旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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クリスマスやんけ!


220話 衝撃!挨拶回り編 その3

いつも通り、挨拶回りだ。

 

「じゃ、行こっか、司令官!」

 

「いや、既に行ってきた」

 

(挨拶回りを)終わらせておいたのさ!

 

「えっ」

 

どうした文月。

 

問題あるかね?

 

「い、いや、だって、あたしとお出かけする流れだよね?そうだよね?」

 

「済ませた」

 

「んんんんんーーー!!!」

 

はっはっは、何が不満なのかね。

 

……財団を本格的に見て回るとなると危険だ。昨日は軽く見て回る程度だったから良かったものの……。ミーム、反ミーム、認識災害……。記憶処理装置をお供にお出かけなんてさせらんないしね。

 

「やーーーだーーー!!お出かけするのーーー!!!」

 

駄々をこねる文月。ふみぃ……。

 

「分かった分かった、じゃあこうしよう。俺が挨拶回りしてきたところの話をするから、文月はそれを聞いてくれ」

 

「えー、んー、あー、まあ、良いよ……。その代わりっ!これから間宮さんとこで一緒におやつ食べながらね!」

 

文月は渋々だが、納得してくれたようだ。

 

 

 

食堂、間宮の手作りお菓子を食べながら、財団の日本支部に挨拶回りしに行ったことを思い出す。

 

「じゃあ、そうだな、何から話すか……。ねこ、は駄目だな、緋色の鳥……、も駄目だ。そう、犬……、わんわんらんどか」

 

「わんわんらんど?」

 

そう、わんわんらんど。

 

「そこの調査に行ってきたんだがな」

 

「調査……」

 

「犬じゃなかった。いや、犬には近いんだが、犬じゃないんだよ」

 

「は、はぁ?」

 

犬だけど犬じゃない何かに貪り食われてきた。

 

「……また危ないことしてきたんでしょ!駄目だって言ってるのにぃ!」

 

「いや違うって。道端で急に危ないことの方からやって来るんだよ」

 

「またそんなこと言ってー……」

 

いや、本当だって。

 

「例えば、そう……、今はもうないんだがな、昔、いきなり生存権の侵害で訴えられたことがあってな」

 

「何それ」

 

「いや、俺にも分からんが、臓器の形がどうこうとか言って、何にもしてないのに臓器を抜き取られたんだよ」

 

「えー、怖っ……」

 

いや、本当に。

 

俺もなんだかよく分からんうちに複数の臓器を奪われて心停止したんだよ。

 

「あとは、そうだな……、あなたの人生、盛り上げます!!ってウェブサイトを見たら、大変な事件が起こったりとか」

 

「何で変なウェブサイト開くの……」

 

「好奇心に負けて」

 

仕方ないことだった。

 

「あとは、そう、廃校になった中学校に潜り込んだら、頭が色んなものに置き換わってる人達に死ぬ程頭を殴られたりとか」

 

「……何で廃校になった中学校に潜り込んだの?」

 

「好奇心に負けて」

 

仕方ないことだった。

 

「おもちゃでできた恐竜に潜り込んで圧死しかけたりとか」

 

「………………」

 

「好奇心に負けて」

 

仕方ないことだった。

 

「……結局、司令官自らが変なところに首突っ込んでるからだよね?」

 

「そんなことはないぞ」

 

そんなことはない、はずだ。

 

ほのぼのしたケースもある、と思う。

 

「うーんと、えーと……、あの、その……、あー、あれだ、鰻を飛ばす祭りに参加した時とか」

 

「何それぇ」

 

「山形辺りだったっけかなぁ。なんかよくは分からないけど、空に向かって鰻をぶん投げて、一番遠くまで飛ばした人がその年の年男って言う」

 

「……よく分かんない」

 

「俺にもよく分からん。でも、年男にはなれたぞ。そしたら、投げた鰻のビジョンが脳裏に浮かぶようになってな」

 

「更に分かんない?!」

 

いや本当に、俺にもよく分かんないから……。

 

「あとは、そうだな、飛行機に乗ったら複数のフレディ・マーキュリーが現れてライブやってくれたりとか」

 

「フレディって誰?」

 

「伝説のロックスターだよ。Queenって聞いたことない?」

 

「んー、あるような。あれ?でも、Queenって昔のバンドだよね?」

 

「ああ、そうだよ。因みに、フレディはとっくの昔に亡くなってる」

 

「ん?んん?あれ?」

 

「でも、飛行機でコンサートしてた」

 

「もー分かんないよ……」

 

いや、マジだって。マジでフレディ・マーキュリーだったんだよ。

 

いきなりどこからともなく現れたフレディが飛行機の中でwe will rock youを歌い始めたんだよ。信じてくれ。

 

「あとは……、座るとノースカロライナまで飛ばされる椅子とか」

 

「だから、何なのそのヘンテコアイテムは!!」

 

「これなんだけど……」

 

「しかも持ち歩いてるの?!」

 

いや、面白そうだったから、かっぱらってきた。

 

「でもたまにサウスカロライナとウェストバージニアに飛ぶらしい」

 

「だから何なのそれぇ……」

 

いやだから、俺にも分からんよ。

 

「あ、そうだ、これならすぐに行けるし、一緒に飛んで行こうか」

 

「えー……。限りなく怪しくて怖いよ……」

 

「恐れるな俺の心、悲しむな俺の闘志」

 

「わっ、わっ、わーっ!待って待って、ちょっと待って!!!」

 

「いいいいいやっふーーー!!!!」「あああああああーーー!!!!」

 

飛んでみた。

 

 

 

 

 

文月とサウスカロライナ州を見て回ってきた。

 

楽しかった(小並感)。

 

