旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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音成成分くれとリクエストがあったので。

次回の建造でリクエスト分は終了か。


240話 音成提督と一緒

音成鎮守府。

 

黒井鎮守府のお隣にある、小さな、あるいは中規模な鎮守府です。

 

提督はこの私、海原守子。歳は二十五歳。

 

見た目は、そうですね、艦娘の翔鶴さんにどことなく似ていると言われます。いえ、髪は黒色ですけど。

 

この海を守ろうと思って、数年前、大学の卒業と同時に提督になりました。

 

実家は田舎の漁村の漁師で、特技は魚料理です。

 

「やあ守子ちゃん」

 

この人は黒井鎮守府の提督、新台真央さん。何でもできる完璧超人で、かっこいい男の人。

 

黒井鎮守府って言うのは、国内どころか、今では世界最大級の規模と戦力を誇る巨大鎮守府。

 

音成鎮守府は、黒井鎮守府に近い位置にあるということもあり、黒井鎮守府とはほぼ併合状態です。

 

「はい、何か?」

 

「おいで」

 

「は、はあ」

 

歩き始めた旅人さん(名前ではなく、旅人さんと呼んで欲しいらしい)に、取り敢えず着いていく。

 

「あの、どこに?」

 

「居酒屋鳳翔」

 

「ひ、昼間ですよ?!」

 

昼間からお酒だなんて!

 

「仕事、あるの?」

 

「………………ありま、せん、けど」

 

そう、そうなのだ。

 

最近は、お仕事が、ない。

 

艦娘の皆んなは有能の一言で、簡単な書類仕事を除けば、今や私の仕事は、黒井鎮守府での簡単な雑用のみ。

 

私は、と言うと、日がな一日、黒井鎮守府をふらふら歩って、その辺の艦娘の皆んなからお仕事を貰って、それをこなしているだけだ。

 

「じゃ、飲もうよ、守子ちゃん」

 

だからと言って、昼間から酒盛りはどうかと?!

 

 

 

「うう、良いんでしょうか、こんな時間からお酒だなんて……」

 

「鳳翔ー、テキーラ持ってきて。ジョッキで」

 

「普通は死んじゃうかもしれませんからね?!」

 

旅人さんは完璧超人だが、悪癖もある、そうだ。私も艦娘の皆んなも何とも思っていないけれど、旅人さんが言うには悪癖らしい。

 

まず一つ、これは普段の生活を見れば分かるけど、女の人に弱い、ってところ。美人には目がないそうだ。

 

私のことも美人だと言っていたけれど……。えへへ、ちょっと恥ずかしいですね。

 

そして二つ、時間やお金にルーズなところ。沢山稼いで沢山使うのは悪いことじゃないと思うんだけど。

 

そして、三つ目に。

 

「テキーラ一杯で死ぬかよ」

 

お酒を沢山飲むところ、だ。

 

「大きなジョッキでテキーラですよ?!」

 

まあ、酔って暴れる訳でもないし、悪いことでもないとは思うんだけど……。

 

「大丈夫大丈夫、こんなに美味い酒が身体に悪い訳ないじゃん」

 

喉を鳴らしてお酒を飲む旅人さん。うわぁ、あれ、私なら倒れちゃうんだろうなぁ……。

 

「守子ちゃんも頼みなよ」

 

「い、いえ、ですから、まだ昼間ですし」

 

「でも、仕事ないんでしょ。酔っても困らないじゃん」

 

「そう、ですけど……」

 

お仕事はありませんけど、それでも、昼間からお酒は抵抗が……。

 

「今度飲もうって約束してたじゃん」

 

「しました、けど」

 

堕落……、堕落してしまう!このままじゃ、碌にお仕事せずにお酒飲む人に!

 

「鳳翔ー、カシスオレンジ頼む」

 

ああっ!

 

「ん?カルーアミルクが良かった?それともビール?」

 

「だ、だって私、碌にお仕事してないのに、昼間からお酒だなんて」

 

「俺も働いてねーから」

 

嘘だ。

 

旅人さんは、家事をしたり、出撃したり、貿易したり、艦娘とコミュニケーションを取ったりと沢山頑張っている。

 

働いていない、と言うのは旅人さんの主観であって、余所から見れば十分働いている。

 

艦娘と遊んでいるのも、艦娘のモチベーション維持と考えれば仕事の範疇だろう。

 

そう考えると、旅人さんはいつも働いている。

 

私は、私、は……。

 

「まあまあ、嫌なことは飲んで忘れよう!」

 

「もう、分かりました……」

 

はぁ、考えてもしょうがない、か。

 

出されたカシスオレンジを一口。うん、美味しい。あはは、働かなくってもお酒は美味しいんですねー。

 

「こっちも飲んでみるかい?」

 

「え?あ、じゃあ、ちょっとだけ」

 

旅人さんからテキーラのジョッキを受け取る。

 

か、間接キス……!

