
ああ、全く。
手伝うなんて言わなけりゃ良かったよ。
僕は面倒が嫌いなんだ。
×××××××××××××××
『司令官帰宅まで後二時間!』
「後二時間、でありますか……」
槍を、振るう。
邪念雑念を振り切るように。
「……はあっ!」
突く斬る薙ぐ砕く……。演舞のように。
だがそこに、いつもの技はない。
一分のズレ、刹那の隙、一寸足りない間合いと数多の欠点。
足運びは覚束ず、体幹はぶれて、力は逸れる。
槍は……、武技は如実に語っている。
自分の不安を……。
「おおおっ!!!!」
雄叫びを上げ、槍を振るえど、答えは変わらず。
一様に……、
「提督殿の不在で、ここまで……!」
自分が至らない者だと告げられる。
「ーーーッはああああ!!!」
そう、告げられるのだ。
他でもない、自らの槍に。
自分はまだ……、未熟。
敬愛する提督殿に褒められて、良い気になっていた。正しく無双だと称され、天狗になっていた。
提督殿がいないだけで、自分は……。
「こんなにも、弱く……」
無双などとは、程遠い……。
例え如何なる理由があれど、提督殿の為に、この身を捧げると誓った筈が。
少しの間、お会いすることが叶わないこと、それだけで。
自分の槍は、武技は、脆くも崩れ去ったのだ。
「あああああああ!!!」
無心になれと自らに言い聞かせるが、心にあるのは寂寥のみ。
無念無想は夢のまた夢。必殺の槍技も今は錆びついた。
「………………提督殿」
結局自分は、提督殿に甘えているだけ、か……。
仕えるなどとは、程遠かった。
自分は、憐れでありますな……。
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『司令官帰宅まで後一時間!』
「あら、時雨ちゃん。山風ちゃんは大丈夫?」
「さっき、目を覚ましたよ、古鷹さん。心配してくれてありがとう」
ああ、良かった。
目の前で倒れた時はびっくりしたもの。
「今は海風が介抱しているよ」
「海風ちゃん?海風ちゃんも、提督がいなくなった日に、喉を掻き毟ったって聞くけど」
「ああ、ああ、大丈夫さ、大丈夫だよ。何も、問題は無い。……海風は少しばかり脆いからね、苦労したみたいだ。でも、眼を見て諭せば分かってくれたよ」
「ふふ、分からせた、じゃなくって?」
「もちろんさ。身内を洗脳する訳ないじゃないか。ただ少し、蒙を啓いてあげただけだよ」
……へぇ、そう。
「……嘘の匂いはしない、か」
「心外だね。君に嘘をつく理由がない」
でも、嘘をついている意識が完全に無いと、匂いもしないからなぁ……。
「……大体、仮に艦娘の洗脳をしたとして、何の問題があるんだい?」
「躾の問題かな?仲間に喰らいつく駄犬はあの人の走狗に相応しくないし」
「はは、躾けるのは提督だろう?君じゃない」
「そうね。でも、お馬鹿さんは要らないのは事実でしょ?」
「ははははははは」
「ふふふふふふふ」
うーん、やっぱり、腹芸は苦手かなぁ。私、提督みたいに器用じゃないから。
だから、
「疾ィッ!!」
直接、身体に聞いた方が早いかな……?
「……危ないじゃないか」
……うふふ、相変わらずだなぁ。剣を突き付けられたくらいじゃ、何ともないか。
「……本当に、洗脳はしてないのね?」
「ああ、誓って。……僕の妹だよ?そんなことはしないさ」
時雨ちゃんは私より賢いから、分かりづらいや。
でも……、
「それに、僕達は群れだ。提督が一番なのは変わらないが、二番目だってあるだろう?」
「二番目?」
「群れの仲間さ。提督の次に大切なのは、同じ艦娘の皆だろう」
「……国とは言わないんだ」
「ははは、国は三番目以降だね」
……まあ、良いかな。理由としては納得できる。
「僕達は人類じゃない、艦娘だ。数少ない仲間同士で共喰いなんてしないさ。野蛮だ。非論理的だ」
そもそも、共喰いしないのも、提督を不愉快にさせない為だし。時雨ちゃんもその辺は分かってる、よね。
「そう、ね。疑ってごめんね、時雨ちゃん」
「良いさ、実際に、白露型が側から見れば怪しげなのは自覚しているよ」
それにもしも、もしも提督を不愉快にするようなら……。
その時は、ちゃんと、消し炭にするから、ね?
三日月
変わりなく。ミカはブレねえな。
首輪付き
倒れた艦娘の面倒をみていた。苦労してる。
あきつ丸
武力低下。
古鷹
正直者の良い子なので何の問題も無い。
時雨
賢くて良い子なので何の問題も無い。
旅人
久しぶりの大冒険にウキウキ。