『メニューのここからここまで下さい』
『朝っぱらから酔ってんのか兄ちゃん』
『俺は大食いなんだよ』
『はは、分かった、残すなよ?』
と、軽いやり取りをしつつ。
「オムレツ、ロコモコ、エッグベネディクト、フレンチトースト、フルーツ……、朝から食べるねぇ」
北上がサンドイッチを齧りながら俺の目の前に座る。
「適量だよこんなん」
んー、流石アメリカ。量が多くて俺ハッピー。
「んー、結構美味しいねー」
俺のフルーツをつまみ食いする北上。
「ハワイの飯は結構美味しいぞ」
俺はハイペースで食料を消費していく。
「そうなんだ。ってか、結構日本語通じるねえ。流石は観光地」
「日本人も多いらしいしな」
こーんな地価高いところによく住んでられるよなー。
基本安宿か路上で寝るんで、地価が高いところに住む人の気持ちは分からんね。
この青い空の下全てが俺の家なのだ。
「で、今日の予定は?」
「取り敢えずダイビング」
あとスカイダイビングして乗馬して潜水艦にでも乗るか。
「潜るの?」
「潜るよー、海ん中はキレーだぞー」
潜り過ぎると神話生物とかに遭遇するけど。
「ふーん、じゃあ、あたしも大井っちと一緒に行っていい?」
「いいぞ」
さーて、潜りますかー。
軽巡とオアフ島にてダイビングだ。
「(スゲー!魚だ!提督!魚だ!)」
ノリノリの天龍。
水中故に何言ってるか分からん。
心理学<80>で大体分かるが。
「(わー、熱帯魚って何でこんなにカラフルなのかねー)」
と、北上。
『それは、メスを惹きつける為だったり、同じ種類の仲間達を認識する為だったり、そもそも単純に保護色だったりと理由は様々だ』
「(……心の中に話しかけるの、どうやってんの?)」
そりゃあ脳内の瞳とか魔法とか。
「(毎回気になってるんだけどさ、作戦中とか提督の指示が心の中に響くと言うか……、聞こえてくるけど、テレパシー?)」
『大体合ってる』
テレパシーも使えない奴が提督やるか?
『あ、あと言っておくけど生き物やサンゴには触るなよー』
「「「「(はーい)」」」」
環境保護だ。
自然を壊してはならない。
自然環境とか文化遺産とか、そういうの大事にしていきたい。
人と自然に優しい世界征服を心がけています。
「(見て下さい司令官!サンゴですよウミガメですよ!可愛いですね!)」
ウキウキの長良。俺としては野生生物より君達の方が可愛いと思うのだが。
自然の神秘より女体の神秘の方が興味深いですなぁ。
ぴっちりとしたダイビングスーツがくっきりとボディラインを強調しとるやんけー!
「(ところでな、提督。いい加減突っ込んでいいか?)」
と木曾。
『何に?』
「(まず、な、ダイビングだと言うのにその装備は何だ?)」
む、海パン穿いてるんだが、悪いのか?
『安心してください、穿いてますよ』
「(いや、それは良いんだ、ダイビングスーツを着てないことは、まあいい。しかし、何故、シュノーケルを着けていないんだ!)」
『呼吸なんてしなくても一晩くらいは大丈夫でしょ』
そんな別に呼吸してないくらいで……。
なんてこたぁないでしょ。
「(息を止めてるのか?く、苦しくないのか?)」
『別に』
ちょっと息できないくらいでへばるようじゃ旅人やれないからね。
ハンター式水泳術で水の中でもなんのその。
ガノトトスは強かった。アタリハンテイ力学がね……。
「(水中メガネなしで見えるのか?)」
『見えてるよ』
水中なので目星にマイナス判定かかるけど。
でも、それでも目星<70>はあるし、脳内の瞳もちょっと使ってる。
俺に見えないものはない。
「(まあ、なら、いいさ、いいんだ)」
?
変な木曾。
さあて、スカイダイビングだ。
『待ちなよ、旦那ー!やめた方がいい!そんなに酔ってちゃ……』
うん?
飲んではいるが酔ってはいないぞ?
