旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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艦娘の艤装は、インフィニットなストラトス的に出したり消したりできるもんだと思ってるんですが、どうなんでしょう。まあ、このssでは、出したり消したりできるものだとします。


171話 武器や防具は装備しないと意味がないぞ 後編

「はゔぁなぐったーいむはゔぁなぐったーいむ!」

 

え?ムーンライト伝説じゃないのかって?知らんなぁ。仮にタキシードに仮面を付けていたとしてもムーンライト伝説じゃなきゃならないなんて法はないィ。ごめんね、素直じゃなくてね。

 

「………………その、司令は、何を?」

 

「見れば分かるだろ?」

 

「いえ、全く」

 

何だと?俺はそんな不可解な行動をとっているだろうか?

 

「見たままだよ、見たまま。おかしなことはやってない」

 

「……タキシードに白の仮面のまま、縦笛からギターの音を出して、某有名ロックナンバーを熱唱する姿が、おかしくないと?」

 

「何か変か?」

 

「……いえ、司令が正しいと言うなら、何もおかしくはないのでしょう。不知火の浅薄な考えをお許し下さい」

 

何も謝ることはないのに。畏まった子だな、不知火は。

 

「ところでぬいぬい」

 

「不知火です」

 

「今、艦娘に対して持ち物検査をやっているんだ。ご協力お願いします」

 

「……はあ、持ち物検査ですか」

 

「まあ、見るからに検査してますって態度だからな。分かってたと思うが」

 

「どの辺が検査してますって態度なんでしょうか……」

 

おかしいな、検査してますって雰囲気を出してたはずなんだが。まあいいや、とっとと検査をしよう。

 

「先ずは手荷物を見せてくれ」

 

「了解です」

 

俺の懐から出した机に、不知火の手荷物が置かれていく。

 

「まず財布」

 

「はい」

 

「鍵」

 

「はい」

 

「……これだけ?」

 

「はい。あまり持ち物を増やしたくはないので」

 

んー。まあ、良いか。

 

「艤装は?」

 

「これです」

 

「主砲、高射砲、魚雷……」

 

うん、普通だな!

 

「陽炎型の戦闘方法は格闘攻撃が主ですから。特殊な装備はありません」

 

そうだったな。陽炎型は格闘戦がメインだったよな。不知火はパワーを活かした戦闘スタイルが魅力だ。特に、パンチ力には定評があるらしい。

 

艤装で変わっているところと言えば、赤いスカーフくらいか。

 

やっぱり問題はない。

 

「時間を取らせてすまなかったな、行っていいぞ、不知火」

 

「はい。……その、一つ質問してもよろしいでしょうか」

 

「何かな?」

 

「タキシードと仮面はまだ良いんです。ロックも、まだ分かります。でも、どうやって縦笛からギターの音を出しているんですか?笛から弦の音は出ないと思います」

 

あ、あー、はいはい。

 

「昔、そふとくりーむと言う悪の組織に関わった事があってね。その時ちょっと」

 

「ちょっと……?」

 

「まあ、正確にはガリクソンプロダクションってところでだけど。とある音楽講師に、縦笛の吹き方を教わってね」

 

「はあ……。縦笛、ですか」

 

何かおかしなことを言っただろうか?

 

縦笛から熱いビートを奏でても問題はないと思うんだけど……。

 

「………………いえ、もう、何でもありません。司令が正しいのですから。固定概念は捨てましょう」

 

「?、よく分からないが、大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫です。もう、なんか……、大丈夫です」

 

そっか。

 

 

 

不知火は頭を抱えて鎮守府に戻って行った。頭痛かな?

 

「提督?何やってるの?」

 

「山風か」

 

不知火と入れ替わりで、鎮守府から出てきたのは山風。小動物系のかわい子ちゃんである。別に机の下に隠れてむぅーりぃーとか言う訳ではないが。

 

「おいでー、パパだよー」

 

「えっ、提督、あたしのパパなの?」

 

「年齢的にはパパでもおかしくないんだな、これが」

 

大変笑えないが、俺はもう山風くらいの娘がいてもおかしくない年なんだよな。

 

「提督がパパ……。良いかも」

 

いっそのこと養子にでもしようかしらん?いや、結婚したいから駄目って反対されるだろうな。

 

「じゃ、じゃあ、ね、あの、パ、パパ?何やってるの?」

 

くー、うほう!良いねぇ!可愛いぞ山風ェ!おじさんがパパにでも何でもなってあげちゃうからな!!

 

「パパはねー、艦娘の皆んなに持ち物検査をやってるんだー。山風も協力してくれるかい?」

 

「い、良いよ。協力、する」

 

よし。

 

「じゃあ、先ずは手荷物を見せてくれるかな?」

 

「う、うん、分かった」

 

そう言って、手荷物を机の上に置いていく山風。動作がいちいち可愛いなオイ。

 

「これは?」

 

「携帯電話。アイフォンだよ」

 

新しいモデルのやつだ。

 

「これは?」

 

「お財布。あと、鍵と、飴玉かな」

 

財布は小さめ、鍵にはキーホルダーが付いている。飴玉は駄菓子屋で売ってそうな、粗目砂糖がまぶしてあるやつ。分かるよ。これ美味しいよね。

 

「これは、俺の髪で編んだミサンガか」

 

