旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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この病み、深いッ!!!

ボボボボボッ!!

流されちゃ……。

助けて!!!




182話 病みの中に「意志」があるッ!拾いに行こうッ! 前編

「だ、大丈夫ですか、司令官様?」

 

「大丈夫……、ちょっと立ちくらみしただけだから……」

 

落ち着け私。

 

平気平気、黒井鎮守府は恐くない……。

 

イメージビデオなんて簡単簡単、ちよっとしたビデオくらい撮れ、

 

「ア"ァ"ーーー?!!機材が吹っ飛んだぁーーー!!!」

 

「明石さん、ここの計算ミスってます!!!」

 

「きゃーーー!!!」

 

「あ、危ない司令官様!!!」

 

と、撮れ……、

 

「手合わせであります!!」

 

「あ、不味い、投げナイフが弾かれて向こうへ……」

 

「ひいっ?!!」

 

「この程度、弾いてみせます!!!」

 

……撮れ、

 

「シュート!!」

 

「あー、深海棲艦の首があっちに飛んで行っちゃったわねー」

 

「ひゃあい?!!」

 

「キャッチします!!」

 

…………撮れるの、これ?

 

取り敢えず、こうしよう。

 

満遍なくビデオを撮って、使えるものを選んで……、後は黒井鎮守府の青葉ちゃんに動画編集をしてもらって完成、ということにしよう。

 

「行くよ、春風ちゃん。少しでもまともな所から取材をしなきゃ……」

 

「了解いたしました、司令官様。ではまず、戦艦の方々から取材をしましょう。戦艦の方々は落ち着いた方ばかりなので、素敵なビデオが撮れることでしょう!」

 

そうだと良いね、本当にね……。

 

 

 

カメラ片手に広い黒井鎮守府内を移動し、よく戦艦がいると言う休憩室の一室、サロンのような部屋にやってきた。

 

そこには、優雅に紅茶を楽しむ金剛型の姿があった!

 

そう!それです!そう言うのです!それで良いんですよ!!良かった、安心しました。これでちゃんとした内容のイメージビデオが作れますね!

 

おっと、その前に、本人に許可を取らなくちゃ。

 

「あの〜、金剛さん?」

 

「ワッツ?貴女は、音成の……?何か御用デスカ?」

 

「ちょっと、その、旅人さんからお仕事を頼まれまして。このビデオで金剛さん達の姿を撮影したいんですよ」

 

「?、別に構いまセーン」

 

私が、イメージビデオ作成の件について話すと、金剛さんは快く了承してくれた。

 

そして、金剛さんは、紅茶の香りを楽しみ、一口飲んだ後、隣の霧島さんに声をかけた。

 

「ヘーイ、霧島!最近、ヤクザの方はどうネー?」

 

「はい、シノギの方は上々ですね。この前の野球賭博の件で大分稼がせてもらいましたから」

 

「ヒエー、凄いなあ、霧島は」

 

「霧島ったら、シャツが返り血塗れですよ。榛名が新しいのを用意しますね」

 

んんんんんんん?

 

平和は?平和は何処へ?

 

「いっそ赤いシャツを着れば良いネー。そしたら返り血も目立たないデース」

 

「成る程、流石お姉さまです。盲点でした」

 

「待って……、ちょっと待って下さい、本当に……!!」

 

「ホワイ?どうしマシタ?」

 

いけない、これはいけない。

 

一般人に聞かせて良い会話じゃない!

 

「そ、その、もうちょっと普通の会話をお願い出来ますか?これ、大本営に送って全国放送するビデオなんで……」

 

「アー、そうデスネ。あまり、大っぴらに話せることじゃないデース。ンー、この前、六本木に行った時の話をしマース」

 

六本木かぁ、お洒落な感じ。凄いな、金剛さんは。艦娘なのに、私より女の子らしいや。

 

「そこで白竜って言うヤクザに出会って」

 

「ス、ストップですストップ!」

 

ヤクザとか絡まない方向で!!

 

「あー、えっと、そうだ!紅茶!紅茶の話とかどうですか?!」

 

何とか、平和な方に持っていかないと!!

