今日は、12月25日。
例の神の子が生まれた日。
即ち、クリスマスだ。
クリスマスである。
クリスマスなのだ。
「メッリークッリスマーーース!!!」
「「「「メリークリスマス!!!」」」」
パン!とクラッカーの軽快な音が響く。黒井鎮守府はいつになく、いや、いつも通りのお祭りムードだ。実際にお祭りなんだが。クリスマスパーティーなんだが。
このムードに乗じて、俺は、サンタに扮してプレゼントを配り歩くのだ。
外を見れば、御誂え向きに白雪が降り積もり、所謂ホワイトクリスマス。さあ、盛り上がってまいりました。
因みに、黒井鎮守府は冷暖房完備、クソ寒い冬の夜も安心して眠れる。まあ、冬の海を疾走する艦娘が寒いとか気にするのかって話だがね。
もちろん、俺も平気だ。極寒の大地程度に膝を折っていては旅なんてできないからな。シャツ一枚でシベリアも何のその。ホットドリンクでも飲めばなお良し。
「でも異常に寒いな」
昨日まで雪なんて降ってなかったらのにね!おかしいね!
「で、何やったんだ時雨」
こう言う時は大抵何かやってるよな、白露型。
「ああ、ああ……、風に乗りて歩むものさ」
ふむ、イタクァ、か。
「何でイタクァを喚んだ?」
「何、クリスマスには風情、と言うものが必要だろう?気を利かせて、ね」
なるほど、つまり、雰囲気の良いクリスマスを演出するために、態々、風の属性を持ち大気を司る神格であるイタクァを喚び出し、雪を降らせたって訳ね。大凡エキセントリックだが、親切心から来るもの。
「良いけど、後で還すんだよ」
「勿論だとも」
今更、神話生物の扱いについて講釈を垂れるつもりはない。
ただ、自分で喚んだものの責任は取ろうな。
そんな時雨には、これだ。
「はい、無名祭祀書」
魔道書だ。確か、白露型がまだ持っていなかったやつ。
「……これは、良いのかい?」
「良いとも、是非役立ててくれ」
魔道書と言うものは得てして、稀覯書の類だ。買うとなると馬鹿高い。それなりに高給取りな艦娘にも中々手が出ないものだ。
だが俺は、物理的に盗んだもの、借りて写本にしたもの、大枚叩いて買ったものなど、多くの魔道書を所有している。
「これ、初版じゃないか!こんな高級なもの……」
「良いんだ、あげるよ」
発売後即発禁を喰らった魔道書の初版である。その価値は、推して知るべし、ってところだ。
「うわあ、ちょっと、これは、本気で嬉しいな!」
いつもクールな時雨が、柄にもなく大喜びしてる。その顔だよ、その顔が見たくて、こんなもんを用意したんだよ。
「ありがとう、提督!」
その顔が見れるんだったら、苦労した甲斐があるってもんだ。
稀覯書もらって喜ぶ……、知的な美少女ですねこれは。鷺沢さんかな?
さて、後は海風にナコト写本の写本を渡して、村雨に輝くトラペゾヘドロン渡して……。そんな感じで色々と渡そう。
皆んな、喜んでくれるかな……。
次は、ドイツ艦だ。ドイツ艦にプレゼントを渡そう。
「ビスマルク、メリークリスマス!」
「ええ!メリークリスマス、提督!サンタの格好?素敵ね!」
「ああ。これ、プレゼントだよ」
「あら、Dankeschön!」
ダンケ❤︎ダンケ❤︎
……なんか、がんばれ❤︎がんばれ❤︎みたいで卑猥。
「開けて見ても良いかしら?」
「勿論さ」
「これは……、カスタム拳銃ね!」
そう、渡したのは、悪ふざけレベルに改造した10mmピストルだ。
「強化レシーバーでファイアレートを底上げして、グリップも強化されている……、ロングホーテッドバレルで安定性も良いわ。マガジンも大型で装弾数も多い。リコンスコープも付いているのね!」
正解だ。一瞬でカスタムの内容を見抜くビスマルク。こと火器においては抜群の鑑定眼とセンスを持つビスマルクが気に入ってくれたなら、それはその銃の完成度の高さを物語ると言うものだ。
「良い銃ね!ありがとう!」
「俺は銃が苦手だから、完成度に不安があったんだけどね。ビスマルクが良い銃と言ってくれるなんて嬉しいよ」
正直不安だった。工廠組の手を借りたと言っても、銃器スキルの無い俺のカスタム拳銃はビスマルクのお眼鏡に叶うのか、と。
「もしも要らないなんて言われたらどうしようと思ってたよ」
「そんなこと言わないわよ、提督ったら。……本当、こんな良い銃が貰えるなんて嬉しいわ。明日、試し撃ちするわね」
よしよし、ビスマルクへのプレゼント、大成功、と。
さてさて、お次は……?
「司令官、メリークリスマス、です」
ミカァ!!!!
「メリークリスマスだぞミカァ!!!」
クールで可愛いキリングマシーン、三日月ルプスレクスだァ!!!!
「ミカには農耕の本を買ってあるからなぁ!」
「ああ、クリスマスプレゼント、と言うやつですか。良いですね」
こう言う雰囲気も良いだろミカァ!!たまには皆んなでほのぼのするんだよ!!
