「ご指名ありがとうございます、マオでーす!」
「ふわぁ、提督さん、カッコいい……❤︎」
ふっ、また可愛い子を堕としてしまった。
今回のお客様は由良。
由良……。
ふたりエッ、いや、何でもない。
まあね、まだ建造してから一月くらいしか経ってないし、堕ちてるなんてことはないだろうよ!
ないだろうよ!
「マオって呼んでよ、由良ちゃん」
「え!じゃ、じゃあ、マオ?」
「うんうん、由良ちゃんの可愛い声で名前を呼んでもらえるなんて、俺は幸せだな!」
「も、もう!お上手ですね!」
あれ?
いや、堕ちてねーよな?
流石に一月で好感度カンストはねーよな?
今日は単純に癒されに来ただけだよね?ね?
きっとそうだ、そうに違いない。
由良は単純に男遊びがしたいだけだろう。
さあ、そうと決まればホストだホスト。
「じゃあ、席に案内するね?」
「はい!」
さて、席に座って、と。
「こう言うのって私、よく分からないんですけど……、足柄さんが言うには、どんぺり?ってやつを頼むものだとか」
「ドンペリ?OK!コール行きます!」
さて、六人に分身して、と。
「由良ちゃん!」
「ありがと!」
「ドンペリ!」
「ありがと!」
「これからも!」
「マオを!」
「「「「よろしくねー!」」」」
「わー!凄い凄いー!どうやってるんですかそれ!」
「昔、私立忍者学園ってところで忍術を習ってね」
そこのシノブちゃんって言うくノ一が可愛くってさー。
「分身の術……!マオは忍者なんですか?!」
「いや、忍者は齧った程度だね」
「……忍者って齧った程度と表現して良いものなんでしょうか?」
良いんじゃね?
「でも、私憧れちゃいます!マオは出撃からお料理までなんでもこなしちゃうんだもの!」
「そんなことないよ!俺だって、皆んなに支えてもらっているから頑張れるんだよ!」
「もう、謙遜が過ぎますよ!」
本心だが。
俺一人じゃどうやったって現状の稼ぎは出せなかった。
全ては艦娘の頑張りのお陰だ。
俺は何もしてない。
やったことと言えば、深海棲艦騒ぎで壊滅した輸出入産業の利権を分捕り、知り合いの悪の組織と提携して利益を上げてるくらいだ。
んー、悪党。
「でも、謙虚なところも、その、素敵だと思います❤︎」
頬を赤らめる由良。
んー?
惚れてないよねこれ?
大丈夫だよね?
媚薬を投げつけた覚えもないし、好感度は上がってないと信じたい。
「え、えっと、それで、由良ちゃんは俺と何がしたいのかな?」
「えっと、んー、こう言うところに来るのは初めてだから……」
「何でも良いんだよ?俺が何かやって見せても良いし、一緒にダンスを踊るのも良い。ただお喋りするだけでもOKだよ!」
「えっと、それじゃあ、政治の話なんですけど……」
うわぁ!
偉ーい!
うちの子は皆んなやれ新しい武装を積んだとか、やれ新しい必殺技を編み出したとか物騒な話ばっかりだから!
政治の話とか真面目なこと言えるのって良いよー、ポイント高いよー!
「……それで、今の政権一強状態で良いのかなって。まあ、私達、選挙権も何もないんで言っても意味はないんですけど」
「そんなことないさ、ちゃんと色々考えられるって偉いよー!えと、今の政権が一強だって話だよね?うーん、それはそれで良いんじゃないかなぁ、今の総理大臣は信頼できるから」
「そうですね、確かに剣総理大臣は信頼できます。……ちょっと武闘派過ぎるかもですけど」
「はは、桃さんは昔からああだから」
「……えっ?お知り合いなんですか?」
「ああ、桃さんとは桃さんが学生だった頃に知り合ったんだ」
「……マオって本当に凄いですね。総理大臣と知り合いで忍者で、生身で深海棲艦と渡り合って、家事全般出来るとか」
渡り合ってねーよ、最近じゃ足止めでいっぱいいっぱいだよ。
君らが何百何千と深海棲艦を叩き潰している横で、二、三十体倒せるくらいのペースだよ。
鬼クラス以上は火力が足りなくて殆ど倒せないしね。
この前フル装備で鬼クラスに挑んでみたら一体倒すのに十分もかかった。
もちろん、回復薬とかも使ってだ。
やはり、俺は戦いに向いてない。
女の子に戦わせるのは情けないが、しょうがないよね。
「完璧超人ですよね!」
「そんなことないよー、由良ちゃんの方が凄いって!最近訓練頑張ってるもんね!偉いよ!」
「そんな、あれは工廠の技術力があってこそですよ!」
「そうかな?」
「ええ!デザインはちょっとアレですけど」
確か、由良の艤装は黒い悪魔の羽のようなユニットと、大型のビームサイズ、シールドだった筈だ。ジャマーも装備している。
「まあね、女の子にはちょっとアレだけど、でもカッコいいと思うよ?」
「はい!良いんです、私、深海棲艦にとっての死神になるって決めましたから!」
怖いこと言うね。
「私、マオを、皆んなを守れるなら、何にだってなります!何だってやります!だから……」
だから?
