旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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俺もバイトの面接落ちたことありますから、安心して下さい。


256話 将来的に役に立つから

「大淀、艦娘の社会進出の件だが」

 

「はい、こちらになります」

 

ふむ。

 

終戦と言う名のゴールがそろそろ見えそうになってきた昨今、艦娘の社会進出の件についてはよく考えてあげなきゃならないと思い、艦娘全体にアルバイトを奨励したんだが。

 

面接で落ちる50%

一週間以内にクビ20%

一週間以内に辞める20%

 

芳しくない。

 

「これはひどい」

 

艦娘の一割ほどしか、まともにバイトすらできてない模様。

 

どう言うことだ?

 

「大淀、バイトの件、どうした?」

 

「はい、面接で落ちました」

 

バイトの面接落ちるって何だよ。相当だぞ。

 

「何しでかしたの?」

 

「私はただ、『他に働いた経験は?』と聞かれたので、ご主人様である提督の性奴隷と下僕を兼任していますと正直に答えたところ、その場で不合格を言い渡されまして……」

 

うん、原因はそれだね。

 

「外でそう言うこと言うのやめてってイワナ……、書かなかった?」

 

「ですが、真実を言った方が心証がよろしいかと思いまして」

 

よろしくねーよ。

 

大体にして真実でもないしな。

 

俺のふわふわな記憶が正しければ、大淀と致したことはない。

 

え?

 

いや、してないよな?

 

してないよね?

 

「大淀、変な嘘つくのやめてよね」

 

「こんな名言を知りませんか提督。かつての同盟国のかのお人は、嘘も百遍言えば真実になる、と言いました」

 

「ヨーゼフ・ゲッベルスだな」

 

と、どこぞの紅茶の名前の戦車道の女の子みたいなやりとりをして。

 

「……兎に角、こうなった以上、原因解明に努めるしかねぇな。行ってくる」

 

「はい、行ってらっしゃいませ、提督」

 

俺は戸を開けた。

 

 

 

ケース1:明石

 

「明石、バイトの件だけど」

 

「はい、一日でクビになりましたよ?」

 

「……何で?」

 

「さあ?」

 

明石がやったのは、車の整備だ。

 

「何て言われてクビになったの?」

 

「やり過ぎだ、と」

 

んー、予想は出来るが一応聞くか。

 

「何しでかしたの?」

 

「車を整備しろ、と言われたので、ニトロブースターと飛行機能付けたら、凄く怒られました」

 

そりゃ、怒られるわな!

 

「何でそんなことを?」

 

「え?整備しろって言われたので」

 

「は?」

 

「え?」

 

整備だよ?言葉の意味分かる?

 

「改造だよね、それは」

 

「いえ、整備ですよ。改造するなら熱核タービンエンジンとビームコーティング、ハイアクトミサイルは付けますね」

 

成る程、明石の感覚では、整備の範疇だったと。

 

「分かった、もう良いよ……」

 

 

 

ケース2:愛宕

 

「愛宕、バイトの件だけど」

 

「あら?三日で辞めてきたけど?」

 

ああ、ああ、それは知ってるとも。

 

「俺が聞きたいのはな、何で店長の腕をへし折ったのかって話ね」

 

慰謝料請求が来てるからね。

 

「セクハラされたの」

 

「成る程」

 

うーん、じゃあ、仕方ないのか?

 

「でも、セクハラなんていつもされてるだろ。俺に」

 

「んもう、提督は良いのよ!むしろウェルカムなんだから!でも、他の男は許さないわ」

 

これは喜ぶべきなのか。

 

「でも、何も折ることないよな?」

 

「えー?殺さないようにちゃんと我慢したのよ?」

 

まあ、そこは素直に偉いねと言っておこう。

 

 

 

ケース3:長門

 

「長門は工事現場で働いてるんだよな」

 

「ああ」

 

似合うなー、工事現場。

 

「結構前から働いてるもんな」

 

「友人もできたぞ」

 

「ほう、そりゃあ、良いことだ」

 

「タカさんとノリさんと言うのだが」

 

成る程。

 

あの人達だろうなぁ。

 

俺も工事現場でバイトしてた頃会ったことがあるんだよね。

 

まあ、気の良い人達だよ。

 

超体育会系だけど。

 

「素晴らしいよ、長門。その調子でアルバイトを頑張ってくれたまえ」

 

「了解だ」

 

 

 

ケース4:霧島

 

「霧島は……、ヤクザか」

 

「はい」

 

真島組でヤクザ稼業をやっているらしい。

 

「どうなんだ、調子は」

 

「良好です」

 

そうかい。

 

「真島の兄さんの無茶振りに振り回されてないか?」

 

「それは、仮とは言え組員であるので、ある程度は仕方がないかと」

 

キレて真島の兄さんと対決とか駄目だからな?

