めっちゃ好きでした。
「今回で最後だからな」
「はい、それはもう!」
ぷんすか!
流石の俺もぷんすかだ。お怒りだ。
もうこれ以上は心労は要らない。
《遺伝情報確認、フルダイブ》
×××××××××××××××
「ちょり〜っす」
「ん?お、おおう」
木の上を見上げると。
枝の上でナマケモノのようにダレている少年が。
歳は十代前半、黒眼黒髪の日本人風の美少年だ。長い黒髪は後ろで一本のおさげになっている。顔つきはおっとりとしていて、事実、おっとりとした雰囲気。瞳は半目で眠たげな表情。服装は深緑の半袖シャツに黒の短いズボン。
「そらよ」
「おわあ」
木を蹴ってやる。
すると、バランスを崩した息子カッコカリは、軽やかに片脚を木の枝に引っ掛け、落下を防いだ。
「酷いよー」
「落ちろ」
「あひん」
頭から落ちる、が。
「っと」
猫のように身体を捻り、体制を入れ替えて着地する。
「何でこんなことするの?」
「俺の息子とかこの世から抹殺したい」
「ひえー、助けてー、こーろーさーれーるー」
丁度現れた北上に抱きつく息子カッコカリ。
「おーよしよし、可哀想にねえ」
にへらとわらって息子カッコカリを受け止める北上。
さあてね……。
「取り敢えず……、北上から離れろ。殺すぞ」
割とマジな殺意を滲ませて一言。
「は、離れまーす」
冷や汗をかいて離れる息子カッコカリ。
「か、母さん、酷いよあの人、実の息子に本気の殺気飛ばしてきた」
「そんなもんだよー」
「そ、そんなもんかなー?」
殺意マシマシ。
「てめーは何だ」
「何、って、父さんの息子だけど……。名前は◯◯だよ」
「趣味」
「うーん、昼寝?」
「特技」
「どこでも寝られることかな〜」
「好物」
「えーと、チョコレート」
「尊敬する人は?」
「え、え?何これ、面接?」
「尊敬する人は?」
「わ、分かったよ、答えるよ。……うーん、特にいないけど、父さんって答えた方が良い?」
「遠慮されるのもムカつくんで良いです」
「一々辛辣……」
「座右の銘は?」
「のんべんだらり」
「将来の夢は?」
「えー、ニート」
よし。
「じゃあ死のうか」
「じゃあって何さ?!」
「どうどう、提督、どうどう」
俺の肩を押さえる北上。
「ふしゅるるる……、殺すぅ、殺しきる……」
「やめてー」
「提督ー、駄目だよー?自分の息子なんだから、愛してあげてー」
「俺にはできない」
断言。
「おおう、言い切るねえ」
「今すぐにでもぶち殺したい」
「……あの、さ。僕は、父さんのこと、結構好きなんだけど。そう言う言い方をされるのは、ちょっと、ショックだなー」
「いや、そう言うのいいんで」
「……うう」
「……流石に酷いよ、提督」
北上に苦言を呈される俺。
「しかしな」
「自分の子供を何だと思ってるの?」
「負の遺産」
「………………」
言外に非難される俺。
「いや、よく考えて欲しい。ニートになりたいとか抜かす子供を可愛がれるだろうか」
「それでも、私達の子供なんだよ?もっと愛してあげてよ」
参ったな、俺の愛は女の子にしか向けられないのだ。
「いやーキツイっす」
「……◯◯、提督は面倒を見てくれた?」
「あ、うん。面倒は見てくれたよ。母さんの負担にならないようにって」
「……つまり、私のためであって、◯◯のためではない?」
そうだね。育児をするなら、北上の負担にならないように協力するだろうね。
北上のために。
「……それでも、僕は、父さんが好きかな」
「◯◯……」
「俺は別に」
「提督はもう……」
《ダイブ終了》
×××××××××××××××
「どうでした?」
「イライラした」
