旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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今まで黙ってましたが、俺の嫁は木曾です。


27話 サメ殴りセンター

どこか幻想的な空間、大きな湖のほとり。安っぽいベンチに座る、冷戦時代のビジネススーツの男。そいつが俺に話しかける。

 

『おや、久しぶり、旅人君』

 

『…………あ!!おっ、お前!!ド腐れ予言おじさんじゃねーか!!』

 

『ははは、酷いな、トニーと、いや、リチャードと呼んでくれよ』

 

『うるせー!!もう財団のエージェントはやめたぞ俺は!!非常勤だ!!』

 

『いや、それは分かってるんだが、君には伝えなくちゃならない事があってね?』

 

『嫌だわ!どうせ碌でもねぇ話だろ?!あーあーあー!!聞きたくなーい!!!』

 

『アベルが逃げた』

 

『………………は?』

 

『好敵手である君の元に向かっているよ、もう、直ぐそこまで来ている』

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!!』

 

……「……とく、……ていとく、……提督!起きて下さい!!!」

 

『おや、ミス・オオヨドの声だね』

 

『ちょっ、待て!待てやこの野「提督!!起きて下さい!!!!」

 

 

 

瞬間、俺は夢から覚める。

 

「提督!大変です!!未確認の人型の何かが、あらゆるものを蹴散らしながらこの鎮守府に向かって来ているとか!!現在、未確認の人型の何かは音成鎮守府を半壊させ、ここに真っ直ぐ向かっています!!」

 

「……あー、分かってるよ、今行くから」

 

「え?分かってるって……?」

 

 

 

「最悪の予言があったのさ、聞いたらショック死しちまいそうな予言がね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここら辺か?静かな海岸だ。人もいないしちょうど良いだろうよ。

 

「なあ、そう思うだろ?お前もよ!」

 

 

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーーー!!!!』

 

叫び声を上げながら、真っ直ぐ襲い掛かる奴。……相変わらずクソ速えな!!常人なら視認することすら叶わないだろう、疾風迅雷の踏み込み。

 

そして拳打の嵐……。それも、速さだけでなく、正確さと威力を兼ね備えた死の連打。それを受ける、捌く、いなす、逸らす、弾く………………。

 

クソ、あっち(米国)なら、こうして俺が引き付けておくうちに機銃なり爆撃なりで吹っ飛ばせるんだがな。いつも言ってるけど、俺には火力が無いんだよ!!おまけに奴は体力無限大……、飲まず食わず寝ずでずっと戦い続ける。つまり、こっちの体力が切れれば一巻の終わりだ。

 

「死ぃ、ねっ!!!」

 

左ストレートをパリィ、極小の隙。そこに掌底、吹き飛ばし、距離を取る。下手に隙の大きい攻撃をすると、怯むこともなく、痛みを感じることもないこいつは即座に反撃してくるからな。兎に角、間合いを取りたい。

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!』

 

奴は、吹っ飛ばされながら、虚空から黒いブレードを取り出す。

 

受け身を取り、ブレードの切っ先を此方に向け、そのまま突貫。

 

が、近づかせてなるものか、鬼討ちの大弓を連射しながら、ダッシュで退がる。勿論、射った大矢は全て切り落とされている。畜生、チートかよ。

 

「だぁぁぁぁぁ!!!面倒くせぇ!!!」

 

素早くスマホを取り出し、財団に連絡を取ろうとする。……だが、俺のスマホに届いていたメールは……。

 

 

 

『ごめん^ ^; 《Dr.冗談じゃないぜ》』

 

 

 

「あんのクソ野郎おおおおおお!!!!!」

 

望みが絶たれたー。どうすんだこれ、死にそう!