それにな。
『うるさいんだよ!おたくはタクシーの運転手で俺のオフクロじゃないだろうがあ!ん〜〜〜?』
『でも……』
『釣りはいらんよ、とっときな。あばよ』
ドル札を渡す。
『メリークリスマス!!!』
俺はシャンパンを飲みながらヘリから落下した。
「司令官ー!!!」
お、朝潮か。
「どうしたー!!!」
空中だからか声が大きくなっちまうな。
「パ、パ、パラシュートは?!!パラシュートはどうしたんですか?!!!」
ん?
あー。
「忘れちゃったー!!!」
「は?」
てへぺろ。
「つ、つ、つ、掴まって下さいーーー!!!早くーーー!!!」
はっはっは、どうした朝潮。
「死んじゃいますーーー!!!早くーーー!!!」
「ヘーキヘーキ!!!大丈夫だって!!!見てろよ!!!」
落下ダメージで死なないようにする方法なんていくらでもある。
タイミングよくバケツの水をぶちまけたり、銀猫の指輪だったりな。
でも今回は……。
「そろそろパラシュート開けー!!!」
「い、嫌ですーーー!!!司令官が死ぬなら私も死にますーーー!!!」
はっはっは、何言ってんだか。
「オラ!!!」
「ああっ?!!!」
朝潮のパラシュートの紐を引っ張ってやる。
「司令官ーーーーー!!!!……あら?」
「何?」
空を飛ぶ俺。
「何、ですか、それ」
「フレイムウイング」
「……空、飛べたんですね」
飛べるさそりゃ。
飛べなきゃ幻想郷とかで困るぞ。
まあ、俺は男なんで弾幕ごっこはあんまりやらなかったけどな。
乗馬だ。
「せいやぁ!」
「「「「おおー!!!」」」」
艦娘達から感嘆の声が上がる。
「やっぱり、司令官は何でもできるのです!」
「隙がないね」
「すごーい!」
「かっこいいー!」
ふふふ、べた褒めされる俺。
正直、騎乗スキルには自信がある。
ノースティリスのあいつほどではないが、それなりのスキルはあるのだ。
サーヴァントとして召喚されることになったら、アーチャー、キャスター、アサシン、そしてライダーにはなれるだろう。
まあ、英雄でも何でもないんだけど俺。
「車も、バイクも、飛行機も、そして馬も!何にでも乗れるのね!」
「俺が動かせないのはエンジンのついてない船だけさ」
本当の話、女の子の上に乗るのが一番得意なんだけどねHAHAHA!!
下ネタだから言わないけど。
「乗り方教えてー!」
「良いだろう、幾らでも教えてあげるよ」
「わーい、なのです!」
ここで俺は紳士ムーブ。
艦娘達に乗馬を教えた。
そして潜水艦。
ツアーにした。
自前の潜水艦もあるっちゃあるが、不審な潜水艦がハワイ領内をウロウロしてたら百パーセント怒られるので、やめておく。
「まあ、綺麗ねえ」
と、龍田。
龍田は、濡れるのが嫌だとか言ってダイビングには不参加だった。
「君の方が綺麗さ、マイハニー」
「あら、昨日は他所の人をナンパしてたのに、今日は私を口説くの?」
「ぎくーっ」
そこを突かれると弱い。
「……私のことはいくら裏切っても良いわ。でも、天龍ちゃんを悲しませるようなことをしたら、その時は」
「そ、その時は?」
「貴方を殺して私も死ぬ」
ヒェッ……。
と、二日目も無事終了し。
「チェックアウトしたかー、帰るぞー」
「お土産買っていきましょー!」
「わーい!」
三日目、帰還予定日となった訳だが。
「どうだ、楽しかったか?」
側にいた五十鈴に問う。
「ええ!お休みをエンジョイできたわ!これで明日からもお仕事が頑張れるってものね!」
そうか。
君達が楽しめたんなら、まあ、良いんじゃないかな。
と、思い、プライベートジェットに乗り込んだ。
艦娘を連れての旅行はやはり、保護者としての責任から難ありと言えるだろう。
確かに、楽しかったが……、やはり俺は一人旅がいい。
やっぱり、深海棲艦騒ぎが終わったら、また旅に出よう。
なんかこう、全体的に丸く収まるはずだ。
うん。
軽巡
楽しんだ。
駆逐
楽しんだ。
旅人
ちょっと辛い。