「またまたぁ〜」
殺意に満ちた。
「さ、次でラストですよー」
「よーし」
やっと終わりかー。
地獄が終わる。
《遺伝情報確認、フルダイブ》
×××××××××××××××
「チャオ!パードレ」
イタリア語……。
「可愛い息子の帰郷だぜー?酒奢ってくれよー」
ファーック。気安く肩組んできやがった。
「隠してんだろ〜?ロマネコンティとか!出せよ〜」
……十代後半。銀髪。髪は無造作にかき上げられている。鼻が高く彫りが深い、西洋人風の顔。優男って顔だ。
身体は、背が高く、よく鍛えられている。この筋肉の付き方は暴力に生きる人間のそれだ。
そして重心の傾きから、懐に拳銃を隠し持っていることが分かる。
服装は、灰色のスーツにハット。
……マフィアか。
問題は誰の子なのかだが……。
「はぁーい、ポーラですよぉ」
んー、成る程ー。
「ああ、マードレ!」
「◯◯〜!」
抱き合う息子カッコカリとポーラ。
「よしよし〜」
「マードレ、会えて嬉しいよ」
「私も嬉しいですよぉ〜」
「愛してるよ、マードレ……」
引き剥がす。
「おや、嫉妬かな?」
殴る。
「顔はやめてくれ?!」
さて。
「お仕事は何をしてるんですか〜?」
「え?ま、まあ、金融関係だったり、不動産関係だったり?」
マフィアなんだろ、分かるわ。
俺がどれだけ裏社会の人間と関わり合いになってきたと思ってんだ?一眼見りゃ分かる。
「麻薬は」
「ウチ、薬はやらないんでね」
「そもそもどこのマフィアだ」
「イタリアさ、ネアポリスはいいところだ」
ははーん?
「パッショーネだな?」
「あれ?パードレには言っておいた筈だけど」
あ、そうなんだ。
「まあ、やってることはカジノの仕切りとみかじめ料集めくらいですよ。最近は個人的に株が儲かってるね」
そんなもんか。
「じゃあやっぱりスタンド使いなのか?」
「ええ、そうです。僕はスタンド使いだ」
成る程。
「んー?悪いことやってるんですか〜?」
「あーあー、マードレは何も気にしなくて良いんだよー!」
ポーラには話してない、と。
「あー、仕事の話は良いだろ?飲もうよ!」
「そうですね〜!私、自分の子供とお酒を飲むの楽しみにしてたんです〜!」
「で?スタンドは?出してみろ」
「はぁ?まあ、良いけども」
すると、息子カッコカリから、力あるヴィジョンが。
金色の人型実体。機械感がある。
「名前は、ニルヴァーナだ」
ふーん、近距離パワー型。
「能力は振動だ」
振動、また応用の効きそうな……。
「さあ、これ以上話すことはない。それより飲もうじゃないか」
スタンド使いは自分の能力について詳しく話すのを嫌う、か。
……と、一杯やって。
「私の子供にしては賢そうですね〜」
はは、どの辺が?
「ああ、それはパードレのおかげさ。勉強はパードレが教えてくれた」
「成る程〜」
「パードレには色々教わったよ。他にも、審美眼とか、ピアノの弾き方とか、何でもね」
「は〜、やっぱり提督は凄いですね〜。私がお酒飲んでる間にそんなことを」
「マードレからは優しい心を教えてもらったさ!」
んっんー。
マザコンかぁ……。
「マードレは世界で一番の母親だよ!心から愛しているからね!」
「んふー、可愛いですね〜」
良いんだ……。
まあ、ポーラが良いならそれで良いけど。
《ダイブ終了》
×××××××××××××××
「終わり、か」
「はい、お疲れ様です」
「今回の件で大分ショックを受けた」
「はい」
「ちょっと旅に出る」
「はあ」
駄目だ駄目だ、旅に出よう。
もう、旅に、出よう。
北上
のんべんだらり。
ポーラ
いつでもほろ酔い。
旅人
蕩けた脳みそ。