AL海域。
その端っこの方。
小さな群島のある領域。
成る程、ここなら隠れるのにうってつけだろう。
事実、さっきから見慣れない深海棲艦がウロウロしていらっしゃる。
「オラッ!!!……チィ、この深海棲艦、硬い!!!」
高周波ブレードを振るう天龍が言うのも無理はない。
なんか知らんが、ここの深海棲艦、異様に硬い。
火力が足りない俺なんて、未だに一体も倒せてないもん。
「司令官、もしかして、これって……」
「ああ、足止めだな、こりゃ」
まさかとは思うが……。
「提督!偵察機からの連絡です!二体の深海棲艦がこの海域から離れようとしています!」
「……逃げようとしてる?」
おかしいな、深海棲艦が。
深海棲艦と言えば、こちらを見れば襲いかかってくるものだ。戦う前から撤退なんてしない。
どう言うことだろうか。
しかし、何にせよ、逃していい訳じゃない。
「アイオワ!!サラ!!」
「OK!Meのrail gunで、足止めの深海棲艦を蹴散らしてみせるわ!!fire!!!」
「水圧カッターでバラバラに引き裂いてあげます!!!」
そして、空を切る光の線と水流の刃。
いやぁ、面制圧ができるこの二人を連れて来て良かった。
「……チッ、本当に丈夫ね。まだ生き残ってるわ。第二射、chargeを……」
「いえ、大丈夫ですよアイオワさん。後は私達が」
そう言って、艤装左肩部分の折りたたみ式の長距離キャノン砲、ドロッパーズフォールディングガンを展開する吹雪。手持ちのヘヴィマシンガンで別の敵を狙い撃ちながらも、キャノン砲の砲撃も見事に命中させる。
「……例え神にだって、私は従わない!……でも、司令官になら……」
叫ぶと同時にマガジンをリロード。その間もミサイルランチャーでの射撃を行い、攻撃を途切れさせない。
一方で叢雲は、高速移動しながらガトリングガンとマルチマイクロミサイルランチャーによる多段攻撃を行い、天龍、龍田は手持ちの高周波ブレードで深海棲艦を斬りつけている。
「本当に硬いわね……。別の装備の方が良かったかしら?」
摑みかかる深海棲艦をひらりと躱して、通りすがりにミサイルランチャーで焼いていく。
「おりゃあ!」「消えなさい」
足にマウントした高周波ブレードで暴れる天龍を、人斬り鋏で戦う龍田がフォローする。抜群のチームワークだ。
そんなこんなで、火力でゴリ押された深海棲艦は、すぐにバラバラにされ、すり潰された。
「……はい、終わりです!行きましょう司令官!」
「う、うん、そうだね」
いやっはっはっは。
あれだな、うちの子、怒らせちゃ駄目だな、これ。
正直言って、勝てない。
……追うか。
早速見つけた。
いやあ、アイオワとサラは兎も角、うちの子って足が速いから。方向が分かってるなら追いつけるよね、うん。
『チッ、キタノカ……』
『ウウ、嫌ダ……』
色々と大きい深海棲艦と小さい深海棲艦。恐らくは姫クラスだろう。
『ダガ、侮ッタナ。六体程度ナラ……!!』
『モウ駄目ダァ、オシマイダァ……』
『正気ニ戻レ、北方棲姫!……六体程度ナラ、勝機ハアル!』
そう言って、潜伏させていたであろう深海棲艦を展開する巨乳。
成る程、随分と溜め込んでいたみたいだな。先程のやたらと硬い深海棲艦が大量に召喚された。
『……コイツラハ、ワタシガ調整シタ特製ノ深海棲艦ダ。火力ハ低イガ装甲ハ並ジャナイ』
『『『『オォォォォォ……ン』』』』
そうかい、足止め特化型ってことか。
『ソシテ!!』
「「!!!」」
『クルナ……、クルナァァァ!!』
そして、制圧力の高いアイオワとサラを引きつける、か。
「いい作戦だ。感動的だな。だが無意味だ」
『ナンダト……?』
「つまり、俺がぶち壊しにしてやるって言ってんだよ!」
『……人間風情ガ!吠エタナ!!』
見せてやる、俺の力を……!
あと、あらかじめ言っておくけど、相手が巨乳でテンション上がったとかそう言う事実はない……!!
×××××××××××××××
「俺がぶち壊しにしてやるって言ってんだよ!」
し、司令官!カッコいい!!いつもカッコいいけど!!
「全員、周りの深海棲艦を倒してくれ!アイオワとサラはそのままその小さい子の相手を!吹雪は俺の援護を頼む!」
「は、はいっ!!」
『丸腰デワタシニ挑ムト言ウノカ!!』
瞬間、司令官が大きい方の深海棲艦に走り込んで……!
「はい、パンツゲット」
『………………ハ?』
「で、出ました!司令官必殺の強制ストリップ真拳です!!」
強制ストリップ真拳……、筋力、速度、器用さによる窃盗を、必殺技の領域まで高めたもの!