 

「それに、真島さんも、私が女性であるからか、あまり無茶は言いませんから」

 

ん、そうか。

 

流石に頭パーリーピーポーのあの人でも、女性相手ならある程度は優しいか。

 

「警察に捕まったりするなよ」

 

「はい、大丈夫です」

 

なら、良いか。

 

 

 

ケース5:鹿島

 

「鹿島はロー○ンでバイトか」

 

コンビニか。やること多くて大変だろうに。

 

「はい!学ぶべきことが多くて、楽しいですよ!」

 

ああ、鹿島。鹿島!

 

なんて良い子なんだ!

 

「偉いぞ、鹿島」

 

「いえ!提督にはいずれ私のヒモになって欲しいので!その予行練習と思いまして!」

 

んんー?

 

「提督のためを思えば、どんなお仕事も苦じゃありません!」

 

「いや、俺はヒモになる気は……」

 

確かに、ヒモをやってた頃もない訳ではないが。

 

「憧れ、なんです」

 

「はぁ?」

 

「寂れたマンションで、呑んだくれる提督に毎日暴力を振るわれながら、借金を返すために身を粉にして働く……」

 

何その妄想。

 

「そして、ギャンブルで負けた腹いせに毎晩痛めつけながら無理矢理に犯してもらって、そのままズルズルと子供ができたりして……」

 

「い、いや、そんな酷いことしないよ」

 

「ええっ?して下さいよ!私の夢なんです!」

 

変な夢見るんじゃないよ。

 

「やらないからね」

 

「せめて首絞めだけでも」

 

「やらないってば」

 

「腹パン……」

 

「やらない」

 

鹿島は駄目だ。

 

駄目って言うか、なんて言うか。

 

筋金入りのマゾで、駄目男好きなんだよね。

 

俺の駄目人間っぷりに惹かれてるらしい。

 

「兎に角、俺は女子供に暴力は、基本的に振るわないんだよ」

 

例外はあるがね。

 

「そ、そんなぁ」

 

落胆する鹿島。

 

お願いだからまともになってくれ。

 

 

 

ケース6:阿賀野

 

何?阿賀野はうちの艦娘じゃない?音成の子だって?

 

知らん知らん。

 

定期的にうちに来てるんだからうちの子も同然、まとめて面倒みるぜ。

 

「阿賀野は、一週間でクビか」

 

飲食店でバイトしていたらしい。

 

「えへへ、うん」

 

ちょっとだけ照れた様子の阿賀野。

 

「何しでかしたの?」

 

「お皿を割っちゃって……」

 

「それだけ?」

 

いくらなんでもそれっぽっちでクビにはならないだろう。

 

「あとは、料理をひっくり返したりとか、お水を零したりとか……」

 

あー。

 

はいはい、成る程。

 

阿賀野は、そう。

 

ドジっ娘、なのだ。

 

「ドジしちゃった訳ね」

 

「うん、ごめんなさい」

 

うーん、可愛いから許す。

 

しかし、社会は厳しい。

 

いかに可愛くても許されない限界ラインと言うものがある。

 

阿賀野はそのラインを、悠々と超えてしまったのだろう。

 

「そう、だな。今度は工場とか、比較的簡単な作業をやるところに行けば良いと思うよ」

 

「はーい」

 

 

 

さて。

 

艦娘の諸君らは、揃いも揃って社会不適合者だ、と言う悲しい結果が出てしまった訳だが。

 

「どうしよ」

 

どうしようか。

 

やはり、艦娘は戦うことしかできないのだろうか。

 

暫し、悩んで。

 

「まあ、どうにでもなるか」

 

どうにでもなると思った。

 

知的生命体である以上、進化、適応するものだ。

 

いつも通りの投げっぱなしジャーマンスープレックス論法だが、それで良い。

 

俺は期待しているんだ。

 

個性的で可愛らしい彼女達の行く末に。

 

社会に出る出ない関係なしに、彼女達の人生に幸あれ、と。

 

そう、願った。

 




艦娘
社会不適合者の集まり。

旅人
社会不適合者だが、スキルはあるので職を転々としてやっていけている。

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