伊勢海老は美味かった記憶がある。
因みに蟹は嫌い。
修学旅行の続きだ。
連れて行くのは戦艦と睦月型、音成鎮守府。
行き先はイギリス。
ロンドン。
ロンドンだ。
ロンドンと言えば……、俺の母校のグレッセンヘラーカレッジがある。
結構上等な大学なんだぜ?凄いだろ?褒めて。
女の子の大好きな3K……、即ち、高学歴、高身長、高収入の俺。
俺、カッコいーーー!!!
うんうん、やっぱり俺はイケメンだなあと感心しながらも、空の旅。
「わー、凄いです!」
隣に乗せた守子ちゃんが柄にもなくはしゃいでる。
「どしたの?」
「だって、飛行機の運転席に座れる機会なんてないですよ普通!船なら何度も乗ったことがあるんですけど」
そうかい?
「どうだい、運転席から見る景色は」
「凄いです!」
目を輝かせる守子ちゃん。乗り物好きなのかな。可愛い。
『has he lost……』
「あ、ごめんね、音楽かけちゃって。消そうか?」
「あ、いえ、お構いなく」
今日はブラックサバスの気分だった。
「女の子隣に乗せてんのにロックは良くないかなーって」
「え?そうですか?私は気にしませんよ?カッコいいと思います」
「マジ?いやあ、女の子ってあんまりロックの良さを分かってくれないからさあ。守子ちゃん、好きなグループは?」
「え?えーと、色々あるんですけど、そうですね、マンウィズアミッションとか?」
鉄血のオルフェンズじゃねえか!
まあ、これっぽっちも、面白くなかったけどな。
「はい、じゃあ、分かってると思うが、殺し、喧嘩は厳禁ね。はい、解散」
解散する。
「ん?守子ちゃんも好きなところ行って良いよ?」
「いえ、私、海外とか初めてて」
「大丈夫大丈夫、身ぐるみ剥がされることはあっても死にはしないから、多分」
「こ、怖いんですよ!」
んー?
「じゃあ、一緒に観光する?」
「はい、お願いします!」
一人旅がおススメなんだがな。
一人でこそ、誰にも頼らずに自分で行動するから、成長できる。そう言うとこある。
でもまあ、心細いってのは分かったよ。なら、手を握ってあげようじゃないか。
「取り敢えず、その辺のカフェでお茶でも飲んで一服しよう」
「はい」
「ンー、流石は本場!紅茶が美味しいネー!」
おっ、金剛発見。
「やあ、金剛。ティータイムかい?」
「イエース!ティータイムデース!提督も一緒にどうデスカー?」
「もちろんOK。ほら、守子ちゃんも注文しなよ」
「は、はい」
守子ちゃんの手を引いて、席に座る。
「……提督は渡しませんヨ」
「ひっ?!い、いえ、これはそう言うんじゃなくて……!!」
「ああ、守子ちゃんが一人で海外は不安だって言うからね。まあ、ちょっとしたデートさ」
「ズルイデース!」
「もー、金剛とは何度もデートしてるだろ?たまに守子ちゃんの相手したって良いじゃないか」
「むむむ」
「何がむむむだ」
さあ。
ティータイムしようか。
『注文は?』
『このケーキとこのケーキ。それと、これとこれ。それとスコーン。あとアールグレイ』
「五つも食べるんですか……」
ん?適量さ。
『お嬢さんは?』
「え?えっと……」
「何にする?」
「じゃあ、スコーンを。それと折角なので紅茶を」
「アールグレイで良い?」
「あ、はい」
『スコーン一つ。それと、アールグレイ』
『はい、ご注文、承りました』
さて、注文したものが届いて。
「おっ、中々美味いな」
「あっ、凄く美味しい」
紅茶を堪能する俺達。
「うう、最近体重がアレなのに……。スコーン美味しい、美味しいよぉ……」
「んー?ダイエットしたいなら、護身術でも教えてあげようか?」
「え?いやいや、私なんかに時間を割いていただかなくても」
「良いさ、それくらい。ついでに空母も呼んでダイエットさせなきゃな。アレはまずい」
「むー、私も混ぜて下サーイ!」
「君は護身術なんて要らないくらいに強いだろうに」
「バッキンガム宮殿だ」
「名前くらいなら……」
「ちょうど今、衛兵交代式やるってさ、見ていこうか」
「はい!」
おや、あそこにいるのは。
「武蔵じゃないか」
「む、提督か」
どうしたんだ、珍しい。観光って柄でもないだろ。
「いや、仮に英国に攻め入る場合、どれだけの防衛力があるのか知りたくてな」
「あーら、物騒」
