やって参りましたインド洋。
私用輸送船旅人号、工廠組製移動工廠船、護衛戦艦数隻。黒井鎮守府の艦娘の約半数。そんな面子を引き連れていざ出陣。
対するは四人の姫クラス、鬼クラス多数、その他深海棲艦多数。
おうおうおうおう、雁首揃えてぞろぞろと。ぞろぞろガーデン。
地平線を埋め尽くさんばかりの敵、敵、敵。まるで古代の戦争だ。
良いね、乗ってきたぜ。
さあ、戦いだ。
っと、その前に名前聞いておこう。
「君達、名前は?」
君の名は。
『名乗レト言ウノカ……、イイダロウ。ワタシハ深海海月姫。貴様ヲ殺ス、深海棲艦ノ名前ダ……!!』
『……駆逐古姫』
『北方水姫トイフ』
『護衛棲姫ヨ』
あら、意外にも素直。
「じゃあ、スリーサイズ教えてくれるかな」
『会話ヲスルツモリハナイ。死ネ……!!』
飛んでくる艦載機。
「うおっ、危ねえ」
スリーサイズは聞けなんだか。
仕方ないね。
「そんなら後でひん剥いて、身体に聞くとするか……!!」
『攻撃開始ッ!!!!』「作戦開始ィ!!!!」
声が、交差した。
まず駆け出したのは、足の速い駆逐艦だ。
「島風からは、逃げられないって!」
「行くぜ、超変身!」
「白露型の狩りを見るがいい……!」
数で劣る黒井鎮守府だが、その分は質で補ってるから(ドヤ顔)。
目算数千体の鬼クラスだが、うちの艦娘は一人一人が一騎当千……、無双ゲー並みの強さなもんでして。
『チィ……!前線ガ押シ負ケルダト……!』
「ふっふっふ、どうよ、うちの艦娘は?強いだろ?」
『波状攻撃ダ!休マセルナ!!』
それも無駄だ。うちの艦娘は継戦能力だって高い。
「無駄無駄ァ!!」
『ト言ウカ何デ貴様ハワタシノ隣ニイル?!』
「良いじゃん良いじゃん、仲良くしようぜ」
深海海月姫の肩を抱いてみる。
『失セロ!!!』
「ありゃ、振られちゃった?」
艦載機に攻撃される。
あら危ない。
うーん?俺イケメンだよな?何でだ?深海棲艦は魅了できないのかしら?
試しにちょっとイケメンパワー全開で迫ってみよう。
「時よ止まれ、お前は美しい(イケボ)」
『ナ……、何ヲ言ッテイル?』
「君が好きだーと叫びーたーい!」
どうだ?
『馬鹿ヲ言ウナ!敵同士ダゾ!!』
「そんなことはどうでも良い……。過去の因縁は水に流して、仲良くしようじゃないか」
『……例エ貴様ガドウ思ッテモ、戦イハ止メラレナイ!!』
「そもそも、何で戦ってるの俺達?もう良いじゃん、やめよう?戦って得られるものに価値なんてないさ」
『……黙レ!!』
駄目かぁ。
後ひと押し、一向聴って感じなんだけどもなぁ。
こうなったらもう俺渾身の猛虎落地勢しか……。奴八破奴八破ー。
いや、他の子を口説いてみようか?
「護衛棲姫ちゅわ〜ん」
『シッ!!』
「うおっ?!危ねえ?!!」
いきなり殺意全開の回し蹴り。酷いね、全く。
「護衛棲姫ちゃん、俺と熱く激しく愛し合わないか?最高に満ち足りた暖かな日々を……、おわぁ?!」
音速で迫る平手打ち。
「こ、殺す気かっ?!」
『……イヤ、戦場ダシ。当タリ前デショ』
そんな、酷い……。
こうなったら……。
「戦争なんて下らねえ!俺の歌を聴けぇ!!!!」
歌うしかねえ。
『フンッ!』
「ぎゃああああ!!ギターーー?!!!」
ああっ、ギターが!
「北方水姫ちゃん慰めてー!!!」
『消エロッ!!!』
おおおおお?!なんて綺麗なストレート?!!
「く、駆逐古姫ちゃ」
『ヤアアア!!!』
げえっ?!砲撃?!!
「回ッ、避ィ!!!」
危ねえ危ねえ。
んー、駄目か。やっぱり交渉とか説得じゃどうにもならないっぽいね。
ならもう……、
「はぁ、分かった分かった。もう良いよ。君達を傷つけたくなかったんだが……、そうも言ってられないらしい」
潰すしか、ないか。
×××××××××××××××
「シィッ!はぁぁぁ!!」
「うひゃあ、すっごい斬れ味……。流石はぼのたん。強いぞー、カッコいいぞー!」
「うっさい漣!あんたも戦いなさい!」
「戦ってるよー!ほいっと!」
大規模作戦キタコレ!
