旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ネタも時間もないのでこの有様。


188話 星に願いを その4

差別は嫌いだ。

 

俺は最初に、艦娘の願いを叶えると言ったんだ。

 

例え、この黒井鎮守府以外の艦娘の願いであっても、俺は叶える。

 

有言実行初志貫徹。ブレない男なのだ俺は。

 

さて、誰にしようか。

 

そんなことを考えつつ、休憩室に行く俺。休憩室には大抵誰かいるからな。

 

そこには、

 

「もぐ、もぐ……、んん〜!おいひいです!」

 

ケーキを一ホール頬張る翔鶴の姿が!

 

……休憩室の冷蔵庫には、俺が手慰みに作ったお菓子が大量に常備されていて、自由に食べて良いと言ってある。

 

そして、大飯食らいの戦艦空母の皆んなは、放っておくとお菓子を喰らい尽くしてくれるのだ。作った側からすればとっても嬉しい。

 

「もぐ……、あ、どうも、旅人さん」

 

「やあ、翔鶴」

 

まあ、特に何か問題がある訳でもなく、いつも通り、通常のコンタクト。

 

さて、翔鶴である。

 

翔鶴……、翔鶴か。

 

ほぼほぼ合併状態にある音成鎮守府の艦娘だ。今日もうちに訓練しに来たのだろう。今は休憩中と言ったところか。何も問題はない。

 

さて、願いを聞こうか。

 

「やあ、ようこそ黒井鎮守府へ。この紅茶はサービスだから、まずは落ち着いて飲んで欲しい」

 

「あ、ありがとうございます。……その、何かご用でしょうか?」

 

俺は翔鶴に優しく微笑む。

 

「……また、ですか?」

 

「うん、「また」なんだ。済まない。仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない」

 

そう、「また」だ。

 

また、いつもの思い付きである。

 

「でも、この俺の顔を見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい。そう思って、そのケーキを作ったんだ。じゃあ、願いを聞こうか」

 

「願いを?……成る程、今回はそう言う趣向なのですね」

 

理解が早くて大変OK。

 

つまり、そう言うこと。

 

「因みに、その、お願いとは、どの位の範囲まで……?」

 

「そんなん、俺に出来る範囲なら何でもよ」

 

ここで我が黒井鎮守府の艦娘ならば、「ん?今何でもするって言ったよね?」となって、野獣の眼光を見せられることになるところだが、音成鎮守府なら安心安全。安請負しちゃうもんねー!

 

「んー、そう、ですねえ……」

 

ケーキを食べ終え、口を拭いながら思案する翔鶴。何だ?何でも聞くぞ?

 

「それじゃあ、動物と触れ合いたいなー、なんて……」

 

「OKだァ!」

 

何て優しい答え。まともだ。

 

首輪付き、はマンネリ感。動物園、じゃあ触れ合えないな。

 

ならば答えは一つ。

 

「奥羽山脈、行こう!」

 

「……奥羽山脈?」

 

東北の、秋田の方、奥羽山脈の二子峠。あそこには俺の友人がいる。いや、人ではないからな、友人と言って良いのか分からんが、それでも、俺は友人だと思ってはいる。

 

そんな友人達に会いに行こうじゃないか。

 

 

 

さあ、やって参りました奥羽山脈。

 

初手獣化からの遠吠えで、知り合いを呼び寄せる。

 

『ウオオオオオオォォォン……!!!!』

 

するとどうだ、二子峠から沢山の犬が!!

 

『久しぶり、お前ら!元気してたか?』

 

『おお!久しぶりだな、旅人!』

 

『食い物寄越せ!』

 

『旅人だ、旅人の野郎だ!』

 

はっはっは、戯れるな戯れるな。いやあ懐かしいな、ハイブリッドの件以来かな、ここに来るのは。

 

「え?あの……、ちょっと待って下さい。……話、通じてるんですか?」

 

「さっきから皆んな喋ってるだろ?」

 

「いえ、その……、吠えてはいるな、とは思いますけど……」

 

んー、やっぱり通じてないか。犬と話せない人多いよな、何でだろ。

 

まあ、それはさておき、

 

「ほら、触れ合って良いぞ、翔鶴」

 

「は、はい、じゃあ……」

 

触れ合うが良い、翔鶴よ。

 

「わ、もふもふ……、可愛い」

 

おっかなびっくりと言った様子で犬を撫でる翔鶴。もちろん、翔鶴の方が可愛い。

 

『何だこの女?』

 

『俺の……、嫁?』

 

奥羽軍の戦士の一匹、佐助に尋ねられる。因みに、佐助の犬種は柴犬だ。……まあ、翔鶴は俺の嫁と言っても過言ではないだろう。一応ケッコンカッコカリの指輪も渡してあるし。

 

「この子、お名前は何て言うんですか?」

 

「ああ、こいつは佐助、そいつはロケットだな」

 

「そうなんですか……。男の子ですか?」

 

「うん、奥羽軍の戦士は大体男だよ」

 

「戦士?!」

 

この山にいる犬は皆んな勇敢な戦士だよ。

 

「た、戦うんですか?」

 

「有事の際には」

 

侵略者が現れたり、熊が出たりしたら戦うんだぞ、奥羽の戦士達は。

 

「ほら、餌でもあげると良い」

 

「は、はぁ、そうですか。佐助くーん、おやつだよー」

 

