旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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白露型。

すき。


202話 ベーリング海奪還作戦 前編

うー、最近の朝は少し寒いな。オフトゥンから出たくない。まあ、シベリアとか北極よりかは暖かいから寒さ的には平気なんだが。

 

平気なんだが、それでも、ぬくぬくのオフトゥンは恋しいもの。中々離れられないね。

 

「そうは思わんかね、時雨よ」

 

「ああ、そうだね」

 

と、何故かいる時雨に声をかける。

 

何故俺の部屋にいるんだろう。

 

「単純に会いたかったから、じゃあ駄目かい?」

 

俺の脳内の疑問に、俺の思考を読んで答える時雨。

 

「いや、問題ないよ」

 

思考を読まれるのがデフォみたいなところはあるが、不快ではない。碌なこと考えていないから読んでも面白くないだろうけど。知り合いの覚り妖怪には「この人頭おかしい……」ってよく言われる。

 

「ふふ、本当に会いたかったから、と言うのもあるけど、本題はこれさ」

 

ん、作戦具申書……?

 

題名は、『ベーリング海奪還作戦』か。なるほど。

 

 

 

「そりゃあ!」

 

『ベーリング海奪還作戦!!!』

 

ホワイトボードに文字を書く。

 

「やります」

 

「端的過ぎる」

 

そうだろうか?もう、やりますで十分ではないだろうか。作戦会議なんか必要ねえんだよ(KBTIT)!!

 

正直言って言うことがない。

 

「編成どうしよっか。……言い出しっぺの白露型全員で良いか」

 

戦闘能力が高過ぎて、艦種関係ないもんな。例え戦艦が出ようと白露型で十分だ。特に時雨と夕立は最大戦力にも数えられるほどだし。

 

「ブリーフィングをしないか!」

 

と、長門に注意される。

 

つってもなあ。

 

「あー、そうだな、そう言えば、新しいタイプの駆逐艦が確認されたんだった。これだ」

 

ホワイトボードに写真を貼る。

 

その深海棲艦は、まん丸で、まるで人魂のような見た目だった。

 

「名前はナ級。こっちの後期型は火力が馬鹿にならないから、気を付けろ」

 

くらいかなぁ。言うことねえわ。

 

「海域のボスと思われるのはこれ、駆逐棲姫。なんか春雨に似てるからわるさめちゃんと仮称するね」

 

「?!」

 

……うん、以上だ。

 

「何か質問は?」

 

「ないよ」

 

「ないっぽい」

 

「ありません」

 

よし、と……。

 

全員問題なし。

 

時雨のスカートをめくって、と。

 

うん、黒!

 

「さ、行こうか!!」

 

「(スカートをめくった意味は……?)」

 

 

 

 

 

旅人号にVOB(追加ブースター)付けて海上を音速で疾走、日本の黒井鎮守府からものの数分でベーリング海についた。

 

羅針盤?知らんなぁ、そんなものは。

 

「白露はまだ練度が低いからな、身を守ることを最優先に考えるように」

 

「はーい!」

 

因みに、白露の持つ仕掛け武器はパイルハンマーだ。破壊力が一番だから、らしい。

 

「じゃ、敵が出るまで待つか」

 

VOBを切り、平常速度で巡航する旅人号。これより、敵とエンカウントするまでだらだら巡航することにした。

 

旅人号の中に用意された居間で、白露型とだらだらする。とても作戦中とは思えないが、戦闘前には気負わずに肩の力を抜くことも大事だ。

 

「提督……」

 

「時雨……」

 

色っぽい目で見つめられる。ヤバいな、最近の時雨は色気が凄い。ミステリアスな雰囲気を漂わせ、大人っぽく迫ってくる。ついつい、こっちもその気になっちまう。

 

「んっ……❤︎」

 

キスされた。これが春雨なら、思いっきり舌を入れてくるんだけど、時雨はあまりそう言った、所謂エロい責め方はしない。ただ、愛を伝えるように、思いの丈を吐露するように長い長いキスをするのだ。

 

「ずるいよ、時雨姉……。提督、あたしとも、ちゅーしよ?」

 

「おっ、そうだな」

 

対して、山風は、雛鳥が餌をねだるかのようなバードキス。親に甘える感情だろうか、愛に飢えていやがるな。……あとなんか甘いな、飴玉でも舐めていたんだろうか。

 

二人の肩を抱きながら、存分にイチャイチャする。楽しいなあ、イチャイチャすんの楽しいなあ!

 

「あたしも構うっぽい〜!」

 

「はいよー」

 

夕立には噛み付かれた。首筋から流れ出る一筋の血を、掬い取るように舐められる。

 

「あは、美味しい❤︎」

 

赤い瞳が愉悦で歪む。白露型にとって俺の血は万能薬であり、嗜好品だ。

 

「提督?次は脾臓が欲しいわ?食べて、食べて……、貴方の事をもっと知りたいの❤︎」

 

俺の腹部をなぞる海風。セクシーで妖しい魅力があるな。

 

こんな感じで、両手に花どころか全体的に花状態で楽しんでいると、俺の脳内の瞳に敵影が映った。

 

まん丸、ナ級だな。

 

「はーい、じゃ、そろそろ行こうか」

 

「あらら、残念」

 

「ちぇー、もっと提督とこうしていたかったのになー」

 

村雨と江風が文句を言うが、仕方ないことだ。

 

出ちまったもんはしゃーない。

 

