あれですね、今の子は早熟ですね。
小学生でもいける気がしました。
さて、という訳で、感想欄のアドバイスより、先に『未来へダイブ編』やります。次から。
「日本の夏も暑いわねぇ」
「そうだよねぇ、この湿気がねえ」
初夏の夜。
アイオワと居酒屋鳳翔でビールを飲む。
「んー、何かこの暑さを吹き飛ばすような、coolなことはないかしら?」
「coolなことねぇ……」
怖い話とか?
「夏の風物詩といえば、怖い話だが」
すると、何人かの艦娘が集まってくる。
そうかそうか、怖い話が聞きたいか。
「horror?良いわね、何かあるかしら?」
「ああ、メキシコの麻薬カルテルに喧嘩を売って……」
「そういうリアルで怖い話じゃなくて!そうね、ウォーキング・デッドみたいな話はある?」
ウォーキング・デッドみたいな?
「じゃあ、数年前中国で起きたバイオテロの話でもする?」
「バイオテロ?」
「Tウイルス感染者やジュアヴォはまさにゾンビだったぞ」
頭を吹き飛ばさない限り立ち上がってくるから面倒だった。
「何よそれ」
俺は日記に貼ってある写真を見せる。
「……CGよね?」
「いや、これが頭を潰さない限り、立ち上がって襲いかかってくる」
まあ、ジュアヴォは一定量ダメージを与えるだけでも倒せる分楽だが。
「joke?」
「trueだ」
嘘は言ってない。
……どうも艦娘は、俺の話を冗談半分で聞いている節がある。
俺は嘘をついていないと言うのに。
嘘をついたり、話をボカしたりするのは、女の子が絡む話の時だけだ。
「まあ、本当の事の発端は十何年くらい前のラクーンの惨劇に関わってくるんだけどね」
「ああ、あれね。その頃はまだ建造されてなかったし、深海棲艦もまだ確認されていなかったのよね。でも、アメリカが国内にmissileを撃った大事件だし、話は聞いているわ」
「あれ、バイオテロだったのよ」
「そうらしいわね。何でも、死者が蘇ったとか。馬鹿馬鹿しいわ」
「マジだぞー」
俺は手持ちのTウイルスを机の上に乗せる。
「このTウイルスでな。死者であれ生者であれ、脳の特定部位を刺激して、結果ゾンビと化す訳だ」
「ッ?!!さ、流石に嘘ね。そんな危なっかしいウイルスを持ち歩いてる訳ないわ。まともな神経をした人間、な、ら……。まともな、神経……?」
ん?
「………………Admiralは、まともな神経をしていない?」
その瞬間、艦娘達が壁際に退避する。
「そっ、そっ、そっ、それ、本物とか言わないよねっ?!!」
「ああ、もちろん、強化ガラス製だからそうそう割れないよ。でももしこれが割れたら、あらゆる経路からウイルスが拡散、ここら一帯が死の街になるだろうな」
「仕舞ってぇぇぇ!!早く!!!早くぅ!!!!」
焦んなくても大丈夫よ、もし割れても火属性の魔法で焼き払うし。
「はぁ、はぁ、はぁ……、そんな危険物持ち歩くなんて、正気かしら?」
「至って正気だがね」
「で、こっちが投与された人間がある程度の知性を残したままゾンビ化するCウイルスなんだけど」
「出さなくていい!出さなくていいから!!!」
「……と、まあ、そう言うことで、俺とレオンはバイオテロの首謀者を打ち倒し、平和を守った訳だ」
「……本当?」
だからマジだって。
「ほら、写真」
全てが終わった時、レオンと一緒に記念写真を撮った。
「あ、こっちはロス・イルミナドスを壊滅させた時の方だ。こっちか」
「そっちも気になるけど……、これね?」
「映像もあるぞ、ほら」
……『はっはっは、何あれ?蝿?』
……『醜悪だな……』
……『ここで決着をつけるわよ』
……『オラオラ、魔法の矢!』
……『やったわね!』
……『ところでお前魔法使いなんだろ?パパッと脱出できるような魔法はないのか?』
……『あるにはあるけど、下手したら発狂するよ?』
……『……そうか。魔法も万能じゃないんだな』
……『あ、あそこにヘリが!あれで脱出しましょう!』
「……本当なのね」
Admiral嘘つかない。
「とても信じられないけど……、Admiral、本当に世界を救ってるのね」
「いや、俺の活躍なんて大したことない、ちょっと戦っただけだ。そんなことより、日頃から対バイオテロで戦ってるレオンやBSAAの人達の方が凄いよ」
「謙遜し過ぎ。貴方、戦場でサポート役や司令塔がいる安心感を知らないの?」
俺が役立つサポート役だと?