『おお、ありがとよ』

 

うん、良い画だ。動物と美女。視聴率アップ間違いなし。キルビジめいて視聴率アップですわ。ヘルピープルも納得の可愛さ。

 

写真でも撮っておくか。ベンもジョンも死んだし、会える内に会っておかないとなー。

 

 

 

 

 

犬との触れ合いを存分に楽しんだ翔鶴と別れ、鎮守府に帰ってきた。

 

さーて、まだまだ聞くぞ、まだ聞くぞ。

 

次は、と。

 

「くっ、黒井鎮守府の皆んなには負けてられない……!はっ!やっ!てやぁぁぁ!!」

 

訓練場で必死に刀を振るう神風を見つけた。

 

袴か。このご時世に大正浪漫感溢れるこの格好。良いじゃん。

 

「何やってんの?」

 

「あ、旅人さん!」

 

会話コマンド。

 

……何?普通だって?いや、俺、普通の人だから。いきなり抱き上げたりとかそんなことはしないさ。

 

さて、何やってんのかな、と。

 

「どうしたの、やけに熱心に訓練してるけど」

 

「旅人さん、お願いがあるの!」

 

お、話が早いな、実にOKだ。

 

「何だい?」

 

「私を強くして!!」

 

「えっ」

 

えー。

 

なんか、こう、キャピキャピしたやつを予想してたから……。神風の神風をペロンしてペロンみたいな……。

 

「お願いしますっ!私、黒井鎮守府の皆んなみたいに、強くなりたいんです!!」

 

「……まあ、良いか」

 

ここまで熱心にお願いされちゃあねえ。

 

 

 

「……で、えーと、強くなりたい、だっけ?」

 

「ええ!」

 

……参った、普通にどうしよ。

 

俺、強くねえし。ウタカゼで例えるならば俺は知恵と愛情にしか振ってない感じ。戦いは門外漢。

 

「あー……、えー、神通、は駄目だな、訓練で殺しかねん、鹿島、も基礎しか教えられないし……、そうだ!」

 

そうだ、装備。

 

装備を変えれば簡単に強くなれるんじゃないか?

 

「これ、あげる」

 

「……これは?」

 

「飛竜刀」

 

ユクモ村で狩ってきた。言っておくが、俺は一応G級ハンターの資格を持っているぞ。

 

「こんな凄い業物、貰えないんだけど……」

 

「良いから貰ってよ。俺が持ってても腐らせるだけだしさ」

 

と言う訳で飛竜刀を押し付けておいた。

 

「さて、これでいくらか強くなったんじゃない?」

 

「……いえ、得物が良くなっても、地力は変わってないから!」

 

地力ねぇ。そう言うのは本当、継続して訓練するしかないからなぁ。積み上げるしかないのだ。

 

「地力をすぐに鍛えるのはちょっとなあ……」

 

「やっぱり、無理、かな?そんなうまい話は無い?」

 

「いや、あるにはあるけど……」

 

手っ取り早く地力を鍛える方法なら、人間をやめるのが一番早いんだけど、まさかおすすめする訳にはいかねえしな。となるとハーブか、ポーションか。ポーションは貴重だからなー。

 

でも、他でもない神風のお願いだ、できるだけ叶えてやりたい。多少の出費が何だ。

 

「だったらお願い!私を強くして!尊敬する足柄さん達に追い付く為にも、手段は選んでられないの!」

 

「しょうがないにゃあ……、良いよ」

 

テレテレッテレー、ノースティリス産、潜在能力のポーション。

 

「飲むと良い。ちょっとだけだが、強くなれるよ」

 

正確には強くなる余地が増える、だが。

 

「……え、その、薬とかは……」

 

ん?何か問題が?

 

「いつもみたいに魔法とかで強くして貰えるのかと……」

 

バフ魔法は一時的な強化だから。

 

「まあまあ、ポーションどうぞ」

 

「え?これ大丈夫なの?本当に大丈夫なの?」

 

「一気、一気!」

 

「わ、分かったわ……。えいっ!」

 

お、飲んだ。

 

「あとはこれ、キュラリア」

 

ノースティリス産ハーブ。ノースティリスのハーブは何故かは知らんが食べると大きく経験値を得るからな。味は不味いが。

 

「これ、食べるの?」

 

「不味いけど、効くよ」

 

恐る恐るハーブを口にする神風。

 

「う、うえっ、本当に不味い?!」

 

不味いよ、そりゃあ。えぐみと苦味の集合体みたいな感じだよ。下手すりゃそこら辺の雑草の方が美味い。

 

「噛まずに飲み込むんだよ」

 

「……うう、これ、本当に強くなってるの私?」

 

「ああ、ちょっとづつだけど、確実に強くなってるよ。……ポーションとハーブ、数日分あげるね」

 

と、ポーションとハーブの在庫を押し付けて、俺はクールに去るぜ。

 

おっと、その前に。

 

「口直し、要るかい?」

 

「うえっ……、う、うん、良ければ何かくれない?」

 

「はい、どうぞ」

 

口直しと言ったら決まってる。

 

熱い口付けだ。

 

「んにゅ?!!」

 

何だい、キスくらいで真っ赤になって。そのまま神風はフリーズした。

 

……いやー、処女からかうのは面白いなあ!




翔鶴
動物と触れ合えて満足。

神風
強くなった。

旅人
経験豊富なやり手。

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