違うな、黒井鎮守府はいつだってほのぼのだ。いつだって雰囲気はよつばと!だ。
にしても、
「三日月はあれかな、農家にでも憧れてるの?」
T◯KIO的な……。
「いえ、別に。ただの趣味です」
「そっか」
きっと、殺し以外で何かを生み出して社会の役に立っていると言う喜びを……、いや、三日月はそんな柄じゃねえな、多分、純粋に土弄りが好きなんだろう。
「でも、今は冬なので、特に作業はありませんけど」
冬だし、雪の降る中作業することもない、か。
「土弄りできない、と。じゃあミカ自身を弄るぞ!」
「どうぞ」
「高い高ーい」
「はい」
「良い子良い子」
「はい」
「おっぱい揉み揉み」
「はい」
このノーリアクションである。
もちろんツッコミも入らない。
さみしい。
でも、もしも気持ち悪いとか言われたら、いとも簡単に心が折れるだろうからな、ノーリアクションで丁度いいかもしれない。
「っふー、ありがとう三日月。楽しかったよ」
「司令官が喜んでくれるなら、何よりです」
さて、後は……。
「加古ー」
「ん、何だい提督?」
加古の手を握り、
「プレゼント!」
「これは……?」
バイクのキーを握らせる。
「何これ?」
「FLHTCUSE8の110THアニバーサリーエディション」
ハーレーの限定モデルだ。
「……マジ?!良いの貰っちゃって?!」
「ふはは、OKよ、OK」
あげちゃうもんねー!
ほんの四百万ちょいよ、軽いもんだ。
「やったー!嬉しいよー!ありがとう提督!」
まあ、加古の給料数ヶ月分なんだが。
加古も買おうと思えば買えるはずだ。
それでも、こんなに喜んでくれたのは、俺が買ってあげたからだろう。
加古も女の子だ。例えバイクと言うイケメンアイテムでも、好いてる男から渡されたらそりゃあ嬉しいだろう。
「提督大好きだよー!」
抱き着いてデカイ乳を押し付けてくる加古。ああ^〜、良いっすね〜。
ラスト、陽炎型。
「マシュ……、浜風!メリークリスマス!」
「(マシュ?)提督、メリークリスマス、です!」
「ちょっと先輩って呼んでみて」
「……先輩?」
ローーード!キャロメット!!!
さて、ノルマ達成した訳だが。
「これ、クリスマスプレゼント」
「良いんですか?!うわー、ありがとうございます!」
うむうむ、素直な反応だ。大変よろしい。
「あの、中を見ても?」
「ああ、構わないさ」
「では、失礼して……」
因みに中身はネックレスだ。無難なチョイスかもしれないが、浜風は特に欲しいものがないと言っていたからな。仕方ないね。
「……わあ、可愛いネックレス!流石は提督ですね!小物選びのセンスも抜群です!」
そうかな。ただ俺は浜風に一番似合うものを選んだつもりなだけなんだが。
「そう言ってくれると嬉しいよ」
「ちょっと待って下さい、私も何かお礼を……」
と、懐を探る浜風。
いやいや、何かお返しを貰おうなんて魂胆はないよ。
「お礼なんていいさ。いつも頑張っている浜風に、旅人サンタからのプレゼントなんだ」
「ですが……」
「どうしてもお礼がしたいなら、そうだね……、キスしてくれる?」
「え、キス、ですか?ふふふ、はい!」
すると浜風は、キョトンとした顔の後、優しくはにかんで……、
「ちゅ❤︎」
俺の頬にキスをした。
「えへへ、ちょっとだけ、恥ずかしいですね」
かわE。
さて、プレゼント配布終了、と。
いやあ、今年も良いことしたな。善行だ。天国行き待った無し。
「あ、いたいた、司令官!」
「んあ、吹雪?どうした?」
「あの、プレゼント、ありがとうございます!それで……」
小さな箱を手渡される。
「……これは?」
「私達艦娘から、司令官へのクリスマスプレゼントです!」
おお……!
おお!!
「嬉しい」
「えぇ、泣く程ですか?」
泣くさそりゃあ。わんわん泣くさ。
嬉しい!ハッピー!超感動!!!
……何を言っても陳腐になるな。娘のように可愛がっている子達からのプレゼントだぜ?そりゃあ嬉しい心が躍る。
愛されている、その事実が俺の胸を打つ。最高の気分だ。
「ありがとう……、ありがとう……」
跪いて礼を言う。もう感謝しかない。
「よ、喜び過ぎですよ、司令官!」
「開けて見ても良いかい?」
「はい!」
これは……、指輪、か。
シンプルながらお洒落さを感じる一品……。
………………?
………………。
………………あの。
「これ、発信機」
「明石さんと夕張さんが作ったんですよ!私達艦娘だと思って、いつも持ち歩いて下さいね!」
「………………う、うん」
そう来る、かぁ……。
白露型
旅人のパーツや魔道書、特殊なアイテムを貰ってご満悦。
ビスマルク
銃器集めが趣味。
三日月ルプスレクス
裏山の農園で農作業をしている。
加古
バイク好き。
陽炎型
ライダー型。
鷺沢さん
文学系アイドル。
旅人
迫真、サンタと化した旅人。