 

「って、凄い爽やか!そして辛口っ!」

 

「パトロンシルバーよ。俺はブランコの方が好きだからな」

 

「あ、でも、甘くて独特な香りがします。結構美味しいかも」

 

「そうだろうそうだろう。スピリッツは美味いんだよ!女の子はあんまり飲まないかもしれないけどさ!」

 

強いお酒好きですよね、旅人さん。

 

 

 

「で、何だい?愚痴なら聞くよ?」

 

「愚痴って言うか、最近の私、まるで働いてないな、って……」

 

「んもー、気にしなくっても良いってば!ベーシックインカムが導入されたとでも思って、ゆっくりしていってね!」

 

そんな、こと……。

 

「そもそも、働かないで済むならそれが一番ではないだろうか(哲学)」

 

「そうかも、しれないですけど……。それはその分、皆んなの負担になっていると言うことになるじゃないですか」

 

「守子ちゃん真面目過ぎー。世の中なんて持ちつ持たれつ、負担なんて好きなようにかけて良いんだよ」

 

そう言う訳にもいきませんよ。

 

私が頑張ってない今、私の代わりに誰かが頑張っている、と言うことになるんですから。

 

「良い子だなぁ、守子ちゃんは。俺も見習うべきだな、こりゃ」

 

「そんなこと……」

 

「いやだって、守子ちゃんは俺と違って、借金もないし、口説き落とした女の子ほっといて旅に出てもいないし、良い子じゃないか」

 

「え」

 

な、何やってるんですか旅人さん。

 

「風俗と酒とギャンブルとで溶かした金、一銭も返してないぞ俺」

 

「うわぁ」

 

旅人さん……。

 

「因みに幾らくらいあるんですか、借金」

 

「十億から先は数えてないね」

 

ひ、酷いですね、それは。

 

「幻想郷とかドリームクラブとかの女の子なんて、口説いて抱いた後は会いに行ってないし」

 

「うわぁ」

 

「因みに何人くらい」

 

「百人以上?」

 

うわぁ……。

 

「と、まあ、このように最低のクズな訳だが」

 

「いや、その、最低だなんて……」

 

いえ、その、えっと……。

 

「いやいや、取り繕う気はないから」

 

「まあ、はい、確かに、ちょっと酷いかな、とは……」

 

「そうよ。守子ちゃんは俺みたいにマイナスじゃないだけマシよ、マシ」

 

うーん、そうなの、かなぁ?

 

「それに、雑用を頑張ってくれてるんだろ?」

 

「雑用なんて、ちょっとだけですよ?」

 

掃除も家事も、その辺を徘徊しているロボットがやってしまう。

 

料理は旅人さんと厨房組の艦娘達がやる。

 

私がやるのなんて、本当に、ちょっとしたことだけだ。

 

「仕事、仕事ねぇ。あ、そうだ」

 

何かを思いついたような顔をする旅人さん。

 

「うちの窓口やってよ」

 

「窓口、ですか?」

 

「そう、受付。クレーム対応とかするの」

 

「クレーム、来るんですか?」

 

「来るねー、反戦団体とか。大変そうだけど、やってくれる?」

 

「は、はい!やります!やらせて下さい!」

 

 

 

 

 

「旅人さぁん!何ですかこのお金ー!!」

 

「え?君の給料だけど」

 

「何でクレーム対応程度で◼︎◼︎◼︎万円も渡すんですか?!」

 

「うちの給料、基本給は◼︎◼︎◼︎万だから」

 

「兎に角、こんなにたくさん貰えません!」

 

「貰って」

 

「い、いや」

 

「貰って」

 

「駄目で」

 

「貰って」

 

もー!!

 




音成提督
本名は海原守子。国立で文系の大学生だったが、提督としての素質を持っていることがひょんなことから発覚し、卒業と同時に提督になる。温和だが芯の強さと優しさを兼ね備えた女性。「私も頑張るから、あなたも頑張りましょう!」とか言ってくるタイプ。

旅人
人間の屑。

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