黒でお願いします。
「さあ、白露型の狩りを見るがいい……!!」
その一言と共に、時雨の姿が搔き消える。
……加速。ヤーナムの大いなる業。古い狩人の遺骨による秘儀である。
『ナッ、キ、消エ……!!』
残像すら置き去りにする超高速度のステップで移動する時雨は、水鬼らの目に映らず、ただ、血でできた赤の斬撃を空間に残す。
先程の唐突な自刃は、日本刀『落葉』に血を纏わす為のこと。因みに、思い切り胸を貫いていたが特にダメージはないらしい。まあ、俺も心臓貫かれたくらいじゃ死なないからね。
目にも留まらぬ高速移動、そして、血を纏う斬撃。これが白露型二番艦時雨の、真の戦闘スタイルである。
「……ふっ」
軽く息を吐き、加速。一瞬にしてトップスピードまで加速し、
「疾ィッ!!」
落葉を振り抜く。戦場と言うキャンパスを斬撃の赤で彩る。
並の鎮守府なら真っ正面から相手取れる水鬼が、熱したナイフを入れたバターのように斬り分けられていく。
ならば、と、闇雲に暴れる個体に対しては、
「甘いよ」
即座に水銀弾を叩き込み、体勢を崩す。
そして、
「そこだ」
一瞬、落葉を消して、隙を見せた水鬼の腹部に腕を差し込む。
すると、水の入った皮袋を無理矢理撹拌するような、ぐちゃぐちゃと言う異音が辺りに響き、二、三秒程経った頃に、
「はあっ!」
内臓が、引き抜かれる。
『ア、アウ、ア……』
蠕動するはらわたが海上に投げ出され、主人の亡骸と離れた位置でその役目を終える。
悍ましく、実に冒涜的な絵面だ。
一般的に見れば燦々たる死の有様だが、俺には、一枚の美しい絵画のようにも見える。
血霞の舞う退廃芸術。
時雨の戦いはまさにそれだ。
ああ、なんだ。
やっぱり、綺麗じゃないか、時雨。
次に見えたのは月の光だ。
あの青い、暗い光だ。
「月光よ……!!」
夕立は、自らの剣、月光の聖剣に暗い光を宿す。
効果は劇的だ。
宇宙の深淵を宿したその大刃は、夕立の腕力によって振るわれ、水鬼の群れを瞬く間に斬り刻む。
「はああああ!!!!」
両の手でしっかりと握られた、夕立の手には大き過ぎるそれは、夕立の想いに確りと答えた。
「邪魔!邪魔ぁ!提督さんの邪魔っぽい!!!」
子供の癇癪のように暴れるその姿は、正しく獣で。
「消え、ちゃえ!!!」
豪腕に振るわれた大刃はその身に宿した月光で深海を照らす。
そして、
「行っけえええええ!!!!」
刀身から発する光が、斬撃に付随して、光の刃として空を駆けて行く。
言うなれば、光の波だ。
月光の奔流だ。
美しい、輝くそれは、進行上の水鬼達を斬り伏せながら、消えるまで真っ直ぐに進んで行った。
やっぱり、綺麗だ。
「あは❤︎提督さんの声、聞こえるっぽい❤︎提督さんが褒めてくれるなら、夕立、いっぱい、いっぱい頑張れるっぽい❤︎」
そして、夕立は、脳内の瞳に導きを得ている。それが俺であるらしい。まあ、何にせよ、道を見失うことはないだろう。
《エーブリエタースの先触れ……!!》
「オラァ!!!」
水鬼の包囲網をぶち破った青白い触手の束と爆炎は、海風と江風だ。
そして、神秘に依る秘儀を使い熟すのは海風だった。
……元来、艦娘は神秘の存在だ。
嘗ての大戦の英霊であり、一種の信仰の集合体であり、神霊であるのだ。
故に、その身は神秘に長け、
《彼方への呼びかけ……!!!》
ヤーナムの秘儀との相性は抜群である。
彼方への呼びかけ……、ヤーナムにあった医療教会の、聖歌隊の秘儀だ。精霊を媒介としての高次存在との接触の為に編み出された業の副産物で、星の小爆発を起こす。
それは、小規模な流星の飛沫で、周辺一帯の敵にダメージを与えるものだ。
一方で、江風は。
「ぶっ飛べ!!!!」
爆発金槌の機構を十全に使い、水鬼の群れを蹴破っている。
時折、油壺を投げつけては、
「これもやるよッ!!!」
火炎瓶での攻撃も行なっている。
深海棲艦も生体組織で構成されている以上、火炎は効くのだ。
「オラァ!!!」
襲い掛かる水鬼の出鼻をくじくように、顔面に爆発金槌を叩き込み、
「死ぃ、ねっ!!!」
撃鉄を起こした爆発金槌で爆炎を撒き散らす。
「わー、すっごいよ!提督!あたしも負けてらんないね!」
「無理するな白露ー」
で、俺と白露は、と言うと。
「行っくよー!えーい!!!」
「おっと、危ない」
意外と、コンビとして成立していた。
俺が防御と回避一辺倒なら、白露は火力特化。白露型でもトップの火力を持った白露との相性は良い。
「やー!!!」
白露が殴って、
「はいよー、はいはい、受けますよー」
俺が守る。
「とう!!!」
白露が何も考えず、火力を十全に発揮し、
「はーい、白露ー、退がろうなー」
俺がフォローする。
負担?いや、まあ、多少はね?