「だが、この程度なら簡単そうだ。この施設一つくらいなら、艦娘どころか黒井鎮守府の戦闘用ロボットで落とせるな」
あのね、あのね。
「別に俺は英国と騒ぎを起こそうなんて気は無いからね」
「そうか」
それに……。
「英国には死ぬ程強い吸血鬼がいるからな」
「ほう?私でも無理か」
「無理だね」
アレには勝てないだろう。
「成る程、世界は広いな」
ニヤリと笑う武蔵。
ロンドン塔。
「ちょっと、ここ、怖いですね」
「ああ、まあ、何体か霊はいるな」
「……え?!い、いるんですか?!」
そりゃいるさ、処刑や幽閉に使われた施設だぞ、出るに決まってる。
「だ、大丈夫なんですか、それって」
「んー?多分大丈夫でしょ。深夜とかならヤバいかもね」
「そう言うもの、なんですか?やっぱり、夜の方がお化けは活発になるとか」
「そうだね、基本そう。人がいないであろう時間に動き出すよ。でも、上位の存在となってくると、時間関係なしに動き回るけどね」
ここには、そんなに強いのはいない。
「あ、やあ」
「……今、何に挨拶したんですか?」
「いや、普通に幽霊にだけど」
俺、人格があるなら幽霊でも人間とカウントしていいと思うのよね。
「じょ、冗談ですよね?」
「子供二人だったからリチャード5世とその弟だろうよ」
「ひぃぃ……。す、すみません、手を繋いでもらっても、良いですか?」
「ん?良いよー」
どうした、甘えたいのか守子ちゃん。
ロンドン郊外、魔術協会付近。
……ん?
「逃げようか守子ちゃん」
「は、ええ?」
守子ちゃんを姫抱きにして逃げる。
いや、ねえ?
『いたぞー!!』
『捕まえろ、旅人だ!』
『今日こそ異界の魔術を我らの手に!!』
ほーら、おいでなすった!
こりゃ不味いな、手伝ってもらおう。
「ミカァ!!!!」
「はい、お呼びですか」
そして空から降ってくる三日月。落下系ヒロインかな?
「追っ手が邪魔でね、死なない程度に相手してやってくれ」
「了解しました」
ミカを差し向ける。
そして俺と守子ちゃんは逃げる……。
ロンドンアイまで逃げた。今は守子ちゃんと二人で観覧車に乗っている。
「はあ、はあ、何だったんですかアレは?!」
「あれはね、魔術協会」
「魔術協会?」
「その名の通りよ。魔術の研究をしている機関なんだけどね、そこに狙われてんの、俺」
「何でまた……」
いやあ、こっちが聞きたいよ。
「多分、俺の知識と体質を狙ってのことだろうね」
「そ、それじゃあ、アレですか?カルト宗教みたいに、生贄にされちゃったり?」
「いや、ホルマリン漬けじゃない?あと記憶操作」
「うう、何でですかぁ……」
「魂のエネルギーを物質化するソウルの魔術、超高性能なノースティリスの魔法、秘匿され続けた悍ましいヤーナムの秘儀……、俺の頭の中には、研究者が欲しがるような知識で一杯なのよ」
「それは、また……。穏便に教えるとかは、できないんですか?」
「やーだよめんどくせー」
まあ、相手が美人なら考えないこともないがね。
「それと体質。俺、上位者だったりエーテル病だったりプラスミドだったり、色々と入ってるから。まあ、大体は仙人なんだけど。だからまあ、魔術の触媒の材料なんかになる訳よ」
「じ、人体を使った魔法……、考えたくないです」
「うちじゃ白露型が研究してるっていうから、血とか臓器とか分けてあげてるんだけど」
「うう、グロテスクな話は、あまり……」
あ、そう?ごめんね?
「あとは、俺の持っているアイテムを奪おうとしてるんだろなー」
「アイテムですか?」
「ほら、これとか、これ、これなんかも魔術的に価値がある」
「これは?」
「上位者……、まあ、なんだ、神様の血液だよ」
「こっちは?」
「トラペゾヘドロン。魔術的に価値がある宝石かな」
「これは?」
「ゴールドオーブ。時間改変の力を持つ強力なマジックアイテムだね」
「……そりゃあ、狙われもしますよねぇ」
そうかなぁ?
「まあそれより、景色見なよ、綺麗だよー」
「はぁ……」
「さあ、夜だ!置屋にでも……、って、守子ちゃんいるから無理かぁ」
「え?」
「いや、風俗行こうかと思ったんだけど」
「え、あ、その、だ、大丈夫です!待ってるんで!!」
「いや、そこまで屑じゃないよ。さ、ホテルに戻って今晩は寝ようか」
……残念だ。
艦娘
普通に旅行してる。
旅人
旅人イヤーは地獄耳。