はっ、そんなことはない。
「俺は英雄達について回ってうろちょろしてたただのオーディエンスさ。頑張ったのは彼らであって、俺はただ状況を楽しんで馬鹿みたいに写真を撮ったりしてただけだよ」
「まあ、こんな状況を楽しんでいる時点でもう正気じゃないけど、貴方も紛れもなく英雄よ。誇りなさい」
そうかなぁ。
「何で変なところで謙虚なのよ?」
「だって俺、マジで何にもやってねーし」
「何を言っているのよ!これなんてほら、人の盾になってる!」
クリスの盾になっている写真だ。
「いやそりゃクリスに死なれたら困るもんよ、誰がバイオテロに立ち向かうのよ」
「貴方、人の盾になれるってどれだけ凄いことか分かってる?」
こんなん誰だってできる。
「単に死なないって自信があるだけで、別に凄くも何ともないよ。君達だって死なない自信があれば、敵の攻撃を受け止めたりするだろう?」
「それはMe達が艦娘だからであって……」
「同じさ」
「でも、誰かを守れるのは素晴らしいことよ」
「これは死なれると凄くめんどくさいことになると予想しての行動だから。俺、滅多なことがない限り、可愛い女の子以外なら普通に見捨てるからね?」
その辺誤解してるよね。
俺、別に心優しくも何ともないのよ。
最悪人殺しもするし。
善人ではないよね、中立中庸だよね。
「そう?でも、こんな状況で人を守ったのは……」
「誤解されてるようだから言っておくけど、俺は悪人だから。むしろ、悪人でも協力しなきゃヤバい事態になってるのがこれまたヤバいのであって……」
「……仮に、貴方が悪人でも、Me達は貴方のこと大好きよ?」
好感度は下がらない、と。
まあいいさ。
「ただ、本当に誤解しないでね。俺はあの某怪盗三世と盗みをしたりしてるからね。決して褒められた人間じゃないんだ」
「某怪盗三世……、それ、ルパン三世のこと?あれって確か義賊とか言ってなかったかしら?」
「確かに、彼は義賊だがね、やってることは悪いことだろう」
悪だよねー。
「殺しや盗みは悪いことだけど、ターゲットを選ぶのは偉いと思うわ。Admiralは、酷い悪人しか殺さないし、悪い金持ちからしか盗まないでしょう?」
そんな、ことは……、いや、そう、か?
思い起こせば、殺したのは悪人ばかりだ。
ノースティリスの強盗団、悪の魔術師、邪教の狂信者……、殺したのは、生きる価値のない悪党ばかりだ。
……まあ、生きる価値を俺が定義できるのかと言ったら微妙なところだが。
盗みだって、基本的に金持ちからしかとらない。
「こっそりやってる密輸の件だって、深海棲艦騒ぎで規模を縮小した貿易会社の溢れた人間を使ってあげたりしてるんでしょ?」
「それは、そうだがね」
そりゃノウハウある人間を他所から引っ張ってきただけなんだがね。無能にはノータッチだしな。
それにやってるのはグレーからブラックな貿易だ。車とか貴金属とか臓器とか、そう言う稼げるのを売買してる。
麻薬は駄目なんだが。
お陰さまで裏世界では、今最も安全な密輸ルートとして引っ張りだこだ。
「自覚がないみたいだから言っておくけど、現時点で海の六割を解放してるし、貴方も十分に英雄なのよ」
「そうかね」
「教科書に名前が載ってもおかしくないレベルね」
流石にそこまでじゃないと思うが。
「それに、この調子だと、どう考えても深海棲艦から海を取り戻せるし……、貴方、また世界を救うのね?」
「そんな大層なことじゃないさ。それに、世界を救うのは君達艦娘だよ」
「Me達を指揮してるのはAdmiralじゃないの。こういうのは兵隊じゃなくって指揮官の栄誉になるものよ」
要らないんだけど、栄誉。
「名誉とか栄誉なんかより、俺は美女達の愛とかの方が欲しいねぇ」
「あら、じゃあMe達が目一杯愛してあげるわ!」
「いいねぇ」
とても嬉しい。
「酒ギャンブル風俗と旅があれば何も要らんな!」
「風俗は駄目ね」
チッ。
アイオワ
旅人の話は信じたいが、あまり信じられない。
旅人
過去に色々とやった。