旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

17 / 593
読者の皆さんには、感想や高評価は僕の支えになっていることと、僕が変態じゃないことをよく知ってもらいたいです。応援、ありがとうございます。


17話 マスコミ

昼過ぎ。飯炊きと食事を終わらせ、執務室で食休み。机の上に置いておいたミントガムを噛みつつ、大淀(呼び捨てがいいらしい)と世間話をする。

 

話の内容は、なんてことない、今日の飯はどうだったとか、晩飯どうするとかそんなもんだ。こういうゆっくりした時間もたまには良いだろう。

 

 

 

 

 

「しししししし司令官!!ここここここれっ!!!よっ、よろしゅくおにぇがいしましゅ!!!」

 

「えっ?なんて?」

 

早速、長閑な昼休みを台無しにしたのは、重巡の青葉ちゃんだ。後ろには衣笠ちゃんもいる。

 

見ると、地震にあっている欠陥住宅みたいに震える青葉ちゃんは、何かを差し出している。因みに、衣笠ちゃんも高周波ブレードばりに震えてる。やばい。

 

「えっ、何?何これ?」

 

「ひゃあああああ!!ごめんなさいごめんなさい!!!ゆゆゆゆゆ許してえええええ!!!」

 

「えぇ……?」

 

ビビりすぎじゃん?差し出された何か……書類だこれ、差し出された書類を読んでみた。

 

「『嘆願書』……?」

 

成る程、口頭だと怖いから、文書で伝えるってことか?どれどれ?

 

「………………んー?」

 

内容は、やたらと畏まっていて読みづらいが、要するに、「新聞の発行を許可してくれ」とのことだ。というより、普通に考えれば許可いらん内容なんだけど、これ。

 

……ん?じゃあ、援助してくれって事か?成る程、それなら納得はいく。今月は給料が出せないし、新聞を作るための機材が手に入らないだろう。カメラとラップトップはあったな、でも印刷機は執務室にしかないし、スキャナもここにはない。つまり、この子達は機材をくれと言いたい訳だ。

 

「よし、分かった、用意しよう」

 

取り敢えず、持っている機材はあげよう。足りないものは、例によって、作れば良い。

 

「大淀、ちょっと行ってくるわ。戻ってくるまで休んでて良いぞ」

 

「はい!提督のためにお仕事頑張りますね!!」

 

あれれー?おっかしいなー?日本語が通じねえぞー?最近、大淀はこういうとこあるからなー。くれぐれも頑張りすぎないように伝え、バグったNPCみたいに震える二人を連れ、工廠に向かう。

 

 

 

 

 

「あ!!提督!!おはようございます!!見てくださいこれ!昨日作ったんです!!今回のも自信作ですよ!!それと、こっちの装備は全部、整備が終わりました!!ああ、あと、この提督が作っていいと言ってくれた艦載機の試作型がこれです!あ!そう言えば、日経エレクトロニクスの最新刊読みました?!凄いですよね最近は!!月刊機械設計も良かったです!特に有澤重工の物質工学が前衛的で!!今度は有澤重工の装甲板を発注しますね!!それと、えっと、」

 

「お、おう」

 

明石(こちらも呼び捨てがいいとのこと)の登場である。

 

明石は、工廠で死んだ魚のような目で装備を整備していたところを発見し、保護した。本人が言うには、機械弄りは好きだが、休みなしはキツイとのこと。適切な休みを取るようになった今は、大淀と同じく生き生きしている。

 

元々、DIY精神があるもの同士気が合い、最終的に意気投合した結果、大淀みたいに俺にくっついて歩くようになった。

 

「(明石さんってこんな人だったっけ?)」

 

「(ち、違うと思う)」

 

ほーら言われてんぞ明石。くっつかないの、離れなさい、ね?

 

「あー、明石、工廠借りるよ」

 

「はい!お構いなく!!……今度は何を作るんですか?」

 

「んー?なんかね、青葉ちゃん達が新聞を作りたいんだって。だからその機材を作ろうと思って」

 

「お手伝いします!!(即答)」

 

本当に最近グイグイくるよな、明石。

 

「えっ?!いっ、いや!わ、私は許可が欲しいだけで!!」

 

青葉ちゃん、全力で恐縮。俺知ってるよ?君、かなりのお調子者で、面白い子でしょ?俺の前でもそう言うとこ見せて良いんだよ?

