旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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今、手元に、『黒井鎮守府修学旅行編』と、もしも艦娘と旅人の間に子供ができたらどうなるかシミュレートする『未来へダイブ編』があります。『黒井鎮守府修学旅行編』は全八話くらいで完成していて、『未来へダイブ編』は四話だけ、反応が良ければ増やす、リクエスト受け付け、の予定です。

どっちが先だと良いと思いますか?


257話 心覗いて事もなし

「さて、仕事終わり、と」

 

ふう、と一息ついて。

 

仕事も午前で終わり、ですか。

 

まあ、艦娘と言う戦力兼整備士であるこの明石は、他の艦娘と比べれば仕事は多い方ですが。

 

皆さん、本当に優秀で、艤装のメンテナンスくらいしか、やることないんですよね……。

 

趣味で新しい兵器や発明品を作ることはありますけど、もう殆どそっちがメインみたいな。

 

しかも、予算は黒井鎮守府から直接出るんで、懐は痛まないし。

 

至れり尽くせりで。

 

「……提督は、何を考えているのでしょうか」

 

研究資金は幾らでも用意してくれる、お給料もくれる、食べ物もお酒も、お菓子も、服もアクセサリーも、愛情までくれる。

 

だから、時々、不安になる。

 

いっつも笑顔のあの提督が、何を考えているのかを。

 

もしかして、私達のことを迷惑に思っているんじゃないかと、そう思うと夜も眠れない。

 

 

 

「……と、言う訳で、提督の心が読める眼鏡を作りました。艦娘の皆さんはテストにご協力をお願いします」

 

 

 

……「不敬では?」

 

……「いや、白露型は皆提督の心を読んでいるそうだぞ」

 

……「興味深いですね」

 

「異議異論はもちろんあるでしょう、ですから、強制はしません。……ですが!提督が普段何を考えているのかを可視化するまたとないチャンス!逃す手はないかと思いますが?」

 

「「「「………………」」」」

 

すると、艦娘達の手が、手元の眼鏡に伸びる。

 

くくく、成功ですね。

 

さあ、提督?

 

教えてください。

 

貴方が何を考えているのかを……!

 

 

 

「明石、何だその眼鏡」《可愛いな、似合ってる》

 

はぁい成功!

 

読めます読めます読めますねー!!!

 

「これですか?ちょっとした発明です!鎮守府に配布しましたが、あまり気にしないで下さい!」

 

「ふうん、そうかい」《明石可愛い》

 

「ところで提督?私について、何か言いたいこととかないでしょうか?」

 

この質問で、提督の心を見る!!

 

「言いたいこと?」《んー?何のことだ?いつものいたずら?いや……》

 

 

 

「見たな」《見たな》

 

 

 

「え?」

 

《心を読んでいるな?》

 

「ちょっ?!何で分かるんですか?!」

 

《分かるさ、そのくらい。覗かれている感覚があるんだ》

 

「す、すみません……」

 

《俺の心を覗くのは非常に危ないから、おススメしないぞ。認識災害とかミームとか》

 

「は、はあ」

 

《誤字とか、伊る、ねことかな。脳に記憶処理装置をぶち込む羽目になるのは嫌だろう?》

 

分かりませんが。

 

《まあ、そうと分かれば俺も、深層心理までは読ませないように注意するから》

 

「ええー」

 

《ブーイングは聞きませーん》

 

ぶーぶー。

 

《心を読むのは構わないけど、俺だけにしとけよー。他の子の心を読んだりしちゃ駄目だからなー》

 

「あ、それは大丈夫です、この眼鏡、提督の心しか読めませんから」

 

《それは安心だ》

 

って、そうじゃない!

 

そうじゃないんですよ!

 

私が提督の心を読もうと思ったのは……。

 

「私のこと、迷惑に思ってないかと……」

 

「んーん、そんなことないよ」《いやマジで》

 

「でも、心の奥底では……」

 

「俺は明石のこと好きだよ」《愛してるばんざーい、ってね》

 

「まあ、分かり、ました。でも、提督。なるべく、思ったことは口に出して下さいね。嫌なところは直しますから」

 

「ああ」《嫌なところなんてねーけどな》

 

 

 

×××××××××××××××

 

司令官❤︎司令官❤︎

 

私の大好きな司令官ー❤︎

 

ふふ、白露型である私は、こんな道具なんてなくても、司令官の心を覗けるけど……。

 

一度、しっかりと見てみようかな❤︎

 

「司令官ー❤︎」

 

「ん?」《ヘルシェイク矢野》

 

んん?誰それ?

 

「ああごめん、ヘルシェイク矢野のこと考えてた。何だい春雨?」《今日の晩飯何作ろう。コロッケ、いや、メンチカツ……》

 

えっと……。

 

「司令官の心を覗きに来たの❤︎」

 

「ふむ、ストレートな物言い、実に良い。好きなだけ覗きたまえよ」《マグマミキサー村田》

 

だから誰?

 

……まあ、いっか。

 

さあ、集中して、脳内の瞳を拡張して……。

 

「あ、ハハはっ!キヒィ!!来たァぁ!!!」

 

ふふ、見える……!流れ込んでくる!!

 

司令官の記憶が!!!

