旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ケツにヘアアイロンをズドン。


208話 絶対島風領域

私は、天津風。

 

黒井鎮守府に新しく配属された、艦娘。

 

なんだけど……。

 

「あはは、あははははははは!!!おっそーい!!!!」

 

「ちょっと島風!速過ぎよ!連携を……」

 

「……ついて来れない方が悪いのよ」

 

「そんな言い方!」

 

島風の扱いに、困ってるの……。

 

 

 

「島風、もうちょっと他人のことも考えなさい!」

 

「うるさいなぁ、遅い艦が悪いんでしょ」

 

「そう言う言い方はしちゃ駄目よ!」

 

「天津風には関係ないもん」

 

「心配なのよ!」

 

もー、何を言っても駄目。一番速いけど、一番孤独。

 

誰よりも速い、島風の加速した世界について行ける艦娘は殆どいない。だから島風は、この鎮守府で最も速く、最も孤独なの。

 

あ、私が島風について行けるのは、この、よく分からない、工廠から貰ったゼクター?の効果ね。

 

そんな島風自身も、司令さえついてきてくれれば、後はどうでもいいって感じで……。

 

独断独走、そればっかり。

 

私にとって島風は、妹のようなものだから、いつも一人きりの島風が、気にかかってしょうがない。

 

何とか、皆んなの輪に溶け込ませたいところだけど……。中々、難しいわね。もうグループが決まっちゃってるから。

 

艦娘にも仲良しグループ?みたいなのがあってね。艦種毎、姉妹艦毎で行動するのよ。だけど、島風は、そのどこにも属していなくて。

 

「そんなんじゃ、ずっと独りぼっちよ!」

 

「別に良いけど」

 

これだから、なぁ……。

 

 

 

「と、言う訳なのよ。何か良いアイデアは無いかしら?」

 

「え?俺?」

 

「いや、丁度そこにいたから」

 

それに、陽炎型の中心的存在だしね、嵐は。

 

「うーん、島風がなぁ」

 

「そうなのよ。私が来る前からこうなの?」

 

「そうだなぁ、島風は、いつも一人でいるよなぁ」

 

そうなんだ、やっぱり、ずっと一人で……。

 

「話しかけたりしなかったの?」

 

「いや、話しかけても、適当に返されるからな。あんまり、他人に興味が無いみたいだ」

 

「そんな……」

 

「でも、良いんじゃないか?本人が一人でいたいって言うならさ」

 

「嵐までそんなこと言うの?!」

 

「逆に、天津風は心配し過ぎだよ」

 

そう、かしら。

 

「俺達は見た目は子供かもしれねーけど、中身はそうじゃないんだ。放っておいても大丈夫だって」

 

でも……。

 

「それに、うちには司令がいるからな。何が起きても何とかしてくれんだろ」

 

司令、司令かぁ。……あの人なら何でもできるし、確かに大丈夫そう。

 

配属されてまだ一ヶ月もしてないけど、あの人の人柄は分かった。

 

あの人は、良い人だ。

 

誰にでも分け隔てなく接して、根が優しくて、島風も気にかけてくれる。

 

実際、アクの強い人物の多い黒井鎮守府がうまくやって行けているのも、あの人によるところが大きい。

 

「……頼って、良いのかな」

 

 

 

×××××××××××××××

 

私は、島風。

 

この黒井鎮守府最速の艦娘。

 

……いや、一番は提督かな、本気の提督にはまだ追い付けないから。

 

まあ、取り敢えず、私は速い。

 

私の加速する世界についてこれるのは、提督だけ。

 

そう思ってた。

 

けど……。

 

「ほら、島風!一緒に食べましょう?」

 

「あ、うん」

 

一人、新しく。

 

友達が、できた。

 

「島風は何を頼んだの?」

 

「……ハンバーグ」

 

「じゃあ、私もハンバーグにしよっと」

 

天津風だ。

 

工廠のよく分からない技術で作られたベルトを使って、クロックアップ?によって加速する天津風は、私の世界に足を踏み入れた。

 

それだけじゃなく、

 

「ちょ、ちょっと島風?!食べるの速い!」

 

「良いでしょ、別に」

 

「良くないわよ!お腹痛くなるわよ?!」

 

私生活にも、口出しするようになってきた。

 

ちょっと、うざい。

 

友達なのは悪くないけど、急に私の速度についてくるんだもん、戸惑っちゃうよ。

 

いつも私の完全独走だったのに。

 

 

 

「いやあ……、まさかサクラ大戦のDVDボックスで旗風ちゃんが建造されるとは……」

 

「まあ、神風型なんて帝国華撃団みたいなもんでしょ?」

 

「それと千歳と千代田、水上機母艦ですね」

 

あ、音成の提督。

 

と、提督、大淀さん。

 

「いやでも、でも……」

 

「うちも同じようなもんだしな。雰囲気的には」

 

「提督、お言葉ですが、音成鎮守府の雰囲気が帝国華撃団なら、うちはレッドショルダーです」

 

「マジで?」

 

……どうやら、音成鎮守府には、旗風、千歳、千代田が配属されたらしい。

 

ふーん。

 

私の速度についてこれない艦娘がまた増えたんだ。

 

関係ないや。

 

「……などど、思っているな島風ェ?!!」

 

すると、提督にいきなり抱き上げられた。

 

「?!!!」

 

え?!何?!

 

「速度関係なしに艦娘同士仲良くしような!」

 

「う、うん」

 

わ、分かった。

 

「その顔は……、ふむ、新しい友達の天津風が、自分と同じ世界に立ってくれるのが嬉しいような戸惑うような、と言ったところか?仲良くなれるか不安になりつつも、自分のプライベートな、触れて欲しくない部分にまで触れられそうで微かな嫌悪感もある、と」

 

「え?あ、うん」

 

い、いきなり過ぎる……。って言うか、描写が的確!心でも読まれたのかな?

 

「いや、心は読んでないぞ。心理学<80>だ」

 

そ、そう。

 

「良いか島風、友達は大事にしろ。人生の先輩からのアドバイスだ」

 

「もちろん、そのつもりだよ?でも……」

 

「戸惑うのは分かる。だけど、少しずつ、心を開いてごらん?きっと、良い結果になるよ」

 

心を、開く、か。

 

天津風と、そんな仲になれるだろうか。

 

「島風は、他人とは距離を置きたいタイプだろ?だから、世話焼きな天津風にお節介されて苛立ってるんだよな」

 

「うん」

 

「でも、それは、天津風が純粋に島風のことを心配してのことだって気付いてもいる」

 

「うん」

 

「しかも、今まで俺と島風しかいなかった、島風の世界に、急に天津風が入り込んで来たみたいに感じる、と」

 

「……うん」

 

本当に心読んでないの?完璧に私の気持ちを理解されちゃってるんだけど?

 

「私、天津風と仲良くなれるかな?」

 

「大丈夫、大丈夫だ島風。きっとうまくいく。君はただ、素直に生きれば良い、真っ直ぐに、いつも通り走れば良い」

 

「そう、かな」

 

「そうだよ」

 

んー、提督が大丈夫って言うなら、大丈夫かな。

 

いつも通り走れば良い、か。

 

分かった、提督。

 




天津風
工廠で生み出された謎のベルト、ゼクターによって、超高速で動く。


腰の探照灯は正義の証。燃えろ熱血ヒーロー魂。

島風
音速少女。誰も追いつけない超高速の世界に立つ。

旅人
バフマシマシで島風の超高速に追いつく。

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