 

「いやいや、許可だけじゃ新聞は作れないでしょ?取り敢えず、カメラはこれでいい?あと、編集にはこれ使って」

 

そう言って、デジカメとラップトップを渡す。

 

「そんな!こんなもの、貰えないです!!」

 

「良いってば。新聞とかそう言うの、どんどん作って欲しいんだよ、俺は」

 

そう、娯楽が足りないのだ、この鎮守府には。取り敢えず、スマホとか当面の私服だとかは全員に与えたが、何か知らないけど皆んなあまり使わないのだ。例えば、駆逐艦の子供達なんかは、スマホ弄りより外で遊んだりする方が良いらしい。他にも、長門さんは筋トレ、金剛ちゃんは紅茶とか、皆それぞれ趣味があるとのこと。

 

皆、心にゆとりができ始めて大変よろしい。でも、個人や特定のグループでの趣味だけでなく、鎮守府の全員の共通の話題となる何かがあってもええやん、と思うのだ。

 

「と言うことだよ。分かった?」

 

「は、はあ……」

 

分かってくれたかな?分かってくれたってことにしておこう。

 

「じゃ、明石、適当に使えそうな材料くれる?プリンタとスキャナを作るんだけど」

 

「はーい!!」

 

明石は有能だ。曖昧な指示でも、自身で考えて最良の結果を出してくれる。

 

「これと、これ、あとこれ、……これなんかも良いと思います!」

 

「おお、これ、去年のモデルのか、使えそうだな」

 

「はい、そうですね!……最近の人は、まだまだ全然使えるのに、ちょっと古いモデルだからって直ぐに捨てちゃうんですよねー」

 

自分を道具と重ねて見ているのだろうか、少しばかり悲愴な面持ちを見せる明石。一つ撫でてやると、すぐさま元の笑顔に戻り、「頑張ります!(島村並感)」と一言。楽しそうに作業を始めた。何というか、扱い易いなー。

 

 

 

「…………提督は、その、わ、私達を叱らないんですか?」

 

衣笠ちゃんが小さく手を挙げて言った。

 

「んー?何でー?」

 

俺は、明石と作業しながら、そう返す。相変わらず震えてんなー。

 

「だって、私達、提督にお仕事を中断させて、よりにもよってこんなことさせて……」

 

「良いんだって、こう言うの好きだし」

 

「でも……」

 

「ええんやで」

 

ニッコリと笑って、そう言った。別に困ってないんだよなあ。大淀が有能なもんで、仕事なんて大した量ないし、日中は暇だから駆逐艦と遊ぶか鎮守府の改装かぐらいしかやることないんだよねー。こんな風に面白い面倒事を貰うと助かるわー。

 

「そもそも、物作りが趣味ですからね、私も提督も。作るだけでも楽しいし、作ったもので喜んでくれる人がいたらもっと楽しい。そんなもんです。ねー?提督ー?」

 

「ねー、そーだよねー」

 

つまり、そういうこと。

 

「……そ、その気持ち、何となく分かります」

 

若干だが、震えがおさまった青葉ちゃんが言う。

 

「わ、私も、何かを調べたりするのが好きで、その調べた物事で、誰かが喜んでくれるのはもっと好きですから」

 

「おっ、そうだな」

 

段々緊張が解れてきたな、青葉ちゃん。

 

「そ、それに私は、今度こそ、正しくて、楽しいことを皆んなに伝えたいんです!……だ、だから、新聞を書いてみようと思って……、司令官、お願いします!私に新聞を書かせて下さい!!」

 

ああ、やっと目を合わせてくれた。真っ直ぐで、それでいて綺麗な目だ。

 

「良いよー。頑張って書いてねー。あ、最後に一つ」

 

出来上がった機材を渡して、一言付け加える。

 

「出来た新聞は俺にも頂戴ね?」

 

 

 

「…………はい!!」

 

何だ、可愛い顔で笑えるじゃないの。

 

 

 

×××××××××××××××

 

 

 

「司令官、思ったより良い人でしたねー」

 