さあて、次はどこに向かおうか……。

 

「そうだ、会長に会いに行こう」

 

会長……、愚地師範にだ。

 

愚地師範は俺の空手の先生だ。

 

あの人に教わった空手があるから、今まで生き残ってこれたんだ。

 

恩人も恩人。恩師の一人だ。

 

だが問題が一つ。

 

「あの人、俺を鍛えたがるんだよなあ……」

 

グラップラーの皆さんが出るとなると、何かとステゴロ回になりがち。

 

「司令、お出かけですか。では、私が護衛につきますね」

 

「霧島もグラップラーだからなぁ……」

 

「はい?」

 

いや、何でもねーよ。

 

 

 

「んん?オォ!新台じゃねえか!!」

 

「はい、こんにちは、若先生」

 

愚地師範の息子さんの愚地克巳さん……、若先生だ。

 

「そっちは?」

 

「部下です。何でも護衛……、らしくて」

 

頭を下げる霧島。

 

「へぇ、お前も偉くなっちまったもんだなァ」

 

「そんなこたぁ、ないですよ。俺はいつだって一人の旅人です。偉くなんてありません」

 

「そうかい」

 

「ええ」

 

俺は偉くなんかない。俺の立場はいつだって一人の旅人だもの。

 

「で、何だ?親父に会いにきたのか?」

 

「ええ、はい」

 

「なら上だぜ。稽古中だし、久しぶりに相手してもらったらどうだ?」

 

「んー、そうですね、そうします」

 

そう、だな。俺も最近は、稽古らしい稽古をしてないからな。深海棲艦とやるのは、技術もクソもない殺し合いだから、たまには技量を持った人を相手しないと……。

 

ビルの上階に上がってと……。

 

ううん、神心会のビルに来るのも久しぶりだ。最近はほとんど顔を見せてなかったからなー。

 

本来なら、こういう男臭い場所は苦手なんだがね。

 

さて……。

 

「愚地師範」

 

「オォ、新台じゃねえか」

 

倒れ伏す門下生に囲まれて、師範は言った。

 

……愚地師範は、こうして、たまに門下生達からの挑戦を受けるのだ。

 

自分の腕を錆びつかせないためなのかなんなのかは分からないが、この人は結構血に飢えている。もういい歳なのにストリートファイトやったりとか。

 

「何だ、道着なんか着て。やる気かァ?」

 

「ええ、軽く手合わせ願います」

 

俺のKARATEも錆び付いてる可能性が高い。

 

ここは一丁、打ち直して貰わねえとな。

 

「霧島、手を出すなよ!!」

 

「はい、了解です」

 

霧島に指示して、と。

 

「やるか、新台ィ……!!」

 

「ええ、腕、鈍ってますから。叩き直して下さいよッと!!」

 

軽い組手の稽古が始まった。

 

 

 

「痛てててて……。師範、軽くって言いましたよねぇ?!」

 

「馬鹿かオメェ、死なない程度に加減しただろうが」

 

それは加減と言うのだろうか。

 

「これ、肋骨にヒビ入りましたよ……」

 

「そんなもん、ほっときゃ治る」

 

そりゃーそーですけど!!

 

でも……。

 

「師範」

 

「何だァ?」

 

「ありがとうございます」

 

錆び付いたKARATEがある程度は戻ってきた。やはり、自分より技量が高い人を相手にするといい刺激になる。

 

「急に改まってどうした?」

 

「いえ、最近は腕が鈍る一方で……」

 

「ン?闘争ってるんじゃないのか?深海棲艦、とやらはどうなんだ」

 

「丈夫で力強く、素早いです……。でも、それだけです」

 

「成る程なァ」

 

深海棲艦は技量を持ち得ないからな……。

 

「ま、また来いや。お前は拳が軽いが、相変わらず守護るのは相当だ。その調子で鍛えろ」

 

「押忍、ありがとうございました!」

 

いやー、為になった。

 

さて……。

 

「霧島、どうした?血が出るほどに拳を強く握りしめて……?」

 

怖いんだが。

 

「……私は、護衛だと言うのに、司令に怪我をさせてしまいました」

 

「え?ああ、これ?いつものことだから気にしなくて良いよ」

 

「ですが……!!」

 

良いんだよ。

 

これは、そう、正当な怪我だ。授業料みたいなもん。

 

「だから本当に、気にしないでくれ。これは必要経費だ」

 

「いえ!怪我をするならば私が!」

 

「いや、俺が鍛えてんだからさ」

 

「本来、司令は鍛える必要などないのです。私達がお守りするべきなのに……」

 

「そう言うのいいから」

 

俺を守るとか、そう言うのはいい。女の子に守られる男なんてカッコ悪いだろ?

 

「安心しろよ、俺自身も、霧島も、俺が守るから(イケボ)」

 

「ですが……、うう、はい……」

 

腰に手を回しながら、必殺のイケボ。

 

全く、艦娘の皆んなはいつもこうだ。ちょっと怪我したくらいで大騒ぎする。

 

まあ、俺も、言い方はアレだが、自分一人の身体じゃないってことか。

 

多くの人に愛されてるんだ。

 

ご自愛下さいとのことだし、もうちょっと自分を大切にしようか……。

 

 

 

「いちゃつくんなら外でやれや」

 

「あ、すんません」

 




文月
ふみぃ。

霧島
グラップラー。

会長
武神とまで渾名される空手家。

若先生
会長の息子さん。

旅人
ミームや認識災害に対しても強い耐性がある。KARATEのベースは神心会の喧嘩空手だが、防御に特化しているので火力は低い。

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著者:broken_bone 様

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著者:ZeroWinchester 様

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著者:shinjimao 様

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