直接殴れない分これくらいはさ。
『ソンナ、馬鹿ナ!!全滅?!!一体、ドレダケノ戦力ヲ用意シタト思ッテイルノヨ?!!!』
いやー、見積もりが甘いっすねー。
『ア、悪夢ヨ……!!』
「ああ、そうだね、君は悪夢に囚われた。僕達の、狩人の悪夢にね」
時雨は、そう言って落葉を構えた。
『ウ、アア、オチロ!オチロォ!!!』
錯乱気味のわるさめちゃんはこちらに砲撃してくるが、時雨はそれを軽々回避した。
「無駄だよ」
そして、時雨は回転しながら宙に浮き、降下すると同時にわるさめちゃんを斬り裂く。ああ、なんて酷いことを!!!
『キャァァァ!!!』
「わるさめちゃーーーん!!!」
「……提督、どっちの味方なんだい」
そりゃ、可愛い子の味方だよ。
「わるさめちゃん大丈夫?」
『エ、ア、大丈夫ジャ、ナイ?』
「待ってろ、今回復魔法かけてやるからな」
『クッ!!アッチ行ッテ!!!』
ど、どうしたわるさめちゃん?!
『敵ニ治療サレテモ、嬉シクナイッ!!!』
ああ、その点なら大丈夫。
「わるさめちゃんには降伏してもらうからな」
『降伏?!降伏ナンテ絶対シナ』
はい上着どん。
『ア、アレ?!服ガ』
スカートどん。
『キャ、キャァァァ?!!!』
胸元と股間を抑えるわるさめちゃん。おやおやー?どうかしたのかなー?
「降伏、する?」
『シ、シナイモン!!!』
んじゃあ仕方ねえなぁ?!全裸にひん剥いてからこの水龍敬ランドの刑にかけるしかねぇよなぁ!!!
はい、下着どん!!!
「必殺ゥ!!!水龍敬ランドの刑ィィィ!!!!!」
『キャァァァァァ?!!!!』
乳首のところをハート型に切り取ったチューブトップに紐パン、股間部に「free❤︎」と油性ペンで書いた。
うーん、辱しめた辱しめた。満足満足。
気絶したわるさめちゃんを回収して、と。
「はーい撤収ー!帰るよー!旅人号に乗り込んでー!!」
「「「「はーい」」」」
ふう、さて。
悪は滅びた!!!
さて?深海棲艦退治後はお決まりの……?
「セクハラだぁぁぁ!!!」
「ヒッ……!!」
「……提督?」
「まあ待て時雨、まあ待て」
違うんすよこれは。違うんすよ。
「わるさめちゃんは罰を受けなければならない、ここまでは良いか?」
「いや、君の趣味だよね」
そっ、そんなことは、ない、ぞ?
まさか俺の趣味だなんて、そんなことは……。
「正直に、こっちを向いて、確りと言ってくれるかな?」
くっ……、趣味です……。
「じゃあ、何かい?僕も、こんな淫猥な格好をすれば良いのかい?」
「いやいやいやいや、そんなこたぁない。これはほら、罰ゲームの意を込めてのことだから。何にも無しに淫猥な格好をさせるとか変態じゃん」
いや俺、変態じゃないんでー!!そう言う下心とかはバッチリ隠していきたい。
「ふぅん。まあ、良いさ。好きにすると良い。でもね、僕達のことも見てくれなきゃ、嫌だよ」
「もちろん。その辺り、俺は抜かりないから」
ヘイトコントロールとか好感度調整とか超得意。盾役だし。
「まあ、提督がしろと言うなら幾らでもするからね、その、淫猥な格好を」
「エロコスプレは悪い子だけに着せるもんだから。時雨は良い子、大丈夫」
悪戯してもらえないのが不安?大丈夫、良い子には普通にセクハラするから!!
良い子には労いのセクハラ、悪い子には断罪のセクハラ。あらゆるセクハラをマスターして初めてセクハラマスターと言えるのではないだろうか。
……セクハラマスターになってどうすんだよ。
「さーて、わるさめちゃん、覚悟は良いかなァ?」
「ヤ、ヤメテヨオ……」
「駄目駄目ェ!観念してエロ写真撮られるんだよ!!」
撮る、撮る、一眼レフで撮る。
超楽しい。この時のために生きてる。
ふう、両足のないわるさめちゃんに際どい格好をさせて、四方八方から撮りまくりとは……。神をも恐れぬ所業だな。
だが、悪いのはわるさめちゃんの方だ。大義名分は我にあり。これは裁きの鉄槌なのだ。分かってくれ。
「ヤ、ヤダ、ソンナニ撮ラナイデ!……ウ、ア、ソンナ所マデ……?!」
「許しは請わん、恨めよ……」
「イヤーーー!!!」
よっしゃ、撮れた撮れた。
なんだか知らんが、兎に角良し!!!
白露型
つよい。
わるさめちゃん
あんなところやこんなところを撮られる。
旅人
鬼畜。