 

《クソ、食いもんがねえ……。あー嫌だな、しょうがねえ、ゾンビの肉食うかー。うおぇ、不味い……》

 

《『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎!!!』痛え、ああ、しくじった。ムーンビースト共め、遠慮なしか……》

 

《くっ、やべっ『◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーー!!!』獣め、畜生、内臓が……》

 

《チッ!クソが!死にやがれー!!……っはぁ、やったか》

 

《何だここ。監禁?ずっと一緒?オイオイ、冗談キツイぜお嬢さん》

 

《寒い……、寒い……、死ぬ……。洒落にならねえぞ八寒地獄》

 

「くひっ、ひはは、あはははは!!やっぱり司令官は私達と一緒だ!破綻者なのね!!」

 

「んえ?何が?」《そうだ串カツにしよう!たまにはこういう晩飯もありだろう》

 

「生きるために屍肉や蛆虫を喰らい、得体の知れない化け物共にはらわたを抉られ、数多の悪意に殺し殺され!!そんな中でも司令官は確固たる自分を持っている!持ち続けている!!」

 

狂気の中、正気でいるものが最も狂ってる……❤︎

 

「お、おう、そうだな。確かに俺は、我の強い方だが」《後は、そうだな、お好み焼きでも焼くか。たこ焼きもいいな。焼きそばも。関西リスペクトー》

 

「常人なら自我が擦り切れ、心的外傷で精神が潰れるはずの日常!!貴方は、司令官は、それでも自分であり続けた!!!」

 

「人聞き悪いな、確かに辛いこともあったが」《人を気狂いみたいに言うのはNG》

 

「暗い宇宙の深淵の中、確かな輝きを放つ恒星のようで!……美しい!美しいの、司令官の心は!!!精神は!!!!」

 

「照れるぜ」《春雨のパンツ何色かな》

 

「うふふふふふ、あはははははは!!!あ、ピンクです」

 

何て綺麗なんだろう!!

 

ああ、だからこそ、だからこそ……。

 

この人が、欲しい……!!

 

この人の光が私達だけに降り注いだらどんなに素敵か!!

 

欲しい、欲しい欲しい欲しい欲しい!!!

 

「頂戴、司令官……❤︎」

 

「ほい」《まーた血液抜かれんのか。その内貧血で倒れるぞ俺》

 

 

 

×××××××××××××××

 

「しーーーーーぁはーとあたっく!!」《ああ^〜、やっぱりクイーンは最高だぞい!ロックの頂点だ!》

 

ああ、いた。

 

私のAdmiral。

 

ロックミュージックかしら。私はクラシックくらいしか聴かないから、詳しくはないけれど、Admiralが歌うと様になるわね。とっても上手だし。

 

「おやウォースパイト。何か用かい……、って聞くまでもないか。さっきから艦娘達が俺の心を覗きに来てるからな」《つーか眼鏡似合うなー。知的な雰囲気だ》

 

「一応聞いておくわ。心を覗かれることに嫌悪感は?」

 

「無いね。俺の知り合いには心が読める女の子がいる」《琴浦ちゃんとかさとりんとか》

 

脳内にビジョンが浮かぶ。

 

一般的なhigh schoolの女の子と、紫の髪が特徴的な女の子だ。

 

「他にもいる」《ボクシング界を牛耳るとか抜かしたチンピラとかダービーとか言うゲーマーとか》

 

特徴的な男性が二人。

 

「俺も読もうと思えば読めるし」《心理学<80>と脳内の瞳で》

 

成る程……。

 

「じゃあ、少しくらい心を読まれても問題ない訳ね」

 

「そうだね」《かまぼこ》

 

かまぼこ?

 

……まあ、良いわ。

 

「それじゃあ、子供の頃のことを思い出してみて頂戴?貴方の過去が知りたいの」

 

相互理解は恋愛で最も大切なことだと思うわ。

 

Admiralは私のことを理解してくれるけど、私はAdmiralのことを理解しきれていない。

 

もっと知りたいわ、私の愛しい人。

 

「まあ、良いぞ」《子供の頃?子供の頃かー》

 

《『ジャギ!アミバ!行くぞィァ!!!!』『うおおやめろ馬鹿野郎!!兄者の顔に落書きなんて!!!』『こ、殺されるぞ!!!』》

 

《『愚地師範、稽古つけて下さい!』『ヨッシャ、良いだろう』》

 

《『花凛、飯だぞー』『うん、兄さん。ありがとう』》

 

成る程、世紀末幼稚園。

 

「お知り合いが沢山いるのね。こんなに沢山の人を覚えていられるの?」

 

「うん、案外覚えてるもんだよ」《出会った人のことはよく覚えてる》

 

でも、あれね。

 

皆んな特徴的な人ね。

 

「あ、そうだ、Admiralのsisterに会いたいのだけれども」

 

「うん?何で?」《うちの妹に何の用だ?》

 

もう、Admiralったら。

 

「結婚相手の家族にはしっかりと顔を見せるべきよ。貴方のsisterは私のsisterでもあるんだから」

 

「んんーん」《なーんだそりゃ。ケッコンカッコカリとは一体何だったのか》

 

「今度、鎮守府に招くと良いわ」

 

「考えとく」《考えておくだけな》

 

ふふふ。

 

でもね?

 

「Admiral、私は嬉しいの」

 

「何でだい?」《大体予想できるが、聞こうか》

 

あら?分かってるのに聞くのかしら。

 

まあ、そこもAdmiralの良いところよね。

 

「家族ができたから!」

 

「ああ」《そうかい》

 

「艦娘と言う、世界で一人きりの私の、家族になってくれたじゃない!」

 

「そうだな、君達の家族だな俺は」《兄とか父親ポジションじゃいかんのか》

 

駄目よ。

 

「それでね、Admiral。戦況もそろそろ安定してきたし……、新しい家族を」

 

「えー」《嫌だ》

 

むぅ。

 

Admiralは意地悪ね。

 




明石
黒井鎮守府に数多くいるヤベーやつの一人。

春雨
狂人。確かな智慧を秘めている。血に酔っている。狩人。

ウォースパイト
恋愛を楽しんでいるつもりのサイコパス。

旅人
読心はできるが、やらない。

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