 

 

 

その時、砲撃の音が響いた。

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎?!!』

 

「……提督、そいつは、敵だな?提督に刃向かう敵だな?!」

 

キャー!木曾ーさーん!!カッコイイー!!どうやら、鎮守府で休んでいた木曾が俺を追ってきたらしい。

 

木曾のお陰で火力が確保できた。雷撃か砲撃か……、モロに当てれば殺せる。物理的な防御力はそこまでじゃないんだ、コイツは。ただ、スピード、パワー、技量が桁外れなだけで。

 

海面を走り、木曾の隣へ。奴は俺を追って真っ直ぐ此方に来る。

 

「木曾!主砲だ、撃て!!」

 

「くたばれ!!!」

 

気合の一声と共に、木曾の主砲が火を吹いた。発射された砲弾は直撃コース。アイツの頭に飛んで行く。

 

 

 

だが、この程度でどうにかなる程、コイツは甘くない。

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎ーーーー!!!!』

 

奴は、黒いブレードで砲弾の側面を叩いた。ブレードは砕けるが、しかし同時に砲弾も逸れた。

 

「馬鹿な!!!!」

 

木曾が驚きの声を上げる。

 

そして、その隙を見逃さず、奴は木曾の頭目掛けて手刀で突きを放つ。……木曾ごと俺を貫く気だな?させるかよ!

 

「おおおおおおお!!!!」

 

「提督!!!」

 

…………痛っっってえ!!!奴の全力の突きを掌で受け止めた俺は、その掌が手首まで真っ二つに裂かれていた。

 

だが、これで…………!!

 

「おーら捕まえたぞー!!オモシロ全身イレズミ君よぉ!!!木曾!!機銃だ!!遠慮なくぶっ放せ!!!」

 

掌に突き刺さった奴の手刀を、貫かれた方の手で掴む。

 

「う、うわああああああ!!!!」

 

木曾は、悲鳴と共に機銃を放つ。狙いはデタラメだが、この距離だ。外れない。

 

 

 

『◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎ーーーーーー!!!!!』

 

 

 

……流石の奴も、ガードが出来ない状態での機銃は良く効いたらしい。断末魔を上げながら、バラバラの肉片になった。はあ、死んでくれたか。

 

『…………◼︎◼︎◼︎…………!』

 

……チッ、アイツ、最後に笑っていやがった。「また会おう」だと?クソ迷惑だわ。二度と来るな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、提督、すまない!すまない!お、俺が、俺が弱かったから!!提督を、守れなかった!!すまない!!」

 

「もー、良いって、こんなのほっときゃ治るからさー」

 

……あの後、木曾は俺に縋り付き、普段の凜とした佇まいとは一転、泣き崩れた。この程度の怪我、日常茶飯事なんだがなぁ。

 

「提督は、俺の、俺の所為で!!この命、お前の為に使うと誓ったのに!!!俺は、俺は!!!」

 

「はいはい、自分を責めないの。むしろこれくらいで済んで良かったよ。木曾は、怪我してないかい?」

 

実際、アイツには、腕を切り落とされて、腹にブレードを五、六本ぶっ刺された事がある。その時と比べりゃ、この程度で済んで嬉しいわ。

 

「だけど!!お前の、手が!!そ、それは、それはもう、二度と、戻らないじゃないか!!」

 

「治るって、ほら!」

 

どうやら、木曾は、俺の怪我が治らないと思って、責任を感じているみたいだ。じゃあ、目の前で治せばいいか。知り合いの神父から教わった回復法術(ヒーリング)を使う。本家大元の瞬間再生には劣るが、少しばかり裂かれた骨肉くらいなら三分もかからない。

 

「……こ、れは?さ、再、生?!」

 

「そういう事!だからね、俺はある程度なら怪我なんて治せるの!!心配しなくても良いよ!俺にとってはさ、俺自身なんかより木曾の方が大事だしね!」

 

すると、ポロポロと大粒の涙を流す木曾。あ、あれ?間違ったかな?

 

「そんな、そんなこと、言わないでくれ!お、俺は!俺だって!!俺自身なんかより!お前のことの方がずっと、ずっと大事なんだ!!例え、どんなに怪我を治せたって、お前に傷付いて欲しくないんだ!!大好きなお前に、傷付いて欲しくない!!!」

 

まるで子供みたいにわんわん泣く木曾。……好きな人に傷付いて欲しくない、か。なんとなく、好かれているのは分かっていたけどなぁ、見た目がティーンだから、ちょっと甘く見てた。もうちょい、真剣に受け止めなきゃな。

 

「……木曾の気持ちは分かったよ、ごめんな、怪我しちまって」

 

「……いや、俺が弱いのが悪いんだ。お前は、何も悪くない」

 

あーあ、落ち込んでらぁ。

 

