旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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クソ安いザコアパートに住んでるんですが、住人がうるせーのなんのって。やっぱり安いところには安い人間が住むものなんだな(ブーメラン発言)。


181話 この闇、深いッ!

いやあ、爆風は強敵でしたね。

 

「あ、提督。身体は大丈夫なんですか?」

 

おはようございまーす!と心の中でシャウトし、目が覚めたら自室のベッドの上。昨日は隼鷹と酒飲んでから自室に戻って寝た訳だから、何の異常もない。

 

因みに、自室に大淀が入り込んでるのは仕様だ。異常ではない。

 

「身体の五割は再生がまだだけど、特に問題は無いね」

 

「そうですか良かったです」

 

四肢が無くてもバジリスクのアレみたいに這って動けるし。流石に舌は伸ばさないが。

 

兎に角、両足が再生するまでは車椅子だな。

 

「ところで那珂ちゃんが外で死にかけてるけど、どうしたの?」

 

「罰です」

 

「ふーん」

 

まあほら、那珂ちゃんは頑張り屋さんだし(適当)。

 

訓練してるなら放っておいて大丈夫か。

 

「今日はどうしようか」

 

「休んで下さいよ、両足が無いんですから」

 

休む……。

 

ほうほう、休む。

 

そう言えば、この黒井鎮守府に来てからと言うもの、休んだ日は無かったな。

 

あ、いや、毎日が夏休み状態だけど、そう言う意味じゃなくって。

 

日がな一日部屋で休む様な日は無かった、と言うことだ。

 

良し、じゃあ、たまには部屋でゆっくり過ごすか。

 

「分かった、今日は部屋でゆっくりするよ」

 

「はい」

 

ここで大淀が部屋から出ていかないのも仕様である。異常ではない。

 

 

 

んー、そうだなぁ、こちとら旅人、部屋でじっとしてるのはなんかアレだな。

 

んー、んーんーんー。

 

……魔道書でも読んでおくか。

 

手札が多いに越したことはない。魔術は目に見えない武装だからな。身体を破壊されても、最悪意識さえあれば使える「術」はあらゆる場面で重宝する。

 

因みに職業的には放浪者。

 

そんな時、ドアがノックもなしに開かれる。

 

「たっ、旅、旅人様ぁ!!!」

 

「旅人さん!!!」

 

お隣の、音成鎮守府の艦娘、春風と、その提督の守子ちゃんだ。

 

「ああ、おはよう。どうしたの?」

 

「ば、爆発したって聞いて……」

 

「うん、したね」

 

「大丈夫なんですか……?」

 

心配してくる守子ちゃんに、

 

「ああ!おいたわしい!旅人様がこんな姿に……!!」

 

俺に縋り付いて泣く春風。

 

どうしたんだ一体。

 

「その、どうしたんだ一体、みたいな顔やめて下さいよ……。死にかけておいて、何でそんな平常運転出来るんですか……」

 

若干非難するような目で見られる俺。

 

「死にかけてないよ、別に。爆発した時も身体の三割も残ってたし」

 

「それ、普通は死にかけどころか死んでますからね?!」

 

ははは、嫌だな、俺はそれくらいじゃ死なないようになってるんだよ。なんて言ったって俺だぜ?

 

「旅人様ぁ……、ふぐっ、ぐすっ、わた、私、旅人様が倒れたと聞いて、とても、とても、心配しておりました……。ご無事で何よりです……」

 

「そっか。心配かけてごめんな、春風」

 

泣くほどか。なんか悪い事しちゃったな。

 

「あ、た、旅人さん、足が……!」

 

ふと、俺の欠損した下半身を見た守子ちゃんが指を指して驚く。

 

「明々後日までには治すよ。あーあ、ゲームみたいに一晩寝ればどんな怪我も元通り、とかなら楽なんだけどもな」

 

「いやいや、三日で元通りになるのもおかしいですからね?」

 

ドラクエみたいに一晩で治ればなぁ。この怪我だと完治までに一週間はかかるだろう。

 

そんなこんなで、守子ちゃん達と軽く談笑しているとその時、側にいた大淀に肩を叩かれる。

 

「ん?何だ?」

 

「提督、これを」

 

手渡された文章には、一文。

 

『海軍のイメージアップの為、鎮守府内でイメージビデオを作成せよ』

 

と、大本営からのありがたいお手紙だった。

 

全く、何でうちがそんなことせにゃならんのだ。

 

地中海を開放した頃辺りからかな、露骨に擦り寄って来てるよね、大本営。何でも、うちの子達が大本営の内部を掃除しているらしいが……、そのせいだろうか、この前も、変な憲兵がやって来て面倒なことになったからな。

 

「馬鹿らしい」

 

書類を適当に丸めてゴミ箱にシューーー!!!超エキサイティン!!!しようとしたら、

 

「あれ?それって……?大本営からの?!す、捨てちゃ駄目じゃないですか!!」

 

と、守子ちゃんに阻止される。おっ、どうしたどうした?