ご主人様の嫁兼メイドこと漣は、だーい好きなご主人様の命令通り、インド洋にやってきたのであった!
……私と同じく、ご主人様ラブのイカれたメンバーを紹介するぜっ!
「ジャバウォック!!」
まずは皆んなのアイドル、ぼのたんこと曙から!
曙のはジャバウォックって言って、鋭利な爪の形をした手甲だよん。圧縮空気砲も付いててチョー強力!ヤバイ!
その爪には引き裂けないものはない、と言っていいくらいの斬れ味で、さっきから迫り来る鬼クラスの深海棲艦をバッタバッタとなぎ倒してる。
うむうむ、無双ゲーですな。
んえ?
ジャバウォックって何?って?
んん、それはねー。
『ナノマシンの集合体』なんだよね。
ぼのたんに限らず、綾波型の武装は、ナノマシンの集合体で形成されるの。
ナノマシン……、分かる?目に見えないくらい小さな機械のことなんだけどね、それが無数に私達の身体に移植されてるの。
ぼのたんは、右腕のジャバウォック。
朧は左腕のナイト。
潮は両目のクイーンオブハート。
私?
私はねぇ……、
「ホワイトラビット!!!」
両脚の脚甲!!
『ガギッ?!』
これにより圧倒的な脚力を得る!!
それだけじゃなく……、
「やあああ!!!」
『ゴガッ?!!』
『ギッ?!!』
『ゲアッ?!!』
圧縮空気による飛行も可能、ってね!
空中で高速移動、からのキーック!!!あいてはしぬ!!!
「砕けちゃえ!!!」
膝蹴りぃ〜、っと。
足払い、蹴り上げ、踵落とし!
『ゴガ……』
……最後の踵落としで、目の前の鬼クラスの頭を叩き割って、終わり。
んー、数は多いけど、やっぱり相手にはならない感じー?楽勝楽勝!
見れば、先陣を切った駆逐艦に続いて、軽巡重巡が、戦艦空母が追いついてきたし。
はい、勝ち確の流れいただきましたー。
「ふん、ぬぁ!!!」
なんだろうかなぁ、文字で表すなら、ゴシカァン!とか?兎に角、物凄い音を立てて吹っ飛ぶ深海棲艦。
「脆い、な」
長門さんだ。
来た、火力来た!メイン火力来た!これで勝つる!
まあもう勝負ありだよね。黒井鎮守府は最強無敵。はっきりわかんだね。
だけどここで、異変が起こる。
「ぐおっ?!」
……爆発?
「ぐう、気を付けろ!撃破すると自爆する深海棲艦が前線に紛れ込んでいる!!」
と、長門さんの声が響いた。
自爆する深海棲艦……?厄介だなぁ。
「各員、遠距離戦を心がけろ!」
遠距離戦って言ってもなぁ。まともに砲撃してたんじゃ火力が足りないし……。
んー、こっちも切り札を切るべきかな。
腐らせとくのも勿体無いしね。
「ぼのたん、反物質砲!」
まあ、切り札は私にはないけど。ぼのたんだけど。綾波型の、切り札ってこと。
「ぼのたん言うな!!……確かに敵が多いわね……。提督、良い?」
『良いよー』
曙が虚空に向かって尋ねると、どこからかご主人様の声が。良いってさ。
『全員退がってー、曙が前線を焼き尽くすよー』
ご主人様の声が脳内に響く。
同時に、艦隊の全員が一旦退く。……私が言うのもなんだけど、何でこんなに聞き分けが良いんだろうね。艦娘なんて変わった子ばっかりで、規律も何もない黒井鎮守府なのに。
突然、前線を焼き尽くすって言われて信用するもんなんだ。まあ、それだけ仲間意識が強いってことなのかな。
「行くわよ……、死ぃ、ねえええ!!!!」
そして吐き出される火砲。
予告通り、焼き尽くされる前線。
まるでこの世の終わりみたい。
『次、睦月型がオーバードウェポンで突っ切るから、それに続いて』
「りょーかい、っと」
ボロボロになった深海棲艦の前線に、駄目押しのように迫る睦月型。
蒸発した海の飛沫の上に、チェーンソーが、ビームソードが、特大のミサイルが空を舞う。
『ハッハー、凄い凄い、これで深海棲艦の前線は総崩れだ。やれやれー!やっちまえー!』
いやあ、もうこれ、艦隊戦じゃないよねえ。物凄い殺戮ショーだよ、これ。
でもまあ、良いか。
ご主人様が楽しそうだし。
ご主人様が楽しいなら、私も楽しい。それだけだよね。
「さあ、追撃追撃、行くよー!」
綾波型
ナノマシンの群体で形成された特殊装備を使う。
旅人
ナンパは趣味。