「まあ、大っきいし、見た目はちょっと怖いよね」

 

もー、ガサはビビりだなー。……まあ、私もビビってたけど。

 

「でも、本当に鈴谷さんと熊野さんの言う通りでしたねー」

 

そうなのだ、少し前に、提督は鈴谷さん、熊野さんとデートをしたらしいのだ(要取材)。

 

「うん、あの二人が急に、提督は良い人だから避けないであげて、って言うから、試しに嘆願書を出してみたけど、まさかここまでやってくれるなんてね」

 

ガサは機材を部屋に運び込み、取扱説明書を読みながら、四苦八苦している。

 

「うーん、貰ったは良いけど、使い方が分からないよ、これ」

 

私も分かっていない。司令官から貰ったこの小さなカメラも、まるで使い方が分からない。どうしたものか、と思っていると、ふと、ある解決策が思い浮かんだ。

 

「……提督に聞いてみるって言うのはどうでしょう?」

 

「えー!だ、駄目だよ!流石にこれ以上迷惑はかけられないよ!明石さんに聞けばいいじゃん!」

 

「い、いえ、折角だから、取材も兼ねて、またお会いしてみたいんですよ!」

 

「しゅ、取材?!提督を?!」

 

「はい!司令官を取材して、皆さんに司令官の良いところを知ってもらいましょう!……大体、さっき言ったじゃないですか!正しくて楽しいことを皆んなに伝えるって!という訳で行きますよガサ!!」

 

「あっ、ちょっと!引っ張らないでよぉ!!」

 

そうだ、私達は今まで、知ろうとしなかったんだ。知らないからこそ、怖いと、勝手に思っていたんだ!憶測で物事を判断しちゃ駄目だ!しっかり調べて、その上で判断しないと!!

 

そうと決まれば執務室へ出発だ!!

 

 

 

 

 

 

 

「と、言う訳で、取材させて下さい!お願いします司令官!!」

 

「取材?俺にか?別に構わんよ?よく烏天狗のパパラッチに取材されるからな、慣れてるよ」

 

や、やった!引き受けてくれた!

 

 

 

「ありがとうございます!!その、じゃあ、早速!あ、ガサ!メモよろしく!!まず、年齢と、職業を!!」

 

「◼︎◼︎歳、旅人兼提督です」

 

「(趣味の)どういう系統がお好きなんですか?」

 

「そうですねぇ……やっぱり僕は王道を征く、物作り系ですかね?」

 

「では、(噂に聞いた)服飾とかっていうのは?」

 

「やりますねぇ!」

 

………………

…………

……

 

 

 

 

「……はい!では、これくらいで!お付き合い頂き、ありがとうございました!!」

 

「おー、またおいでー」

 

驚いた、司令官が怖い人だというのは、全くの誤解だった。取材してみると、本当に面白い人だと分かったし、旅の話なんかは聞いていて飽きない、すごい話だった。どんな質問にも真摯に答えてくれて、機材の使い方もちゃんと教えてくれた。ついでに、わかりやすい教本もくれた。

 

そうだ!司令官の誤解を解くために、皆んなにもっと司令官のことを知って貰おう!よし、題して、『今週の司令官』コーナー!!これで、司令官の株も、私の新聞の人気も上昇間違いなしです!!

 

 

 

 




大淀
提督の役に立つことが一番嬉しい。
暇があるときは常に提督の側にいる。

青葉
ワレアオバ。
この後から、定期的に提督を取材し、打ち解ける。

衣笠
青葉に引っ張り回される。
でも、青葉が楽しそうだしいいか、くらいに考えている。

明石
DIY精神を持つ者同士引かれ合う。
結果、提督にベタ惚れ。
最高の友人でありながら、しっかりと女の子扱いしてくれるのが嬉しい、らしい。

烏天狗のパパラッチ
最速の風神少女。
旅人の近くにいると確実に事件や異変が起きるので、よくストーキングしていた。

旅人
基本的に海外にいるので、日本人風の顔の艦娘達の大半は子供に見える。
艦娘の皆んなはちっちゃくて細いな、くらいに思っているが、下半身に忠実なので言い寄られたらコロッと堕ちるダメ人間。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。