 

「今日の紅茶はダージリンデース。素敵な香りを楽しむ為にストレートで淹れてありマース。お菓子は提督特製のアップルパイで、サクサクの食感と甘酸っぱいリンゴの味が絶妙でとっても美味しいデース」

 

「そう!そう言う方向の話をお願いします!!そうですね、例えば……、紅茶の美味しさの秘訣は何ですか?」

 

きっと方向性の問題なんだ。話す内容の全部が全部悪いなんてことは流石に……。

 

「提督の血液デース!」

 

「……は?」

 

「直接舐めるとクラクラしますよね、提督の血は」

 

「この霧島が考えるに、飲むのではなく直接血管に注入すべきかと」

 

ひ、ひいいいいいぃ……!!

 

「あ、分かります。提督の血を体内に入れた時って、身体がカッて熱くなって、そのあとはぼんやりとした気持ちになるんですよね」

 

「何か危ない薬とかじゃないんですかそれぇ?!」

 

「まあ、薬っぽくはありますよね。でも私達、もう提督の血無しじゃ生きていけない身体になってるんですよ」

 

そう言って、底のない深淵のような目をした榛名さんに微笑みを返される……。

 

……だ、駄目だ、ここは狂気の世界だ!

 

「か、帰ろう、春風ちゃん!」

 

「ひっ……!は、はいっ……!」

 

これ以上ここにいちゃいけない、そんな気がする。

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

危なかった……!相変わらず闇が深過ぎる……!!

 

「な、何で旅人様の血液を紅茶に?……美味しいのでしょうか?」

 

「分かんないよ……」

 

意味が分かんないよ。

 

「あはははははは」

 

「うふふふふふふ」

 

……今度は、笑い声?何だろう、何処から聞こえてくるのかな?

 

この部屋だ。

 

あ、ドアが少し開いてる。

 

……ちょっと覗いてみよう。

 

「提督?どうかしら、新しい手錠は?」

 

「あー、これ、魔力吸い取ってるねー。良いんじゃない?俺レベルの魔力ならこれくらいが丁度良いな。これ以上のペースで吸われると命に関わる」

 

陸奥さん、と旅人さん……?

 

陸奥さんはまだしも、旅人さんは何でここに?

 

「で?誰かしら?」

 

あ、バレちゃった?!

 

「す、すみません。笑い声が聞こえてきたので、つい……」

 

ここは、どうやら、長門型の部屋みたい。高級そうで上品な家具は陸奥さんの趣味なんだろうな。ぬいぐるみは……、まさか、長門さんの?

 

「覗くなんて、失礼しちゃうわ」

 

「それは、その、すみません……」

 

「まあまあ、それくらい良いじゃん。別に見られて困る訳じゃないんだからさー」

 

それより、旅人さん、何でここに?部屋で休むとか言ってたような……?

 

そんな私の顔を見て察したのか、旅人さんは何故自分がここにいるのか、説明をしてくれた。

 

「ああ、俺はね、陸奥に攫われたの」

 

「攫われた?」

 

どういう事だろう?思わずおうむ返ししてしまう。

 

「面白いかなーって思って陸奥に攫われてみた。で、今は監禁の練習を手伝ってるところ」

 

「か、監禁?誰をですか?」

 

「俺を」

 

え?ん?あー、えっと?

 

「俺が陸奥に攫われてあげて、陸奥と一緒に俺の監禁の練習をしてるの」

 

「日本語がおかしい?!」

 

何言ってんですか?!

 

「ふふふ、提督は私のものよ。大事に大事に、しまっておかなくちゃ。他の女の子にいたずらされないよう、大事に、ね……❤︎」

 

「陸奥はどうやら、俺を監禁して飼いたいらしくてな。その方法を四六時中考えてるらしいんだ」

 

監禁?!飼う?!

 

「まあ俺を監禁なんてまず無理だよね。逃げようと思えばほら、この通り」

 

片手の手錠をまるでマジックのように外す旅人さん。え?今何をやったの?!

