旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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説明回。

妹の見た目は白髪ロリ眼鏡ツインテ。


193話 妹と……

『旦那様、ご機嫌いかがでしょうか』

 

「ああ、上々だよ、Mr.ハンディ」

 

この黒井鎮守府のそこら中に徘徊するこのロボット、Mr.ハンディは、明石と夕張特製の家事手伝いロボットだ。

 

他にも、アサルトロン、プロテクトロン、セントリーボットなどの警備ロボットが鎮守府を巡回し、警備に当たっている。

 

うーん、俺の仕事が減るんだよなぁ。

 

Mr.ハンディは、球体のボディに三つのカメラとマニピュレータを持ち、ブースターで浮遊するロボットで、それなりに高度なAIを持つ、有能なロボットなのだ。

 

料理は俺と鳳翔や間宮、伊良湖、速吸がやるが、掃除や洗濯、庭の管理維持などはMr.ハンディが済ませてしまう。

 

ただでさえ働いてない俺の立場が……。

 

「Mr.ハンディ、休む気は無いか?俺も家事したい」

 

『いえいえ!滅相も無い!家事は私達にお任せして、旦那様は奥様方とコミュニケーションをとってあげて下さい』

 

くっ、有能なんだよなぁ!

 

流石はAI、変な方向に親切だ。……因みに、ロボット達は俺のことを旦那様と呼び、俺はロボット達に対する第一優先の命令権を持つ。命令権を持つんだが……、ロボットにプログラムされた基本思考ルーチン的に、俺は家事をやらせてもらえない。

 

しゃあない、明石と夕張のところにでも行くか。

 

このままロボットを増やすと堕落するぞと警告せねば。

 

 

 

「つまりな、明石に夕張。あまり便利になり過ぎるのも良くないぞ」

 

「はあ……」

 

「分かりました?」

 

さては、分かってないな?

 

「何にもやらないと何にも出来なくなるぞー」

 

「良いじゃないですか別に。今の時代、家事なんてできなくても困りませんよ」

 

と、明石が言う。

 

「提督が駄目になれば駄目になるほど、私としては助かります。その分、提督をお世話出来る訳ですし」

 

と、夕張が言う。

 

流石は技術の申し子。言うことが違うぜ。

 

だがな?

 

「俺の仕事が無くなっちゃうだろ!俺が家事をやらないでどうする!」

 

「「だから、やらなくて良いんですってば!」」

 

良くないでしょ俺の存在意義無くなるじゃんもー。

 

「提督はそこにいてくれるだけで良いんですよ!」

 

「家事とかはロボットに任せて、私達とイチャイチャしましょうよ!」

 

いやいやいやいや、いかんでしょ。

 

「女の子に囲まれて酒飲んでギリギリ合法なビジネスで荒稼ぎって……、悪党じゃん!」

 

「……提督は悪党でしょう、それは」

 

「ウチは悪の組織ですよ」

 

………………あ、そっか。

 

あー、うー、じゃあ、良い、のか?

 

「良いんですよ良いんですよー、私達と一緒に機械弄りしましょう!」

 

そう言って明石は、俺の手を取り、隣に座った。

 

うーん、良いのか。良いのか?……まあ、良いか。

 

「提督、ほら、見て下さい。新作のスナイパーキャノンですよー」

 

「新しい発明ですよー」

 

話を逸らされてしまった。でもまあ、騒ぐほどでもないか。

 

ん?そう言えば……。

 

「妹とはどうなんだ?仲良くしてくれているか?」

 

妹……。

 

あまり言及していなかったが、俺には妹がいる。

 

どんな子かと言うと、そうだな、兎に角、身内の贔屓目を抜きにしても……、

 

「はい、仲良くしてますよ!実際に会ったことはないんですけど、チャットとかスカイプとかで!凄いですね、かなりの天才です!」

 

「提督がマルチな方面に才気を見せる秀才だとすれば、妹さんは技術力に特化した天才ですよね」

 

そう、天才なのだ。

 

いつか言った、「原子力空母をラップトップ一つで掌握して見せる」と言う文言に違わず、技術力方面の天才……。

 

それも若干引くレベルの。

 

「でも私達、気になってることがあるんですよ」

 

「何だい?」

 

「妹さん、お幾つなんですか……?」

 

「声が明らかに子供なんですよねぇ」

 

ああ、それは……。

 

「あいつ、昔俺が拾ってきた若返りの薬を改良したものを間違って使ってな、肉体年齢が九歳のまま止まってるんだよ」

 

実験中の事故でな。

 

「へー、そうなんですか」

 

「では、ヨスガノソラ的な展開は?」

 

「ないです」

 

妹は攻略キャラではありません。繰り返します、妹は攻略キャラではありません。

 

流石の俺も九歳の、初潮前の幼女に欲情はしねぇよ。……しない、と思う。しないと思いたい。

 

え?駆逐艦に欲情するじゃんって?れっつ!!おひめさまだっこ?ハナマルセンセイション?いやーちょっと覚えがないですね、はい。

 

「それを聞いて安心しました!ライバルは少ないに越したことはありませんからね!」

 

安心しろ、妹に手を出す日は未来永劫来ないから。

 

 

 

『あー、あー、明石君、夕張君?聞こえるかね。私が先日送ったアサルトロンの実働データの件なんだが……』

 

おっと、噂をすれば、だ。

 

「久し振りだな」

 

『……む、兄さんか』

 

妹の名は……、

 

「花凛」

 

新台花凛と言う。

 

俺の唯一の、血の繋がった家族だ。

 

「煙草、吸い過ぎてないか?ちゃんと風呂入ってるか?ご飯食べてるか?」

 

