ガングートがどうなるのか、今後に乞うご期待。
「ひーびきくーん、俺、一人で行くって言ったよねー?」
ロシア、海沿いの街。
買い出しに来た。
買い出しに、来た、のだが……。
「ハラショー、ロシアの大地を踏むのは初めてだ」
呼んでもいないのに響が着いて来た。
「買い出しだぞ、何にも面白いことないぞ」
酒とか色々。キャビアも買うぞー、買っちゃうぞー。……別にロシアで買うからキャビアが安くなるとかそう言うのはないからな。ロシアでもキャビアは高級品だ。
「そんなことはないさ。司令官と一緒にいられるだけで私は幸せだよ」
えっ、何で今口説かれたの俺。やだ、キュンとした。胸キュン。侮れねえな響。
「それに……、司令官と一緒にいると……」
『うわーん、どう言うことだー!!祖国が無くなったなんて信じんぞーーー!!!』
「……絶対に退屈しないからね」
ああ、はいはい、また厄介事ね。
『おい貴様!ここはどこだ!!』
厄介事の種、目の前で泣き喚くこの美女。俺の勘が正しければ、艦娘だ。見れば分かる。なんて言うか雰囲気とか、匂いとかそう言うのでも分かる。
「司令官、この人は……、多分、ソ連の戦艦、ガングートだね」
と響の言。
ソ連……、ソ連。
オッ、厄ネタだな?
『あー、ここ?ロシアだよ』
『ロシアロシアロシアロシア……、皆口を揃えてそれだ!ソビエトは……、我が祖国、ソビエトはどこだ!』
オオッ、厄ネタかァ!!
えぇ……、俺が説明するの?
『あー、ソビエト社会主義共和国連邦は、1991年、12月にソビエト連邦共産党の解散に伴い、ソビエト連邦の共和国が全て独立、事実上解体されたんだよ。もう、だいぶ前の話だ』
『う、嘘だッ!!!』
嘘じゃないんだがなぁ。嘘松と言えればどれだけ楽か。
『本当だよ。気の毒だが、ソ連はもう、無いんだよ』
『そ、そんな、馬鹿な……』
頭を抱えるガングートさん。もうね、本当に、気の毒としか言いようがない。申し訳ないが何もしてやれない。俺には、彼女を元気付ける方法がない。
『……どうしてだ?どうして祖国は滅ばねばならなかった?理由は何だ?』
『……経済破綻が主な理由でね。当時の大統領が改革案を出すが見事に大コケ。まあ、限界だったんだよ、共産党一党独裁とか、社会主義計画経済とか』
冷戦がなぁ……。まあ、冷戦より前の記憶しかない艦娘に説明するのは難しいが。
『……では、私は?祖国を失った戦艦は?何処に行けば良いのだ……?』
俯いたまま呟くガングートさん。
まあ、行くところがないなら……。
『うち来る?』
勧誘だ。
幸いにもこの人は我が黒井鎮守府の募集要項、美女、そして艦娘の二条件を見事に満たしている。
『うち……?何処だ?』
『黒井鎮守府。日本の鎮守府だ』
『枢軸国側ではないか……』
『もう昔のことなんだよ、ガングートさん』
悪いが俺は、二次大戦を体験していない。だから、当人の恨みや因縁も分からない。
だけど、もう良い加減にしてくれよ。過去の因縁は忘れて、手を取り合おうじゃないか。
『一歩、進んでみる気は無いか、ガングートさん』
『……祖国を、捨てろと言うのか?』
『違うさ、君の祖国は、いつだって君の中にある』
適当なことを言っておこう。シリアス苦手だし、雰囲気で押し切ろうか。いけるいける。大丈夫大丈夫、俺イケメンだし。
『祖国は、私の、中に……』
はっ、と何かに気付いたかのように目を見開くガングートさん。
『そう、か……、そうだな!祖国は私の中にある!』
よく分からんけど元気になったみたいで良かった。いや本当に。
『その話、受けよう!どうか、私を導いてくれ……!!』
『心得た!』
ガッチリと手を握るガングートさん。
いやあこれで一件落着ですわ。……うん、カリスマにものを言わせただけなんですけどね。これが交渉スキルですよ、奥さん。
『ところでガングートさんは何処から来たの?』
『さん、はやめてくれ、むず痒い。……分からん、気付いたら海の上にいてな。取り敢えず陸を目指し、辿り着いたのがここだった』
買い物をしながら、ガングートさ、いや、ガングートに話しかける。
うーん、気付いたら海上にいた、か。
ドロップか?
……ああ、ドロップと言うのは、何らかの要因で突然艦娘が現れる現象のことね。
ごく稀にしか起こらない筈なんだけどな。
まあ俺、上条なんとかさんレベルのトラブル体質だし、俺のせいみたいなところもあるっちゃあ、ある。
禁書三期応援してます。
『そっかー、じゃあガングートはドロップで生まれたのか。うちでドロップで生まれたのはコマンダン・テストとウォースパイトだけだよ。レアだねレア』
『む、そうなのか?』
『まあ、だからって皆んなと何か違う訳じゃないけど』
差別はない。
『ところで、その、さっきから気になっているんだが、そこのちっこいのはもしかして……』
『……確かにちっこいかもしれないけれど、それを本人に面と向かって言うのはどうかと思うよ』
響が多少むくれながらもそう返す。
『ヴェールヌイ、か?』
『そうだよ、ヴェールヌイだよ』
『おお、おお!同志よ!!』
響に抱きつくガングート。キマシ?キマシなの?キマシタワー建てる?
『はぁ、はいはい、離れてよ。司令官以外に抱きつかれても暑苦しいだけだよ』
『ああ、いや、すまない。かつての同志に会えて嬉しいよ』
ニコニコと、本当に嬉しそうに笑うガングート。良いね、表情がコロコロ変わって可愛らしいよ。感受性が豊かなのは良いことだ。
『……貴様も驚いただろう。この世界に呼ばれたら、祖国が無くなっていたんだからな』
『まあ、ソ連が無くなっていたことには驚いたけど……、それだけだね』
『む、何故だ』
『私の祖国は日本だよ』
『……そうか』
今度は一転、悲しそうな顔に。
『ま、まあ、そうだね、それでも、艦の頃は一時ソ連に身を置いたことがあるからね。同志と呼びたいなら、そう呼んでくれて構わない』
『そうか……!!』
また一転、嬉しそうな顔に。
『そうだな、そうだな……!生きてさえいれば、かつての同志にまた会えるかもしれん!これからよろしくな、同志ちっこいの!!』
『……だから、ちっこいのはやめてくれないかな。気にしてるのに』
なんだ、気にしてんのか。瘦せぎすのロリボディ、需要はあるんだけどな。俺的にも十分可愛いと思うんだが。
欲情するかって?
………………さ、さあ、どうだろうね?
『……こんな身体だと、司令官の気を惹くのもやっとやっとだよ』
『気を惹く?何のことだ?』
『いずれ分かるよ、いずれね……』
ガングート
ハラショー。
響
同志ちっこいの。
旅人
資本主義。