取り敢えず榛名をなでなでして一日を終わらせる(医者並感)。
と、言う訳で。
里帰りしました。何年ぶり?二、三年くらい?分からん。取り敢えず、日本にいる知り合いに挨拶をしつつ、国内をブラブラすることにした。
そう言えば、空条教授が艦娘がどうとかなんだとか言ってたし、海の方に向かうか。
まあ、俺がこうしてあてもなく彷徨うと……、
「ぐっ、うぅ、お姉さま達、みんな……。は、早く鎮守府に戻らないと……」
大体こう言うトラブルにめぐり逢う。いつものことだ、もう慣れた。それに……、
「おーい、大丈夫か?お嬢さん?」
面白おかしいトラブルは大好きだ。何と言うか、知り合いの何でも屋兼デビルハンターが言っていた、「刺激があるから人生は楽しい、そうだろ?」という言葉。これが一番しっくりくる。
「あ、貴方は?」
「そうさね、俺は気ままに彷徨う旅人ってとこか。お嬢さんは?」
「わ、私は、」
「おっと、立ち話もなんだから、あっちの俺の車の側で聞こう。椅子を出すからさ」
「は、榛名は大丈夫で、」
「そんなに砂まみれじゃ治療も出来ないな。シャワーでも浴びるといい。車の中にあるから」
「そ、そんなことは、」
「ああ、どうせ訳ありなんだろ?見りゃわかる。もう慣れっこさ。通報はしないよ。良いから早くついて来な、ホラホラホラホラ」
「は、はい」
早口でまくし立てられたお嬢さんは、力無い足取りで俺について来る。
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「じゃあ、俺はお茶でも淹れておくよ。ゆっくりしていってね!」
彼は、そう言うと、車の外へ出て行った。
車の中のシャワー室に押し込められてしまったので、観念してシャワーを浴びる。
こうしてゆっくりとシャワーを浴びるのはいつ以来だろうか、覚えていない。
シャワーを浴びながら、私は彼について考えた。
不思議な雰囲気の人だ。
今まで会った人間は、私達艦娘を見ると目を逸らし、話しかけてくることなどなかった。
提督に虐げられている私達を見て、憐れんでくれる人はいても、こうして手を差し伸べてくれる人はいなかった。
でも、彼は自分のことを旅人だと言っていた。きっと、私が黒井鎮守府の艦娘だと知らないのだろう。
だから、少しだけ休ませて貰ったら、直ぐに鎮守府に戻ろう。きっと、沢山怒鳴られて、沢山殴られるんだろう。けど、お姉さま達や、仲間のみんなが酷い目に遭うよりはマシだ。それに、私の手助けをしたことが提督に知られれば、彼は酷い目に遭うだろう。
「おーい、入るぞー。着替えとタオル置いとくからねー」
丁度上がろうとしたとき、彼がそう言って籠を置いて行った。
私は、籠のバスタオルで髪を拭き、着替えを見た。
「わぁ……!」
置いてあった着替えの服は沢山のフリルをあしらった可愛らしいもの。正直、この様なお洒落には憧れていた。もう、諦めていたけれど。
「そっ、その!こんな綺麗な服、着れません!さっきまで着ていた私の服は……」
私はバスタオルを巻いて、車の中から彼に言った。
「いやいやいや、あれはもうボロボロだから。和服用の生地もないし。って言うか全く原材料が分からんなあの生地。まあ、取り敢えずそれ着て。サイズは大き目に作ったから多分大丈夫だと思うけど」
は?つ、作った?私がシャワーを浴びていた時間で?
「あ、デザインが気に食わない?ズボンとジャケットとかがいい?セーターでも編む?」
「い、いえ!デザインの問題ではなくて!」
良く分からないが、服というのは十数分で作れるものなのだろうか?