「うん、提督の髪、綺麗だから……」

 

「でも、滅多なことでは切れないと思うぞ」

 

俺の髪、硬いし。

 

「ううん、良いの。願い事とか、無いし。お守りとして着けてるから」

 

「そうか。なら、良いんだけどね」

 

さて、持ち物はこんなもんか。

 

次は艤装を見せてもらおう。

 

「艤装は?」

 

「うん、今呼び出すね」

 

おっ、出てきたな。

 

「これは……、獣狩りの斧か」

 

「そうだよ。よく使うから……」

 

獣狩りの斧……。古都ヤーナムの狩人が使う仕掛け武器だ。柄を伸ばすことが可能で、大斧からハルバードに変形する機構を持つ。

 

「で、これは改造主砲か。水銀弾を撃てるようにしてあるな」

 

「うん。水銀は重いから、足止めには最適。あたしのは散弾だから、射程は短いけど」

 

どうやら、白露型得意の艤装パリィ用に調整されているようだ。

 

艤装パリィと言うのは、相手の攻撃に合わせて砲撃をして、体勢を崩す技。

 

大抵は、体勢を崩した敵は、その瞬間に内臓を引き摺り出されて惨殺される。

 

「む、この瓶は……」

 

鉛の秘薬か。飲むと一時的に体重が増加する秘薬だ。

 

「それ、鉛の秘薬……。あたし、軽いから。戦いの時に踏ん張りがきかなくて」

 

「飲み過ぎないようにな」

 

「うん」

 

よし、艤装にも問題はない。総評、無罪!やっぱり山風は天使だった!

 

「よしよし、良い子だな山風は。問題無しだぞ」

 

撫でてやろう。

 

「えへへ、本当?あたし、良い子?」

 

「ああ、良い子だよ、山風」

 

「あたしのこと、見捨てない?」

 

「見捨てる訳ないじゃないか」

 

「そう、そっか、そうだよね。えへ、えへへへへ」

 

あー、可愛い。

 

 

 

やっぱりうちの子は天使やったんや。問題なんて無いんや。

 

誰だ、うちの子の持ち物検査をやる度にSAN値チェックが入るなんて言った奴は!ほのぼのハートフルストーリーじゃないか!良い加減にしろ!!

 

「なあ武蔵!!」

 

「え?あ、お、おう」

 

通りすがりの武蔵に声をかける。

 

「ところで武蔵。俺が何やってるか分かるよね?」

 

「うむ、分からん」

 

「OK、そんなこともある。ならこれでどうだ?」

 

懐からブルマを取り出して見せる俺。

 

「すまん、余計に分からん」

 

「……そっか」

 

残念だな。

 

「一応、持ち物検査をやっているんだけど、武蔵も協力してくれる?」

 

「む、そうなのか。とてもそうは見えなかったが……。まあ、構わないぞ」

 

さて、了承も得たことだし、武蔵の手荷物を検査していこうか。

 

「財布と鍵、替えの眼鏡、プロテインバー、俺のコート。……俺のコート、武蔵が持って行っていたのか」

 

一張羅って訳でもないし、困らないんだけど。

 

「サイズも丁度良いからな、借りているぞ」

 

無断で借りられていた件。

 

「……駄目か?」

 

まるで悪びれずに首を傾げる武蔵。駄目かどうかと問われたら。

 

「世間一般的には駄目らしいよ」

 

と、厳しい答えを返してみる。

 

「そうか。では、改めて言おう。借りるぞ」

 

「良いよ」

 

でも、男物だよ?良いのかね。まあ、本人が良いなら良いんだろう。

 

「お次は艤装だ。見せてくれ!」

 

「うむ、艤装か」

 

黒の巨大な手甲か。

 

盾みたいな形だ。肘の部分にはポンプのような機関があり、手首部から圧縮空気を噴出するギミックがある。

 

「……これだけか?」

 

「ああ」

 

「主砲は?」

 

「部屋に置いてある」

 

そうか、殴った方が早いってことか。

 

良い具合に脳筋だな。

 

「武蔵、ありがとう。問題ないよ」

 

「因みに、何を持っていれば問題ありなんだ?」

 

え?それは……、

 

「これとか、あれとか……、あとこう言うのとか」

 

「……何だそれは」

 

「輝くトラペゾヘドロン、アルハザードのランプ、銀の鍵……、ナコト写本にネクロノミコン、グラーキの黙示録」

 

流石に、こう言うものを野ざらしにはできない。

 

「よく分からんが……、それは『分かってはいけないもの』だな?」

 

「平たく言えばそうだね」

 

「他にも、麻薬、聖杯、SCPとかも規制対象だ。決して軽はずみな気持ちで持ち歩かないで欲しい」

 

「まず、手に入れる方法がないんだがな、そんなもの」

 

そう?結構その辺に落ちてるじゃん。

 

 

 

いやー、結局、危険物を持ち歩いている艦娘はいなかったな。

 

所有していたとしても、しっかりと管理しているみたいだし、言うことなしだ。

 

うん。

 

危険物は、なかった。

 

「タキシード、洗濯しておきますね」

 

「シャツをこちらへ」

 

「提督、パンツ下さい」

 

危険人物は多々いたがな!

 




不知火
頭を抱える。

山風
かわいい。

武蔵
黒いメガデウス。

旅人
SAN値9999。

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