ランキング載ったので書き溜め開放。
……簡単なあらすじ。
『能代、デートしない?』
『え?あ、はい!』
さて、三行以下のあらすじで表される経緯の元、デートを決行することに。
「どこに行こうか。能代はどこか行きたいところとかない?」
「え?えーと、動物が見たい、かな?」
「動物って?」
「えーと、パンダとか?」
パンダか。
「じゃあ中国行こうか」
三千メートルくらいの山の竹林に住んでいるんだぞ。
「えっ」
「今丁度発情期だからな、普段おとなしいパンダが戦う貴重な姿を見られるぞー」
「ええー?じゃあ、ライオン!」
「ならサバンナか。アフリカに行くぞ」
「ペ、ペンギンとか……」
「分かった、南極な」
「わ、態々現地に行かなくたって、動物園とかで良いじゃないですか?」
いやいや、雄大な自然を知るためには、自らの足で出向くのが一番だぞー。
「え?動物園で良いの?」
リアルジャパリパークのリアルフレンズ達と楽しく遊ぶのも一興では?
実際、艦娘なら肉食の猛獣に襲われたって死にはしない。
「はい、上野動物園なんてどうですか?」
「能代がそれで良いなら、良いんだけど……」
上野動物園?それで良いのか?
「じゃあ、私着替えてきますね!二時間後に駅前で待ち合わせって事にしましょう!」
「構わんよ」
一緒に行けって?いやいや、デートだからな、待ち合わせもするだろう。
そう言うのも含めてデートなのだ。
「旅人さん!待たせちゃいましたか?」
「いや、今来たところさ」
二時間後、駅前にて。
例え待っても待ってないと答える、それが男ってもんだ。
「それじゃあ、行きましょうか!」
「ああ」
能代と手を繋ぎ、駅構内へ。
「阿賀野姉はすぐSuicaを失くしちゃうんですよ。この前一緒に出かけた時もまた失くして……」
「はは、阿賀野らしいね」
「本当に、阿賀野姉は私がいないと駄目なんだから!」
「能代はいつもしっかりしてるよな」
「そんな、私は当たり前のことをしているだけですよ」
「その当たり前のことがちゃんとできるのが素晴らしいんだよ。良い子だな、能代は」
「そうですか、えへへ」
と、自然な会話を交わしながら電車に乗り込む。
「わ、人がいっぱい」
「東京だしな。ほら、能代は可愛いんだから、痴漢とかされないように俺にくっ付いとけ」
「は、はい。えへ、ちょっと恥ずかしいですね」
「……能代、例え痴漢されても、痴漢の腕の骨を折ったりしちゃ駄目だからな」
「や、やりませんよそんなこと」
「着いたな」
「はい!楽しみです!」
上野動物園だ。
「あ、パンダだー!」
「可愛いー!」
俺の中では、「もう見た」だが。
「パンダは、一日の半分以上を寝て過ごすんだ」
「へえ、阿賀野姉みたい」
そんなにダラダラしてんのか阿賀野は。
「カンガルーだー!」
「可愛いー!」
「カンガルーは後ろに跳ぶことができないんだ。そのことから、後ろに退がらない、と言う意味で、オーストラリア海軍のシンボルになっている」
「へえー」
「ゴリラだー!」
「かわい、くはないですね」
「ゴリラの握力は500キロくらいらしい」
「凄いですね」
「長門の握力は500キロを超えるらしい」
「えっ」
「象だー!」
「かわい、くは、ないですね。大っきいです」
「象は、一日の殆どを食事の時間に費やすそうだ」
「へえー、阿賀野姉みたい」
待って、阿賀野はどんだけダラダラしてんの?