「……次なら、木曾も強くなってるさ……。それに、信頼できる仲間達だって沢山いるだろ?俺だって、今まで長い間旅をして、色々な経験を積んだから、こんなことをできる様になったんだよ。木曾だって、まだまだこれからだろ?」

 

「……そう、か?」

 

「ああ、木曾なら大丈夫だ、俺が保証する!……俺に、最高の勝利をくれるんだろ?」

 

「…………ああ、ああ!そうだ!!お前に、最高の勝利を与えてやる!!!」

 

 

 

×××××××××××××××

 

 

 

「……お前に最高の勝利を与えてやる、までは分かったよ?……で、これは?」

 

「……木曾さん?提督から離れては?」

 

……確かに、俺は提督に最高の勝利を与えてやると約束した。しかし、今の俺の力では、それは不可能だ。

 

それに、提督は俺の力を借りずとも、勝利を得られる強さがある。今の俺にできることは、提督の身の回りの些事を片付けてやることだ。その為には、提督の側にいなくてはならない。

 

「これからは、この俺が提督の身の回りの世話をする」

 

「い、いや、お気遣いなく」

 

「は?(威圧)」

 

何だ?大淀のやつ、機嫌が悪いな。提督の機嫌まで悪くするなら……。いや、まあ、暴力は駄目だな、提督が悲しむし、仲間同士で傷付け合いたく無い。

 

「と言うわけだ。何か手伝える事はあるか?何でも言ってくれ、提督」

 

「……木曾さんに手伝える事はありませんよ?」

 

「……お前に聞いた覚えはないぞ、大淀」

 

「はいはい、喧嘩しないの!じゃあ書類書こう書類!はい、木曾」

 

……まあ、良いか。他でもない提督の命令だ。

 

 

 

 

 

「はい、おしまい。じゃ、俺工廠に行くから」

 

「お伴します!!」

 

「ああ、分かった」

 

工廠、か。手先が器用な提督は、良く工廠で明石と装備などの整備や開発をしているそうだ。提督には、本当に頭が上がらないな。

 

 

 

 

 

「あ!こんにちは提督!……ちゅ❤︎大淀さんも、こんにちは。あら?木曾さんですか?珍しいですね?」

 

「なっ?!!あ、明石ぃ!お前、提督に何を!!!」

 

明石め!いきなり提督に口付けを?!どう言う事だ?!!

 

「チッ、こんにちは、明石さん」

 

「もー、怒らないで下さいよー!大淀さんだって毎朝提督にキスしてるじゃないですかー!!」

 

「今日はできなかったんですー!!」

 

ま、まるで意味が分からんぞ?!!

 

「て、提督?!ど、どう言う事なんだ?!」

 

「……あー、まあほら、挨拶だから」

 

あ、挨拶?!!馬鹿な!!明石のそれは完全に男を愛する女としての口付けだったぞ!!

 

「提督が良いって言いましたからねー?「いつでも」、「どこでも」、キスしてくれるそうですし!」

 

な、何だと?!提督とは、いつでも、どこでも、口付けができるのか?!!

 

「私にもして下さいね、提督!……ん、ちゅ❤︎」

 

くっ、大淀まで……!

 

「……提督、本当なのか?」

 

「まあねー。言質取られちゃったし。ま、悪い気はしないからね、良いんじゃない?」

 

……お、俺も、して良いか?……などと、言える筈もない。女らしさのかけらもない俺に言い寄られても、迷惑なだけだろう。

 

「(……とか思ってるんだろうなー、顔に書いてあるわ。つーか、鏡見た事ないのか?超かわいいぞ君)ねえ、木曾?えーっと、良いかな?」

 

顔を近付けてそう言う提督。ま、まさか、俺に、するのか?

 

「あ、い、いや、俺は、その…………、お、お前が、したいなら……」

 

 

 

…………ふ、ふむ、初めての口付けは、ミントの味だった、な。

 

 

 

 

そうして俺は、今日一日ずっと提督に着いてまわった。そして……。

 

「あの、木曾?流石に、お風呂までついて来なくてもいいかなーって」

 

「そうこなくっちゃなぁ。スキンシップも大事だな」

 

「聞いて木曾、聞いて」

 

だ、大丈夫だ俺!す、少なくとも、口付けされるくらいには好いて貰っているんだ!背中を流すくらいなら、口付けよりはハードルが低い!!それに、貧相ではあるが、見られて困るようなだらしない身体ではないからな!