『むう……。心配し過ぎだ。餓鬼じゃあないんだぞ。……肉体年齢は九歳児だが』

 

そりゃあ、心配もするだろうさ。家族なんだから。お前は家族だ(腹パン)。

 

「今、どこにいるんだ?」

 

『……マサチューセッツ州だ』

 

「風邪とかひいてないか?」

 

『元気だよ』

 

「そうか、そりゃあ良い。健康が一番だからな」

 

そんな、他愛のない会話を続ける俺達を見て、明石が一言。

 

「あれですね、兄妹って言うより……、親子みたいですね」

 

ああ、まあ、なあ。

 

『……実際、育ての親みたいなものだしな』

 

「……えっ、あっ、何か、複雑な家庭の事情とかでしょうか?!でしたらすいません!!」

 

「いやいや、そう言う訳じゃないよ、ただ……」

 

「ただ?」

 

……口に出したくはないが、俺の家系……、新台家は代々、屑だ。それも、相当にハイスペックな。

 

例えば、「宇宙最強の男を目指す」と言って異世界に消えた曽祖父。「最高の建築物を建てたい」と言って行方を眩ませた祖父。「世界一美味しい料理をこの手で作る」と言って亜空間に飛び込んだ父……。

 

新台家の男は、皆んなコレだ。控え目に言って頭がおかしい。

 

家庭を顧みず、皆何処かへ行ってしまうのだ。

 

斯く言う俺も、「世界の果てを超えた先まで旅したい」と言う思考回路の元行動するが故、他人のことは言えないんだが。

 

まあ、そんな訳で、物心つく頃には放置されていた俺は、適当に妹を育てて……、旅して、旅して、また旅して。現在に至る、と。

 

なまじ、妹の頭が良かったせいか、殆ど放ったらかしにしてしまっていた。乳幼児の頃におしめを替えてやったくらいで、立って歩くようになったら放置。今思うと、相当悪いことやった気がする。

 

それが負い目なのかなんなのか、妹はついつい気にかけてしまう。仕送りもしちゃう。

 

「ただ……、親が物心つく頃には蒸発してたから、妹を育てたのは俺ってだけで」

 

「そう、なんですか。……提督、ご家族のこと、全然話さないんで、聞いちゃいけないことなのかとばっかり思っていましたが……」

 

「単に話すことが無かっただけだね。でも、俺は、親がいなくて困ったこととか特にないから」

 

アレだな、新台家の問題は、子供側が別に親がいなくても困らないスペックを持つって点もあるよな。皆んな一種の超人なんだよなぁ。

 

子供側が可愛くねー子供なのが悪いってのもある訳だ。

 

『……それで、アサルトロンのデータは?』

 

「あ、はい、今転送します」

 

『……確認した。ロブコ社にデータを売り払って研究資金の足しにしなければ……』

 

「仕送り増やそうか?」

 

『いや、不要だ』

 

そうか?必要ならいつでも言えよ。可能な限りはくれてやるからな。

 

『金の心配はいい。兄さんだって、余裕がある訳ではないだろう』

 

「あるよー、余裕あるよー」

 

複数のヤクザやマフィアとのギリギリ合法ビジネスによって荒稼ぎしている今、金の心配は無用だ。

 

今、俺は、輸出入産業の利権の多くを握っている。

 

何せ、艦娘で輸出入ルートを警備するのも、深海棲艦を嗾けて輸出入ルートを駄目にするのも自由自在だからだ。

 

お陰様で大本営の補助がなくとも莫大な資金を集められている。

 

艦娘にもしっかりと給料を出せてるし、自由に使える金も前とは段違いだ。

 

『……それでも、研究資金くらいは自分で稼ぐさ』

 

妹が自立している……!

 

妹の俺離れ。さみしい。

 

『私だってこんななりだが◼︎◼︎歳だぞ。そりゃあ自立もするさ』

 

「そうか……、◼︎◼︎歳か。◼︎◼︎歳にもなるのか。お互い、歳をとったなあ」

 

『兄さんも私も、肉体年齢は若いままだろう。精神が老化しなければ、お互いまだまだ現役だ』

 

「そう、だな」

 

まだ若い。

 

「……兎に角、困ってることとかは無いんだな?」

 

『無いよ、壮健だ』

 

「大本営の監視とかは?」

 

大本営の監視……。

 

大本営はどうやら、俺の唯一の肉親である妹を人質に取ろうと、妹を監視しているらしい。だがしかし、

 

『はっ、あの程度の監視、何も困らんさ。いざとなれば警備ロボットを嗾けて潰せばいい』

 

妹の技術力の前では、無意味なんだがな。

 

まあ、何にせよ、

 

「何かあったら、いつでも連絡してこいよ」

 

何かあれば、力になるさ。家族だからな!

 

『……ああ、ありがとう』

 

一言言って、通信終了。

 

 

 

「「……ヨスガノソラ的な展開はないって言ったのに、妹さんと仲良いじゃないですか〜!」」

 

「ええい、仲が良いだけだ!それ以上でもそれ以下でもない!!」

 

勘繰らないでいただきたい!妹とは、何も、ないのだ!!!

 




明石、夕張
マッドサイエンティスト。スケベ枠。


名前は花凛。原子力空母をラップトップ一つで掌握するレベルの天才。ニート兼発明家。某インフィニットなストラトスの天災並みの技術力を誇るが本人の望みは楽隠居なので、最低限の発明以外はやらない。旅人との仲は非常に良い。

旅人
人間の屑。幼い妹をほったらかしにしていたと言う負い目から、何かと世話を焼くが、妹は別に気にしてない。

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