「キリンだー!」
「おー、長いですね」
「キリンは一日に二十分しか眠らないそうだ」
「阿賀野姉も見習って欲しいです」
阿賀野をどうしたいんだ能代は。
「ハシビロコウだー!」
「動きません、ね」
「ハシビロコウの主食は肺魚という肺がある魚でな、呼吸をするために水面に顔を出したところを、捕まえるんだ。そのため、ハシビロコウは獲物をじっと待つから、動かないんだ」
「へえー」
「今日は楽しかったです!ありがとうございます、旅人さん!」
あの動物は食うと美味いぞ、などといった話題は避け、豆知識おじさんと化した俺は、能代の隣で動物豆知識を披露しながら解説役に徹した。
「ああ、俺も楽しかったよ、能代。また一緒にデートしような」
「はい!」
「っと、それと」
「はい?」
能代の唇を奪う。
「ーーーっ?!!」
「これは、今日一日付き合ってくれたお礼ね」
「は、はいぃ〜❤︎」
ふふふ、可愛いもんだな、能代は。
×××××××××××××××
……簡単なあらすじ。
『能代ばっかりずるい!私も旅人さんとデートする!』
『良いよ』
はい。
あらすじの通り。
阿賀野が駄々をこねて、俺とデートの約束を取り付けてきた。
「で、どこ行こうか。阿賀野はどこか行きたいところとかない?」
「んーとね、お魚が見たい!」
「じゃあダイビングか。熱帯の海は綺麗だぞ」
「い、いや、そんな大掛かりなことしなくて良いよ……。普通に水族館に行こう?」
なんでだ?熱帯の海で魚達と泳いで回るのは楽しいぞ?艦娘はみんな泳げるらしいし、悪くない提案だと思うが。
まあ、良いか。
「私、シャチが見たいの!シャチって可愛いでしょ?」
「そうだね」
ああ、まあ、見た目はな。
でもあいつらホッキョクグマからクジラまでなんでも食べる肉食の捕食者だけど。
「ペンギンとか、アザラシとか、イルカも見たい!」
「そうかい」
ペンギンかぁ、あれ、脂っこいんだよな。食ったことある。
アザラシはエスキモー達と食ったけど、内臓が不味かったな。肉はクジラに近い味。
イルカは結構美味かった。
「じゃあ、行こう!」
「どこに?」
「え?えーと、この、サンシャイン水族館ってところに行こう!」
その場でスマホを取り出し、近く、かつ人気のある水族館を選ぶ阿賀野。
無計画だなぁ。
「着替えなくて良いのかい?」
「え?うん、別に良いかな」
ジーパンにTシャツ、ラフな格好だ。
デートだと言うのにお洒落をしようとは思わないのか。
いや、それが悪いとは一言も言ってないけど。
「じゃあ、行こうか」
「わー、人多いよ、旅人さん」
「東京だしな」
はぐれないようにしっかりと手を握って、と。
「あっ、えへへ」
嬉しそうに握り返してくる阿賀野。可愛いもんよ。
「っと、到着」
「わー!凄いよ旅人さん!水族館って感じ!」
そりゃ、水族館だからね。
「サメだー!」
「強そう!」
多分、君の方が強いと思うよ。
「サメは種類が豊富だから一概には言えないが、相当に賢いらしい」
にしてもサメ、サメか。肉は新鮮だと結構美味い。フカヒレも美味いぞ。
「エイだー!」
「変な形ー」
「エイの毒は兎に角痛いんだ。タンパク系の毒だから、刺されたら患部を温めるんだぞ」
北海道の方では普通に食べられているらしい。俺も食ったことあるけど、コリコリして意外と美味かった。
「刺されたことあるの?」
「あるよ」
ダイビング中、膝に毒針を受けてしまってな……。
「クラゲだー!」
「可愛いー!」
クラゲはなぁ。コリコリするだけで味は特にないんだよな。酢味噌和えとかにすると結構美味い。
「でも、なんだか、海の底を思い出してちょっとトラウマが……」
沈んだ時のことを思い出しちまうのか。
海の底にいた時の記憶……、あるのか?
「ペンギンだー!」
「可愛いー!」
「ペンギンは水中では結構速く泳ぐんだ」
ジェンツーペンギンなんかは時速36キロくらい出るらしい。
味?だから、分厚い皮下脂肪が脂っこいんだよ。でも、結構美味かったよ。
「あ、アシカショーだって!見よう、旅人さん!」
アシカか。
アシカは獣臭くってなー。
え、いや、味の話。
「わー、凄い!ボールを鼻の上に乗っけてる!可愛いー!」
阿賀野の方が可愛いよ。
「あー、楽しかった!今日はデートをエンジョイしたね、旅人さん!」
「そうだね、阿賀野。また一緒にデートしような」
「うん!……あ、旅人さん、なんか忘れてない?」
ん、ああ……。
これか。
「んーーー❤︎」
熱い抱擁とキス。
「えへへ、満足……❤︎」
ふにゃり、と顔を緩ませ、へたり込む阿賀野。
そりゃ良かった。
能代
まともな感性。
阿賀野
感性はまともな方だが、旅人日誌をつけるなど、奇行が目立つ。
旅人
異常。