 

「あん、駄目よ、手錠を取っちゃ……。提督は私が一生飼ってあげるんだから❤︎」

 

そう言うと陸奥さんは、旅人さんに手錠をかけ直して、かなり強い力で抱きついた。ミシミシと何かが軋む音が聞こえてくる程に。

 

「はっはっは、陸奥は可愛いなあ!」

 

はー……。

 

相変わらず、何考えてんだか分かんないや……。

 

「まあ、これは突発的なヤキモチみないなもんだから。気にしないで良いよ、いつもの事だし。……取材なら空母のところに行ってごらん」

 

「はあ……、分かりました……」

 

 

 

「やはり手打ち麺ですよ」

 

「ハンバーグも中々だぞ」

 

「あとは、うーん、ライスボールとかですかね」

 

部屋にコーヒーの匂いを漂わせながら、休憩室で談笑を交わしているのは空母の、アクィラさん、グラーフ・ツェッペリンさん、サラトガさんの三人だ。

 

……これ以上発禁ものの発言をされても困る。少し、様子を見てから話しかけよう。

 

「提督のお蕎麦には大根おろしとわさびも付きますよ?」

 

「む、それは中々……」

 

「ああ、良いですね、美味しそうです」

 

そう言って、手打ち蕎麦の美味しさを伝えるアクィラさん。

 

…………。

 

……うん、良し。

 

ちゃんとした会話だ。

 

空母の人達は基本的に食いしん坊だから、会話の内容はちょっとアレかもしれないけど、それでも普通の内容だ。

 

「すいませーん」

 

「はい?何かしら?」

 

撮影、よろしいでしょうか?と声をかけたところ、これまた普通に了承してもらえた。

 

「ええと、何でしたっけ?」

 

「Admiralの手打ち麺の話だ」

 

「ああ、そうですそうです。……お蕎麦以外にも、手打ちうどんや手打ちラーメンも絶品なんですよ、これが」

 

「ふふ、良いですね。久しぶりに食べたくなってきました。今度提督にお願いしましょう」

 

手打ち麺かぁ……。

 

旅人さん、本当に料理上手だから、きっと凄く美味しいんだろうなぁ。

 

「だが、ハンバーグも負けていないぞ?Admiralが丁寧に手で捏ねたハンバーグ……。最高だ」

 

グラーフさんはドイツの艦娘だからかな、ハンバーグが好きなんだ。ハンバーグの起源はドイツだってどこかで聞いたことあるし。

 

「この前、ハイキングに出かけた時、提督のライスボールを頂きました。提督が握ったライスボール、美味しかったです」

 

アメリカの空母、サラさんはおにぎりを推してますね。

 

うーん、食べ物の話ばっかり。

 

……だけど、平和なだけマシかぁ。

 

血を飲んだり、監禁しようとしたりするよりは良いよね。

 

「いやあ、良いよな、Admiralの料理は」

 

「ええ」

 

「だって、ねぇ?」

 

 

 

「「「提督(Admiral)のエキスがたっぷり入っているから❤︎」」」

 

 

 

………………え?

 

「食べれば食べるほど、あの人の成分を摂取した気持ちになってな❤︎」

 

「内側から犯されてる感じが最高❤︎」

 

「むしろもう、提督を食べちゃいたいです❤︎」

 

え、ええーーー?!!

 

「提督を食べる……、アリですね!」

 

「食べるとしたらどう食べる?やはり踊り食いか?」

 

「お願いしたら腕一本くらい貰えるかも……?」

 

あ、甘かった!

 

黒井鎮守府を舐めていた!

 

まともな人なんて誰一人いないんだ!!

 

に、逃げよう……!

 

何も見なかった事にしよう!

 

「あ、あは、あはは。もう大丈夫です!そ、それじゃあ!!」

 

 

 

私は何も見てない。

 

血を啜る艦娘も、監禁を画策する艦娘も、食人を画策する艦娘も……。

 

何も見てない。

 

そういう事にしておこう……!

 




戦艦
黒井鎮守府の深い闇の一部。旅人の血液をキメていたり、監禁しようとしたり。無理矢理旅人を犯したいと思っている奴が多い。

空母
こちらも闇。腹ペコ。食べたり食べられたりして一つになろうと考えている。

海原守子
被害者。

旅人
闇の中心。黒井鎮守府の一番やべーやつ。

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