 

「何、背中でも流してやろうと思ってな!」

 

「そのね、俺、このドラム缶風呂使ってるんだよね。だから、背中流すとかそう言うのは良いよ」

 

 

 

「…………何だと?いや、だって、大浴場はどうした?!」

 

「女の子が使う風呂に入れる訳ないじゃん」

 

てっきり、夜中にでも入浴してるもんだとばっかり……!

 

「じゃ、じゃあ、この寒い中ずっと外で?!」

 

「うん」

 

なんてことを……(憤怒)。俺達に気を遣う必要なんて無いぞ!

 

「じゃ、俺首輪付きとドラム缶風呂入るから」

 

……そして、犬(?)と一緒に入る、だと?そんなこと、あってはならない!……そう言えば、前に駆逐艦から聞いたが、提督は寂しさのあまりあの首輪付きとか言う獣に話しかけているらしいな。やはり、寂しいのか、提督?……そうだろうな、長年旅を続けていたんだ、寂しく思うこともあるだろう。

 

「分かった、提督の寂しさは、私が埋めてやろう!」

 

「え?何の話?……あ、ちょっと!何で脱いでるの?!」

 

「何、一緒に風呂に入ろうじゃないか!態々犬(?)と入らずとも良い!」

 

「まあ、良いけどさぁ。木曾も女の子なんだし、恥じらいってもんが欲しいんじゃない?」

 

……そう言われてもな、提督になら別に見られても構わん。うう、にしても、やはり寒いな、早く入ろう。

 

 

 

 

 

「……木曾ーさん?なーんか、近くない?」

 

「気の所為だ」

 

ああ、良い湯だ。外のだからなのか?……いや、提督の隣だからだろうな。にしても、相変わらず提督は良い身体だな。分厚い胸板も、割れた腹筋も、逞しい腕も、俺好みだ。

 

「……なあ、触っても良いか?」

 

……目の前に、好いた男の身体があるんだ、触りたくなるのが女の性だろうよ。

 

「構わんよ」

 

成る程な、お互いに、見せて困るような身体ではないってことか。流石提督だ。

 

「では、失礼して……。おお、これは……、何とも。…………良いな」

 

うむ、素晴らしい肉体美だ。多くの傷も男らしくて良いな。ふむふむ。……この傷は刀傷か……。長いな、指でなぞってみるか。……おお、肩にまで達しているな。背中はどうだろうか、ドラム缶風呂が狭いせいで、抱きつくような形になるが、まあ良いだろう。……撫でてみたが、背中も傷だらけだ。これは銃創、これは獣の歯型、これは爪痕だな。

 

「あっ、ヤバい、その、ヤバい」

 

「?、何がだ?良い身体じゃないか?」

 

「違う、そうじゃない、それ以上いけない」

 

何の問題がある?男と女のする、口付けの様な行為ではなく、ただ身体を触っているだけなんだが?

 

「まあ、やめろと言うならやめるが……。また、触っても良いか?」

 

「お、おう」

 

?、何故動揺している?……まあ、良い。「また触っても良い」とのことだ、言質は取った。……ふふふ、今日は良い一日になったな…………。

 

 

 




大淀、明石
言質を取ったのを良いことに、隙あらばキスを要求してくる。

木曾
羞恥心が薄いので、身体を見せるのも触れ合うのもあまり気にしないが、粘膜の接触などは恥ずかしがる。

首輪付き
いちゃついてる提督に気を遣い、摩耶の部屋の内風呂に入れてもらった。

予言おじさん
990番目の特異存在。夢の中に出る。悪い人間じゃない、らしい。


076番目の特異存在。最近は旅人を勝手に好敵手認定し、襲い掛かる。ピザ食べさせられたり、スライムカクテル飲んだり、なんだかんだで人生エンジョイしてる感ある。

Dr.冗談じゃないぜ
旅人とは似た者同士なので、良く一緒に碌でもない事件を起こす。大人のおもちゃ大移動事件や、サイト19の全ての水を一杯のオーガスムと入れ替えた事件、2girls1cup事件など、様々な伝説を旅人と共に残した。

神父
暴力を振るっていいのはバケモノ共と異教徒共だけ。

旅人
理性を頑張って保った。

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