「じゃあ早く着てね。お茶とパンケーキが冷めるからさ。お嬢さんみたいな弱った子にはパンケーキがいいって知り合いの医者が言ってた。勿論、味は保証する」
パンケーキ……。そう言えば、さっきから辺りに甘い匂いが漂っている。
思わず、涎が垂れそうになる。
普段私達が口にするのは、最低限の味と量の粗悪な糧食か、栄養剤だ。
甘いものやお茶なんて初めてだ。
それに、もう三日も食べてない。
「い、良いんですか?」
「良いも何も、君の為に作った訳だし」
その言葉を聞いて、私は直ぐに服を着て、車から降りた。
「お茶はハーブティで良かった?知り合いの医者から貰ったピンクの花で作ったんだけど」
「は、はい!あの、本当に良いんですか?」
「いいのいいの。卵と牛乳余ってるし」
「じゃ、じゃあ、いただきます!」
そして私は、蜂蜜のたっぷりかかったパンケーキを口にする。
「……おいしい……」
「うん、おいしく作ったからね」
噛みしめる度に、蜂蜜の優しい甘さと香りを感じる。ふっくらと焼かれたパンケーキ自体の食感もとてもいい。船の知識として、甘いものの存在は知っていたが、これ程のものとは。
そうして、夢中になって食べ進める内に、なんだか涙が溢れてきた。
「うっ、ひぐっ、お、お姉さま達にも、みんなにも、た、食べさせてあげたいです!いつもいつも、毎日毎晩!ずっと戦ってるのに!まともな食事も、お休みも!何もないなんて!!みんなが、みんなが可哀想です!!」
「戦う?海で?……ああ、もしかして君、艦娘ってやつか?」
「ッ!!」
つい、口を滑らせてしまった。こんな私に良くしてくれた旅人さんを怖がらせるのは嫌だ。
「……黙っていてごめんなさい。騙すつもりはなかったんです。貴方の言う通り、私は艦娘です。気持ち、悪いですよね……。直ぐにいなくなりますから」
「へぇー、噂と違って随分と可愛らしいもんだ。榛名って言ったっけ?じゃあ日本の戦艦だよな?凄いじゃん」
……え?
「…………あ、貴方は、私が、怖く、ないんですか……?」
「別に?」
「……私は、艦娘。化け物、なんですよ……?」
そう、私は艦娘。「人間」とは違う、化け物だ。
けれど彼は、それを聞いても怖がるような素振りを見せず、語り出した。
「…………なあ、お嬢さん。あんた、吸血鬼に会ったことは?」
「……え?」
「巨大でおぞましい生物兵器は?宇宙からやって来た捕食者は?人殺しをゲームとして楽しむ怪人は?」
「いっ、いえ、会ったことがありません」
「二足歩行する戦車は?二丁拳銃を操る死体は?不死身で饒舌な傭兵は?」
「そんなの、いるはずが……」
「いるよ。全部実在する。この目で見てきた。そんな俺からすれば、お嬢さんなんて化け物のスタートラインにすら立っちゃいないね」
そう言うと、彼は私にハンカチを差し出し、優しく頭を撫でてくれた。
初めて触れた人間の優しさ……。
「……あっ、……わ、私は、私はこんなに、人に優しくして貰ったのは初めてです……」
拭いても拭いても、涙が溢れてくる。
「そうかい、美人なのに運が無かったな」
「……ふふっ、美人と言われたのも、初めてです」
「……何だ、随分と可愛らしく笑う化け物もいるもんだ。ほら、送って行くから。何処までだい?」
彼の善意に負けた私は、鎮守府近くまで送ってもらうことにした。
「……分かりました、でも、黒井鎮守府の側までにして下さい。中に入ってはなりません。そして、もし提督に会ったら、直ぐに逃げて下さい」
「おう、よく分からんが、黒井鎮守府までな。おっ、グー○ルマップで出るじゃん」
そう言って、彼は、私を手早く治療すると、鎮守府へ向かって車を走らせた。
因みに、何処からともなく包帯や絆創膏を取り出したり、やたらとよく効く塗り薬の出所などの件についてははぐらかされた。
榛名
黒井鎮守府所属。
いい子なので周りの艦娘を庇ってよく殴られる。
長門の下位互換と言われ、最近の扱いは酷い。
旅人
この前行ったヤーナムという街の狩人に、沢山のものを服の中に上手い具合に仕舞う方法を教えてもらった。
あと、変なものが見える様になった。(啓蒙+114514)
教授
土下座しても単位はくれない。
趣味は奇妙な冒険をすること。
何でも屋
悪魔退治をする。
医者
ロリコン。
嫁を撫でるのが趣味。