旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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なんか知らんけどシリアスになった。

まあギャグだけじゃ艦娘を堕とせないってそれ一番言われてるから。






16話 マイ・フェア・レディ

「「「「ロンドン橋落ちるー!落ちるー!落ちるー!」」」」

 

あー、駆逐艦うざい。

 

折角のお休みなんだし、一日中昼寝しようと思ってたのに、よりにもよって駆逐艦達に捕まるなんて……。早く帰って寝たい。切実に。

 

 

 

「き、北上さん?」

 

私の妹兼親友、大井っちが声をかけてきた。

 

「んー?何ー?どしたの大井っちー?」

 

「この列に、て、提督がいるんですけど、き、気のせいでしょうか?」

 

「……えっ?」

 

 

 

「ロンドン橋落ちるー!落ちるー!落ちるー!(成人男性)」

 

 

 

いる。見間違いじゃない。確実にいる。寝ぼけていて気付かなかったけど。

 

見つけてしまったからには、この私でも流石にスルーできない。は、話しかけよう……。

 

「……提督、何やってるの?」

 

「えっ?いや、雷ちゃんが遊ぼうって言うから」

 

「私が誘ったの!北上さんも大井さんも、司令官と仲良くなって欲しくて!」

 

雷め、正直言って余計なお世話だ。勘弁して欲しい。そんなことしなくていいから……(良心)。と言うより、子供に誘われたから遊びに来るって……。家族サービスができるお父さんか何か?

 

「雷はいい子だなぁ!!」

 

「うきゃー!司令官ー!」

 

「ずるーい!私も抱っこして欲しいっぽいー!」

 

「しれぇ!私もー!」

 

「お"うっ!」

 

 

何だあれ。駆逐艦に群がられてる。と言うより、目的が分からない。私達と遊んで何がしたいんだろう。まさか、本当に仲良くなりに来たの?……あの提督だとあり得る話だから困る。

 

 

 

……この前、提督が首輪を一斉回収した日、私は、あまり驚かなかった。提督がこの鎮守府を立て直しているのは、下心あってのことじゃないと、何となく分かっていたからだ。多分、首輪のことも、気付いていないとかそんなことだろうと思っていた。提督も私も、「直感」で動くタイプだし。

 

問題は、大井っちだ。大井っちは、ずっと提督のことを警戒して、敵視している。首輪が外された後は、ある程度態度も軟化したけれど、まだまだ嫌っているみたい。気持ちは分かるけど、この提督は悪い人じゃないんだから、もうちょい優しくしてあげればいいのに。

 

だからだろうか、こうして提督に会うたび、何となく申し訳ない気持ちになってしまう。

 

「て、提督?貴方、仕事は?」

 

大井っちが聞く。

 

「んー?ないよー?今日は夜に報告書読んでまとめるくらいかなー」

 

……この提督、実はかなり有能だ。元より、書類処理はかなり早いし、ここ一カ月くらいで最低限の指揮は覚えたし、私達が船だったころの性能も覚えてくれた。お陰で、前と違って、ちゃんとした仕事が回ってくる。前の提督は、ただただ強力な戦艦と空母でごり押しするばかりだったから、私達はその露払いだとか遠征だとかばっかりだった。

 

「……では、お部屋でお休みになられては?」

 

あーもう、大井っち、ケンカ売らないで、頼むから。

 

「ご、ごめんね、提督。大井っちも悪気がある訳じゃないんだよ?」

 

大井っちは、首輪が付けっ放しだった理由が、「忘れてた」というのは許せないらしい。結局、外されたんだしどうでもいいじゃん、と思うんだけどなぁ。私が提督だったら、多分同じようなこと言うと思うんだけど。

 

「いーのいーの!怒ってないよ!北上ちゃんも大井ちゃんも、無理しなくていいよー!」

 

「だ、だから大井ちゃんはやめなさいって……、はぁ、もう良いです」

 

うーん、大井っち、何が気にくわないんだろう?などと思いながら、なんだかんだで提督と駆逐艦達と遊ぶことになり、解放されたのは夕方だった。

 

 

 

 

 

「あー、つ、疲れた……。なんであんなに元気なの?」

 

「北上さん、ご苦労様です」

 

「いやー、久しぶりに童心に帰ったわ」

 

提督が童心に帰ってないとこ、見た時ないんだけど。

 

 

 

……にしても、ロンドン橋、か。確か、『ロンドン橋落ちる』は、何度かけても落ちてしまうロンドン橋に人柱を捧げる歌だったっけ。……何を得るにも、人の命を「使わなきゃ」ならないんだろうか。船だったころに積まれたあの兵器のことを思い出して、少し、涙が出た。

 

「き、北上さん?!どうしました?!」

 

「あら、珍しい。嫌なことでもあった?悩みなら聞くよ?」

 

 

 

「……提督、私達も、この深海棲艦との戦いで「使われ」ちゃうのかな?誰も「消費」されずに、皆んなで勝つことって、出来ないのかな?」

 

私は、思わず、提督に聞いていた。

 

「あー……、はいはい、うん。別に気負わなくて良いんじゃない?誰も死なないし」

 

真剣に聞いたのに、提督から帰ってくるのは、いつも通りの軽い返事だ。ついつい、柄にもなくムキになってしまう。

 

「なんでそう言い切れるの?!私、嫌だよ!誰にも死んでほしくない!!」

 

すると提督は、いつもの飄々とした雰囲気のまま、私の手を握り、こう答えた。

 

 

 

「……ロンドン橋が落ちるなら、不壊の金属、超合金Zで作ればいい。寝ずの番が欲しいなら、監視カメラで、皆んなでシフト組んで、順番で見張りゃいい。……誰かが犠牲になる必要なんてないさ、皆んなで協力すりゃいい」

 

 

 

「……そんなこと、できるの?」

 

「やってみせるさ」

 

 

 

ああ、「直感」で分かる。この人は、提督は、私達を沈めない、と。

 

「提督!!」

 

「おっと、北上ちゃんどうした?急に抱きついてきて?」

 

提督は、思わず抱きついてしまった私を優しく受け止めてくれた。……ミントと、甘いお菓子の匂いだ。いい匂い…………。何だか、凄く安心する。

 

 

 

「…………提督?」

 

「待って、大井ちゃん待って、俺何もしてない」

 

 

 

提督はきっと、誰かを犠牲にしたりなんかしないだろう。今度こそ、きっと、みんな揃って、全員で、勝つ。そんな夢物語を、本当に実現するだろう。理屈じゃない、でも、そう思える。

 

……この人の元で、今度は、みんな一緒に…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大井ちゃん待って、蹴らないで」

 

「このっ!北上さんを放しなさいっ!!若しくは代われっ!!」

 

 





提督が大好き。
提督と皆んながもっと仲良くなればいいと思っている。

北上
提督にシンパシーを感じてる。
近しい性格同士なので、気が合う。

大井
どことなく北上と似ている提督がイマイチ受け入れられない。
でも、態度に反して、そこまで嫌っている訳じゃない。ギャグSSだし。

旅人
仕事や指揮に関しては、チートはないがかなり有能。
特に、危機察知能力がキチガイじみているので、轟沈とかそう言うのはさせない。絶対にない。

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