「ずっと一緒ですよ、マオ❤︎」
いや……、あれは親愛とかそう言うのだから。
愛にも色々種類があるでしょ?
違うから、由良は俺に惚れてなんかいないから。
惚れて、ないと、良いなぁ。
さあ次、気分を入れ替えて行こー。
「ナンバーワンのー、マオを指名しマース!!」
金剛デース!
きんいろモザイクではない。
「ハロー!金剛ちゃん!」
「ハーイ!マオ!」
俺に抱き着き、頬擦りする金剛。
良し良し、愛い奴め。
「マオ❤︎会いたかったデース❤︎」
「俺もだよ金剛ちゃん!」
瞳の中にハートマークを写した金剛が擦り寄って来る。
「取り敢えず座ろうか」
「ハーイ!」
と、席に座らせてと。
「さて、改めまして!指名ありがとね、金剛ちゃん!」
「マオに会うためならどこにだって行きマース!」
おっほ、言うねぇ。
「そんなに愛してもらえるなんて嬉しいよ!」
「本当なんデスヨー?マオを愛する気持ちは誰にも負けまセーン!」
この自信を持って、胸を張って他人に愛を伝えられるところが金剛の良いところだ。
「俺も、金剛ちゃんのこと世界で一番愛してるよ!!」
まあ、概ね本当だ。
俺にとって女性は順位をつけるものじゃない。
皆んな違って皆んな良いし、全員がナンバーワンでオンリーワンだ。
「嬉しいデース!あ、そうだ、見てくだサーイ!」
服を見せつける金剛。
「マオに見せるために買いマシタ!」
「へえ!可愛いよ!似合ってる!情熱的な赤が金剛ちゃんにぴったりだよ!」
金剛は赤のドレスを着ていた。
似合ってる。
金剛は華やかな女性だ、こう言う華やかな格好はベストマッチだ。
「えへへー!照れちゃいマース!」
「そんな金剛ちゃんにはこれかな、薔薇の花!」
「ワーオ!」
花束を四次元ポケットの魔法により取り出す。
「嬉しいデース!」
「喜んでもらえてなりよりだよ!俺は金剛ちゃんのために生きてるんだから……!」
嘘だ。
俺はどこまでいっても俺のために生きている。
特定の誰かのものになることなんてない。
「ンー!マオは女性のツボを熟知してマース!今日は、私の望む言葉をかけてくれるんデースネー?」
「今日だけじゃないさ!君が望むのなら、いつでもどこでも、なんだってするよ!俺は君の騎士(ナイト)なんだから!」
と、リップサービスぶっ込んだ後は。
「最近は六本木によく行きマース!」
「へえ、そうなんだ!六本木といえば◯◯カフェにはもう行った?」
「ハイ、行きマシタヨー!紅茶が美味しいネー!」
「分かる分かる!あそこの紅茶美味しいよね!パンケーキも一度は食べておきたいって感じの一品だし!」
などど、暫し談笑し。
「そうだ!マオ、踊りまショー!」
「金剛ちゃん、社交ダンスできるの?」
「もちろんデース!レディの嗜みデスカラ!」
「良いよ、やろうか」
「ハイ!リードして下さいネー?」
社交ダンスをして。
「歌って下サーイ!マオの歌声が聴きたいデース!」
「良いよー、何歌う?」
「じゃあ、このラブソングを……」
歌わされたりして。
「あっ、ごめんね、金剛ちゃん、もう時間みたい。延長もいっぱいいっぱいしたし」
「エー?もうデスカー?」
「また来てよ、今度もまた一緒に素敵な時間を過ごそうね」
「うー、ハイ、分かりマシター」
「それじゃ、金剛ちゃん、またね」
と、頬にキスして。
「んっ❤︎分かりマシタ!また来マース!!」
金剛が帰る。
はー、こんなもんか。
ホストモードはちょっと疲れるねぇ。
でもまあ、八割は自然体だし、仕事モードとかの方がよっぽど疲れるよ。
兎に角、ホストは終了だ、終了。
よく頑張った方じゃない?俺。
艦娘の皆んなの癒しになれたなら幸いだ。
由良
死神となる。
金剛
旅人ホストにご満悦。
旅人
ホストは天職。