 

「えー?良いよこんなん。放っておこう」

 

「いけませんってば!」

 

「規則は破るためにある。……日本で一番戦果を挙げてるんだ、うちは。誰にも口出しさせねーよ」

 

「それでも、一応指示は聞かなきゃですよ」

 

「むぅーりぃー」

 

「駄目ですよー」

 

そう言い合っていると、またもや、大淀に肩を叩かれる。

 

「提督、いっそ音成の提督にやってもらえばどうでしょうか」

 

うーん?守子ちゃんに?

 

……イメージビデオの撮影、か。それくないなら大丈夫だろ。うちの鎮守府、治安はロアナプラ並だけど雰囲気的にはあずまんが大王並にほのぼのだから。

 

「じゃあ、守子ちゃん、任せた!」

 

「え?え?はい?」

 

「海原提督、よろしくお願いします。あ、カメラはこちらに。……そこら中瑞雲まみれにする航空戦艦、タダ飯食らいの鶴二匹、菓子をねだる軽巡駆逐……。少しくらい、働いていただきますよ?」

 

「………………え?」

 

 

 

×××××××××××××××

 

「………………何で?」

 

アレ?私、何かよく分からないうちに、仕事を任されちゃった?

 

しかも、断れない感じ?

 

え、ええー。

 

「旅人様から託されたお仕事です!頑張りましょう、司令官様!」

 

春風ちゃんは何故かやる気満々だし……。

 

でも確かに、黒井鎮守府にはお世話になってるから、仕事の一つや二つ……。

 

『海軍のイメージアップの為、鎮守府内でイメージビデオを作成せよ』

 

「あっ、駄目だこれ」

 

ビデオ……?ビデオを撮るの?私が?黒井鎮守府で?

 

どうしよう、私、死んだかも。

 

「は、春風ちゃん……」

 

「まあ、ビデオ、ですか?黒井鎮守府の素晴らしいところを世の中の皆様に知っていただく為ですね!」

 

黒井鎮守府の、素晴らしいところ……?

 

 

 

「うへへ、昼間から飲む酒は美味しいなあ!」「ハラショー」「ポーラ的には赤ワインですよ赤ワイン」「さあ、手合わせであります!」「おっしゃー!やれやれー!!」「北上さーーーん❤︎」「はいはい、どしたの大井っち」「ああ、ゴース、あるいはゴスム」「いあ、いあ、くとぅるふ」「ふんぐるい、むぐるふなう」「んー、深海の屑共の血が見たいっぽい」「深海棲艦の首でサッカーしようぜ!」「深海棲艦捕まえて来たから解剖よろしくー」「ちくわ大明神」「提督のパンツ……❤︎」「司令官のセミヌード写真ゲットォ!!」「あー、提督と『ファイナルフュージョン!』したいなー!」「私も提督と一晩中『シンメトリカルドッキング!』したいですねぇ」「ククク、良いな、やはり。殺せば殺す程司令官のお役に立てるのだ」「ポケ戦は名作」「仕事サボって見るアニメは最高だぜ!ご主人様はどうせ怒らないし!」「うおお!間に合えぇ!夏コミぃ!!!」「オータムクラウド先生ェ……」「司令官的には貧乳もアリなはず……。うちも捨てたもんじゃないな!!」「ぴょえええん!!もう限界ぴょん!積載量オーバーぴょん!!」「卯月、もっと積めるよ」「卯月、光学兵器は良いぞ!!」「ヘイ、霧島!その血塗れのバット捨てるネー!!」「チンピラ相手に喧嘩しただけですよ」「武器持った方が手加減になるとはこれ如何に」

 

 

 

素晴らしい、ところ……?

 

うっ、頭が……。

 

「あ、あら?司令官様?司令官様?!司令官様ーーー?!!」

 




旅人
サイコパス。やべーやつ。精神異常者。

海原守子
音成鎮守府の提督。最悪の貧乏くじを引かされた。

春風
旅人に恋する乙女。

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