「行くぞー」

 

「「「「了解」」」」

 

オンオフしっかりできるのができる大人ってやつだ。

 

 

 

船外には、予想通り、ナ級の姿が。

 

「んじゃ、やりますか」

 

「ああ、行こうか」

 

「殺すっぽい」

 

「うふふ、行くよ?」

 

俺が目の前のナ級に駆け出すのと同時に、全員が海面を蹴った。

 

そして、俺以外のそれぞれが、皆手元に艤装を……、仕掛け武器を顕現させた。

 

時雨は、柄頭に着脱可能な刃の付いた日本刀、落葉を。

 

夕立は、月の光を纏う、月光の聖剣を。

 

春雨は、隕鉄によって造られた一対の薄刃剣、慈悲の刃を。

 

村雨は、伸縮自在の蛇腹剣、獣肉断ちを。

 

白露は、特殊機構で鉄杭を打ち出す、パイルハンマーを。

 

海風は、鋸と鉈の複合武器、ノコギリ鉈を。

 

江風は、撃鉄の付いた大槌、爆発金槌を。

 

山風は、ハルバードにもなる大斧、獣狩りの斧を。

 

それぞれが悍ましい、殺意の極致にあるような武器だ。

 

 

 

『ガァッ!!!』

 

「死んじゃえ」

 

村雨は、ナ級の砲撃を、首を逸らすだけで避け、獣肉断ちを伸ばして一撃を加えた。

 

『ギッ……?!』

 

「それ」

 

そして、伸ばした獣肉断ちの鋸刃を叩きつけ、思いっきり、引いた。

 

『ガガゴガゴガガガガガガ!!!!』

 

結果、ナ級は、装甲が、血肉が、骨が刮げて、真っ二つ。無残な屍を晒す。

 

近付いて嚙み付こうとするナ級に対しても、即座に獣肉断ちを縮め、対応する。

 

『ガギッ』

 

「はいはい、遅い遅い」

 

更に、襲いかかるナ級を迎撃するかのように砲撃し、白露型専用の水銀弾を叩き込んでは、

 

「いただき!」

 

動きの止まったナ級の内臓を引き摺り出す。

 

『ガ……、ア……』

 

びくん、と大きく身体を動かしたナ級は、血の塊を吐き出すと、故障した機械のように動かなくなる。

 

 

 

山風は、見た目と違って酷く暴力的だ。

 

「ううう……、あああ!!!」

 

駆逐艦にしては強過ぎる筋力を存分に発揮し、獣狩りの斧でナ級を斬り飛ばす。

 

ナ級の群れの真ん中に躍り出ては、

 

「邪魔ぁぁぁ!!!」

 

がしゃん、と言う音と共に、斧の柄を伸ばしてハルバードにしたと思うと、

 

『ギッ』『ガッ』『ゲアッ』

 

くるりと一回転、薙ぎ払い。

 

これで、多数のナ級が真っ二つになる。しかし。

 

「ぁぁぁあああ!!!」

 

山風は容赦せず、もう一回転。計二回転の360度薙ぎ払い。

 

真っ二つに分断されたナ級達の身体は、吐き気を催すような肉塊と化した。

 

 

 

一転、春雨は華麗だ。

 

歪んだ二枚刃の慈悲の刃は、星に由来する隕鉄で造られており、速度が乗れば乗る程鋭くなると言う特性がある。

 

「あはっ❤︎」

 

凄まじい速さで戦場を駆け巡る春雨。

 

交差させて斬り裂く、貫く、退く瞬間斬りつける……。ステップと共に放たれる鋭利な斬撃は、死の残響のようだ。

 

その、死の残響と共に春雨は、

 

「うふふ、あは、あははははは!!!」

 

殺戮の舞踏を踊るのだ。

 

 

 

一通りの殺戮が終わったあたりで、ナ級の群れの奥からわるさめちゃんが出てきた。

 

『ヤラセハ……シナイ……ヨッ!!』

 

「わるさめちゃん!わるさめちゃんじゃないか!!」

 

『ワ、ワルサメチャンジャナイ!駆逐棲姫ダ!!……ヨクモヤッテクレタワネ、反撃開始ヨッ!!!』

 

するとどうだろうか、俺達を囲むように、数百体の駆逐水鬼の量産型が集まってきた。

 

なるほど、罠か。ここにおびき寄せて、量産型水鬼で囲んで殴る作戦だったんだな。

 

『フフフ、サア、追イ詰メタワヨ、黒井鎮守府!!!』

 

「あは、は」

 

「ははははは、はははははは!!」

 

「あはははははは!!!」

 

そして、笑い始める白露型。

 

『ナ、ナニガオカシイ?!!並ノ鎮守府ナラ百回潰セル戦力ヨ?!!!』

 

「ああ、いや、すまない。おかしくってね。その程度で勝ったつもりになるなんて、まるでお笑いだよ」

 

くつくつと、喉を鳴らして笑う時雨。

 

「……しかし、これは、些か多いじゃないか。不快だね、不快だ。全て、直ぐに、消そう」

 

『ナ、ナニヲ……?!』

 

時雨は、自らの胸に落葉を突き立て、抜いた。

 

その瞬間、血の波動が辺りを吹き飛ばす……!!

 

「さあ、白露型の狩りを見るがいい……!!」

 




白露型
気狂いしかいない。

覚り妖怪
妹が気狂い。

旅人
気狂い筆頭。

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