「六体程度なら勝機がある……、その浅はかさは愚かしい!」
『ナ、ニャ、ナ、ナニヲスル?!!!返セ!!!』
「ブラいただき」
『ワ、ワアアアアア?!!!』
相変わらず凄いスピード……、私の目を以ってしても見抜けない!!
『マ、真面目ニ戦エ!!!』
「おっと危ない」
そして、大振りの腕の一撃を避ける司令官。司令官の身のこなしなら、掠りもしない!
「大人しく投降しろ!今ならチャイナ服で許してやる!!因みに早く投降しないと着せる予定のチャイナ服の丈が一秒につき一ミリづつ短くなります!!!」
『ナ、ナンダト?!!!着ルカソンナノ!!!!』
「着せると言ったァ!!!」
『ウワアアアアア!!!!』
す、凄い! 投降してないのに着せた!!
「ンッンー、良いねえ、実にやりやすい。君のように真面目でまともな子が相手だと楽で良いよ」
『見ルナ……、見ルナァ!!!』
うわぁ、ミニスカみたいな丈。色んな意味でキツいなぁ。
「良し今だ!吹雪、艤装を破壊しろ!」
「はい!」
何となく可哀想だけど、まあ、深海棲艦だし。良いかな。撃っちゃえ。
『グオッ!!ヒ、卑怯ナ!!誇リハナイノカ?!!』
「誇りじゃ飯を食えねーんですよぉ!!!吹雪!容赦するな!!」
「了解です!!」
丈が短いチャイナ服の裾を必死に抑える深海棲艦。隙だらけ。……私も、あれを着る勇気はないなぁ。
「どう?投降する?」
『フザ、ケルナァァァ!!!!』
あ、怒った。
身体を隠すのをやめて、こっちに向かって来る。わあ、凄い、ブラも付けずに走ってくるから胸が揺れて……。愛宕さんとか、大きいと大変だって言ってるけど、本当なんだなぁ。
あ、司令官がカメラで撮影してる。
『先ズハオ前ダァ!!!』
ん、ああ、司令官に攻撃を当てられないからって、私の方を狙って来たんだ。
「うーん、そうやって舐められるのは……」
『チィ、避ケッ』
「ちょっと、ムカつくかな」
反転、そしてマシンガンのトリガーを引く。
『ガッ!』
「……確かに、私なんて司令官の足元にも及ばないけど。私になら勝てると思ってるんですか?」
うん、ムカつく。ムカつくなぁ。
『グ……、オ前!!!』
「私は司令官の艦娘ですよ。弱い訳、ないでしょう」
舐められたなら、痛い目に遭わせないと。
反転、ミサイルを発射。
『アアッ!!!』
反転、腰のガトリングガンとミサイルを斉射。
『コ、コノ』
反転、フォールディングガンを発射。
『ヤメ』
反転、遠心力を乗せてパンチ。
『ア"』
「……まだやりますか?」
大破、かな。艤装の殆どを破壊したから。
『ワタシガ、負ケル……?駆逐艦タッタ一体ニ……?』
「……だから、駆逐艦だと思って舐めたのが間違いなんですよ。例え駆逐艦でも、私は、黒井鎮守府の一員です」
『ソンナ、馬鹿ナ!コレホドノ強サヲ……!!』
私自体は、そんなに強くないもん。ただ、油断してるなら、どんなに強い相手でも倒せるってだけ。
「最初に司令官が言ったじゃないですか。六体程度なら勝機があるなんて考えるのは浅はかだって」
『ワ、ワタシ、ハ……』
「それじゃ、お別れです。私を……、黒井鎮守府を侮ったことを悔いて……、死んで下さ」
「待った!容赦するなとか言ってごめん!やっぱ容赦してあげて!!」
横から司令官の声。
「はい、分かりました!」
射線をずらして肩を撃ち抜く。
『グ、ハッ……』
チッ、マシンガン程度じゃ決定打にならないなぁ。装甲に弾かれちゃう。
「なーんで撃ったなんで撃ったー?!」
え?いや、司令官の敵は潰さなきゃ……。
「やめてって言ったやんけ!!!」
「はい、殺すのはやめました!」
「あのさぁ……、どうすんだよこれ!この無残な姿をよぉ!ボロボロじゃねえの!!」
『モウ……、ヤメ……』
「あはは、ある程度壊しても、ドックに突っ込めば治るんですし、良いじゃないですか」
深海棲艦も艦娘と同じ。ドックで治るんだから、半殺しにしちゃいましょう!
『マ、待テ、ヤメロ……!!』
「いや、本当に!勘弁してあげて!」
「はい、手加減します!」
ガトリングガンをトリガー。
『ギャアアアア!!!』
「待った、待った!もう死に体だから!ぐったりしてるから!死体蹴りは」
マシンガンをトリガー。
『グアアアアアアア!!!』
「やめたげてよぉ!!」
安心して下さい、司令官!司令官に楯突く深海棲艦は、皆殺しにしますから!
私、司令官の為に頑張っちゃいますね!
吹雪
防御力は低いが、火力が高くクリティカル率も高い。
港湾棲姫
舐めてかかると足元を掬われる良い例。
旅人
この後、港湾棲姫を修復してからコスプレさせる予定。